株式会社クレオ(以下、「クレオ」)は、人事給与や会計のシステムを開発・販売するシステムベンダーです。同社の「ZeeM(ジーム)シリーズ」は1993年にリリースされて以降2,000社以上の導入実績を誇ります。
教員や職員数が合わせて約6,000人に上る東京慈恵会医科大学(以下、「慈恵医大」)が、オンプレで稼働していたZeeMを「ZeeM on Azure」に移行することを決定したのが、今から約1年前でした。人事給与システムのクラウドシフトを決断した背景には、オンプレの環境ならではのシステム運用課題を抱えていました。
その課題の1つ目は、サーバーに契約の更新時期が迫っていたこと。2つ目は、クライアントのデータベースがOffice 2010(Access)であり、サポートが切れてしまうこと。そして3つ目は、増加するサーバー管理業務の負荷です。慈恵医大では、人事や給与情報、マイナンバーといった個人情報の取り扱いを厳格にする為に、人事業務に関するシステムに関しては、サーバーの管理もIT部門ではなく人事部門が行っていました。
さらに、人事給与システムの周囲には、Accessを利用した勤怠管理や私学共済などのサブシステムも多数存在しており、これがクラウドシフトにあたり大きな障壁として立ちはだかっていました。
2020年のWindows 7のサポート終了(*)にあわせて、セキュリティの観点からWindows 10にアップグレードする必要がありましたが、サブシステムのほとんどがOffice2010(Access)で構築されており、アップグレードによって、MDB(Accessのデータベース)が正常に使えなくなることが懸念されていました。このMDBは、慈恵医大の160以上のユーザーに配布されており、もし不具合があれば、改修にかかる時間は膨大になり、業務への影響は計り知れません。
また、情報システム部門のように、システム全体を俯瞰した管理ができていなかったため、
一部のサブシステムを変更しただけでも、システム全体に大きな影響を及ぼす危険性もあります。これらの問題を回避するため、クレオでは、前例のないユニークな手法で慈恵医大のクラウドシフトに臨みました。
一旦、Azureのクラウド上にサブシステムを含め、既存の環境をそっくりそのまま作ってしまい、Azureに移行した後に、クラウド上で試行錯誤しながら、業務効率化やシステム運用の最適解を探っていくという手法がそれです。
*2020年1月14日にWindows 7のサポートは終了いたしました。