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MDRとは?機能やサービス範囲、活用メリットについて解説

2025.9.30

MDRとは?機能やサービス範囲、活用メリットについて解説

MDRとは?機能やサービス範囲、活用メリットについて解説

目次

  1. MDRとは
    1. EDRとの違い
    2. SOCとの違い
    3. MSSPとの違い
  2. MDRが注目される理由
  3. MDRにおける2種類のサービスタイプ
    1. セミマネージド型
    2. フルマネージド型
  4. MDRの機能
    1. 24時間365日体制の監視・運用
    2. 脅威の検知とアラート
    3. 初動対応
    4. 端末やネットワークの復旧
    5. 調査分析レポート
  5. MDRを活用するメリット
    1. セキュリティ人材不足の解消
    2. 迅速な脅威検知と対応
    3. コストの最適化
  6. MDR選定・導入のポイント
    1. 対応範囲とサービス内容を明確に把握する
    2. 専門性と実績を確認する
    3. 既存環境との統合性・移行計画を立てる
  7. まとめ

MDRとは、サイバー攻撃の監視・検知・対応を専門業者が24時間365日体制で代行するサービスです。エンドポイントやネットワークを常時監視し、異常をいち早く察知して迅速に対応することで、被害を最小限に抑えます。

本記事では、MDRの基本概念から具体的な機能、従来サービスとの違い、導入メリット、選定ポイントまで解説します。

MDRとは

MDR(Managed Detection and Response)とは、セキュリティ関連のアウトソーシングサービスのことで、企業のセキュリティ運用を専門事業者が代行する包括的なサービスです。従来のセキュリティ監視サービスとは異なり、単なる監視やアラート通知にとどまらず、実際のインシデント対応まで含む幅広いサポートを提供します。

MDRの主な役割は、脅威の検出から対応までを一貫して提供することです。24時間365日の監視体制の下で、高度な脅威検知技術を用いてサイバー攻撃を早期発見し、発見された脅威に対して迅速かつ適切な初動対応を実施します。

MDRの特徴は、人的な専門知識と最新セキュリティ技術を組み合わせたハイブリッドアプローチです。AIや機械学習を活用した自動化ツールによる大量データ分析と、経験豊富なセキュリティアナリストによる高度な判断を組み合わせることで、誤検知削減と脅威の正確な特定を実現しています。

EDRとの違い

EDR(Endpoint Detection and Response)は、PC・スマートフォン・サーバーなどのエンドポイントに特化した監視・検知・対応ツールです。マルウェア感染や不正アクセスなどを素早く検知し、該当端末を隔離・駆除・復旧することで被害拡大を防ぎます。

一方、MDRはEDRが発するアラートやログも含め、ネットワーク全体を対象に脅威を分析・対応するサービスです。EDR単体では検知後の運用負担が大きくなりがちですが、MDRを組み合わせることで、専門家が24時間体制で調査・初動対応まで担い、運用負荷を大幅に軽減できます。

SOCとの違い

SOC(Security Operation Center)は、企業や組織内に設置されるセキュリティ監視チームです。ネットワークやシステムの監視、脅威分析、対応方針策定などを自社リソースで行うのが特徴です。

MDRは、SOCの役割を外部専門チームへアウトソースする形に近く、脅威の検知から対処までをサービスとして提供します。社内にSOCを設置するのが難しい場合でも、MDRを活用すれば24時間365日の監視体制を確保でき、迅速なインシデント対応が可能になります。

関連記事:SOC(Security Operations Center)とは?主な機能や役割、構築から運用体制まで解説

MSSPとの違い

MDRとMSSP(Managed Security Service Provider)は、いずれもセキュリティのアウトソーシングサービスですが、提供するサービスの範囲と専門性において大きな違いがあります。

サービス提供レベルの差異

MSSPは主に監視・アラート通知中心のサービスを提供し、問題が発見された際は企業に通知して対応を委ねるリアクティブなアプローチを採用しています。一方MDRは検知から対応までを担い、積極的に対処するプロアクティブなサービスです。

サービス範囲の比較

機能項目 MSSP MDR
24時間監視
脅威検知・アラート
詳細分析・調査
初動対応・封じ込め ×
復旧支援 ×
継続的改善提案

MDRが注目される理由

近年、MDRサービスに対する企業の関心が急速に高まっているのは、現代のサイバーセキュリティ環境が抱える深刻な課題が背景にあります。

MDRが注目される主な理由

セキュリティ人材不足の深刻化
  • 専門知識を持つ人材の需要が急増
  • 脅威分析やインシデント対応スキルを持つ人材は希少
サイバー攻撃の高度化
  • AIを悪用した新しい攻撃手法が増加
  • 複合的な標的型攻撃が増え、従来の検知では対応困難
セキュリティ対策を行う企業の増加
  • DXの進展でIT依存度が高まる
  • 内製ではコストや専門知識の不足が課題

特にセキュリティやシステムに知見がある人材不足は続いており、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が発表した「企業IT動向調査報告書2025」では、セキュリティ担当者が不足と回答した企業が70%を超えており事態の深刻さを物語っています。

図表:情報セキュリティ人材不足の状況

出典:企業IT動向調査 報告書
関連記事:サイバーセキュリティとは?サイバー攻撃の種類や代表的な対策方法を解説

MDRにおける2種類のサービスタイプ

MDRサービスは、企業ニーズやセキュリティ体制に応じて、大きく2つのサービスタイプに分類されます。

セミマネージド型

セミマネージド型は、インシデントの一部を請け負うサービスです。このタイプでは、脅威の検知とアラート通知を専門事業者が担当し、その後の詳細調査や対応策企業内部チームが行う分担方式を採用しています。

セミマネージド型の利点は、企業が自社システムの制御権を維持しながら、専門的な脅威検知能力を活用できることです。またフルマネージド型と比較してコストを抑制でき、既存セキュリティ投資を有効活用できます。一方で、企業側にある程度のセキュリティ専門知識と対応能力が必要となります。

フルマネージド型

フルマネージド型は、セミマネージド型よりも幅広い範囲でインシデント対応を行うサービスです。脅威の検知から初動対応、詳細調査、復旧支援、再発防止策の実装まで、セキュリティインシデントに関するほぼ全ての作業をMDRプロバイダーが代行します。

フルマネージド型の利点は、企業が専門的なセキュリティ人材を内部に抱える必要がないことです。24時間365日の専門的なサポートを受けられるため、インシデント発生時の対応速度と品質が大幅に向上します。

MDRの機能

ここではMDRの機能について紹介します。

24時間365日体制の監視・運用

MDRの基盤となるのが、24時間365日体制の継続的な監視・運用機能です。MDRプロバイダーは、複数のタイムゾーンにまたがるセキュリティオペレーションセンター(SOC)を運営し、常に専門アナリストが企業のシステムを監視しています。

脅威の検知とアラート

高度な脅威検知機能により、シグネチャベースの検知では発見困難な未知の脅威や標的型攻撃を特定します。行動分析、異常検知、脅威インテリジェンスを活用し、正常な業務活動と悪意のある活動を精密に区別可能です。主な検知対象は以下のようなものです。

  • マルウェアやランサムウェアの感染
  • 内部犯行や特権アカウントの悪用
  • データ漏洩や不正アクセスの試行
  • APT(Advanced Persistent Threat)攻撃

関連記事:標的型攻撃とは?代表的な手口や対策方法をわかりやすく解説

初動対応

脅威が検知された際の初動対応は被害拡大を防ぐ上で重要です。MDRはインシデントの性質と緊急度に応じて、迅速かつ適切な初動対応を実施します。感染端末のネットワークからの隔離、悪意あるプロセスの停止、不正アクセス遮断、関連ユーザーアカウント無効化などが含まれます。

端末やネットワークの復旧

初動対応により脅威を封じ込めた後は、影響を受けたシステムの復旧作業を支援します。マルウェアの完全除去、改ざんされたファイル復元、システム設定の正常化、セキュリティパッチ適用など、包括的な復旧プロセスが実施されます。

調査分析レポート

インシデント対応完了後は、詳細な調査分析レポートを作成し、企業に提供します。このレポートには攻撃の手法と経路、影響範囲の詳細、根本原因の分析、再発防止策の提案などが含まれます。

MDRを活用するメリット

MDRの導入で、企業は高度なセキュリティ対策を専門家に委託でき、限られた社内リソースでも堅牢な防御体制を維持できます。主なメリットは以下のとおりです。

セキュリティ人材不足の解消

高度な知識を持つセキュリティ人材を採用・育成することは、時間もコストもかかるため大きな負担になりがちです。MDRを活用すれば外部の専門家が24時間365日体制で監視・分析・対応を行うため、社内で専門人材を確保する必要がありません。

迅速な脅威検知と対応

MDRはEDRやNDRなどのツールから得られる情報をもとに、不審な挙動や異常な通信を早期に検知します。重要度が高いと判断された脅威には即時対応し、被害拡大を防ぎます。自社だけでは見落としがちな小さな兆候も、専門家によって正確に見極められるのは導入するメリットです。

コストの最適化

自社でSOC(Security Operation Center)を構築する場合、設備投資・人件費・運用費が高額になりがちです。MDRは初期費用や維持費を抑えつつ、同等またはそれ以上のセキュリティ機能を享受できるため、総所有コストの削減につながります。

MDR選定・導入のポイント

MDRは提供するサービスの範囲や強みが、ベンダーによって異なります。導入を成功させるには、自社の目的や体制に合ったベンダーを選び、サービスの質を事前に見極めることが欠かせません。ここでは選定時に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

対応範囲とサービス内容を明確に把握する

最初にMDRがどこまでの範囲をカバーしてくれるか確認しておきましょう。監視だけ行うサービスもあれば、検知後の隔離や復旧まで一貫して対応するサービスもあります。対応範囲によって必要な社内リソースや緊急時の動き方が変わるため、契約前に詳細を把握しておくことが重要です。

契約内容が曖昧なままだと、実際にインシデントが発生した際に「想定より対応が限定的だった」という事態に陥るリスクがあります。監視対象環境や対応時間、インシデント対応プロセスなど、業務に直結する要素は事前に明確化しておきましょう。

専門性と実績を確認する

MDRの価値は運用にあたる人材の質に左右されます。特に、自社と同業種での運用経験や業界特有の脅威に対する知見を持つかどうかは、選定時の大きな判断材料となります。最新の脅威情報をどのように収集し、どの程度スピーディに対応できる体制を持っているかも確認が必要です。

対応スタッフの資格や実績、インシデント対応での成功事例など、具体的な裏付けがあるかを見極めることで、導入後の安心感が大きく変わります。表面的なサービス説明だけでなく、運用体制や緊急時のサポートまで掘り下げて確認することが、長期的に活用するためのポイントです。

既存環境との統合性・移行計画を立てる

MDR導入は単なる新サービスの追加ではなく、既存のセキュリティ環境全体に影響を及ぼします。そのため、今使っているEDR・NDR・SIEM・ネットワーク機器などとの連携可否を事前に確認し、導入後のオペレーションがスムーズに回るようにしておく必要があります。

また、一度にすべてを切り替えるのではなく、段階的な移行計画を立てることで業務の混乱を防ぎやすくなります。計画の中には、社内担当者へのトレーニングや、既存ルールとの整合性チェックなども組み込みましょう。

まとめ

MDR(Managed Detection and Response)は、人材不足やサイバー攻撃に直面する企業にとって、有効かつ現実的なセキュリティ強化策です。脅威の検知から対応・復旧まで一貫して任せられるため、社内負担を減らしつつ堅牢な防御体制を構築できます。

サービス形態や対応範囲を見極め、自社に合ったMDRを導入することで、複雑化する脅威にも揺るがないセキュリティ環境を手に入れられるでしょう。

この記事の執筆者

イラスト:若園 直子さん

SB C&S株式会社
ICT事業部 ネットワーク&セキュリティ推進本部
若園 直子

サイバーセキュリティのマーケティング担当。
専門的な内容でも、読者にとって親しみやすく、実践につながる形で伝えることを大切にしています。

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