平野デザイン設計の平野哲行氏が語る「デザインとコンピューターソフトとの関わり」 - 3D Fab|新しいデザイン、ものづくりを紐解く

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平野デザイン設計の平野哲行氏が語る「デザインとコンピューターソフトとの関わり」

コンピュータソフトの登場により、デザイン業務も急速に進化しました。今ではソフトを使わないデザイン業務は考えられないでしょう。そこで今回は、デザインとコンピュータソフトの関わりについて、株式会社平野デザイン設計 代表取締役社長の平野哲行氏にお話をお聞きしました。

ブロダクトデザイン、企業ブランディング......多岐にわたるデザインという哲学

-:平野デザイン設計の業務内容について教えて下さい。

平野:我々は「デザイン」を、相手に明快に意図を伝えるとか、1つの価値観を共有化するためにお互いに意思疎通をするためのものと考えています。最近、ブランド戦略とよく言うようになりましたが、我々はそういうものの価値を高める仕事をしています。例えば、全日空のブランド戦略を弊社で担当した際は、インスピレーション・オブ・ジャパンというテーマで、日本の気づきというものを世界にアピールするということをやりました。

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ana_premium_seat.jpg平野デザイン設計がデザインしたビジネスクラスシート。パーソナルな空間をつくることで利用者が快適な時間を過ごすことができる。

2009全日本空輸_食器共有化まとめ資料jpg機内食用食器のデザインなども平野デザイン設計が行った

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空港のカウンターからラウンジに至るまで、日本的な美意識を取り入れモダンな雰囲気を持つ空間を作り出した

スペシャリティとジェネラリティの両方を持つことが重要

-:そうした幅広い領域をすべて平野さまがやられているわけですよね。

平野:重要なポイントは、スペシャリティとジェネラリティの両方を持たないとダメだということです。必ずジェネラリティを持ったスペシャリストか、スペシャリティを持ったジェネラリストになってくれと。これは今、人間についての話だけでなく、それ以上に企業がそうなることを求められているのですが、クラウドも含めたネットワーキングは、それを少し予感させます。弊社は60年近い歴史があり、2,000以上のクライアントがいます。そのクライアントとクライアントを結びつけて、1つの新しい価値観を作るというのも大切な仕事です。例えば、テプラってありますよね。あれは、弊社のクライアント3社を結びつけて、弊社がプロデュースしたものなんです。

-:今、60年近い歴史があるとおっしゃいましたが、平野さまが体感したデザインとコンピューターソフトの関わりについて教えて下さい。

平野:最初は、T定規と三角定規を使って図面を書いていました。それからドラフターが出てきて、次の段階で初めて2D CADが出てきました。CADでは、寸法を入れれば自動的に線を引いてくれるので、すごく利便性が上がりましたが、クリエイティビティは落ちました。画面の中でやっているので、拡大も縮小も自由に調整できます。その尺度を自分の中で持っている人間がCADを使う分にはいいのですが、最初からCADをやっている人間だと、実体と画面の中の大きさとの感覚が確立できなくなってしまうのです。次に、3D CADが登場し、3次元の図面を起こせるというのは大きな価値でしたが、今度は空間を見るということが大変になりました。見て、共有できるというのが、次の段階です。共有しやすい、要は、プロじゃない人でも扱えるソフトの登場が次の段階になりますね。

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従来はモックアップを作り具体的な完成品イメージの共有化をしていたが、モデリングデータによりイメージの共有化が簡易になってくる。

-:今後のソフトウェアに対する要望はありますでしょうか?

平野:人間にはものを作る時の思い入れがあります。線を1本でも間違えると大変だと思うから必死になってやりますが、CADなら簡単に修正できるため、作る時の思い入れが薄れたというのはあります。そこを今後ソフトウェアがどうやって補っていくのか期待しています。あと10年後くらいに、人の感性みたいなのがCADの中で表現できたら面白いと思います。それから、素人でもすぐ使えるというのが理想ですよね。CADを使いたいと思ったら、鉛筆と同じように使えること。例えば、我々は採用の際、「Illustratorを使えますか?」とか「3D CADの何を使えますか?」みたいなことを聞きますが、それをしなくてもいいよう、誰でも使えるものになったらいいなと思います。

Fusion 360は今の時代性にあったソフト

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重要なのは異分野の価値に気づくことと話す平野哲行氏

-:デザインやものづくりの道を目指している方へのアドバイスをいただけないでしょうか。

平野:新しいものを発想する力を常に持っていないといけないと思います。それから、引き出しを多く作ることですね。自分はこの引き出しはいらないというのではなくて、とっておいて、何かあったら情報を整理してその引き出しに入れられる力が重要です。ですから、若い時はいろんなことをやるのが大切です。「僕はこれをやります」っていう決めつけをしないようにと、いつも学生には言っていますね。そういう意味でもFusion 360は面白いと思います。弊社は、サテライトオフィスのような感じで独立させていることが多いので、Fusion 360を使えばここに集まらなくても、「こんなのできる?」ってやり取りして、一つのものを作り上げることができると思います。自分の得意分野をやりながら、全体も俯瞰できるようなソフトなので、今の時代性にとても合っていると思いますよ。

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