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セキュリティホールとは?
発生要因や発見の仕方、対策方法を解説

セキュリティホールとは?発生要因や発見の仕方、対策方法を解説

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セキュリティ対策について情報収集していると「セキュリティホール」という言葉を目にするのではないでしょうか。このセキュリティホールを放置すると、システムへの不正アクセスを招き、さらにはマルウェア感染や情報漏えいなど甚大な被害につながるリスクがあります。
この記事では、セキュリティホールの概要や発生要因、発見の仕方やその対策について解説します。

セキュリティホールとは何か

まずは、セキュリティホールの概要について見ていきましょう。

セキュリティ上の「抜け穴」

セキュリティホールとは、ソフトウェアやOSなどに存在するセキュリティ上の欠陥のうち、攻撃者に悪用される脆弱性を指します。単なる設計上の不備や未発見の脆弱性も含めた「脆弱性(vulnerability)」とはやや異なり、セキュリティホールは特に、攻撃者が侵入の足がかりとして利用可能なセキュリティの隙、抜け穴を意味します。

放置するとウイルス侵入やサイバー攻撃の標的に

セキュリティホールはマルウェアの侵入を許すだけでなく、攻撃者にとって標的となりやすいポイントです。その結果、情報の漏えいやシステムの停止といった事故が発生し、自社はもちろん、取引先や顧客にまで被害が及ぶことになりかねません。

「脆弱性」との違い

セキュリティホールと似たような意味の言葉に脆弱性があります。一般に「脆弱性(vulnerability)」とは、ソフトウェアやシステムの設計・実装における技術的な弱点を意味します。一方でセキュリティホールは、そうした脆弱性のうち、実際に悪用可能な状態にある欠陥や、その存在が既知であり攻撃対象となるものを指します。

セキュリティホールは脆弱性の中でも、特にサイバー攻撃のターゲットになりやすいセキュリティ上の欠陥といえるでしょう。

セキュリティホールの発生する要因

セキュリティホールの発生にはさまざまな要因があります。ここでは主な3つの要因を解説します。

古いバージョンのOSやソフトウェアを使っている

OSやソフトウェアは都度、不具合が見つかるとセキュリティパッチ(修正プログラム)を配布し、脆弱性に対応します。しかし、古いバージョンのソフトやOSを使用していると、すでにサポートが終了しているため、セキュリティパッチの配布を受けられません。そのため、OSやソフトウェアは最新版を使用することが重要です。

ソフトウェアを開発する際に不具合が発生した

ソフトウェア開発の段階で不具合が発生することがあります。設計上のミスやバグ、データの検証不足などが、セキュリティホールの発生原因となっているのです。前述のとおり、不具合が発見され次第、セキュリティパッチが配布されるので、セキュリティ情報には常日頃注意する必要があります。

システム・デバイスの設定ミスがある

システムやデバイスの初期設定や設定変更時にミスがあると、セキュリティホールの原因になり、外から攻撃されやすくなります。また、デフォルト設定のまま使用していると、既知の脆弱性を狙われる可能性が出てきます。設定変更やアップデートなどの対策を講じる必要があります。

セキュリティホールの見つけ方

セキュリティホールを発見するには、どのような方法があるでしょうか。ここでは主な3つの方法について説明します。

脆弱性診断

基礎インフラ(OSやネットワーク機器)を診断するプラットフォーム診断と、ソフトウェアやアプリケーションを診断するアプリケーション診断の2つがあります。

プラットフォーム診断では、セキュリティスキャンツールを使用して、システム内の脆弱性を特定します。またアプリケーション診断では、設計上の欠陥を特定します。ネットワークやソフトウェアを定期的にスキャンし、脆弱性の早期発見に努めましょう。

ペネトレーションテスト

ペネトレーションテスト(ペンテスト)とは、サイバー攻撃者の視点に立ち、実際の攻撃手法を模倣してシステムに対して疑似攻撃を行うことで、セキュリティ上の問題点や侵入経路を洗い出すテストです。外部委託のセキュリティ専門家が実施することが多く、実環境に近い形での検証が可能な一方で、業務への影響や範囲の調整が必要です。

システム監査

企業の情報システムが正しく動作しているか、またそのシステムがセキュリティ対策やリスク管理をしているかを検証することをシステム監査といいます。第三者機関が調査し問題点を報告しますが、広範囲のシステムを調べる場合は時間がかかります。

セキュリティホールを標的とした攻撃と被害例

セキュリティホールを標的とした攻撃にはどのようなものがあるのでしょうか。次にその手口と被害の例を紹介します。

脆弱性スキャンとエクスプロイトによる被害

脆弱性スキャンとは、システムやアプリケーションのセキュリティ上の弱点を洗い出すプロセスのことです。エクスプロイトとは、その脆弱性を悪用するコードや手法のことです。

たとえば「エターナルブルー」というエクスプロイトは、OSやアプリの脆弱性を突いてバッファー・オーバーフロー攻撃を仕掛けます。この攻撃では、システムに過剰なデータを送り込み処理能力を超えさせることで、異常な動作を引き起こすのです。さらに、その隙にマルウェアを埋め込むことも可能で、サイバー攻撃の起点として悪用される恐れがあります。

権限の不正引き上げによるサイバー攻撃

システムに侵入した後、権限を不正に引き上げて攻撃を広げるケースもあります。代表的な例が「SQLインジェクション」と「OSコマンドインジェクション」です。

SQLインジェクションは、Webアプリケーションの脆弱性を利用し、不正なSQL文を注入してデータベースを不正に操作します。一方、OSコマンドインジェクションは、同様にWebアプリケーションの脆弱性を利用し、OS上で不正なコマンドを実行してシステム全体を不正に操作します。

攻撃者が管理者権限を乗っ取った場合、Webサイトの改ざんや個人情報・機密情報の流出、ランサムウェアの導入やマルウェア感染といった被害につながります。サイバー攻撃の踏み台として利用された場合、被害者側が加害者と誤認されるリスクもあります。

未公開脆弱性を突いたゼロデイ攻撃

ゼロデイ攻撃とは、ソフトウェアの脆弱性が発覚してから修正されるまでの「隙」を突いて行われる攻撃です。防御手段がまだ整っていないタイミングで仕掛けられるため、非常に危険です。

過去に話題となった「Log4Shell(CVE-2021-44228)」のようなゼロデイ脆弱性は、Javaベースのライブラリに深刻なセキュリティホールが含まれており、多くの企業システムに影響を及ぼしました。このようなゼロデイ脆弱性は、攻撃者が一般公開前に発見・悪用し、修正パッチが提供される前に被害が発生するため、極めて深刻なリスクとなります。

セキュリティホールの対策方法

セキュリティホールを放置すると、大きな損害につながる可能性があります。被害を未然に防ぐためにも、特に有効とされる5つの対策を紹介します。

定期的なソフトウェアのアップデート

セキュリティホールが見つかると、それをふさぐパッチが配布されます。こうした修正プログラムはできるだけ早く適用し、常に最新の状態を保つことが重要です。

OSやソフトウェアにはサポート期限があり、それを過ぎると新たなパッチが提供されなくなります。サポートが終了した製品を使い続けるのは非常に危険です。最新バージョンへの移行を早めに検討しましょう。

ファイアウォール設定

不正アクセスを防ぐためには、ファイアウォールの設定を適切に管理することが欠かせません。特に「WAF(Web Application Firewall)」の導入は有効です。

WAFは、Webアプリケーションに対する攻撃を検知・遮断するファイアウォールです。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)など、Webアプリケーションの脆弱性を悪用したリクエストを解析し、攻撃をブロックします。WAFの導入により、アプリケーションの改修が間に合わない場合でも一定の防御が可能になります。

セキュリティ対策ソフトの導入

マルウェアやウイルスの侵入を防ぐためには、セキュリティ対策ソフトを活用するのが効果的です。セキュリティ対策ソフトは、セキュリティホールそのものを解消するものではありませんが、それを悪用したマルウェアの侵入や実行を検知・ブロックする役割を担います。

一般的なセキュリティ対策ソフトに加え、次世代型アンチウイルス(NGAV)や、EDR(Endpoint Detection and Response)といった高度なエンドポイント対策ソリューションも活用することで、未知の脅威やゼロデイ攻撃にも迅速に検知・対応できます。さらに、ネットワーク全体を守るUTMのような統合型製品を併用することで、多層的な防御が実現できます。

古いデバイスの買い替え

古いデバイスは、ハードウェア性能の問題だけでなく、セキュリティパッチが提供されなくなることで重大なリスクを抱えることになります。特に、ネットワーク機器やIoTデバイスはファームウェアの更新が行われないまま使われ続けることが多く、セキュリティホールを内包した状態となります。IT資産管理台帳と連携し、定期的な棚卸しとライフサイクルの見直しを行うことで、サポート切れ製品の使用を回避し、セキュリティリスクを最小限に抑えられます。

社内でのセキュリティ教育を徹底

技術的な対策だけでなく、従業員への教育も非常に大切です。たとえば、フィッシング詐欺やランサムウェアへの対処法、パスワードの管理方法、情報漏えいの予防策などさまざまなテーマについて定期的に教育を行いましょう。

セキュリティ教育は単なる座学ではなく、実際の事例に基づいた疑似フィッシング訓練やソーシャルエンジニアリング対策演習の実施が効果的です。たとえば「3カ月に1度のフィッシング模擬メール訓練」を行い、開封率やリンククリック率をKPIとして可視化することで、教育の効果測定と継続改善が可能になります。

総合セキュリティ対策なら
パロアルトネットワークス

これまでに紹介したような対策を自社で進めるのが難しい場合は、専門のサービスを活用するという選択肢もあります。

パロアルトネットワークスでは、PrecisionAI®を搭載したセキュリティプラットフォームを提供しています。このテクノロジーを用いると、場所や時間を問わず、より柔軟で強固なセキュリティ対策が可能です。

総合的なセキュリティ対策をお考えの企業様は、ぜひ一度パロアルトネットワークスへご相談ください。

まとめ

セキュリティホールは完全に排除することが難しく、どの企業や組織でも発生する可能性があります。攻撃者はこうした隙を狙って巧妙な手口で侵入を図るため、日々の備えが欠かせません。

セキュリティホール対策は単なるIT対策ではなく、企業の事業継続性(BCP)や顧客信頼維持に直結する経営課題です。たとえば、重大な情報漏えいが発生すれば取引停止・風評被害・訴訟リスクといった深刻な損失を招きかねません。限られた予算の中でも、優先度の高い領域に的確な投資を行い、全社的なリスクマネジメントの一環としてセキュリティ対策を位置づけることが重要です。

この記事の執筆者

写真:石塚ちひろ

SB C&S株式会社
ICT事業部
ネットワーク&セキュリティ推進本部
石塚ちひろ

写真:野口 綾香

SB C&S株式会社
ICT事業部
ネットワーク&セキュリティ推進本部
野口 綾香

サイバーセキュリティのマーケティングを担当。
初心者の方にも理解しやすく、役立つ報を発信することを大切にしています。

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