コラム
フィルタリングとは?
Web上のリスクを防ぐ方法と、
メリットとデメリットを解説

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フィルタリングは、インターネット上の許可されていない通信をブロックする仕組みです。インターネットが発展し、いろいろな情報を調べられる一方で、業務に無関係なSNSや動画サイト、不審な外部リンクなどに起因する情報漏えいやマルウェア感染など、企業にとってのリスクは多岐にわたります。フィルタリングは、業務外サイトへのアクセス制限や、サイバー攻撃の入口を未然に遮断するための有効な手段です。
本記事では、フィルタリングの概要やフィルタリングをしないリスクだけでなく、フィルタリングの種類や企業による運用方法などについても解説します。
フィルタリングとは
フィルタリングは直訳すると「濾過」や「選別」を意味する言葉です。IT業界で用いられるフィルタリングも、同じような意味で使われます。フィルタリングの定義や実態を見ていきましょう。
フィルタリングの定義や実態、法的義務
IT業界で用いられるフィルタリングは、通信を選別する仕組みです。非許可の通信をブロックするなど、ユーザーのwebサイトの閲覧に制限を加えます。
総務省の公開した資料によると、以下のように定義されています。
総務省が示す「フィルタリング」の定義は、あくまで青少年の保護を目的とした消費者向けサービスに焦点を当てています。
一方で、企業が導入するフィルタリングは、従業員による業務外利用の抑制や、マルウェア感染・情報漏えい対策といったセキュリティ強化が目的です。用途・対象は異なりますが、インターネット利用のリスクを軽減するという点で共通しています。
マルウェアの一種であるランサムウェアの被害は令和6年で222件、フィッシングの報告は約171万件にのぼることが、警視庁の公開した資料で明らかになりました。
個人情報や機密情報が漏えいすると、大企業でも信頼回復は困難な時代です。フィルタリングはセキュリティ対策のうえで重要な仕組みですが、脅威を未然に防ぐ役割であるため、効果を実感しにくいという現状があります。
企業にはフィルタリング導入の法的義務はありませんが、サイバー攻撃のリスクが高まる現在、実質的には不可欠な対策となりつつあります。特に従業員数が100名を超えるような組織では、業務統制やインシデント対応の観点からも導入が強く推奨されます。
フィルタリングをしないと情報漏えいリスクが高まる
インターネット上には、マルウェアやフィッシングサイトといった、アクセスするだけで情報漏えいにつながるサイトも存在します。サイトの見た目では判断できず、気を付けるだけでは避けられません。
また、誰でも容易に投稿できるSNSにも、個人情報の漏えいリスクがあります。企業の公式アカウントなども従業員が簡単に投稿できてしまうため、潜在的にリスクを含んでいる環境だといえるでしょう。
フィルタリングのメリット
フィルタリングの利用には、主に3つのメリットがあります。
不適切なコンテンツへのアクセス制限
フィルタリングにより、不適切・違法なサイト、悪意のあるサイトをブロックできます。加えて、ワンクリック詐欺やバックドア、マルウェアによる被害の回避にも役立ちます。
企業や団体の業務効率化と内部統制の強化
従業員の業務に関係のないサイトへのアクセス防止にも、フィルタリングが効果的です。もちろん個々の仕事に対する意識も重要ですが、環境を整えるという意味で、フィルタリングは活躍します。
セキュリティ強化でマルウェアやフィッシングサイトをブロック
フィルタリングにより、マルウェアの感染防止やフィッシング詐欺の防止が可能です。また、ゼロデイ脅威への対応、最新の脅威情報を活用し、まだ完全に知られていないリスクにも対応しなければなりません。
フィルタリング機能であれば、アップデートだけで対応できます。情報漏えいを完璧に防げるわけではありませんが、ゼロに近い運用ができるため、安心してウェブサイトを閲覧できます。
フィルタリングのデメリット
インターネットの健全性を保つうえで有効なフィルタリングですが、デメリットもあります。
過度なフィルタリングによる業務効率の低下
過度なフィルタリングは検索の誤検知を増やすリスクがあります。これにより得られる情報精度が落ちるほか、必要なWebサイトが見られないケースも考えられるでしょう。
管理責任者の業務が煩雑化
フィルタリングを行うとセキュリティ担当者の業務量が増え、複雑化します。URLフィルタリングだけではなく、膨大なWebサイトに対しての設定と管理が必要です。
AIを導入する方法もありますが、セキュリティ担当者の知識を得るまでの学習コストがかかる場合もあります。
フィルタリングの種類
フィルタリングには種類があり、ページ単位、カテゴリー単位、DNSレベル、アプリケーションでそれぞれブロックできます。
URLフィルタリング
URLのページ単位でアクセスを制限する方法で、以下の2種類があります。
- ブラックリスト:
ブロックするサイトをURL単位で指定する
例えば、exampleA.comを指定すれば、それ以外はアクセスが可能です。 - ホワイトリスト:
ブロックしないサイトをURL単位で指定する
exampleA.comと指定したら、exampleA.comしかアクセスできません。
カテゴリーフィルタリング
Webサイトのカテゴリー単位で制限する方法です。例えば、ギャンブルと指定すれば、ギャンブル関連のサイトにはアクセス不可になります。
- exampleA.com(ジャンル:ギャンブル)
- exampleB.com(ジャンル:ギャンブル)
- exampleC.com(ジャンル:SNS)
上記でいえば、exampleA.comとexampleB.comにはアクセスできず、exampleC.comにはアクセスが可能です。
URLフィルタリングとは違ってURL単位で指定する必要がなく、手間がかかりません。しかし、カテゴリー分けはベンダー独自のため、ベンダーによって精度が左右されます。
DNSフィルタリング
DNSフィルタリングでは、example.com のようなドメイン単位でブロックを行います。ドメイン名をブロックすると、そのドメイン配下のすべてのページ(例:example.com/page1、example.com/home など)へのアクセスも同時に遮断されます。個別のパス単位での制御は行えませんが、ドメイン単位の制御で十分に広範囲なブロックが可能です。
アプリケーションフィルタリング
Facebook、YouTubeなどのアプリ単位でのアクセス制御が可能です。
企業によるフィルタリングの運用方法とは
企業がフィルタリングを導入すると、インターネットのアクセス制限による安全利用の促進が可能です。ほかにも、以下のような使い方があります。
内部と外部のフィルタリング
先述したメリットでは、内部から外部(インターネット)へのフィルタリングについて触れましたが、外部から内部へのアクセスにもフィルタリングは有効です。
フィルタリングによって、悪意のある第三者による外部からの不正アクセスも遮断できます。企業のフィルタリングは、外からのサイバー攻撃対策と内部の不正行為対策の双方向に効果のある施策です。
内部の不注意な行動をシステムで補う
内部の人間が不適切な行動を取るリスクはゼロではありません。また、当事者が気づいていないだけで、情報が漏れているケースも考えられます。
従業員へのセキュリティ教育はもちろん大切ですが、セキュリティに対する意識が高くても、気を付けるだけでは限界があります。
フィルタリングの導入は、こうした内部の不注意な行動をシステムで補ううえでも有効です。
外部からの攻撃をシステムで弾く
外部から企業へのサイバー攻撃を遮断できる点も、フィルタリングのメリットです。
偽装メールを介したフィッシングサイトへの誘導、改ざんされたWebサイトを介したマルウェア感染など、企業にとっての脅威はさまざまです。
これらの危険なサイトの判断は、フィルタリング設定で一斉対策しましょう。仮に偽装メールのURLをクリックしても、アラートが知らせてくれます。
企業内でWeb利用状況の把握
フィルタリングには、ユーザーのアクセスを監視する側面もあります。トラブル発生時にアクセスログを追い、原因追求がしやすくなるでしょう。
トラブル発生前段階のインシデントを把握、リスクをデータ化して共有できるので、内部からの危険アクセスの減少、外部危険サイトの除外ができます。
フィルタリング導入のポイント
フィルタリングには、大きく分けて以下の2種類があります。
- プロキシサーバ型:
Web閲覧をプロキシサーバに集約させてフィルタリング処理(中央で一括処理に近い) - クライアント制御型:
従業員の使用する端末にフィルタリングを行うソフトをインストール(個々の端末で処理)
一般的に、企業規模が大きくなるほど、全社一括で管理できるプロキシサーバ型が適しています。方、従業員が少なく物理拠点が分散している場合は、端末に直接ソフトを導入するクライアント制御型が効果的です。
また、フィルタリング設定は1回で終わるものではありません。定期的・継続的に管理が必要なため、操作性に優れたUI(ユーザーインターフェース)を選択しましょう。
操作しやすいUIは管理の効率を上げ、業務の属人性を防ぐうえでも役立ちます。
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2015年には632億だったサイバー攻撃のパケット数が、2023年には6000億パケットを超え、およそ10倍にまで増加しています(総務省の資料より)。また、サイバー攻撃の手法は日々進化しており、未知の脅威にも対応しなければなりません。
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まとめ
フィルタリングは、インターネット上の特定のWebサイトやサービスへのアクセスを制限する仕組みです。主に「URLフィルタリング」「DNSフィルタリング」「アプリケーション制御」などの手法が用いられ、業務に不要・不適切なWebサイトや不審な通信をブロックします。
サイバー攻撃は外部からとは限らず、内部にいる場合もあります。企業を運営するうえでのリスクを減らすためにも、未導入の企業様はぜひ検討してはいかがでしょうか。