コラム

サンドボックスとは?
仕組み、メリット、導入課題を徹底解説

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セキュリティや開発の現場ではサンドボックスが重要な役割を果たしており、技術者や企業にとって欠かせないツールとなっています。悪意あるコードの隔離や、安全なテスト環境の構築など、その活用範囲は多岐にわたります。

この記事では、サンドボックスの基本的な仕組みから活用方法、導入時の注意点まで詳しく解説します。セキュリティの観点からどのように役立つのか、企業や開発者がサンドボックスを導入するメリットについても触れていきます。

サンドボックスとは?セキュリティにおける意味と役割

サンドボックスとは、外部からの脅威や不正な動作を防ぐために使われる「仮想の安全な箱」です。セキュリティ分野では、未知のプログラムを安全に検証するための重要な仕組みであり、標的型攻撃の有効な対策手法として広く活用されています。

サンドボックス(sandbox)とは

サンドボックスとは、ウイルスやランサムウェアなどの悪質なマルウェアを隔離する仮想環境です。サンドボックスには不明なプログラムを安全に実行・分析する技術が備わっており、隔離された仮想環境内で、プログラムの動作をチェックできます。

「砂場(sandbox)」という意味があるサンドボックスは「公園の砂場のような、保護者や地域住民に見守られて子どもたちが安全に遊べる場所」に由来して名づけられました。セキュリティにおけるサンドボックスは、自由に実験や試行錯誤を行うための重要な場所となります。

導入される代表的な利用シーン

サンドボックスの主な利用シーンは、以下のとおりです。

  • メール添付ファイルの検証
  • ブラウザ実行時の安全確認
  • プラグインや拡張機能の安全確認
  • マルウェアの挙動解析
  • セキュリティパッチ適用前の動作確認
  • 外部提供プログラムの動作チェック
  • 開発中のソフトウェアの動作検証

サンドボックスの仕組み

サンドボックスは以下の手順で機能します。

1 隔離された仮想環境を構築 通常のOSとは別に、仮想マシンやコンテナ上に安全な実行環境を作ります。
2 ファイルやコードを実行 メールの添付ファイルやWebからダウンロードしたプログラムなど、信頼性が不明なものを仮想環境内で実行します。
3 動作を監視・分析 通信の発生・ファイルの改ざん・レジストリの変更・プロセスの生成など、不審な動作がないかをリアルタイムでチェックします。
4 結果を元に判定 悪意のある動作が検出された場合はマルウェアやウイルスと判定され、本番環境への影響を防ぎます。

サンドボックス導入のメリットと注意点

サンドボックスは導入しやすく、セキュリティ対策に取り入れやすいツールです。ここでは、主なメリットと、導入時の注意点を解説します。

未知マルウェアへの強力な検出能力

従来の対策では見逃されがちな新種のマルウェアに対しても、サンドボックスは有効です。

既知のマルウェアは特徴的なパターンや動作から検出できますが、未知のものは判別が難しい傾向があります。サンドボックスはファイルを仮想環境で実行し、その挙動から悪意の有無を判断するため、未知のマルウェアやゼロデイ攻撃にも対応可能です。

本番環境を守りながら検証できる

仮想環境内でプログラムを動かすサンドボックスは、悪質な動作や、感染の兆候を検出できます。問題があれば本番環境への影響を遮断できるため、感染リスクを最小限に抑えられるでしょう。

大規模なネットワークやクラウドサービスを運用する企業にとって、サンドボックスは全体への感染を防ぐ有効な手段となります。

巧妙化する回避型マルウェアへの対応課題

サンドボックスを対策してすり抜ける「回避型マルウェア」には注意が必要です。

回避型マルウェアは仮想環境では無害を装い、実際の端末上でのみ悪意ある動作を行います。このような巧妙なマルウェアに対しては、サンドボックスが無力になる場合もあるでしょう。

運用面での限界と導入時の注意点

サンドボックスで複雑または大容量のファイルを分析する際、処理に時間がかかることがあります。この遅延が業務やリアルタイム対応に支障をきたす恐れがあります。

また、無害なプログラムが誤ってマルウェアと判定される「誤検知」が起こる可能性もあるため、精度の調整が必要です。

さらに、サンドボックスの導入には一定のコストがかかります。大量のファイルを処理するにはサーバーやストレージの拡張が求められ、それに伴ってコストも増加します。たとえばスケールアップする場合、インフラ整備やシステム調整が必要となり、高額な投資につながるケースも少なくありません。

サンドボックスを効果的に使うためのポイント

サンドボックスを効果的に使うためのポイントを、以下3つの観点から紹介します。

  • 多層防御との併用が重要
  • 運用体制の整備とチューニング
  • クラウド型とオンプレ型の選び方

多層防御との併用が重要

多層防御とは、1つの対策に頼るのではなく、複数のセキュリティ施策を組み合わせて防御を強化する手法のことです。サンドボックスは有効な対策の1つですが、サイバー攻撃を完全に防ぐことはできないため、EDR(Endpoint Detection and Response)やウイルス対策ソフトなど、他のセキュリティと組み合わせて運用することが重要です。

多層防御は、以下に挙げる3つの層で構成されています。

1.入口対策

外部からの不正アクセスやマルウェアの侵入を防ぐための対策です。ファイアウォールやメールフィルタ、アンチウイルスなどが該当します。

2.内部対策

万が一侵入された場合に備え、社内ネットワーク内での不正な行動を検知・制限する対策です。アクセス制御や端末管理などが含まれます。

3.出口対策

情報漏洩や不正通信を防ぐため、社外への通信を監視・制御する対策です。プロキシやデータ漏洩防止(DLP)などが用いられます。

運用体制の整備とチューニング

サンドボックスは、導入しただけで効果を発揮するものではありません。検知ルールの最適化、ログの定期分析、誤検知や過検知への対応など、日々の運用を通じて改善を重ねる必要があります。

たとえば業務に合った検知ルールの調整やアラートの取捨選択が不十分なままでは、重要な脅威を見落としたり、担当者の負荷が増加したりする恐れがあります。

運用の見直しと体制づくりを継続して、サンドボックスの能力を十分に引き出し、組織全体のセキュリティレベルを向上させましょう。

クラウド型とオンプレ型の選び方

サンドボックスには「クラウド型」と「オンプレ型」の2種類があります。どちらの形態が適切なのか、企業に合わせた選定を行う必要があります。

クラウド型 オンプレ型
特徴 ・インターネット上のサーバー(クラウド)で動作する
・インターネット経由でファイルを送信し、クラウド側で解析する
・自社や組織の内部サーバーにソフトウェアをインストールする
・インターネットを介さず自社内のシステムだけで解析する
コスト サブスクリプション型で比較的安価だが、運用規模が大きいほど高額になる 初期費用や運用費用など、かかるコストは高い
拡張性 ユーザーや処理能力の追加が簡単に行える 追加リソースが必要な場合に増設が必要になるなど、柔軟性に欠ける
機密性 外部にファイルを送ることになるため、機密性の高いデータには不向き 社内ネットワーク内で完結するため、機密性が高い
メリット ・導入~運用がしやすい
・自動アップデートのため、最新のマルウェアのデータが反映されやすい
・外部にファイルを出さないため、高いセキュリティを保つことができる
・オフラインでも動作可能
デメリット インターネット接続が必須になる 自社でアップデートなどの管理が必要になる

総合セキュリティ対策なら
パロアルトネットワークス

企業を取り巻くサイバー脅威は、日増しに巧妙化しています。そのため、サンドボックス単体ですべての脅威に対応することは困難です。巧妙化するサイバー攻撃などの脅威から企業を守るためには、適切なファイアウォールの導入や、必要に応じた他の技術との組み合わせによる運用など、しっかりとしたセキュリティ対策が必要です。

パロアルトネットワークスは、世界中の多様な組織のサイバーセキュリティパートナーとして信頼と実績を重ねています。アプリケーション識別、ユーザー制御、脅威防御を統合し、ゼロトラストを実現します。

総合セキュリティ対策を検討中の企業様は、ぜひパロアルトネットワークスまでお気軽にご相談ください。

まとめ

マルウェアや標的型攻撃の脅威が増大する中、サンドボックスはこれらの攻撃を効果的に検知・防御する手段として、ますます重要になってきます。市場も拡大傾向にあり、今後もサイバーセキュリティの中核を担ってくれるでしょう。

この記事の執筆者

写真:石塚ちひろ

SB C&S株式会社
ICT事業部
ネットワーク&セキュリティ推進本部
石塚ちひろ

写真:野口 綾香

SB C&S株式会社
ICT事業部
ネットワーク&セキュリティ推進本部
野口 綾香

サイバーセキュリティのマーケティングを担当。
初心者の方にも理解しやすく、役立つ報を発信することを大切にしています。

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