2023.02.02

【後編】DevOpsの導入に「チームビルディング」と「カルチャー醸成」が欠かせない理由

飯久保翔
株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック DPET マネージャー
認定インストラクター
ビジネス・ブレークスルー大学教員
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株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィックの飯久保です。現在、同社の認定講師として、ITサービスマネージメントやDevOps分野において、普及活動や教育展開活動を行っています。

前回の記事では、DevOpsを体験型で学べる研修「フェニックスプロジェクト」について紹介しました。今回は、そもそも、組織のDevOps導入になぜこのような研修が必要なのか、ITの変化への組織対応力を高めるのに欠かせない「チームビルディング」と「カルチャー醸成」についてお伝えします。

変化の激しい時代に、新たな挑戦をし続けられる組織へ

DevOpsの最終的なゴールは、変化の激しい現代社会において、ビジネス目標を達成するためにITを活用したハイスピード・ハイパフォーマンスなチームをつくること。

実現のためには、DevOpsとアジャイルのスキル開発を目的としたオープンなグローバルコミュニティ「DASA」が提唱している6つの原則をふまえるといいでしょう。

  1. 顧客中心の活動: 行動する勇気と革新
  2. 目標を意識した創造: 製品とサービスの考え方。エンジニアリング・マインドセット。コラボレーション
  3. エンド・ツー・エンドの責任: あなたの責任を果たし、重大な成果を生むコンセプト。パフォーマンスのサポート
  4. 機能横断的な自律型チーム: T字型のプロファイル。補完スキル
  5. 継続的改善: 痛いなら、もっとやってみる。フェイルファスト(早く失敗する。)
  6. 自動化できるものはすべて自動化: 品質を高め、フローを最大化する

引用元) https://japan.devopsagileskills.org/

 

原則の3と4を見ていただくとわかるように、そもそもプロジェクトにおいて1人で完結する業務というのはほぼないため、異なる職務や部門がコラボレーションする必要性があります。つまり、チームビルディングなくしてはDevOpsは実現し得ないのです。

チームビルディングの過程では、一人ひとりの「ふるまい」がとても重要になってきます。ふるまいの積み重ねで、チーム内のカルチャーがつくられていくからです。

DevOpsのみならず何事もそうですが、一定のカルチャー醸成ができていなければ、新たなことへの挑戦は難しいもの。それゆえに、技術的なスキル装着と並行して、チーム全体のカルチャーや一人ひとりのマインドセットを醸成することが、ビジネスの成功においては不可欠です。

アジャイル・DevOpsの成熟度によって受講目的は様々

ここまで、フェニックスプロジェクトの概要と、DevOpsの実現には「チームビルディング」と「カルチャー醸成」が不可欠であることをお伝えしてきました。では、実際に研修を受講いただく企業様は、どのような目的で実施しているのでしょうか。

研修実施企業様の受講目的は、大きく3つのパターンがあります。最も多いのが、旧来の事業やビジネスモデルで価値を創出し続ける難しさに直面し、組織内の変革や改善を促進したいという目的です。通常業務に追われていると、変革のきっかけはなかなかつかめません。まずはワークショップ型の研修実施で、意識づけや社内のネットワーク強化を行いたいと考える企業様は多くいらっしゃいます。

2つ目は、仕事の進め方をいわゆる「ウォーターフォール型」から「アジャイル型」へと転換しようとしているフェーズで、マインドセットの醸成をしたいというケースです。

3つ目が、これまでIT部門のみにアジャイル・DevOpsを導入していた企業様が、ビジネスサイドを巻き込んで組織全体に拡張したいというケースです。

 

受講対象者の選定は、主に2つの方法が考えられます。1つは、全社から参加希望者を募る方法。組織変革の担い手となってくれる人材を見つけたい場合には、この方法が最適です。

もう1つは、特定のチーム全員を対象とする方法。特に大企業だと、組織が大きすぎて「誰を指名するのが最適なのかわからない」といった声もよく聞かれます。この場合は、DevOpsの導入において重要な役割を担っているチーム全員に受講いただくとよいでしょう。また、各部門の管理職から推薦を募るといったケースもあります。

個人と組織の変革を促し、日本経済を再び盛り上げたい

フェニックスプロジェクトは、研修で得た学びを現場に持ち帰って実践してもらうことに真の価値があります。ですが、研修中にも受講者の方々には様々な変容が起こっています。

 

ある日系大企業様でフェニックスプロジェクトを実施した際、最初の1,2ラウンドでは役職が高い方が前に出て話し合いを仕切っていたのですが、ラウンドが進むうちにだんだんと若手の方からも意見が出るようになったのです。

各ラウンドの後に行うふりかえりの場で、若手の方に話を伺ってみたところ「研修を通じて『失敗してもいい』と思えるようになり、発言しやすくなった」というコメントをいただきました。

研修中、次々に降りかかるトラブルやミッションに対応する中で、たとえ役職が高いメンバーであっても"絶対的な答え"を持っているわけではない。新たな挑戦をするときの前提条件は誰しも同じなのだから、役職や年次を問わずフラットに議論したほうがいいと思ったのだと。こうした気づきを得て行動を起こしていただいたことに、講師として非常に嬉しく思いました。

ITP-PhoenixProject2.png
各ラウンド後に実施するふりかえりの場では、役職問わずに気づきや学びをシェア

 

「日本の企業を元気づけたい」と言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、そんな思いを持ってフェニックスプロジェクトの講師を務めています。

近年、世界経済における日本のプレゼンスは弱まりつつあるのが事実です。再び経済活動を活発にするためには、変化する市場ニーズに適応し続け、常に最適なビジネスプランを適用し、新たな価値を創造していける企業を増やすことが肝心です。過去の事例や正解がない中でも、挑戦を続けることができる組織づくりを支援していきたいと思います。

【関連リンク】

DevOps-ABC連載一覧

フェニックスプロジェクト DevOpsシミュレーション研修

DevOps-ABCとは?

この記事の著者:飯久保翔

株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック DPET マネージャー
認定インストラクター
ビジネス・ブレークスルー大学教員

技術者として積算・プロジェクト管理業務に従事した後、現在は株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィックにてDevOps分野などの啓蒙活動を行う。


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