
N-E.X.T.ハイスクール構想を支える遠隔授業の導入メリットと課題~「学びを止めない」環境づくりとは?

2026年2月に文部科学省より公表された高等学校教育改革を進める「N-E.X.T.ハイスクール構想」の中で、一人ひとりの多様な学習ニーズに対応した教育機会・アクセスの確保が求められています。また、少子化の進行を背景に地域における高校教育の維持や学びのアクセス確保を図ることが重要とされています。
こうした学びの機会とアクセス確保に向けた取り組みの一つとして「遠隔授業」が注目されています。
学校側としては、遠隔授業の基本的な概要や分類を改めて整理し、今後具体的にどのような授業やシチュエーションで活用していくかを検討する必要があるでしょう。
今回は、遠隔授業の特徴や分類、具体的な活用場面、「N-E.X.T.ハイスクール構想」との深い関係性、さらには導入メリットから運用時の課題・解決のポイントまでをわかりやすく解説します。
遠隔授業とは?「N-E.X.T.ハイスクール構想」で加速!
まずは遠隔授業の概要と共に、「N-E.X.T.ハイスクール構想」との関係性について見ていきましょう。
遠隔教育と遠隔授業
遠隔教育とは、ICTを活用して離れた場所にいる児童生徒や教員が学習を行う教育手法の総称です。
その中でも遠隔授業は、映像や音声などを使って学校同士や教員・生徒をリアルタイムにつなぎ、同時双方向で行う授業を指します。
これにより、学校同士をつないだ合同授業や、大学・企業などの専門家を活用した授業が可能になります。
また、遠隔教育には遠隔授業のほかにも、授業の一部や家庭学習等で動画教材などを活用し、学習効果を高める取り組みが含まれます。
遠隔教育の種類
文部科学省は、遠隔教育を次の3つに分類しています。
児童生徒が多様な意見や
考えに触れたり、
協働して学習に取り組んだり
する機会の充実を図る。

送信側

受信側
遠隔地にある他校とつないで合同授業を行うことで、協働学習を行ったり、多様な意見に触れさせたりして、コミュニケーション活性化を図るスタイルです。
遠隔交流学習:
離れた地域の学校とつなぎ、児童生徒同士がリアルタイムに交流。互いの地域の特徴や共通点、相違点などを学び合います。
遠隔合同授業:
他校の教室とシステムでつなぎ、合同授業を継続的に実施する方法です。多様な意見に触れたり、コミュニケーション力を培ったりする機会となります。
児童生徒の学習活動の
質を高めるとともに、
教員の資質向上を図る。

送信側

受信側
遠方にいる講師が支援することで、専門性の高い授業を実現します。
ALTとつないだ遠隔学習:
ALT(Assistant Language Teacher)とは、外国語指導助手のことです。ALTが遠隔から指導することで、児童生徒はネイティブな会話の発音に触れられます。これにより、外国語で会話する機会を増やします。
専門家とつないだ遠隔学習:
博物館や大学、企業等の外部の専門人材を遠隔教育システムでつなぎ、専門的な知識に触れることで生徒の学習の幅を広げます。
免許外教科担任を支援する遠隔授業:
免許外教科担任(※)や臨時免許を持つ教員が指導する学級と、教科免許を持つ教員やその教員が指導する学級を遠隔でつなぐことで、免許外教科担任の負担を軽減し、より専門的な指導を行えるようにします。
※特定の教科の免許状を有する教員を採用できない場合、教育委員会の許可により一定期間に限り、その教科の免許状を持たない教員が当該教科を代わって担当する制度によるもの。
生徒の多様な科目選択を
可能とすることなどにより、
学習機会の充実を図る。
※高等学校段階のみ

送信側

受信側
学外にいる教員と遠隔でつなぐことで、校内に該当免許を有する教員がいなくても、生徒が多様な教科・科目を履修できるようにする仕組みです。
【補足】遠隔教育特例校について
遠隔教育を活用した制度として、令和元年施行の「遠隔教育特例校制度」があります。
本制度は、中学校等において受信側の教員が免許を有していなくても、当該免許を持つ教員が遠隔からの授業を可能にする制度です。特例校の指定には文部科学省の審査や生徒への適切な教育的配慮が求められます。配信側は兼務発令等により受信側の学校教員としての身分が必要で、茨城県や長崎県では特例校の認可を受け、遠隔教育が実践されました。


活用場面別の遠隔教育
遠隔教育は、学校現場のさまざまなシーンや課題解決において力を発揮します。
1.教科の学びを深めたいとき
遠隔教育は、児童生徒が教科の学びを深めるのに役立ちます。他校の児童生徒の意見を聞いたり、協働して学習に取り組んだり、普段、触れることのできない専門的な知識を専門家から学ぶことで従来の教科で学べる範囲や理解が広がります。
2.多様な人々とのつながりを実現したいとき
他校や遠方の専門家などとの交流を実現することで、コミュニケーション力を磨き、多様な価値観を受容する学びが可能になります。
3.個々の児童生徒の状況に応じて遠隔から学びを支援したいとき
日本語指導が必要な児童生徒や、病気療養中など様々な事情により通学が難しい児童生徒、特別な配慮や才能をもつ児童生徒への学習支援にも活用できます。一人ひとりの状況や理解度、興味・関心に寄り添った支援を行うことで、学びの機会の確保や充実につながります。
「N-E.X.T.ハイスクール構想」で加速する見込み
「N-E.X.T. ハイスクール構想」とは、文部科学省が2040年を見据えて進める高等学校教育改革の構想です。高校教育の在り方そのものを刷新することを目的として、先導的な取り組みを行う高校のパイロットケース(先導的な取組)を創出し、その成果を全国に普及させることを目指すものです。
文部科学省の本構想に関する資料では、「地方の教育機会の充実を図るため、小規模校の特色化・魅力化のための教育条件の改善を含め、学校間連携、課程や学科を超えた学び、遠隔授業等の推進に取り組むことが重要(※)」と明記されています。
つまり、本構想を実現するために、遠隔授業は重要な取り組みの一つであることから、今後、学校において遠隔授業の導入がより一層、加速することが予想されます。
※出典:「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)~2040年に向けた「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」」
【関連リンク】
高校に迫るN-E.X.T. ハイスクール構想~約3,000億円の予算が教室をどう変える?
遠隔授業の導入メリット

遠隔授業を導入することにより、次のメリットが期待できます。
専門的な教育の実践が可能
校内の教員だけでは実現できない専門的な教育が、外部の専門家によって実現します。「N-E.X.T. ハイスクール構想」では「AIに代替されない能力や個性の伸長」が視点の一つに掲げられており、情報活用能力や問題発見・解決能力、他者と協働する力などを養う必要性が示されています。専門的な知識や考え方を外部から取り入れられる遠隔授業は、これらの能力や資質を育む有効な手段といえます。
他校・学外の多様な人々との交流が可能
遠隔授業では、他校の教室や地域、遠方にいる多様な人々とのコミュニケーションを実現できます。
「N-E.X.T. ハイスクール構想」における「AIに代替されない能力や個性の伸長」のために、他者との交流は重要な要素の一つです。また、「我が国や地域の経済・社会の発展を支える人材育成」という視点も掲げられており、学校と産業界等が連携・協働して教育の質を高めることが求められています。遠隔授業はその手段の一つとして有効であり、企業の専門人材とつながり、専門的な知識や考え方を学ぶことも可能になります。
遠隔授業対応ICTツールによる授業の活性化・学習効果の向上
遠隔教育システムなどのICTツールを活用し、離れた学校や教室をつなぎ、音声や映像を用いることで、授業が活性化します。その結果、授業への参加意欲が高まり、学習効果の向上につながります。
場所を問わない学習機会の確保
遠隔授業は、移動や通学の負担を軽減し、地理的な条件に左右されない学びの機会を広げます。自然災害やパンデミックなどによる休校時にも、自宅と教員をつないだ学習が可能です。
「N-E.X.T. ハイスクール構想」では「一人一人の多様な学習ニーズに対応した教育機会・アクセスの確保」という視点が掲げられています。遠隔授業を活用することで、誰もが学びにアクセスできる環境づくりや、児童生徒の理解度に応じた授業の実施が可能になります。
遠隔授業の導入・実施の課題

一方で、学校が遠隔授業を導入し、実施する際には次の課題に直面することがあります。
環境整備の負荷増
遠隔授業を実施するには、Web会議システムやディスプレイなどのICT環境の整備が不可欠です。しかし、ICTツールの選定から導入、運用までには専門知識が求められるため、学校現場の負担が大きくなる場合があります。また、厳格なセキュリティ要件を満たす必要もあり、高度な専門知識や技術が求められます。
システム・通信トラブルのリスク
運用後にシステムや通信状況の不具合が発生した場合、授業を中断せざるを得ないため、学習の遅れや児童生徒の集中力低下につながる恐れがあります。そのため、不具合が発生した際にも迅速に復旧できるよう、「学びを止めない」ための体制を整えておくことが重要です。
児童生徒が自宅から参加する際の集中力低下
学外から児童生徒が遠隔授業に参加する際には、教室での指導とは異なることを理解した上で進める必要があります。例えば、対面授業と異なり、マイクやカメラ越しの指導となるため、緊張感が薄れ、集中力が低下する場合があります。
また教室では、教員が直接、児童生徒の様子を見ながら指導できますが、遠隔授業ではカメラ越しでの確認となるため、状況を把握しにくいという課題があります。そのため、遠隔授業ならではの工夫が求められます。
対面授業と遠隔授業の両立
病気療養や家庭の事情などにより登校が難しい児童生徒を対象に、対面授業へ遠隔から参加できる環境を整備する場合には、対面授業と遠隔授業を組み合わせた環境づくりが必要です。
また、授業設計においても対面と遠隔それぞれの特性を踏まえた工夫が求められるため、運用面でのハードルが高くなります。
遠隔授業の導入・実施の課題解決のポイント

先述の課題を解決するポイントをご紹介します。
民間企業によるサポートの活用
ICT環境の整備にあたっては、民間の専門企業の支援を受けながら進めることが有効です。実施したい遠隔授業の目的や内容を明確にした上で、必要なICT環境を定義・設計してもらいましょう。
導入にあたっては、操作方法のレクチャーを受け、運用が円滑に進むよう準備しておくことが重要です。また、トラブルが発生した際の対応方法もあらかじめ確認し、サポート体制を確保しておく必要があります。
企業を選定する際には、実績が豊富なのはもちろんのこと、児童生徒の学びを止めないためのトラブル対応までが含まれているかどうかも重要な基準となります。
双方向性を取り入れた授業設計
従来のように一方的な講義形式で遠隔授業を行うと、児童生徒が飽きてしまい、集中力が低下する恐れがあります。
そのため、児童生徒が能動的に参加できるよう、次のような工夫が必要です。
・チャット機能から質問を募る
・クイズを出題し、回答してもらう
・グループディスカッションを取り入れる
ハイブリッド授業環境の構築
対面授業と遠隔授業を同時に行うハイブリッド授業を実現するには、多様なカメラやマイク、スピーカーなどの機器構成が重要です。例えば、遠隔からの参加者に教室の映像や音声が適切に届くよう、教員や児童生徒を映すカメラを設置します。あわせて板書カメラを設置することで、黒板の小さな文字まで鮮明に映すことができます。
さらに、遠隔からの参加する児童生徒側にも小型カメラやマイク環境を整えることで、教室との双方向のやり取りを円滑に行うことができます。
また専用アプリを利用することで、教員が参加者のデスクトップ画面を確認したり、テスト結果をリアルタイムで把握したりすることも可能です。こうした仕組みにより、ハイブリッド授業の運用を効率化できます。
ハイブリッド授業のICTツールについては、下記のページで詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
【関連リンク】
ハイブリッド授業ソリューション
まとめ
遠隔授業は、「N-E.X.T.ハイスクール構想」を背景に、今後さらに広がっていくと考えられます。遠隔授業では専門的な教育の実践や、他校・学外の多様な人々との交流が可能になります。またICTツールをうまく活用することで、授業の活性化・学習効果の向上につながります。
さらに、地域や学校規模に左右されることなく、多様な学びの機会を提供できる点も大きな特長です。「N-E.X.T.ハイスクール構想」が目指す教育機会・アクセスの確保を実現するための有効な手段として、今後ますます重要性が高まっていくでしょう。
一方で、ICT環境の整備や運用体制の構築、授業設計などの課題もあります。こうした課題に対して適切なサポートを受けながら導入・運用を進めることで、トラブル時にも生徒の学びを止めることなく、質の高い教育環境の実現につなげることができます。
SB C&Sでは、高品質な遠隔授業やハイブリッド型授業の実施をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

