2025.9.12

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暗号化とは、デジタルデータを特定のアルゴリズムで変換し、第三者が解読できないようにするセキュリティ技術です。鍵を使うことで元のデータ(平文)に復号できる仕組みで、情報漏洩や内部不正、サイバー攻撃からデータを守ります。
機密性の高いデータの流出は、企業にとって大きな損害や信用の失墜につながるため、適切な対策が必要です。その対策のひとつが暗号化で、情報漏洩や内部不正などを防ぐ方法として、昨今では広く活用されています。
暗号化とはどのような技術なのか、本記事では暗号化の種類や方法、メリット・デメリットなどについてわかりやすく紹介します。
暗号化とは?
暗号化とは、デジタルデータを特定のアルゴリズムで変換して、第三者に解読されないようにする技術のことです。デジタルデータの情報が流出しても、暗号化した情報は人間が理解できないランダムな文字列として表示されるため、第三者による解読や悪用を防げます。
また、暗号化したデータは必ずもとの状態に戻せなければなりません。データをもとの状態に戻すために行う操作が「復号化」です。暗号・復号はセットで使われます。
さらに、暗号化はHTTPSをはじめとするインターネット通信の暗号化や、電子メールの保護など、身近な領域でも多く使われている技術です。暗号化により、データが流出しても機密性を維持できます。
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暗号化・復号化の仕組み
暗号化では、平文を取得して暗号化アルゴリズムを選択し、暗号化と復号化に使う「鍵」を生成します。
「平文」とは、暗号化されていない、そのままで意味が理解できて直接利用できるデータのことです。暗号化されたデータは、対応する鍵を使用して平文に復号化します。この平文は、暗号化・復号化において重要な存在となるのが鍵です。第三者に鍵を知られてしまうと、暗号化しても解読されてしまいます。デジタルデータを守るためには、鍵の内容を知られないように管理する必要があります。
暗号化の種類
暗号化は大きくわけると3つの種類があります。データを暗号化する際は、それぞれの特徴を知って、自社に合う適切な方式を選びましょう。
- 共通鍵暗号方式
- 公開鍵暗号方式
- ハイブリッド暗号方式
3つの方式について、それぞれの概要を紹介します。
共通鍵暗号方式
データの暗号化と復号化に同じ鍵を使う方式が「共通鍵暗号方式」です。共通鍵暗号方式の多くには、高速で処理できるアルゴリズムが使われています。
共通鍵暗号方式は、鍵の管理が難しいことがデメリットです。データを復号化するには、暗号化に使った鍵を受信者に渡さなくてはなりません。また、データを受信する相手ごとに異なる鍵が必要となることも、共通鍵暗号方式のデメリットです。
公開鍵暗号方式
暗号化と復号化に別の鍵を使う方式が「公開鍵暗号方式」です。暗号化に使う鍵は「公開鍵」、復号化に使う鍵は「秘密鍵」と呼ばれます。公開鍵暗号方式による暗号化の手順は以下のとおりです。
- データの受信者が公開鍵と秘密鍵を作成する
- 公開鍵をデータの送信者に共有する
- 送信者が公開鍵を使ってデータを暗号化する
- 暗号化したデータを送信する
- 受信者が秘密鍵でデータを復号する
公開鍵暗号方式で秘密鍵を管理するのは、データの受信者のみです。そのため、公開鍵暗号方式は鍵の盗難リスクがなく、安全性が高い方式となっています。相手ごとに鍵を用意する必要もありません。
ただし、公開鍵暗号方式はアルゴリズムが複雑になっており、共通鍵暗号方式と比較すると処理速度が遅くなる傾向にあることがデメリットです。
ハイブリッド暗号方式
共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式を組み合わせた方式が「ハイブリッド暗号方式」です。ハイブリッド暗号方式では、共通鍵で暗号化を行い、鍵の受け渡しに受信者が作成した公開鍵を使います。
共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の弱点を補える方式が、ハイブリッド暗号方式です。ハイブリッド暗号方式なら、高速処理と安全な鍵の管理を両立させられます。ただし、実装が複雑であることがデメリットです。
ファイルを暗号化する方法
自社でファイルを暗号化するなら、どのような方法があるかも知っておきましょう。代表的な暗号化の方法は次の3つです。
- ツールやソフトを使用する
- クラウドサービスを活用する
- Windows暗号化ファイルシステム(EFS)を利用する
3つの方法について概要を紹介します。
ツールやソフトを使用する
暗号化が必要なデータのやり取りが多い企業には、暗号化専用のツールやソフトを使用する方法が便利です。専用のツールやソフトは安全性が高く、暗号化にかかる手間も減らせます。安全性や暗号化の強度を高めるなら、有料のツールやソフトがおすすめです。
必要な費用や搭載されている機能は、ツールやソフトによって違います。どのツールやソフトが自社に適しているのか、ランニングコストや機能などを比較したうえで選びましょう。
クラウドサービスを活用する
データの暗号化には、クラウドサービスを活用するという方法もあります。クラウドサービスによっては、データの保存時や送信時に暗号化することが可能です。クラウドサービスなら、新たにソフトやツールを導入するよりも手間はかかりません。
ただし、サービスによっては暗号化の機能がない場合があります。保存されているデータは暗号化されないサービスもあるため、利用時は注意が必要です。事前にサービスの内容を確認し、十分な対策を行いましょう。
Windows暗号化ファイルシステム(EFS)を利用する
暗号化には「Windows暗号化ファイルシステム(EFS)」を活用する方法もあります。Windows OSに標準で搭載されている機能が、Windows暗号化ファイルシステム(EFS)です。無料でファイルやフォルダを暗号化できるうえ、新たにアプリやソフトをインストールする必要はありません。
EFSは、公開鍵暗号化方式と共通鍵暗号化方式の技術を組み合わせた、ハイブリッド暗号方式です。ファイルは以下の手順で暗号化します。
- 暗号化するファイルを右クリックする
- 「プロパティ」をクリックする
- 「全般」タブにある「詳細設定」をクリックする
- 「属性の詳細」で、「内容を暗号化してデータをセキュリティで保護する」 にチェックを入れてOKをクリックする
- 「プロパティ」で「適用」をクリックする
- 「暗号化に関する警告」で「ファイルだけを暗号化」を選択し、OKをクリックする
参考:EFS の仕組みとファイル復元について | Microsoft Japan Windows Technology Support Blog
暗号化が完了すると、ファイルの右上に鍵マークが表示されます。
ファイルを暗号化することによるメリット
ファイルの暗号化によるおもなメリットは次の3つです。
- 情報漏洩のリスクを低減できる
- 内部不正を防げる
- サイバー攻撃やマルウェアなどによる被害の対策になる
クラウド化が進み、どこにいても仕事ができるようになり、PCやタブレットを外部に持ち出す機会が増えた企業も多いでしょう。データを暗号化しておくと、持ち出した際にPCやタブレットの盗難・紛失があっても、情報漏洩のリスクを低減できます。
暗号化したファイルのみ持ち出しを許可するソフトやツールを活用すると、従業員による内部不正の防止に役立てることが可能です。また、データを第三者が読み取れないよう暗号化しておくと、サイバー攻撃やマルウェアなどによる被害を抑えられます。
ファイルを暗号化することによるデメリット
情報漏洩や内部不正への対策に役立つ暗号化ですが、次のようなデメリットもあります。
- 暗号化に時間がかかる
- 容量によってはPCやシステムに負担がかかる
- 鍵を紛失するとデータの復号化が難しい
- 鍵が第三者に渡るとデータが解読される
暗号化では、セキュリティを高めるために複雑な計算処理をしなくてはなりません。データの容量や使用するアルゴリズムによっては、暗号化に時間がかかります。容量によってはPCやシステムに負担がかかり、重くなってしまう場合もあるでしょう。
鍵を紛失するとデータの復号化が難しくなることも、暗号化で考えられるデメリットのひとつです。また、鍵が第三者に渡ってしまうと、どんなに強力な暗号を使ったとしても、データが解読されてしまいます。
暗号化を行う際は、紛失や盗難などがないよう、鍵の管理に十分注意しなくてはなりません。
暗号化のみではセキュリティ対策は不十分
暗号化には「どれだけ解読しにくいか」を表す「暗号強度」というものがあります。暗号強度は、複雑な暗号キーやアルゴリズムなどによって高めることが可能です。とはいえ、暗号強度を高めたとしても、データを暗号化しておくだけでは、セキュリティ対策として万全だとはいえません。なぜなら、データの解読技術も常に進化しているためです。
他にも、暗号化では不正アクセスやウイルスなどの対策はできません。大切なデータを守るためには、暗号化以外のセキュリティ対策も必要不可欠です。具体的には、次のような対策があります。
- 端末に二段階認証や多要素認証を取り入れる
- OSやソフトウェアを定期的にアップデートする
- セキュリティサービスを活用する
複数の対策を組み合わせることで、安全性を高められます。
関連記事:SASEとは?仕組みやメリット、失敗しない導入ポイントまで解説
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まとめ
暗号化とは、デジタルデータを特定のアルゴリズムで変換して、第三者に解読されないようにする技術のことです。暗号化されたデータは、「鍵」を使うことで、もとの状態に復号化できます。
情報漏洩や内部不正などを防げることが、データを暗号化するメリットです。ただし、暗号化は、容量によってはPCやシステムに負担がかかります。加えて暗号化は、鍵の管理に注意しなくてはなりません。
効果的な方法ではあるものの、暗号化のみではセキュリティ対策としては不十分です。暗号化を活用しつつ、ほかのセキュリティ対策を取り入れましょう。総合セキュリティ対策はパロアルトネットワークスがご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
この記事の執筆者

SB C&S株式会社
ICT事業部
ネットワーク&セキュリティ推進本部
若園 直子
専門的な内容でも、読者にとって親しみやすく、実践につながる形で伝えることを大切にしています。