着るロボット"ロボティクスファッション"で多様性を表現(きゅんくん) - 3D Fab|新しいデザイン、ものづくりを紐解く

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着るロボット"ロボティクスファッション"で多様性を表現(きゅんくん)

「ファッションとして着るロボット」というコンセプトのもと、「ロボティクスファッションクリエイター」という新しい分野で活動しているきゅんくんは、身体に装着するロボットアーム「METCALFシリーズ」の製作者として注目を集めている女性です。そのきゅんくんに、ものづくりへの想いをうかがいました。

エンジニアの経験をクリエイターの活動に活かしていく

-現在の活動の概要を教えてください。

きゅんくん:私は今「ロボティクスファッションクリエイター」と「メカエンジニア」という二つの分野で仕事をしています。ロボティクスファッションクリエイターの仕事は「新しい価値を作ること」で、エンジニアの仕事は「価値のあるものを作ること」だと思っています。ロボティクスファッションクリエイターであることで、社会にどういうものがあるべきかということがわかり、エンジニアの仕事をすることで、製品開発の経験や量産技術の知識を得ることができます。この両方をやっていかないと、私が目指すものは作れないと思っているんです。

-ではまず、ロボティクスファッションに取り組もうと思ったきっかけを教えてください。

きゅんくん:高校生のとき、被服部という服を作る部活に入りました。ただ私は、中学生の頃から電子工作もやっていたので、自分の軸はテクノロジーだと思っているんです。それで、テクノロジーを服で表現したいと思うようになりました。そして大学に入ってからロボットを作る技術を学ぶことができたので、いよいよウェアラブルロボットの製作を始めました。そのときから「ロボティクスファッションクリエイター」と名乗っています。

-ロボティクスファッションクリエイターとしてのきゅんくんの活動では、METCALFシリーズが有名です。シリーズのひとつである「METCALF clione」の量産を目指すという話もありましたが、現状はいかがでしょうか。

きゅんくん:私は、複数のことを同時にこなすのが苦手なので、クリエイターとエンジニアを同時にやるのではなく、交互にやっていこうと思っています。今はエンジニアがメインの期間として、テンキーなどで鍵の施錠や解錠ができるLTEを搭載したコネクティッド・ロックを作っている「tsumug」という会社で、量産の経験をさせてもらっています。ここで量産技術を学び、それをクリエイターの活動で活かしていくというのが、長期的な展望です。

「METCALF clione」の量産については、自分に量産の技術がまだないので、難しいかなと思っているんです。一般的な家電は、ユーザーがある程度想定外の使い方をしても安全なように設計されています。そういったところに注目して学んでいきたいと思っています」

エンジニアの経験をクリエイターの活動に活かしていくきゅんくんが製作した「METCALF clione」。左右のアームに3個ずつのサーボモーターが搭載されている

作品のバックボーンにあるのは、多様性の尊重

-「METCALFシリーズ」にはどのような想いを込めているのでしょうか。

きゅんくん:私は、多様性をとても大切なものだと思っています。ですから、METCALFシリーズでは多様性を表現していきたいと考えています。例えば、シルエットひとつをとっても、人間のシルエットとは違ったものが存在してもいいはずですよね。そういったことを、METCALFシリーズを通じて伝えたいと思っています。
ちなみに、METCALFのアイデアはオリジナルで、特に何かに影響されたというわけではありません。またMETCALFはアームなので、天使の翼とは違います。今のMETCALFは片側につき3軸なので、一見、翼と思われがちなんですが、アームだとちゃんと分かってもらえるように、5軸、6軸といったものを作りたいですね。

-そのアームは、何か作業を手伝ってもらえるようなものになるのでしょうか。

きゅんくん:作業を手伝うようなものになると、それはファッションではなく、ロボットだと思います。それは、きゅんくんの作品ではないかな、と。いずれは作業用のウェアラブルロボットも作りたいですが、そちらは本名の松永名義で取り組もうと思っています。

-作品を完成させるまでに、どれくらいの期間がかかっているのでしょうか。また製作の流れも教えてください。

きゅんくん:METCALF clioneの場合は、実質的な製作期間は3カ月くらいですね。最初に手書きのスケッチを描いて、寸法も大まかに入れてから、Inventor のような3D CADで3Dモデルにして、板金加工をして、という流れです。以前の作品は、板金も自分で加工していたんですよ。3D CADで設計したものを印刷して板金に貼り、バンドソーで切ったり、ドリルで穴を開けたりとか。今は、板金加工は業者の方に頼んでいますが、昔は拠点にしているデジファブ施設にあるCNCで削ったりもしてました。

作品のバックボーンにあるのは、多様性の尊重METCALF clioneは、Inventorを使って設計された

-3D CAD では、Fusion 360も使われているそうですね。

きゅんくん:ABSやアルミを削るときなど、最近はCNCを使うことが多いのですが、そういう場合はFusion 360のCAM機能を使っています。メインはInventorですが、Inventorで設計してそのデータをFusion 360に持っていってCAM機能を使うという方法です。また、最近はFusion 360のスカルプトを使いたいと思って、練習をしています。

作品のバックボーンにあるのは、多様性の尊重Fusion 360のCAM機能を使ってCNCでパーツを削り出している

-きゅんくんがFusion 360を解説しているコンテンツもありますが、Fusion 360を使い始めたきっかけはなんでしょうか。

きゅんくん:自分の周りにFusion 360を使い始めた人が増えたので、私もやってみようと思ったんです。最初は、アセンブリ機能がInventorと違うので戸惑うこともあったんですが、詳しい方にアセンブリの考え方を教えてもらったら意外と分かって、なんだ簡単なんだ、と(笑)。Fusion 360は、CADだけでなく構造解析もCAMもついているので、これだけで多くのことをまかなえるところが好きです。

-Fusion 360で回路設計もされていると聞きました。

きゅんくん:EAGLEやKiCADを使って回路や基板の設計もしています。回路設計を始めたのは、ここ2年くらいですね。EAGLEで設計した基板のデータをFusion 360に読み込ませて、筐体にちゃんと入るかどうかをチェックできるのが便利です。部品の高さをギリギリにつめて小さいサイズにしたいときなど、助かりますね。

作品のバックボーンにあるのは、多様性の尊重回路CAD「EAGLE」を使って基板の設計もしている

常に技術に対して真摯でありたい

-今後は、どのような活動をしていこうと思われますか。

きゅんくん:今はエンジニアとしての知見を深める期間ですが、もう少し頑張ったら、ここで得た技術をクリエイターとして使いたくなる瞬間が必ず来ると思っています。今は、その日が来るように、しっかりと努力を続けたいですね。クリエイターとしてやりたいことを実現するためにも、技術に対しては常に真摯でありたいと考えています。

-数年後には中学校の技術科で3Dプリンターや3DCADも教えられるようになります。その時、きゅんくんに続くような、ものづくりの道に進みたいと思う子どもたちも出てくるかもしれません。彼らに向けて何かメッセージをお願いします。

きゅんくん:私は、小学生のときから回路設計をやりたいと思っていました。そして中学生の時に電子工作を始めたんですが、親も技術のことはわからなかったので、なかなか必要な情報にたどり着けませんでした。結局、必要な情報にたどり着くのに、かなりの時間を費やしてしまったんですね。時間がかかるということは、それだけ挫折する可能性も高くなるということです。今だったら、必要な情報はインターネットですぐに調べられますよね。だから、やりたいと思ったら、どんどん自分で調べて、わからないことは人に聞いて、食らいついていって欲しいですね。やる気があれば、道はいくらでも開けると思います。

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