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SOARとは?基礎知識やSIEMとの違い、導入ポイントについて解説

2025.9.12

SOARとは?基礎知識やSIEMとの違い、導入ポイントについて解説

SOARとは?基礎知識やSIEMとの違い、導入ポイントについて解説

目次

  1. SOARとは
    1. SOARの概要
    2. SOARが注目される理由
  2. SOARの3つの主要機能
    1. オーケストレーション(連携)
    2. オートメーション(自動化)
    3. レスポンス(対応)
  3. SOARの具体的な活用例
    1. フィッシングメール対応の自動化
    2. マルウェア感染時の自動封じ込め
    3. 不正アクセス検知時の対応
  4. SOARとSIEMの違い
  5. SOARを導入するメリット
  6. SOAR導入時の注意点
    1. 段階的な導入
    2. 現在使っているセキュリティツールとの連携
    3. 担当者への教育や研修が必要
  7. まとめ

SOAR(Security Orchestration, Automation and Response:ソアー)は、セキュリティインシデント対応を効率化する自動化ソリューションです。複数のセキュリティツールからの脅威情報を統合し、定型的な分析・対応作業を自動化することで、迅速で一貫した脅威対応を可能にします。

サイバー攻撃の高度化により、従来のセキュリティ対策だけでは十分な防御が困難になっています。そこで注目されているのが「SOAR」という革新的なセキュリティソリューションです。本記事では、SOARの基本的な仕組みからSIEMとの違い、導入時のポイントまで詳しく解説していきます。

SOARとは

まずはSOARの基本概念と注目される背景についてみていきましょう。

SOARの概要

SOARとは「Security Orchestration, Automation and Response」の略称で、セキュリティオーケストレーション・自動化・対応を意味する包括的なセキュリティソリューションです。この概念は、調査会社ガートナーによって提唱され、セキュリティインシデントが発生した際の対応を効率化するための仕組みとして定義されました。

SOARは、連携(Orchestration)、自動化(Automation)、対応(Response)という3つの要素を組み合わせることで、従来手動で行われていたセキュリティ業務の大部分を自動化し、より迅速で一貫性のある脅威対応を実現するものです。

SOARが注目される理由

SOARへの関心が高まっている背景には、現代のサイバーセキュリティが直面する深刻な課題があります。

まず、サイバー攻撃の高度化・複雑化が挙げられるでしょう。攻撃者は日々新しい手法を開発し、既存のセキュリティ対策を回避する巧妙な攻撃を仕掛けてきます。このような状況下では、従来の人力による対応では迅速性と正確性の両方を確保することが極めて困難となっています。

また、セキュリティツールの普及により大量のアラートが生成される一方で、それらを処理する運用担当者の負担が急激に増大している点も見逃せません。多くの企業では、日々数百から数千件のアラートが発生し、担当者がそのすべてを適切に分析・対応することは現実的ではなくなっています。

さらに深刻なのが、セキュリティ専門家の慢性的な人手不足です。サイバーセキュリティ分野の専門知識を持つ人材は世界的に不足していて、多くの組織が適切なセキュリティ体制の構築に苦慮しています。

SOARの3つの主要機能

SOARは、単なるアラート通知ツールではありません。具体的には「連携」「自動化」「対応」の3つの機能を通じて、セキュリティ運用の質とスピードを飛躍的に向上させます。

オーケストレーション(連携)

オーケストレーション機能は、企業内に点在する複数のセキュリティツールからの脅威情報を集約し、統合的な視点での分析を可能にする仕組みです。

これまで各セキュリティツールは独立して動作し、それぞれが異なる形式でアラートや脅威情報を生成していました。そのため、セキュリティアナリストは各ツールを個別に確認し、バラバラな情報を手動で関連付ける必要がありました。オーケストレーション機能により、これらの分散した情報が一箇所に集約され、相互の関連性が自動的に分析された分かりやすい状態で表示されます。

この統合により、単一のインシデントが複数のツールで異なる形で検知された場合でも、それらを一つの事象として認識し、より正確な脅威評価が行えるようになるのです。

オートメーション(自動化)

オートメーション機能は、プレイブック(対応手順書)に基づいて作業を自動実行する仕組みであり、SOARの中核となる機能のひとつです。

プレイブックには、特定の脅威やインシデントに対する対応手順が詳細に記載されており、これに従って機械が人間の代わりに定型作業を実行します。たとえば、マルウェア感染の疑いがあるエンドポイントを自動的に隔離したり、不審なIPアドレスをファイアウォールでブロックしたりする作業が自動化されます。

この自動化により、インシデント対応の手順が統一・標準化されるため、担当者によるばらつきがなくなり、常に一貫した品質での対応が実現可能です。

レスポンス(対応)

レスポンス機能は、発見した脅威への迅速かつ適切な対応を自動的に実行する機能です。

脅威が検知されると、システムは事前に設定された対応手順に従って、自動的な初期対応や封じ込め措置を実行します。同時に、関係者への自動通知と詳細な状況報告も行われ、必要に応じて追加の対応が取られます。

また、インシデントの管理と経過追跡の自動化により、対応状況の把握や事後の分析・改善が可能です。組織全体のセキュリティレスポンス能力が大幅に向上します。

SOARの具体的な活用例

SOARがどのような場面で威力を発揮するのか、実際のセキュリティインシデントを例にみてみましょう。

フィッシングメール対応の自動化

フィッシングメールが検知された場合、SOARは自動的に該当メールを隔離し、送信者のIPアドレスやドメインをブラックリストに追加します。同時に、同様のメールを受信した可能性のある他の従業員を特定し、関係部署への通知と注意喚起を自動実行します。これらの一連の対応が数分以内に完了するため、被害の拡大を効果的に防げるでしょう。

マルウェア感染時の自動封じ込め

エンドポイント保護ツールがマルウェア感染を検知すると、SOARは即座に感染端末をネットワークから隔離。他のシステムへの拡散を阻止すると同時に、感染端末の通信ログや実行プロセスの情報を自動収集し、フォレンジック調査に必要な証跡を保全します。これにより、被害範囲の特定と原因究明が迅速に行えるようになります。

不正アクセス検知時の対応

異常なログイン試行や権限昇格の試みが検知された場合、SOARは該当アカウントを自動的に無効化し、関連するセッションを強制終了します。また、不正アクセスの経路や影響範囲を調査するため、関連するログファイルの収集と分析を自動実行。セキュリティアナリストに詳細なレポートを提供します。これらの自動化された対応により、従来は数時間から数日かかっていた初期対応を大幅に短縮可能です。

関連記事:エンドポイントセキュリティとは?主要技術や対策、導入ポイントを解説

SOARとSIEMの違い

セキュリティ分野でよく比較されるSOARとSIEMには、それぞれ異なる役割と特徴があります。

SOARは、検知された脅威に対するアクションを自動化・効率化することに重点を置いた仕組みです。つまり、「脅威が見つかった後にどのような対応を取るか」という部分に特化したソリューションといえるでしょう。一方、SIEMは、組織内のネットワークやシステムのアクティビティを包括的に監視し、可視化することで脅威をリアルタイムに特定することを目的とした仕組みです。

簡単に表現すると、SIEMは「脅威を見つける」ためのツールであり、SOARは「見つけた脅威に対処する」ためのツールだといえます。実際の運用では、SIEMで検知した脅威情報をSOARが受け取り、自動的な対応を実行するという連携が一般的です。

関連記事:SOC(Security Operations Center)とは?主な機能や役割、構築から運用体制まで解説
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SOARを導入するメリット

SOAR導入により、組織のセキュリティ運用は大幅な改善を実現できます。

最大の利点は、迅速な初期対応が可能になることです。サイバー攻撃において、初期対応の速度は被害の規模を左右する重要な要因となります。SOARの自動化機能により、人間の判断を待つことなく即座に対応が開始されるため、攻撃の拡大を防ぎ、被害を最小限に抑えられます。

また、定型作業の自動化に伴い、作業工数の大幅な削減と生産性向上が見込めるのもメリットです。従来、セキュリティアナリストが手動で行っていた情報収集や分析、初期対応といった作業の多くが自動化されることで、より高度な分析や戦略的な業務に人的リソースを集中できるようになるでしょう。

さらに、これらの効率化は人的コストの削減にも直結します。少ない人員でより多くのセキュリティインシデントに対応できるようになるため、組織全体の運用コスト最適化にも貢献します。

SOAR導入時の注意点

SOAR導入を成功させるためには、いくつかの重要なポイントに注意する必要があります。

段階的な導入

SOAR導入は一度にすべての機能を実装するのではなく、段階的に進めることが重要です。まずは比較的単純な自動化から始め、システムの動作や効果を確認しながら、徐々に複雑な機能を追加していく方法が推奨されます。この段階的アプローチにより、導入時のリスクを最小限に抑えつつ、組織内での理解と受容を促進できるでしょう。

現在使っているセキュリティツールとの連携

既存のセキュリティインフラとの互換性確保は、SOAR導入の成功を左右する重要なポイントです。現在使用しているSIEM、ファイアウォール、エンドポイント保護ツールなどとの連携が適切に行えるかを事前に検証し、必要に応じて設定の調整や追加の連携ツールの導入を検討する必要があります。

担当者への教育や研修が必要

SOARシステムを効果的に活用するためには、運用担当者への十分な教育と研修が欠かせません。プレイブックの作成・修正方法、システムの監視・管理方法、トラブル発生時の対応手順など、幅広い知識とスキルの習得が求められます。また、継続的な研修により、新機能の活用や運用改善を図ることも重要でしょう。

関連記事:セキュリティアウェアネスとは?必要性・教育内容・導入のポイントを解説

まとめ

SOARは、現代のサイバーセキュリティが直面する課題に対する有効なソリューションとして、多くの組織で注目を集めています。オーケストレーション、オートメーション、レスポンスの3つの主要機能により、従来手動で行われていたセキュリティ業務の大部分を自動化し、脅威の検知から対応までを一貫して行える体制が構築可能です。

しかし、導入には計画的な進め方と適切な準備が求められます。段階的な導入、既存システムとの連携、担当者教育といった重要なポイントに注意を払いながら導入を進めることで、組織のセキュリティ運用を大幅に改善できるでしょう。サイバー脅威がますます複雑化する中、SOARの活用は現代企業にとって必要不可欠な取り組みといえます。

この記事の執筆者

イラスト:須賀田 淳さん

SB C&S株式会社
ICT事業部 ネットワーク&セキュリティ推進本部
須賀田 淳

サイバーセキュリティのマーケティング歴5年。
最新のトレンドや事例をリサーチ。専門的なテーマも、初めての方が理解しやすいように噛み砕いて発信しています。

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