
生徒を「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」へ導くために|校務DXで実現する教育の質向上と持続可能な働き方

近年、教育界や産業界で「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」という言葉が注目されています。文部科学省でも、高等学校段階からデジタル技術を活用できる高度な現場人材の育成の重要性が示されています。
今回は、アドバンスト・エッセンシャルワーカーの概要と注目されている背景、育成することのメリット、N-E.X.T. ハイスクール構想との関連性について解説します。
アドバンスト・エッセンシャルワーカーを育成するためには、教育の質向上と教員の持続可能な働き方の両立が欠かせません。
本記事では、その実現に向けた「校務DX」の考え方や具体的な取り組みについてもご紹介します。
アドバンスト・エッセンシャルワーカーとは?
アドバンスト・エッセンシャルワーカーとは、「次世代型の高度現場人材」を指します。
医療、介護、交通、インフラ、物流、農水産など、私たちの生活維持に欠かせない職業に従事する人々を「エッセンシャルワーカー」と呼びます。
近年、生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進化により、従来の事務職で行われてきた一部の業務では自動化が進んでいます。その一方で、AIでは担いきれない実社会の現場で活躍する技能職や専門職の重要性が改めて注目されています。
そうした中、最新のAIやデジタル技術を活用しながら、高い専門性と現場力を発揮するエッセンシャルワーカーとして、「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」が期待されています。
また、地域の産業構造転換やイノベーションを支える人材としても期待されています。
アドバンスト・エッセンシャルワーカーが注目されている背景

なぜ近年、アドバンスト・エッセンシャルワーカーが注目されているのでしょうか。その背景を見ていきましょう。
「情報活用能力の抜本的向上」によって社会を支える人材像
2025年12月8日に開催された「教育課程部会情報・技術ワーキンググループ(第4回)」の資料で、文部科学省は「情報活用能力の抜本的向上」のために4つの人材像の人材育成を目指すことを示しました(※)。そのうちの一つが地方経済を維持するアドバンスト・エッセンシャルワーカーです。
※出典:文部科学省「教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ(第4回)」配布資料
アドバンスト・エッセンシャルワーカーが取り上げられた背景として、次の3つがあります。
1.労働力不足
少子高齢化の進展により、地域社会や産業を支える人材の不足が懸念されています。特に、工業や農業などの専門分野で活躍するエッセンシャルワーカーの確保が課題となっています。
2.労働市場のミスマッチ
職種によって人材需要に偏りが生じており、文系人材が余剰となる一方で、理系人材は不足する可能性が指摘されています。また、工業・農業などの職業学科で学ぶ生徒の割合も減少していることから、現場で活躍する技能職をはじめとしたエッセンシャルワーカーの担い手不足や、社会・産業界が求める人材とのミスマッチが課題となっています。
3.AI時代の労働シフト
AIの普及により、タスクをこなすだけの単純労働から、価値を創出する労働への移行が進んでいます。そのため、AIやデジタル技術を活用して価値を創出できる人材の育成が課題となっています。
アドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成は、日本の強みである「現場力」や「品質力」の維持、そして付加価値労働生産性向上の切り札となり得ると考えられています。
アドバンスト・エッセンシャルワーカーを育成することのメリット

アドバンスト・エッセンシャルワーカーを育成することで、次のメリットが期待できます。
地方経済の維持・担い手不足の解消
少子高齢化を受け、地方では特に過疎化が進んでいます。そのため、地方経済を支えるためにエッセンシャルサービス業(※)の重要性が増しています。しかし担い手不足の問題があることから、それを解消するために、アドバンスト・エッセンシャルワーカーが重要な役割を担います。
- ※エッセンシャルサービス業:
- 人々の生活を維持するために欠かせない職業。
医療、介護、交通、インフラ、物流、農水産など。
サービス品質向上・生産性向上
アドバンスト・エッセンシャルワーカーは、現場の仕組みにAIやロボット技術の活用を推進できます。そのため、サービス品質向上や生産性向上をもたらします。その結果、日本の強みである品質や生産力といった現場の力をより一層、発揮できるようになります。また自動化・省力化により、人手不足の課題への対応も可能です。
グローバル競争力の強化
日本では、国際的に見ても生産性の向上が重要な課題の一つとなっています。このような中、アドバンスト・エッセンシャルワーカーが先端技術の活用を促進することで、競争力の強化を目指す必要があります。
N-E.X.T. ハイスクール構想との関連性

アドバンスト・エッセンシャルワーカーは、N-E.X.T. ハイスクール構想と密接に関係しています。
「N-E.X.T. ハイスクール構想」とは
N-E.X.T. ハイスクール構想とは、文部科学省が掲げた、「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)」の構想です。
AI技術の進化などを背景に、2040年には少子高齢化や労働力不足、地方の過疎化が一層深刻になると予想されています。そうした中、文部科学省は高等学校をイノベーション人材育成拠点とすることを掲げました。
高校改革において下記の3つの視点が示されています。
・不確実な時代を自立して生きていく主権者としての、AIに代替されない能力や個性の伸長
・我が国や地域の経済・社会の発展を支える人材育成
・一人一人の多様な学習ニーズに対応した教育機会・アクセスの確保
「N-E.X.T. ハイスクール構想」との関係
アドバンスト・エッセンシャルワーカーはN-E.X.T. ハイスクール構想の「新しい学校のイメージや取組例」の一つである「専門高校の機能強化・高度化」の中で取り上げられています。
生成AIの飛躍的進化により、あらゆる職種でデジタル素養が不可欠となっています。N-E.X.T. ハイスクール構想では単なる即戦力に留まらず、デジタル技術を活用できるアドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成が期待されています。
また現場力を担う人材育成を強化するべく、高校はアドバンスト・エッセンシャルワーカーを育成する重要な役割を果たすことが期待されています。
高校の機能強化と高度化の具体的な取り組み例
高校は、次のような取り組み例が期待されています。
ビジネス経験の必修化
定期的に企業などで具体的な業務を実践し、卒業後の仕事や収入について具体的なイメージを持てるようにするとともに、高校で学んだ理論が企業でどのように生かされるのかを学ぶ取り組みです。また、卒業までに就業経験を積むことで、生徒が働くことへの理解を深め、自身の将来のキャリアを考えるきっかけとなります。さらに、こうした取り組みは、安定的な人材育成・供給の確保や将来的な労働力需給ギャップの改善にも貢献することが期待されています。
ものづくりから流通までの一体的な学び
産業界と連携し、専門家から継続的な指導を受けながら、原材料の生産や栽培管理、製品・商品の製造、流通・販売までの工程を学ぶ取り組みです。こうした工程を経験することで、ものづくりだけでなく、マーケティングや流通の仕組みも実践的に学ぶことができます。また、農業や商業など学科の枠を超えた学びを通じて、幅広い視野と実践力を備えた職業人材の育成を目指しています。
高校版「企業寄附講座」の開設
企業や大学等と連携し、地域産業の強みを生かした分野について、企業等の専門家による継続的な指導を受けながら、より高度で実践的な内容を学ぶ学校設定科目等を開設する取り組みです。こうした学校設定科目や新たな学科・コースを通じて、卒業後の進学や就職も見据えた学びを提供するとともに、産業界や大学等の取り組みと連動し、地域の主要産業を支える人材の育成に貢献することが期待されています。
出典:文部科学省「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)~2040年に向けた「N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想」~」
高校における高度専門人材の育成には、生徒と教員共に最先端のAI環境が不可欠です。AI等のデジタルツールが産業界で活用される機会が増えていることから、高校での学びにおいてもAIを活用した実践的な教育環境が求められています。そして教員は校務の効率化と探究学習を両立させながら、生徒が社会で必要とされるデジタルスキルを身に付けられるよう支援していく必要があるでしょう。
校務DXで実現する教育の質の向上と持続可能な働き方

アドバンスト・エッセンシャルワーカー育成のために、学校は校務DXを加速し、環境を整える必要性があります。校務DXとは何か、またその効果についてご紹介します。
校務DXとは
校務DXとは、学校の業務全般である『校務』のDXを推進することです。DXとは、デジタル技術を活用し、業務や組織の在り方を変革し、新たな価値を生み出す取り組みを意味します。単なるデジタル化ではなく、社会変革をもたらす高度な価値創造を目指すデジタル変革です。
校務DXにおいては、学習指導をはじめとする教育活動、設備や備品管理、事務作業など学校運営に関わる幅広い業務の効率化を図ります。その中でも、校務の効率化をさらに推進し、教育活動の高度化を支える技術としてAIの活用が注目されています。
校務DXによる効果
AIなどを活用した校務DXは、教職員の負担軽減をするとともに、創出した時間を授業準備や生徒への指導に充てることで、教育の質の向上につながります。
その結果、生徒一人ひとりに向き合う時間を確保し、アドバンスト・エッセンシャルワーカー育成につながる教育環境の充実が期待できます。
教育活動におけるAI活用例
校務DXで生まれた時間を有効活用するためには、教育活動でも次のようにAIを活用することが可能です。
・Microsoft 365とAIを活用することで、資料作成、データ分析、情報共有などを効率化できるほか、場所を問わず校務を行える環境づくりにつながります。
・「Copilot+ PC (※)」を利用することで、AI機能による作業効率化や探究活動のプロセスの支援が可能になります。
【AI機能の例】
・プレゼン資料作成サポート(画像生成AI、資料検索、文章添削)
・Microsoft 365でのデータ分析(市場調査、アンケートなど)
・画像生成AIによる画像編集
※Windows 11にAI機能が標準搭載された、オフラインでも高速AI処理が可能な次世代パソコン
【関連リンク】
校務DXとは?全国の取り組み状況から課題と解決策、業務変革のポイントまで解説!
AI時代の専門教育を高度化・高速化する「Copilot+ PC」
まとめ
アドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成は、国内の地域経済の活性化や担い手不足の解消だけでなく、日本経済と社会活動全般を支える重要な取り組みです。その重要な役割を担う学校および教員は、校務DXを通じて積極的にAIを活用し、校務の効率化と教育活動の高度化を両立させながら、AIを活用して課題を解決する力を育める環境を整えていくことが重要です。
SB C&SはCopilot+ PCをはじめとしたAI活用環境の整備を通じて、校務の効率化と創造的な学びを両立させ、次世代の教育現場を強力に支援します。またAI活用方法についてもご提案可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

