Fusion 360で新幹線の模型を作る「CAD鉄」の先駆者 - 3D Fab|新しいデザイン、ものづくりを紐解く

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Fusion 360で新幹線の模型を作る「CAD鉄」の先駆者

3D CADソフト『Fusion 360(フュージョン・スリーシックスティ)』の活用事例を紹介するこちらのコーナー。第22回は、3D CADを活用して鉄道模型を作る「CAD鉄」の達人であり、CAD鉄に関心のある人々のコミュニティで積極的に活動を行っている斉藤正宏氏にお話を伺いました。

高校時代に鉄道模型の自作を始めた

鉄道ファンは、鉄道に乗るのが好きな「乗り鉄」、鉄道写真を撮るのが好きな「撮り鉄」などいくつかのパターンに分かれます。斉藤氏の活動の場である「CAD鉄」とは、鉄道ファンの中でも新しい存在で、3D CADと3Dプリンターを活用して、オリジナルの鉄道模型を作るのが好きな人たちのことです。そして、CAD鉄に関心のある人々が集う「CAD鉄コミュニティ」の中心人物である斉藤氏は、やはり物心つくかつかないかの頃から鉄道が大好きでした。

「鉄道模型に興味を持ったきっかけは、3歳の誕生日に、叔父から本格的なNゲージの基本セットをプレゼントしてもらったことです。中学校に入学してからは、鉄道研究部に入部。そこでの活動としては、中高一貫校だったので、中1から高3までの部員が協力して、学園祭で発表するためのジオラマを作っていましたね。中には鉄道模型の車両を作る人もいて、私も高校に上がった頃には自分で車両を作り始めていました」(斉藤氏)

もちろん当時はコンシューマー向け3Dプリンターは存在しなかったので、斉藤氏も最初のうちは、図面は定規を使って方眼紙に手書きで書き、既製品の車両の色を塗り替えたり、プラ板を切ったり、パテを盛ったり削ったりするなど、手づくりで車両を制作していたそうです。

3D CADと3Dプリンターに出会って「CAD鉄」に目覚める

斉藤氏は、大学では理工学部に進み、機械工学を専攻。大学でも鉄道模型の制作は続けていて、高校時代と同じく手書きの図面をもとに制作していましたが、ある時3D CADと3Dプリンターの存在を知りました。そしてこれは使えるかもしれないと考えた斉藤さんは、オートデスク社の無料3D CADソフト「123D Design」のワークショップを受講したそうです。

「これは、まさに運命の出会いかもしれないと思いました(笑)。今まで手作業で引いていた図面もデジタルで非常に効率よく書けるし、試作品を作るのも簡単です。そこからひたすら独学でどんどん車両の模型を作り、自分のFacebookにアップしていました。ちょうどその頃、中野で3Dプリンターの出力サービスやコンサルティングなどを行なっている「あッ3Dプリンター屋だッ!!」さんと出会いました。そちらで私は一般的な3D CADのセミナーを開催したりしていたのですが、やはり鉄道模型を作りたくて、『CAD鉄』という名前で電車を作る講習会を開催したんです。それがCAD鉄の始まりです」(斉藤氏)

初めてのCAD鉄イベント「CAD鉄の集い」が開催されたのは、2014年8月のことでした。最初はみんなで3D CADを勉強する集まりでしたが、何回か回数を重ねるうちに情報交換もするようになり、定期的にCAD鉄の集まりが開催されるようになりました。そしてFacebookにもCAD鉄のページを作ってやりとりをするうちに、CAD鉄は思いもよらない広がりを見せ始めたのです。

「CAD鉄の取り組みを進めているうちに、『#CAD鉄』でツイートしてくれる人が増えてきたんです。直接は私のことを知らない人でも、CAD鉄という鉄道ファンの分野があることを知って、自分で3D CADで作ったNゲージの模型を『#CAD鉄』でアップしてくれる人も出てきました。私が個人的に始めたことが、鉄道ファンの一つのコミュニティになってきているんです。面白いと思いますね」(斉藤氏)

新幹線を作りたくてFusion 360を活用

斉藤氏が現在使っている3D CADはFusion 360です。Fusion 360は、UIが他の3D CADに比べて分かりやすく、また、CAD鉄ならではの理由もあると、斉藤氏は語りました。

「Fusion 360は使いやすくて、初心者にも教えやすいことが気にいってます。それから、履歴機能が鉄道模型を作る時にとても便利です。実際に出力してみると、このディテールのサイズをちょっと大きくしたいとか小さくしたいとなるものですが、そのような時でも履歴を使えば、後から自由に変更することができます。そのような機能があるのでFusion 360は便利だなと思っているのですが、実は、Fusion 360を使い始めた一番の理由は、新幹線を作りたかったからなんです。それまで使っていた3D CADでは新幹線の曲面がうまく作れなかったんですが、Fusion 360のスカルプトを使うと、その曲面がきれいに出るんですね。そこで『ああ、新幹線を作るのなら、やはりFusion 360だな』となったわけです(笑)」(斉藤氏)

斉藤氏はこれまでに3D CADを使って30種類くらいの車両を作ってきましたが、その中でも気に入っている作品が、東武鉄道の「特急リバティ」とJR東海の新型新幹線「N700S」だそうです。

特急リバティは、途中で何度も休みながら1年半くらいかけて作り上げたもので、最近3Dプリンターで出力して塗装したばかり。また現在、実物の試験走行が行われている「N700S」は、実際に試運転の取材に行き、試行錯誤しながらモデリングしました、そして、さらにそれをオリジナルカラーで塗装して、Fusion 360やFormlabsのロゴを貼ったバージョン「N700F」も作りました。

Fusion360で東武鉄道「特急リバティ」の模型をモデリングしたFusion360で東武鉄道「特急リバティ」の模型をモデリングした

斉藤氏がFusion 360でデザインし、3DプリンターForm2で出力した「特急リバティ」を、実際のNゲージのレイアウトで走らせているところ斉藤氏がFusion 360でデザインし、3DプリンターForm2で出力した「特急リバティ」を、実際のNゲージのレイアウトで走らせているところ

Fusion 360のスカルプト機能を駆使して設計されたJR東海の新型新幹線「N700S」Fusion 360のスカルプト機能を駆使して設計されたJR東海の新型新幹線「N700S」

3Dプリンターで出力された「N700S」。一番上はオリジナルカラーの「N700F」3Dプリンターで出力された「N700S」。一番上はオリジナルカラーの「N700F」

Fusion 360のレンダリング機能で理想の撮り鉄が実現

斉藤氏は、実際の写真データを背景として取り込めるFusion 360の「レンダリング機能」もとても気に入ってるそうです。というのも、この機能を活用すると鉄道ファンならではの楽しみ方ができるからです。

「インターネットで探すと、フリーで使える鉄道や駅などの背景写真が結構見つかります。そういったものと自分で作った車両の模型とを組み合わせてレンダリングすると、好きな視点から車両を眺めることができるんです。まさに理想的な撮り鉄の実現ですね。ぜひ、このレンダリング機能の素晴らしさも、勉強会でみんなに伝えていきたいと思っています」(斉藤氏)

E801系の車両のレンダリング例E801系の車両のレンダリング例

海外の駅の写真を背景として、N700Fをレンダリングしたもの。非常にリアルだ海外の駅の写真を背景として、N700Fをレンダリングしたもの。非常にリアルだ

3DデータをAR/VRにも展開し、CAD鉄の幅を広げる

斉藤氏は、CAD鉄の裾野を広げるために、Fusion 360を使ったワークショップも積極的に開催しています。2017年7月にはオートデスク本社で「CAD鉄&Fusion 360 Meetup」を開催。さらに今回の取材場所である「バー銀座パノラマ渋谷店」でも、「CAD鉄モデリングセミナー」を行っています。

「オートデスク社でのMeetupには50人くらい集まりました。ぜひまたやりたいと思っています。さらに、こちらのお店(注;バー銀座パノラマ渋谷店)でFusion 360を使った『CAD鉄モデリングセミナー』を開催するという告知をしたら、2、3時間で定員が一杯になってしまったんです。これほどニーズがあるとは思わなかったんですが、こうしたセミナーも続けてやっていこうと思います」(斉藤氏)

店内に本格的なNゲージのジオラマがある「バー銀座パノラマ渋谷店」店内に本格的なNゲージのジオラマがある「バー銀座パノラマ渋谷店」

斉藤氏は最近、模型以外の鉄道グッズを作ることや、自分の作った鉄道模型をAR/VRに展開するといった、新たな挑戦を始めています。さらに、車両データの自動生成にも挑戦したいと斉藤氏は語りました。

「ずっと、現実の『150分の1』の大きさの鉄道模型を作っていると疲れてしまうんですよね。だから、オモチャのようなものを作ったり、1回作ったNゲージのデータをデフォルメして鉄道グッズにしたり、少し毛色の違うものづくりに挑戦して気分を変えています」(斉藤氏)

さらにもう一つ、最近挑戦しているAR/VRでは、Fusion 360で作った鉄道模型のデータを利用して、VRゴーグルの中でも原寸で模型を見られるようにしたり、N700Sを作ったときは、3Dデータを活用してARで模型が見えるようにするなど、実験的にいろいろやってるそうです。

ARで再現したN700S。実際に線路上を走行しているように見えるARで再現したN700S。実際に線路上を走行しているように見える

「鉄道模型を作るだけがゴールではないということですね。3Dデータには無限の可能性があります。例えば、最近Fusion 360に搭載されたシートメタル機能を使えば、紙を折って模型が作れると思います。
それから、もうひとつやりたいのが、車両の自動生成です。最近の新型車両のドアや窓の配置というのは、数パターンしかないんです。そこに車両の正面が合わさり、パンタグラフの数が変わって......という形で、モジュール化されているんですね。だから、Fusion 360を使って、組み合わせの自動生成ができたら面白いと思います。最初に車両の大体の寸法を打ち込んだら、おおよその形が自動生成されて、そこから自分の思い思いに作り込んで行くというのが理想的ですね。昔、鉄道専用の鉄道CADを作ろうという話があったのですが、そういったものをFusion 360で実現できたらいいなと思っています」(斉藤氏)

※取材協力 バー銀座パノラマ渋谷店
※CAD鉄主催イベントの最新情報はCAD鉄公式サイトをご確認ください。

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