「AI PC って一体何?」「今使っているパソコンと何が違うの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

生成 AI や Microsoft Copilot のような AI アシスタントの活用が進む中、「AI PC」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、AI PC の定義や機能を全て理解できている担当者はまだ多くありません。業務効率化や品質の向上を図るうえで、AI PC は今後欠かせない存在になりつつあります。

この記事では、AI PC とは何かを、具体的な定義とこれまでのパソコンとの違い、活用するメリット、AI PC を選ぶ際に見るべきポイントをご紹介します。メーカー別の特長もご紹介しているので、自社に最適なAI PC を見つけたい方はぜひ最後までご覧ください。

AI PC とは

AI PC とは、AI 処理に特化したプロセッサー(データの演算や処理を行うパーツ)を搭載している、AI 利用に向けて最適化されたパソコンを指します。

AI PC を用いることで、これまでの一般的なビジネス用のパソコンでは難しかった高度な処理や生成が可能になるため、より業務に AI を活用して効率化を実現したり、業務の幅を広げたりできます。

最近では Copilot や ChatGPT のような、直感的な操作で利用できる AI ツールが豊富に提供されているのもあり、日常的に AI を使用する人が増えています。AI PC を使用することで、普段から手作業で行っているパソコンでの作業を AI によって自動化できるため、より AI が身近な存在として業務のあらゆる場面で活躍するでしょう。

AI PC としてのスペックを持つパソコンの定義や、一般的に使われているビジネス用パソコンとの違い、AI PC の活用メリットなどは、以降でご紹介します。

そもそも AI とは

「そもそも AI とは何なのか」という疑問を持つ方も少なくないでしょう。AI とは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略称で、コンピューターが機械学習・ディープラーニングなどを用いて、人間の脳のような理解や推論などを行えるようにする技術を指します。

AI は、多くのデータを学習することで精度を高められ、日々 AI 技術は進化しています。Copilot や ChatGPT といった AI ツールでは、実際に人間と会話しているかのようなチャットのやり取りや、指示に沿った文章・画像生成などが可能です。

ただし、AI が処理を行う際は他の作業に比べてパソコンに負荷がかかりやすい点が課題として挙げられます。AI PC は、ユーザーが複雑なタスクを実行する際も AI をスムーズに活用できるよう開発された高性能なパソコンです。

参照:人工知能(AI:エーアイ)のしくみ|総務省

AI PC の定義

上記では、AI PC について簡単にご紹介しました。AI PC は、Intel 社と Microsoft 社によって、以下のような機能を持つパソコンであることが 2024 年 2 月に定義されました。

NPU を搭載している

AI PC では、NPU(Neural Processing Unit)と呼ばれるプロセッサーを搭載していることが条件として挙げられています。

一般的なパソコンでは、CPU と GPU というプロセッサーが主に使用されています。CPU は、パソコンの脳や心臓に例えられることが多く、パソコンで扱われる全体的なデータの処理を行います。GPU は画像処理に特化しており、映像や画像、3D グラフィックスなどを高速で処理するために用いられるプロセッサーです。

NPU は AI 処理に特化したプロセッサーで、ニューラルネットワーク(人間の脳の神経細胞の働きを模したもの)の処理に優れています。CPU や GPU だけでなく、NPU も搭載されていることで、自然言語処理や画像認識など、AI を用いた複雑な処理を高速で行えるようになるため、AI PC では NPU の搭載が求められています。

Copilot キーを搭載している

Copilot キーは、キーを押すだけで Copilot を即座に起動できるキーのことで、AI PC にはキーボードへの Copilot キーの搭載が求められています。

Copilot キーはキーボードの右下に配置されることが多いですが、メーカーによって配置が異なる場合があります。

これまで、Windows のパソコンで Copilot は Alt + Space キーで起動できましたが、いざ使おうと思ったときに「ショートカットキーを忘れてしまった」となるケースも多いでしょう。Copilot キーがキーボードに搭載されることで、より簡単に、かつ素早く Copilot を利用できるようになるでしょう。

Copilot in Windows に対応している

Copilot in Windows は、Windows OS に標準搭載されている Copilot で、ブラウザを開かずとも、デスクトップアプリとして使用できます。

2025 年 6 月現在、Copilot in Windows は、Windows 10 バージョン 22H2、Windows 11 バージョン 23H2、24H2 で使用できます。これらよりも以前のバージョンの OS を使用している場合は、最新バージョンへのアップデートが必要です。

なお、Windows 10 は、2025 年 10 月 14 日にサポートが終了します。サポート終了後の OS は Microsoft からのセキュリティー対応が行われなくなることから、サイバー攻撃などの被害を受ける可能性が高まるため、Windows 11 へのアップデートやパソコンの買い替えが必要です。

また、Windows 11 環境をインストールするには、Microsoft が提示する Windows 11 のシステム要件も満たしている必要があるため、同じパソコンを何年にもわたって使用している場合は、買い替えを検討するのもおすすめです。

「Windows 10 のサポート終了を機に、AI PC へ買い替えたい」という場合は、ここまでにご紹介した機能を持つ AI PC はもちろん、次世代パソコンとしてさらに追加された要件を満たす AI PC「Copilot+ PC」を利用するのもおすすめです。

次世代 AI PC「Copilot+ PC」の定義

Copilot+ PC は、Microsoft が定めた要件を満たしたパソコンのことで、上記の AI PC に加えて、以下の条件が定められています。

プロセッサー 40 TOPS 以上の実行性能を持つ NPU を備えた、互換性のあるプロセッサーまたは System on a Chip(SoC)

例:AMD Ryzen™ AI 300 series、Intel® Core™ Ultra 200V series、Snapdragon® X series
メモリ(RAM) 16 GB DDR5 / LPDDR5
ストレージ 256 GB SSD / UFS

参照:Windows 11 の仕様、機能、コンピューターの要件を確認する|Microsoft

40 TOPS 以上の処理が可能な NPU は、毎秒 1 兆回の演算処理が可能です。また、「Recall」「Click to Do」「Cocreator(コクリエイター)」といった独自の機能も使用でき、ウェブ上やデスクトップ上で Copilot をより活用できるようになります。

参照:Copilot+ PC と Windows 11 の新しい体験|Microsoft

AI PC と一般的なビジネス用パソコンとの違い

上記では、AI PC や Copilot+ PC の定義をご紹介しました。このように、AI PC には一般的なパソコンよりも高い性能が求められているため、AI を活用した高速処理を実現しています。

AI PC は、一般的なビジネス用パソコンとは異なり、NPU が搭載されているため、これまで CPU と GPU が行っていた AI に関するデータ処理をすべて NPU 上で行える点が大きな違いです。

AI を用いたデータ処理は、CPU と GPU のみが搭載された一般的なビジネス用パソコンでも可能です。例えば、ウェブ会議で用いられる背景ぼかしやノイズ除去機能などには、AI の機能が使われています。

しかし、このような AI を用いた機能を一般的なビジネス用パソコンで使用すると、CPU や GPU が他のデータ処理を行いながらこれらの処理も行うため、大きな負荷がかかり、パソコンの動作が重くなったり、バッテリーの消費が大きくなったりすることがあります。

AI PC の場合は、AI に関する処理をすべて NPU が担うため、上記のような状況においても、CPU や GPU は他のデータ処理に集中でき、パソコンへの負荷を軽減できます。そのため、AI PC では、「ウェブ会議を行いながらデータ分析を行う」「大量の画像生成をしながら資料を作成する」といった複雑な作業も実行できるようになります。

AI PC を活用するメリット

AI PC を活用するメリット

上記では、AI PC と一般的なビジネス用パソコンの違いをご紹介しました。NPU が搭載された AI PC では、AI を用いた処理を高速で行えるようになるだけでなく、セキュリティー面においても安全な環境で AI を使用できるなど、さまざまなメリットがあります。AI PC を活用する具体的なメリットについては、次の通りです。

AI や 生成 AI での処理性能が向上する

CPU と GPU のみが搭載されたパソコンで、一般的に公開されている生成 AI を使用する際は、クラウド上に設置されたプロセッサーで処理が行われます。一方で、AI PC は AI 処理に特化した NPU が搭載されているため、AI を用いたデータ処理をローカル上で行えるようになりました。

これにより、一度クラウドにアップロードされたデータを AI が処理したあと、再度クラウドからパソコンにデータを返すといったやり取りがなくなるため、処理速度が向上します。

また、「AI PC と一般的なビジネス用パソコンとの違い」でも触れたように、ウェブ会議ツールの背景ぼかし機能などローカル上で行われる AI 処理を実行する際にも、NPU が搭載された AI PC では CPU と GPU がその他のデータ処理に集中できるため、パソコンにかかる負荷も軽減し、スムーズに AI 機能を利用できるようになります。

セキュアな環境・オフライン環境で AI が使える

上記で触れたように、一般的なビジネス用のパソコンで一般公開されている生成 AI を使用する際は、クラウド上に一度データをアップロードすることから、情報漏えいなどのリスクがありました。また、クラウドを経由するためインターネットへの接続が必要であり、オフライン環境では生成 AI を使用できませんでした。

AI PC では、ローカル処理が可能なことから、パソコン内でデータ処理が完結するため、外部にデータが流出する心配がなく、セキュアな環境で利用できる点が特長です。また、ローカル処理が可能でクラウドを経由する必要がないことから、オフライン環境でもスムーズに AI を使用できます。

AI 利用時のバッテリー消費を抑えられる

AI PC では、CPU と GPU に代わり、NPU によって AI におけるデータ処理が行われることから、パソコンにかかる負荷が減り、バッテリー消費を抑えられます。

ここまでご紹介したように、CPU と GPU のみを搭載した一般的なビジネス用パソコンを用いると、AI を用いた機能を使用する際にパソコンへ負荷がかかりやすくなるため、バッテリーを大きく消費します。

パソコンに大きな負荷がかかることで熱を持ち、各パーツの消耗が進んだり、故障したりすることにもつながりやすくなるため、パソコンの寿命を延ばす点においても、AI PC は有効であるといえます。

ランニングコストを抑えやすい

外部の生成 AI ツールを利用する場合、ランニングコストが高額になることがあります。例えば、OpenAI の API は従量課金制のため、長文を読み込ませるなど利用量が増えると、その分コストも高額になります。また、サブスクリプション型の AI サービスを利用する場合は、月額や年額でコストが発生するでしょう。

AI PC の場合は、AI のローカル処理が可能で、無料で実行できるため、追加でのランニングコストが発生しません。AI PC は、モデルによっては一般的なビジネス用のパソコンよりも高額になるものの、日常的に AI を使用する場合や、長期にわたって AI を使用する場合は、AI PC のほうがコストを抑えられる可能性があります。

最新の AI アプリを活用できる

AI 技術は日々進化しており、今後はさらに複雑な処理が行える AI アプリなどが開発されるでしょう。大規模なデータ処理や複雑な分析作業などは、CPU と GPU のみを搭載した一般的なビジネス用のパソコンでは負荷が大きすぎることから難しいものの、NPU を搭載した AI PC であれば、スムーズに処理が行えます。

そのため、AI PC を持っていれば、 今後さらに進化した機能を持つ AI アプリが展開された際も、すぐに機能を活用できるでしょう。

AI PC の活用例

ここまで、AI PC を活用するメリットをご紹介しました。NPU の搭載により、セキュリティー面でも安全な環境で、バッテリー消費を抑えながらスムーズに AI を活用できることから、ビジネスにおいてもさまざまな場面で AI PC を活用できるでしょう。

主な AI PC の活用例は、次の通りです。

営業活動のサポート

AI PC は、営業担当者の業務を大幅に効率化し、提案力の強化にも寄与します。特に Copilot を活用すれば、新規顧客との商談準備や資料作成、アフターフォローまでを一気通貫でサポートできます。

例えば、アプローチ前には「〇〇社の事業内容を要約して」「〇〇社の財務情報を教えて」のように指示するだけで、IR資料やウェブに掲載された情報をもとに、売上高の推移・成長分野・競合状況などを短時間で整理できます。顧客の課題や注力分野を把握したうえで、自社製品との親和性を事前に検討できるため、提案の質も向上します。

また、別途サブスクリプションサービスである Microsoft 365 Copilot を利用し、Office 製品と Copilot を連携することで、プレゼンテーション資料の作成においても AI を活用できます。

例えば、Microsoft PowerPoint と連携し、「〇〇社の課題に対する当社ソリューションの提案資料を作成して」といったプロンプト(指示文)を送ることで、説得力あるスライドを自動生成できます。また、Microsoft Teams と連携すれば、商談後には録音した議事録を AI が自動で要約し、次回アクションの候補まで提示することも可能です。

参照:Microsoft 365 Copilot で生産性を飛躍的に向上させましょう|Microsoft
参照:PowerPoint での Copilot|Microsoft
参照:Teams での Copilot|Microsoft

これらの機能により、営業担当者は調査・資料作成・議事録整理といった業務を効率化でき、商談や顧客とのコミュニケーションなど、その他の営業活動に時間を割けるでしょう。

事務作業の効率化

AI PC は、事務作業の中でも特に負荷の大きい「資料作成」「報告書作成」「スケジュール調整」などの事務業務を効率化します。Copilot を活用することで、これまで人力で行っていた作業の多くを AI がサポートし、業務時間の大幅な短縮が可能です。

例えば、会議資料の作成では「議題:〇〇、対象:経営層、目的:進捗報告」といった情報を伝えるだけで、Copilot が資料の構成案や本文のドラフトを即座に作成してくれます。

さらに、上記で触れたMicrosoft 365 Copilot を活用し、PowerPoint で Copilot に「関連画像を追加して」と指示すれば、スライドの内容に合った画像を AI が自動で挿入してくれるため、デザイン調整にかける時間も削減できるでしょう。

資料作成だけでなく、レポートや報告書の作成にも AI の力を活用できます。例えば、「この市場調査レポートを要約して」とプロンプトを送信すれば、膨大な文章の中から要点を抽出し、簡潔で読みやすい要約文を生成可能です。他にも、社内イベントや販促セミナーの準備、企画書の作成、イベントのスケジュール設定、当日の資料の作成などあらゆる業務を一貫してサポートできます。

これらの AI の機能により、定型的な事務作業に費やす時間を削減し、従業員がより創造的・戦略的な業務に集中できる環境を整えられます。

クリエイティブ作業の効率化

AI PC は、デザインやイラスト制作、動画編集、音声処理などのクリエイティブ分野でも、作業効率を大幅に高めるツールとして活用できます。これまで人手に頼っていた繊細な作業や修正作業の多くが、AI 技術の進化によって自動化できます。

例えば、動画編集では AI による字幕生成(ディクテーション機能)が可能です。従来は認識ミスや誤った漢字変換などにより人の手による修正が必要でしたが、音声認識技術の進化により精度が向上し、作業時間の短縮と正確性の両立が期待されています。将来的には多言語対応も進み、リアルタイム通訳や自動翻訳の活用によって、国際的なクリエイティブ業務のハードルも低くなるでしょう。

また、デザインやイラスト制作においては、プロンプトやラフスケッチの画像を読み込むことで、AI は自動でデザインのたたき台を作成できるため、チーム内でのイメージ共有や提案スピードの向上などに役立ちます。

作業負担の軽減はもちろん、これまで時間やコストの問題で実現できなかった表現の幅を広げるという点でも、AI PC はクリエイターにとっても強力なパートナーとなるでしょう。

Copilot+ PC を含め、イラスト制作に適したおすすめのパソコンは以下の記事でご紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。
イラスト用パソコンのおすすめスペックは?導入時の注意点と併せて紹介

医療業界での解析技術の向上

AI PC は、医療分野におけるデータ解析や診断支援の分野でも大いに役立ちます。近年では、MRI や CT などの画像診断装置に AI 技術を組み合わせ、高精度な画像解析を行うアプリケーションが登場しており、疾患の早期発見や診断精度の向上に寄与しています。

これまでは、こうした解析には専用の高価なコンピューターが必要とされてきましたが、AI PC の登場により、より手軽に、かつセキュアな環境で高度な解析を行えるようになりました。特に医療機関では、患者の個人情報を多く扱うため、クラウドに依存せずローカル環境で AI 処理を完結できる AI パソコンは、セキュリティー面でも安心して利用できます。

さらに、薬剤開発や遺伝子解析といった分野でも AI PC の活用が進みつつあります。従来であればスーパーコンピューターを必要としていたような大規模な計算処理も、AI PC 上でスムーズに行えるようになり、新薬開発のスピード向上や、病気の原因特定にかかる時間の短縮といった成果が期待されます。

このように、AI PC は予算に制限のある医療業界の企業や医療機関にとっても導入のハードルが低く、医療現場の技術力向上を後押しする存在となりつつあります。

AI PC を選ぶ際に見るべきポイント

AI PC を選ぶ際に見るべきポイント

ここまで、AI PC のビジネスにおける主な活用例をご紹介しました。上記の通り、AI PC は業務におけるさまざまな場面で活用できるため、あらゆる業界・業種の現場で活用できるでしょう。では、実際に AI PC を導入する際は、どのようなポイントを見てモデルを選べばよいのでしょうか。

Copilot+ PC をはじめとした AI PC はあらゆる AI 処理を快適に行えるよう、基本的に高性能のパーツを搭載しているため、どのモデルを選んでも、性能に大きな差はないでしょう。しかし、モデルによってパソコンの画面サイズや重量などは異なるため、自身の作業環境によって使いやすいと感じるものを選ぶことが大切です。

AI PC を選ぶ際に見るべきポイントは、以下の通りです。

画面サイズ

画面サイズは、AI PC を使用するうえで作業効率や利便性に大きく関わります。

例えば、日常的にパソコンを持ち歩くことが多い営業職などには、軽量でコンパクトな 12 インチ~14 インチのモデルが適しています。かばんにも収まりやすく、移動時の負担も少ないため、外出先でも快適にパソコンを使用できます。ただし、画面が小さい分、複数ウィンドウを表示してマルチタスクを行う際は、窮屈さや不便さを感じることがあります。

一方、オフィスや自宅での据え置き使用が中心の場合は、15 インチ以上の大画面モデルを選ぶことで、画面を広く使えるため、作業効率を高めやすいでしょう。大画面のモデルは、複数ウィンドウを並べて作業したい方や、画像・動画編集などの機会が多い方には特におすすめです。

基本的に、AI PC では Copilot や Office ソフトを掛け合わせて活用するマルチタスクが多くなるため、できるだけ大きな画面のモデルを選ぶことをおすすめします。ただし、外出の機会が多い場合は持ち運びの負担も考慮しつつ選びましょう。

バッテリー駆動時間

AI PC ではパソコンに負荷のかかる処理を多く行うため、バッテリーの駆動時間にも注目しましょう。基本的に、8 ~ 10 時間以上連続で使用できるものであれば、業務時間中に充電のできない環境下でもバッテリーの残量を気にせず作業できます。

ただし、バッテリーの消費量は作業内容や作業環境によっても変化するため、バッテリーの駆動時間が長いモデルを使用しているからとパソコンだけを持って外出するのではなく、必ず AC アダプターやモバイルバッテリーも持ち歩くようにしましょう。

堅牢性

AI PC を外へ持ち運ぶ機会が多い場合は、パソコンがどれだけ衝撃や振動に対して耐えられるか、堅牢性も確認しておきましょう。

パソコンを持ち歩く際は、予期せぬ落下や物理的な衝撃などを受けることがあり、故障や不具合につながる恐れがあります。このようなリスクを下げるために、アルミニウム、チタンといった素材を使用した丈夫な作りのモデルを選ぶとよいでしょう。

なお、メーカーやモデルによってはアメリカ国防総省が制定した堅牢性に関する基準である MIL 規格(MIL-STD-810G / 810H)に基づく耐久テストを実施しているものもあるため、これらの記載があるパソコンを中心に検討するのもおすすめです。

重量

AI PC を日常的に持ち歩く場合は、なるべくパソコンを快適に運べるよう重量も確認しておきましょう。

基本的に、1.5 kg 以内のパソコンであれば、かばんやリュックなどに他の荷物としまっても大きな負担がかかることなく持ち歩けるでしょう。中には、1 kg 以下の超軽量モデルも販売されているため、軽さを重視する場合はこのようなモデルがおすすめです。

しかし、軽量のモデルはその分本体もコンパクトな作りのため、バッテリーの容量が小さかったり、衝撃に弱かったりする可能性があります。そのため、軽量モデルを検討する際は、特に重量とあわせて上記のバッテリー駆動時間や堅牢性も確認しましょう。

セキュリティー機能

AI PC はローカル処理が可能なため、AI 処理における情報漏えいリスクは低いものの、パソコンの盗難や紛失、ウイルス感染などによる情報漏えいリスクにも対処する必要があります。通常のパスワード入力だけでなく、顔認証や指紋認証など、生体認証を使えるモデルを選ぶことで、第三者からの不正アクセスを防ぎやすくなります。

なお、Microsoft では「Secured-Core PC」という高レベルのセキュリティー機能を搭載したモデルを提供しており、Copilot+ PC では Secured-Core PC の機能を活用できます。

Secured-Core PC は、「史上最も安全な Windows デバイス」を目指して構築されており、企業での重要な財務情報や知的財産などのデータを守る高度なセキュリティー対策を実施しています。

参照:高度のセキュリティ ニーズを考慮した Windows 11 PC|Microsoft

インターフェース

AI PC を選ぶ際は、インターフェースの数も重要です。プレゼンテーション時に外部ディスプレイと接続するための HDMI ポートや、充電などで使用する USB Type-C ポート、USB 機器を接続するための USB Type-A ポートなど、多くのインターフェースが用意されているものを選ぶことで、パソコンを外部の機器と接続しやすくなるでしょう。

特に、「ノートパソコンの画面だけでは狭く感じるため外部ディスプレイを使いたい」「マウスなどの周辺機器を有線でつないで利用したい」といった場合は、利用したい周辺機器を全てパソコンに接続できるか、インターフェースのポート数や接続できるコードの種類を確かめておくことが大切です。

2 in 1 対応

AI PC の中には、ディスプレイとキーボードを取り外して、ディスプレイをタブレットのように使用できる 2 in 1 に対応しているモデルもあります。

ディスプレイをタブレットのように使用できることで、直感的な操作ができるため、手書きの図を本格的なイラストとして生成してもらうなど、AI 活用の幅が広がるため、キーボードだけでなく、タッチパネルも活用したいという方には、2 in 1 対応モデルがおすすめです。

タッチパネルつきノートパソコンを利用するメリットなどは、以下の記事でご紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。
ノートパソコンにタッチパネルは必要か?活用メリットやおすすめモデルを紹介

メーカー別 AI PC のおすすめ一覧

ここまで、AI PC を選ぶ際に見るべきポイントをご紹介しました。AI PC は、メーカーによってもデザインや持ち運びやすさ、サポートなどが異なるため、メーカーごとの特長を押さえたうえでモデルを検討するとよいでしょう。

メーカー別の AI PC の特長は、以下の通りです。

Microsoft

Microsoft では、Copilot+ PC として、Surface Pro、Surface Laptop を提供しています。

Surface Pro はディスプレイとキーボードの取り外しが可能な 2 in 1 が魅力で、Surface スリム ペンを使って自由に手書きのメモやイラストの作成、細部の編集などが行えます。

Surface Laptop は、13 ~ 15 インチと大画面のモデルも展開されており、最大 23 時間の動画再生が可能なバッテリーの駆動時間が魅力です。そのため、充電ができない環境でも、長時間ウェブ会議や AI を使った動画編集など高負荷な作業を行えるでしょう。

また、Surface は軽量な作りが特長です。例えば、Surface Pro 12 インチは 686 g のため、出張や外出の機会が多く頻繁にパソコンを持ち運ぶ方におすすめです。

Microsoft Surface について詳しく見る

HP

HP は、Copilot+ PC として HP EliteBook を提供しています。HP の AI PC は、「HP AI Companion」「HP Smart Sense」の 2 つの独自機能を持っています。

HP AI Companion は、日々パソコンをユーザーが活用する中で、ユーザーに合ったサービスを提供するために AI が学習を重ねる機能です。生成 AI を使った検索やファイルの分析など、作業効率や生産性の向上につながる機能を豊富に使用できます。

HP Smart Sense は、AI がユーザーの作業内容や環境に合わせて自動でパフォーマンスを最適化するツールです。これにより、負荷のかかる作業においても快適に取り組みやすくなるでしょう。

HP の AI PC について詳しく見る

Dell Technologies

Dell Technologies では、Copilot+ PC として、Dell Pro Notebook を提供しています。

「Premium」「Plus」「Base」の 3 種類が展開されており、Premium では携帯性や静音性を追求した精巧な作りや、鮮明なディスプレイ、バッテリー持続時間の長さが特長です。

Plus は本体にアルミニウムを使用したスタイリッシュなデザインながらも堅牢性に優れています。Base は AI PC を使うユーザーにとって必要となる堅牢性や携帯性、セキュリティー機能を一通りそろえた標準的な機能を持つモデルです。

Dell Pro Notebook について詳しく見る

レノボ

レノボでは、Copilot+ PC として ThinkPad を提供しています。

ThinkPad は、ThinkShield セキュリティソリューションによる多層防御を備えており、TPM(トラステッド プラットフォーム モジュール)が重要なデータを暗号化します。また、生体認証機能により、指紋センサーやオプションで顔認証機能が利用できるセキュリティー機能の豊富さが特長です。

また、ThinkPad の一部のモデルでは、キーボードにトラックポイントが搭載されており、2回クリックすることでクイックメニュー設定が開きます。これにより、Enter キーや Fn キーなどの操作性を向上できるでしょう。

ThinkPad について詳しく見る

まとめ

この記事では、AI PC とは何かを、具体的な定義とこれまでのパソコンとの違い、活用するメリット、AI PC を選ぶ際に見るべきポイント、メーカー別の特長などとあわせてご紹介しました。

AI PC は、一般的なビジネス用パソコンに搭載している CPU と GPU に加えて NPU という AI 処理に特化したプロセッサーを搭載していることから、複雑な処理も高速で行える特長があります。

現在は Microsoft が定義した条件を満たす次世代パソコンである Copilot+ PC も各メーカーから豊富なモデルが提供されているため、自身の作業内容や作業環境に合わせて、最適な画面サイズ・重量のモデルを選びましょう。

SB C&S の IT-EXchange では、記事内でご紹介したメーカーの Copilot+ PC をご提案しています。「自社に合った AI PC がわからない」といった場合は、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。

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