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AIは『答え』ではなく『壁打ち相手』。Copilotと進める、失敗を恐れない探究学習の形

生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進化は、子どもたちに求められる資質・能力や学び方にも大きな影響を与えています。特に「探究学習」が重視される中、学校や教員には、児童生徒の学びを充実させるためのICT環境整備やカリキュラム設計、授業計画の策定など、多様な取り組みが求められています。

今回は、探究学習の基本と求められる背景、授業を進めるうえでの課題と解決策、さらに探究学習でAIを活用するアイデアをご紹介します。今後、探究学習をどのように進めていくかを考える際のヒントとしてお役立てください。

目次

探究学習とは

探究学習とは、児童生徒が実社会や実生活から問いを見いだし、自ら課題を設定して、情報を集め、整理・分析し、まとめ・表現する学習活動で、「探究的な学び」とも呼ばれます。
学習指導要領では、小中学校の「総合的な学習の時間」や高等学校の「総合的な探究の時間」を中心に、さまざまな教科・科目において探究的な学びが重視されています。

小学校の学習指導要領における「総合的な学習の時間」では、下記のように定義されています。

各教科等における見方・考え方を総合的に活用して、広範な事象を多様な角度から俯瞰して捉え、実社会・実生活の課題を探究し、自己の生き方を問い続けること。

出典:文部科学省「探究的な学びと総合的な学習の時間(現行の位置づけ)」P14

探究的な学習のプロセスは、次の4段階です。

1.課題の設定
2.情報の収集
3.整理・分析
4.まとめ・表現

一度の活動で完結するのではなく、このサイクルを繰り返しながら、問いや考えを更新し、学びを深めていきます。

探究学習の目的

探究学習の目的は、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を通じて、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することにあります。
児童生徒が実社会や実生活の中から、自ら問いを見いだして課題を設定し、情報を集めて整理・分析し、自分の考えをまとめて表現できるようにすることで、社会のさまざまな課題に向き合う力を育みます。
また、学んだことを自分自身の生活や将来と結びつけ、主体的に社会へ関わろうとする態度を育てることも重要な目的です。

出典:文部科学省「総合的な学習(探究)の時間」
出典:文部科学省「探究的な学びと総合的な学習の時間(現行の位置づけ)」

探究学習が求められる背景

探究学習が日本で求められている背景として、社会の急速な変化があります。
日本でもグローバル化やデジタル化の大きな流れがある中で、ただ単に与えられた問いや仕事を正確に対応するだけでなく、自ら問いや課題を見つけ、解決方法を模索する力が不可欠となっています。

OECD(経済協力開発機構)が実施する国際的な学習到達度調査「PISA」においても、単に知識を覚えるだけでなく、身につけた知識や技能を実生活の課題に活用する力が評価されています。

こうした時代の要請から、従来の「受動型」「暗記型」の学習スタイルだけでは対応できなくなっており、予測困難な変化に対応できる人材を育成するために、探究学習を通じた問題解決力の素地づくりが必要とされています。

さらに高度情報化が進み、AIをはじめとするデジタル技術が身近になる中、児童生徒には情報やICT機器を適切に使いこなし、得られた情報の信頼性を判断しながら、学びや将来の活動に活かす力も求められています。

探究学習の授業の課題と解決策

探究学習の授業の課題と解決策

現在、探究学習は小中高校で実施されていますが、授業の実施方法についてはさまざまな課題があります。主な課題と共に、解決策をご紹介します。

【課題1】児童生徒の主体性を引き出すことが難しい

従来の学習は教科書の内容を理解・暗記する「受動型」が中心であり、インプットがメインでした。一方、探究学習は自ら問いを見つけて探究する「能動型」の学びです。
そのため、多くの児童生徒は主体的に自ら動き、学ぶことに慣れていません。また、従来のテストのように成果が数値で分かりやすく示されないこともあり、児童生徒の授業への積極的な参加を引き出しにくいという課題があります。

解決策1:自分ごと化させる
主体性を引き出すためには、児童生徒がテーマや課題を「自分ごと」として捉えられるようにすることが有効です。
まずは複数の社会課題に触れる機会を設けて興味のきっかけを作り、最終的には一人ひとりの関心に基づいて探究テーマを選べるようにします。
「なぜ自分はこのテーマを探究したいのか」自分自身や身近な人々、地域社会との関わりを意識させることが、主体的な学びへとつながります。

解決策2:オンラインでの情報収集を促す
テーマを定めた後は、パソコンやタブレットなどを活用して情報収集を行わせることで、能動的な第一歩を踏み出しやすくなります。
その際、ネット上の情報を鵜呑みにせず、発信者・公開日・一次資料の有無などを確認させ、複数の情報源を比較させることが重要です。
書籍や統計資料、アンケート、現地調査などを組み合わせることで、探究がより深まります。

【課題2】従来とは異なる指導・評価が求められる

探究学習では、教員が一つの正解を教えるだけではなく、児童生徒の問いや考えを引き出しながら、探究のプロセスを支える役割が求められます。
また、成果だけでなく、課題の設定、情報収集、試行錯誤、他者との協働、振り返りなどの過程も含めて評価する必要があります。時間やリソースの制約がある中で、授業設計や評価方法をどのように整えるかなど最適な授業の方法が模索されています。

解決策1:問いかけと対話で児童生徒の考えを引き出す
探究学習を効果的に進めるには、教員が問いかけや対話を通じて上手に児童生徒の考えを引き出し、探究の過程を支えることが欠かせません。そのためには、教員側も新たな指導スキルを身につける必要があります。特に重要なのは、教員自身が探究的な姿勢を持ち続けられることです。その土台をつくることで、児童生徒の探究する力を引き出し、主体的な学びを支援できるでしょう。

解決策2:評価方法を見直す
従来のテスト手法ではなく、探究学習に最適な評価方法を取り入れることが重要です。成果物などをもとにしたパフォーマンス評価のほか、思考力・判断力・表現力などを複数の評価基準に基づいて総合的に評価する「ルーブリック」も適していると言われています。
最終成果だけでなく、問いの変化、情報の扱い方、他者との協働、振り返りなど、探究のプロセスも含めて総合的に評価することが重要です。

多様の評価方法の例
出典:文部科学省「学習評価に関する資料」

【課題3】体験学習・調査実習・グループワークへの対応

探究学習では、教室の中にとどまらず、地域社会や企業、大学、遠隔地の有識者などとの交流を通じて、児童生徒の視野を広げ、社会の一員としての意識を培うことが重要です。
一方で、外部人材との調整、移動時間、実施場所の確保などが必要になるため、体験学習や調査実習、学校外との協働をどのように実現するかが課題になる場合があります。

解決策:遠隔システムを通じて外部と連携する
Web会議システムなどの遠隔授業が可能なツールを用いて、教室と遠隔地をつなぎ、外部の有識者や他校と共に授業を進めることが有効です。
現地へ移動が難しい場合でも、講義、インタビュー、意見交換、成果発表などを実施でき、多様な知識や価値観に触れる機会を拡大できます。

【課題4】時間的制約・教員の負担増

授業時間が限られる中で、「1.課題の設定 → 2.情報の収集 → 3.整理・分析 → 4.まとめ・表現」のすべてのプロセスを実施するには時間不足で、十分な探究活動や振り返りの時間を確保することが難しい場合があります。また、教員の授業準備やカリキュラム作成による負担の増加も懸念されています。

解決策1:ICTを効果的に活用する
遠隔授業を活用すれば、現地に足を運ばなくても、外部の専門家や他校と連携できます。
また、児童生徒が使用する端末に、共同編集、情報整理、アンケート、プレゼンテーション作成などのツールを導入することで、情報の共有や進捗確認を効率化できます。
生成AIも、授業計画や教材のたたき台の作成、発問例の検討、情報整理などに活用することで、教員の授業準備を支援する手段になります。ただし、生成された内容は教員自身が確認し、学習目的や児童生徒の発達段階に合わせて調整することが必要です。

解決策2:教員同士の横のつながりを持つ
実践例だけでなく、うまくいかなかった点や改善方法も校内外の教員同士で共有することで、授業設計の質を高められます。
教材、評価基準、外部連携先などを共有し、学校や教員ごとに一から準備する負担を減らすことも重要です。

探究学習にAIを活用するアイデア

探究学習にAIを活用するアイデア

先述の通り、探究学習の数ある課題を解決するには、ICTを活用することが重要です。特に、進化がめざましいAIは有効な手段になってきています。そこで、探究学習へのAIの必要性と活用アイデアをご紹介します。

なぜ探究学習にAIを活用するのか

探究学習では、AIを「答えを教える存在」ではなく、自分の考えを整理したり、新たな視点を得たりするための「壁打ち相手」として活用することが重要です。
AIとの対話を通じて思考を深めることで、より主体的な学びにつながります。

・ICT環境整備と先端技術の活用可能性
すでにAIは私たちの身の回りに必要不可欠な存在となっており、教育現場でも活用が進んでいます。これからの子どもたちにとってAIを活用しながら思考・学習する力自体が、将来身につけるべき重要なスキルとなっています。

・探究学習との親和性の高さ
特に生成AIは、一人ひとりの問いや興味、探究の進捗に応じて対話できるため、児童生徒の思考を広げたり、深めたりする手段として、探究学習と高い親和性があります。

探究学習へのAI活用アイデア例

探究学習へのAI活用方法として、次のような例があります。

・アイデア出しと情報収集
生成AIに、テーマに関する複数の切り口、仮説、検索キーワード、調査方法などを提案してもらうことで、問いや課題を検討する材料を増やせます。
ただし、AIの回答自体を情報源にするのではなく、提示されたキーワードをもとに公的機関の資料や統計、書籍などを調べ、内容を確認することが重要です。

・思考を深める「壁打ち」
自分の意見をAIに入力し、「別の視点からの反対意見はあるか?」「この仮説の弱点は何か?」などと対話することで、論理や思考を深めます。対話を通して、問いや課題に関する自身の考えを深め、自分だけでは気づかなかった視点を得られます。

・資料作成の効率化
生成AIは、文章の要約、構成案の作成、表現の言い換え、画像生成などを通じて、レポートやプレゼンテーション資料の作成を支援できます。
AIにすべてを作らせるのではなく、児童生徒自身が内容を確認し、自分の考えや根拠が伝わる形に修正することが重要です。

・レポートや成果物のフィードバック
レポートや成果物について、生成AIから「論理が分かりにくい箇所」「根拠が不足している点」「想定される反論」などを挙げてもらうことで、改善のきっかけを得られます。
ただし、AIの評価は客観的な正解ではなく、あくまで一つの参考意見です。教員や他の児童生徒からのフィードバックと組み合わせて活用することが大切です。

Microsoftが提供する「Microsoft 365 Copilot Chat」や「Microsoft 365 Copilot」は利便性が高く、アイデア出しや壁打ち、情報整理、資料作成など、探究学習におけるAI活用を幅広く支援します。
Microsoft 365 Copilotでは、Word、PowerPoint、TeamsなどのMicrosoft 365アプリ上で、文章や資料の作成、要約、情報整理などを支援できます。

生成AIを活用する際の留意点

生成AIの回答には、事実と異なる内容や偏った情報が含まれる場合があります。そのため、出力された内容をそのまま正解や出典として扱わず、公的機関の資料や一次情報などで確認することが必要です。
また、氏名、成績、健康情報などの個人情報や、学校内の機密情報を入力しないこと、著作権や利用規約に配慮することも重要です。
学校で利用する場合は、児童生徒の発達段階や情報活用能力を踏まえ、学校・教育委員会の方針やルールに沿って活用しましょう。

出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」

まとめ

探究学習は、グローバル化や社会の急速な変化、AIをはじめとするデジタル技術の進展などを背景に、これまで以上に重視されています。
特にAIは、答えをそのまま受け取るためのものではなく、児童生徒や教員が考えを整理し、別の視点を得て、思考を深めるための「壁打ち相手」として活用することが重要です。
AIとの対話を通じて仮説を立て、試し、振り返り、修正することで、失敗を恐れずに探究を続けられる学習環境をつくることができます。

一方、探究学習でAIを効果的かつ安全に活用するためには、適切な端末やネットワーク、ライセンス、セキュリティ、運用ルールを含むICT環境の整備が欠かせません。
SB C&Sでは、Copilot+ PCなどのAI活用に適した端末とMicrosoft 365を組み合わせ、教員の授業準備や児童生徒の探究活動を支えるICT環境の整備をご支援しています。
授業計画や資料の作成、アイデア出し、情報整理などにCopilotを活用することで、教員の準備負担を軽減しながら、児童生徒が考え、試行錯誤する時間を確保しやすくなります。

端末の選定からライセンス、セキュリティ、導入後の運用まで、学校や自治体の方針に応じた構成をご提案します。探究学習におけるAI活用をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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