コラム

EDRとは?
サイバー攻撃からの防御の最前線を解説!

EDRとは?サイバー攻撃からの防御の最前線を解説!

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サイバー攻撃の手口が巧妙化した近年では、従来のアンチウイルスではウイルスを検知しきれないケースも増えています。高度な攻撃にも対応したセキュリティ対策は、企業の安全を守る上で必要不可欠です。

セキュリティ対策として昨今注目されている仕組みに、「EDR」があります。

本記事では、EDRが必要とされる理由や導入する具体的なメリット、選定のポイントなどを多角的に解説します。

EDRの基本知識、その概要と重要性

まず、EDRの概要や必要とされる背景について、基本的な情報を整理しましょう。

EDRとは?サイバー攻撃を検知するしくみ

EDRは、「Endpoint Detection and Response」の略称です。EDRはPCやサーバーなどのエンドポイント上で発生する挙動を継続的に監視し、不審な動きを検知・分析・対応する仕組みです。既に端末に侵入したマルウェアや内部不正行為の兆候を早期に検出し、被害の最小化につなげます。

サイバーセキュリティ対策は、未然に侵入を防ぐ防御だけで十分とはいえません。脅威の侵入を素早く検知し対応できる、EDRのような対策も必要不可欠です。

なぜEDRが必要なのか?

EDRが求められる背景には、サイバー攻撃の高度化が大きく関係しています。

警視庁サイバー警察局が発表した「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、令和6年におけるサイバー犯罪の検挙件数は13,164件でした。令和元年は9,519件であり、大幅に増加していることが読み取れる結果です。加えて、ウイルス対策ソフトを導入している企業や団体のうち、約3割からウイルスが検出されており、侵入後の対策の必要性が高まっています。

EDRとEPP、NGAVとの違い

エンドポイントのセキュリティ対策には、EDR以外にも「EPP」や「NGAV」があります。それぞれの特徴や違いを確認しましょう。

EPPとは?

EPPは、「Endpoint Protection Platform」の略称です。この技術は、エンドポイントに侵入しようとする脅威や攻撃を未然に防ぐことに特化しています。EPPでエンドポイントを常に監視し、EPPで防止できなかった攻撃や脅威をEDRで事後対策するという流れが一般的です。

NGAVとは?

NGAV(Next Generation Antivirus)は、機械学習やAIなどを活用して既知・未知のマルウェアを高精度で検知・ブロックする、次世代型のウイルス対策機能です。一方、EDRは脅威の侵入後を前提に、その後の挙動分析・封じ込め・復旧に特化しています。近年ではNGAVとEDRを統合した製品も登場しており、XDR(Extended Detection and Response)と呼ばれる包括的な対策への進化も進んでいます。

NGAVとEDRは、対応範囲が大きく異なります。主にエンドポイントに入る前の脅威検知を行うNGAVに対し、EDRはエンドポイント全体が対応範囲です。NGAVは脅威の侵入を未然に防ぐことに優れ、EDRは脅威の侵入後の対応に優れているといえるでしょう。

EDRの主な機能

エンドポイントの脅威対策に特化しているEDRには、主に以下3つの機能を備えています。

  • ユーザーやプロセスの挙動の可視化
  • ログデータの保存
  • 攻撃検出時のブロック・削除

ユーザーやプロセスの挙動の可視化

EDRには、エンドポイント上でのプロセス実行やユーザーの操作を時系列で可視化する機能があります。「どのユーザーが、どのプロセスを、いつ、どのファイルに対して操作したか」といった情報を、具体的かつリアルタイムで収集・分析できる点が特徴です。

ログデータの保存

エンドポイントで起こるさまざまなログデータは、長期的に保存できます。ログデータは過去に発生したセキュリティインシデントの調査や分析ができるため、セキュリティ対策の改善にも役立つ情報です。EDRのログ収集・データ保存は、以下のように細かく取得できます。

  • セキュリティイベント
  • システムイベント
  • ファイル作成・変更・削除
  • ユーザのログオン・ログオフ情報
  • ディスク上での読み書き操作
  • プロセスの実行・停止
  • アクティビティ
  • レジストリの変更
  • コマンドプロンプトの実行内容

攻撃検出時のブロック・削除

多くのEDR製品では、検知した脅威を管理者が確認し、必要に応じて感染端末のネットワークからの隔離や、関連プロセスの停止・ファイル削除などの対応が可能です。自動応答機能を有する製品もありますが、誤検知時の影響を考慮して、手動対応や事前のポリシー設計が重要です。

EDR導入のメリット

ここでは、EDRの導入によるメリットを以下4点から紹介します。

  • 早期の脅威検出
  • 高度な脅威への対策
  • リアルタイム監視
  • リモート環境への適応

早期の脅威検出

EDR最大の強みは、エンドポイントにおける攻撃や脅威の早期検出能力です。未知のマルウェアや高度な脅威をリアルタイムで監視し、インシデントになる可能性のある挙動をいち早く検知・分析し、迅速に原因を究明できます。早期の脅威検出は、被害を最小限に抑えるために不可欠な対策です。

高度な脅威への対策

EDRは、高度な脅威への対策に特化しているセキュリティ対策です。従来のシグネチャベースのアンチウイルス製品や基本的なセキュリティ対策では検知できない高度な攻撃にも対応できます。例えば、以下のような攻撃が挙げられます。

攻撃内容
ゼロデイ攻撃 未知のセキュリティ上の欠陥や弱点を悪用し、脆弱性が解決される前に不正アクセスやマルウェア感染を仕掛けるサイバー攻撃
APT攻撃 特定の組織や個人を狙って、長期的に攻撃する標的型サイバー攻撃
ランサムウェア 感染したファイルやシステムを暗号化することで利用不可能な状態にした上で、ファイルやシステムを元に戻すことと引き換えに金銭を要求するマルウェア
ファイルレス攻撃 ファイルを使用せずにメモリ上で直接マルウェアを実行するサイバー攻撃
サプライチェーン攻撃 組織の取引先などのサプライヤーを介して標的組織に侵入するサイバー攻撃

リアルタイム監視

エンドポイントの挙動をリアルタイムで監視し、インシデントを早期に検知できる点も、EDRのメリットです。EDRはエンドポイント上の挙動を継続的に監視できるため、マルウェア感染の兆候だけでなく、業務外ソフトの不審な実行やルールに反する操作の兆候も把握できます。EDRの導入は、エンドポイントに強力な監視カメラと警備員を設置するようなものであり、企業に欠かせないセキュリティ対策だといえるでしょう。

ただし、従業員の行動を監視する運用には、労務・法務部門との事前連携や就業規則の整備が必要です。

リモート環境への適応

コロナ禍以降のリモートワークやテレワークの普及に伴い、従業員が社外から社内ネットワークにアクセスする機会も増加しています。リモート環境では脆弱性が増すため、増大するセキュリティリスクへの対処が必要です。この点においても、EDRであればリモート環境にあるエンドポイントを監視できるため、社内と同レベルのセキュリティ対策を実現できます。

EDR選定の際のポイント

最後に、EDRを選定する際のポイントを詳しく解説します。

攻撃手法に対する検知力

まず、さまざまな攻撃手法に対する検知力が選定の際の比較ポイントとなります。既知のマルウェアだけでなく、未知のマルウェアやファイルレス攻撃、ゼロデイ攻撃、ランサムウェアなど、高度な攻撃にも対応できるか確認しなければなりません。攻撃手法は日々進化しているため、複雑化する攻撃に対応できるような最新技術や定期的なアップデートがあるかをチェックしましょう。

防御機能の有無

検知した脅威を自動的にブロックしたり、隔離したりする「防御機能」も重要です。例えば、マルウェアの実行阻止や感染ファイルの削除、悪意あるプロセスの停止、ネットワークからの解離、レジストリの変更などが必要な防御機能として挙げられます。導入前に、どんな機能があるか確認しましょう。

グローバルな脅威への対応力

セキュリティ対策においては、グローバルな脅威への対応も必要です。サイバー攻撃は国境を越えるケースもあるため、世界の脅威情報(脅威インテリジェンス)を収集・分析し、検知技術を向上させなければなりません。脅威インテリジェンスの質と対応の迅速性が、未知の攻撃に対する防御力を高めます。

リスクスコア定量化

EDRは膨大な数のアラートを検知するため、企業のセキュリティ担当者はどのアラートから対応すべきか、優先順位を判断する必要があります。そこで、検知した脅威の危険度を数値化・可視化する「リスクスコアリング機能」の活用がおすすめです。リスクスコアリングでは、アラートの深刻度、対象となるシステムやデータの重要度、攻撃成功の可能性などを数値化し、優先的に対処すべき脅威を明確にします。対応の効率化と、インシデント対応の迅速化に貢献します。

他ツールとの連携

EDRは単体でも強力なセキュリティ対策になりますが、ほかのセキュリティ対策ツールを連携させることで、その効果を最大化できます。例えばSIEM(Security Information and Event Management)と連携すれば、EDRで収集したログを他のセキュリティイベントと突き合わせて相関分析が可能です。さらにSOAR(Security Orchestration, Automation and Response)と組み合わせることで、検知後の対応を自動化し、SOC(セキュリティ運用センター)の負担を軽減する効果も期待できます。

将来的なセキュリティ体制の拡張性も考慮し、企業に必要なツールの導入を検討すると良いでしょう。

サポート体制

EDRの運用には、検知されたアラートが本当に脅威なのかなどについて判断する、専門的な知識が求められます。そのため、導入するEDRツールのサポート体制は非常に重要です。「インシデント発生時の迅速な対応ができるか」「サポート体制は24時間365日対応か」「セキュリティに関する専門的知識を持っている担当者が在籍しているか」など、細かく確認しておきましょう。

導入コスト

EDRの導入コストは、ライセンスの数や導入期間、導入規模、クラウド型・オンプレミス型などで異なります。加えて、EDRにはログを常に監視する「管理サーバー」が必要です。管理サーバーをクラウドで管理するか自社サーバーで管理するかによっても、費用が大きく異なります。

また、導入コスト以外にもインフラの整備費用や運用コスト、保守費用、追加機能の料金、サポート費用、セキュリティにかかる人件費などが発生します。長期的な運用を見据えて、総合的にコストを比較し、導入を検討しましょう。無料トライアルやテスト運用を活用し、実際の使用感や自社システムと連携のしやすさを確認することも大切です。

総合セキュリティ対策なら
パロアルトネットワークス

「自社にEDRを導入すべきか」「どんな製品にしたら良いのか」

そういった悩みを抱えている企業様は多いかもしれません。エンドポイントに適切なセキュリティ対策を導入するためにも、経験豊富なベンダーにぜひ一度ご相談ください。

パロアルトネットワークスは、世界中の多様な組織のサイバーセキュリティパートナーとして実績と信頼を重ねている組織です。企業様の導入規模や要望、コストに応じて最適なご提案をいたします。以下のリンクから、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

本記事では、EDRの必要性を詳しく解説しました。巧妙化・グローバル化しているサイバー攻撃は、適切に対処しなければ企業の安全を揺るがす危険性があります。EDRは、常にエンドポイントを監視し、異常をいち早く検知し対処できるセキュリティソリューションです。企業のセキュリティを守る強固な監視カメラ・警備員となってくれます。EDRは単体でも強力なセキュリティ対策ですが、他の検知・防御機構と連携して初めて、全体としての高い防御力を発揮します。

企業に必要な機能を洗い出し、最適なセキュリティシステムを導入しましょう。

この記事の執筆者

写真:石塚ちひろ

SB C&S株式会社
ICT事業部
ネットワーク&セキュリティ推進本部
石塚ちひろ

写真:野口 綾香

SB C&S株式会社
ICT事業部
ネットワーク&セキュリティ推進本部
野口 綾香

サイバーセキュリティのマーケティングを担当。
初心者の方にも理解しやすく、役立つ報を発信することを大切にしています。

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