一般社団法人3Dデータを活用する会・3D-GAN・相馬達也理事長が語る「3Dデータのこれまでとこれから」(前編) - 3D Fab|新しいデザイン、ものづくりを紐解く

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一般社団法人3Dデータを活用する会・3D-GAN・相馬達也理事長が語る「3Dデータのこれまでとこれから」(前編)

一般社団法人3Dデータを活用する会・3D-GAN(以下、3D-GAN)は、業種を問わず「3Dデータを活用すること」を共通項として、会員が集まり活動している非営利の業界団体です。今回は3D-GANの設立者であり、理事長を務める相馬達也氏に、3D-GANの目的や3Dデータ活用の過去と未来についてお訊きしました。

設立の目的はマーケットを豊かにすること

-:相馬さまの略歴、3D-GANの設立経緯やその目的について教えて下さい

相馬:1993年から2007年くらいまでは、3D CAD/CAM/CAE、PLMのソフトを開発している会社数社に勤めていまして、製造業系の3Dの仕事をずっとやっていました。最後はCAMソフトの上場会社の役員とその子会社の代表をやっていたのですが、それを辞めて2007年8月に株式会社ツクルスという自分の会社を設立し、ほぼ同時に非営利の任意団体として3D-GANの前身となる「3次元形状を活用する会」を立ち上げ、2011年1月に一般社団法人3Dデータを活用する会・3D-GANとして登記しました。

設立の目的は、多少乱暴に言いますが、「機械の3D CADの市場って今後あまり伸びませんよ。当たり前ですけど、設計をする人以外は3D CADに用はないんですよ」と。「じゃあ、どうすればいいんですか」と言われて、「ちょっと悪あがきというか、2つ突破口があるのでやってみましょうか」と言ったことがあります。もう10年くらい前の話ですが、まず1つが、CGとCADというのは、これまで別々に進化をしてきて別々の業界として存在するわけですよね。でも製造業の我々からみると、CGのデータっていうのは形状としてはすごく単純なんですね。そのデータを加工機器にかければ、物体になるって知ってるんです。でも、それをCGの世界の人に「物体になるって知ってた?」と聞くと、「うそ!」とびっくりされるんですね。データを受け取って3Dプリンターで人形にしてあげると、とても喜ぶわけです。それなら、もう3Dデータを使って何かやっているという共通項でまとめたほうが良いですよね。3Dデータを使う人たちで交流したり、提案できたりする環境を作ったほうが建設的だということで、それには業界団体を作るのが一番ふさわしいと思って設立しました。

もう1つは、モデリングする人口が増えないと、この世界は全然豊かにならないということです。僕はマーケットを豊かにするっていう言い方をしますが、「豊か」とは、決して、金額の話だけじゃないんですよ。だって、2DとかWebの世界ってすごい豊かですよ。同級生の1人ぐらいは絶対PC使って漫画を書いてますよね。この豊かさってすごいと思いません? その上にドラゴンボールの鳥山明先生がいたりするわけですよ。3Dはそうした大きなピラミッドを持てていないんですね。そうした豊かさを創造していかないと、マーケットも広がりません。儲からないかもしれないけど、この世界を豊かにするっていう活動を誰かがやらないといけないということで、3D-GANをやっています。

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3D-GANの事務所の外観

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3D-GANの事務所内には3Dプリンターや3Dスキャナーなどが置かれており、無料でのお試し3Dプリントサービスも行っている

分かりやすくて、みんながやりたいことを、3Dデータで

-:3D-GANでは、どのような活動を行っているのでしょうか?

相馬:まず、3D-GANは、会員からの会費で維持されています。それで、会員向けのサービスとしては、講師を外から呼んで会員さんが聞くセミナーとそのあとの交流会や、共同で展示会に出展するということもやっています。事務局で知り得る情報や知識は会員さんにお出ししていますし、人や会社の紹介も行っています。こちらの紹介で転職した人も何人か居ます。

ワンダーフェスティバルにも8年ぐらい前から出展していますが、私はホビーやフィギュアを仕事にしているわけではありませんし、そのマーケットが自動車などの産業に比べそれほど大きいわけでもないということも知っています。ただ、ワンダーフェスティバルへの出展には2つ意味があって、この世界はこれまでほとんどが手作りだったんです。それを3Dモデリングでやるっていうのは、彼らにとってはものすごい大変化だったんですよ。ここは3Dになるポテンシャルも適性もあるのにやれていないので、提案して変えていくべきエリアだろうと思ったのが1つ。

もう1つは、一般の人に、3Dデータでのものづくりに興味を持ってもらわないとしょうがないって話です。一般の人って、自動車のトランスミッションの話とか興味ないんですよ。でも、フィギュアは、比較的関心を持っている人が多いんですね。ポピュラリティーっていう意味ですね。みんなが知ってくれる材料でアピールしないと意味がないんですよね。また、ありがたいことにホビーファンの皆さんはマニア体質なので、どう作るのかということにみんな興味があるんです。

「パソコンでものづくり」を常識に

相馬:また、非会員向けとして、3Dモデリングの講座などを多数やっています。ミニ四駆のボディをモデリングして、3Dプリンターで出力までして、実際に走らせる親子向け工作教室なども人気です。これは、3Dに関するリテラシー向上を目的にやっています。3D CADのトレーニングってつまんないんですよね。だから、我々はソフト操作のトレーニングをやっているわけではなく、ミニ四駆のボディを作る講座にFusion 360を使っているんだということです。これはタミヤさんも協力してくれていて、日本自動車部品工業会さん、マイクロボードテクノロジーさん、ニッパーのゴッドハンドさん、PCのサードウェーブデジノスさん、メタセコイア開発のテトラフェイスさんも協賛してくれています。

ミニ四駆を使う教室は2種類ありまして、まず、親子向け教室は、もう13都府県で開催してきましたが、親子向けでもなんと3Dモデリングをさせます。だから、全員違うデザインのデータが作れます。これは、メタセコイアというCGソフトを使うのですが、ベースになるテンプレートボディが6種類あって、それにウイングとかスポイラーとかをモーフィングで変形させるんですね。スライドバーを動かすだけでその割合を変えられるので、さまざまなデザインが作れます。こうした項目が10項目ぐらいあるので、オリジナルボディが作れます。我々の講座では、モデリングは絶対させます。そのために参加者1組にPCと3Dプリンター1セットを用意しています。毎回10台以上のPCと10台以上の3Dプリンターを全国に運んでいるんです。3Dデータを実際に触らせないと意味がないんですよ。それで3Dプリンターでボディを出力します。その間にシャーシを組み立てるんですね。つまり、自分でつくった3Dデータでボディをつくり、シャーシをくっつけて走らせる。毎回必ずミニ四駆のコースも用意しています。最高に楽しいものづくり体験になります。これで、リテラシーの獲得ができるだろう、ということですね。実際に親御さんから一番多くいただく感想というのは、「ものづくりってPCでデータつくることなんですね」って。

-:現物を手でいじることだけがものづくりじゃないということですよね。

相馬:そうです。そこを分かっていただけるのが何よりうれしいことです。これで「3Dデータ=現物」っていうラインがやっと繋がるんです。でも、これって2Dの印刷では当たり前で。PCを開いてカチカチやってて、「何やってんの?」って言われて、「絵を描いてるんだ」って答えたら、「ああそうなんだ」で終わりますよね。これはもう常識ですよね。でも、PCを開いてカチカチやってて、「ものづくり」って答えたら、みんな「は?」って思うでしょ。ここを一番変えたいんです。この親子講座は、楽しい体験を通してリテラシーを学びましょうというのがテーマですが、もう1つ、もっと本格的にやりたい大人のためのミニ四駆講座もあります。こちらは、Fusion 360を使ってテンプレート無しで、ゼロから作ります。ただ、シャーシの3Dデータはこちらで用意しています。シャーシがないとボディを作れないので。こちらの講座は6時間かかります。しかも、3Dプリンターでの出力はありません。大人向けは3Dデータがあればモノになると分かっている方向けです。つまり、中身はFusion 360の教育です。だけど、Fusion 360教室っていう言い方はしたくないと先ほど言いましたよね。ミニ四駆という楽しいモチベーションによって3Dモデリングの壁を乗り越えて行ってもらおうということです。

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3D-GANや3D-GAN会員が手がけた製品などが展示されている

インタビュー前半では、3D-GAN設立経緯とこれまでの活動について、語っていただきました。相馬さんにインタビューを行うと、3D-GANは目的へ向かう手段の1つである「PCでものづくり」を、もっと身近なものにしたいという思いを強く感じました。3Dデータ後編では、3Dデータの使われ方の変化や、今後3D-GANで取り組んでいきたいことについてお話をしていただきます。

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