【特集:Azureで実践するBCP/DR対策 #3】 メディアでのバックアップより信頼性の高い Azure Backup
2016.03.22
本特集では2回にわたって、企業の事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)、および災害復旧(DR=Disaster Recovery)対策の方法として、クラウドベースの「Azure Site Recovery」を紹介しました。今回は、BCP/DR対策の基本となるデータのバックアップを行うためのクラウドサービス「Azure Backup」について解説します。
バックアップはBCP/DR対策の基本
BCP/DR対策は、企業によってそれぞれ求めるレベルが異なります。停止すると会社存亡の危機に見舞われるような高可用システムを運用する企業ならば、オンプレミスでBCP/DR対策を講じるとともに、Azure Site RecoveryなどのDRaaS(Disaster Recovery as a Service)を併用して、あらゆる非常事態に備える必要があるでしょう。
ただし、ビジネスがシステムに依存せず、長時間停止しても事業継続が可能であれば、必ずしもAzure Site Recoveryが必要というわけではありません。とはいえ、規模・業種を問わず大多数の企業にとって、最低限データの消失だけは回避したいものです。そのためデータのバックアップは、多くの企業で古くから行われてきましたが、従来のバックアップはシステム障害などには対応できるものの、BCP/DR対策としては不十分です。なぜならシステムの設置場所と同じ建物でテープやディスクなどのバックアップメディアを保管しても、その建物が被災したら一度にデータが消失するおそれがあるからです。
そこでおすすめしたいのが、クラウドへのバックアップです。そしてその代表的なサービスが、Azure Backup。既存のオンプレミスで利用してきたバックアップを、信頼性と安全性が高く、かつ安価なコストで利用できるクラウドへ置き換えようというのが、Azure Backupの狙いです。
Azure Backupを利用する理由
Azure Backupには、多くのメリットがあります。たとえば、オンプレミスのように、バックアップ用のストレージ装置を用意するなど、設備投資をする必要はありません。クラウド上に確保したストレージ領域に、バックアップ先を割り当てるだけです。しかもAzureストレージはほぼ無制限にスケーリングできるので、バックアップするデータ容量の増加に合わせて拡張する必要もありません。
Azureストレージでは、ストレージ使用量を節約するためにバックアップデータが圧縮されます。また、3つ以上のコピーが自動的に作成される仕組みになっているため、バックアップデータが消失する心配は無用です。データは暗号化に対応しており、セキュリティ対策も万全。データ転送は、前回のバックアップ以降の増分変更のみなので、バックアップ時間はかかりません。
また、基本的に従量制課金モデルですから、使用した分のコストしかかからないのも、Azure Backupの特長です。さらに、データを復元する際には転送にかかる費用が無料。利用者にとって嬉しい配慮です。
Azure Backupでは、企業のニーズに応じてさまざまな展開方法が用意されていますが、最も簡単なのが、「Azure Backup エージェント」と呼ばれる常駐型ソフトウェアをオンプレミスのコンピュータに導入する方法です。また、オンプレミスのWindows Serverに、クラウドへのバックアップを可能にするサービス「Azure Backup Server」や「System Center Data Protection Manager」を導入してシステム全体のバックアップを一括管理することも可能です。もちろん、Azure仮想マシンのバックアップにも対応します。
データバックアップは、BCP/DR対策の基本中の基本。それを簡単、かつ安価に実現するには、Azure Backupを利用することが近道だと言えるでしょう。
Azure Backupの概要
photo:Thinkstock / Getty Images