事例Microsoft Azureの導入事例をご紹介します。

チャットボットは、機器の操作法や手続きの手順など、各種の問い合わせに自動で応答するシステムです。株式会社JSOLが提供するチャットボットである「Collam(コラム)」は、既に金融機関を中心に 複数の導入実績があり、信頼性の高いチャットボットとして注目されています。 Azureをベースに提供される"次世代チャットボット"Collamの特徴とAzureとの関係をJSOLのご担当者に伺いました。

きっかけ

三井住友銀行とマイクロソフトが共同で開発をスタート

Collamは、三井住友銀行がマイクロソフトと共同で開発したシステムがベースとなっています。三井住友銀行では行内の各種照会対応にこのシステムが使われており、三井住友フィナンシャルグループ企業でも同システムを社内および顧客照会業務に活用しています。Collamは業種を問わずに様々な問い合わせ業務にも利用できる能力を備えているため、JSOLでは、2018年5月からこのチャットボットの外販を実施しています。

直近では、JSOLによるCollamの最近の導入例を地方銀行が発表しています。ある地方銀行では、行内の従業員を対象とした照会業務のサービス標準化を目的として、2019年7月よりCollamの運用を開始しました。また、別の地方銀行では一般の顧客を対象とした問い合わせ・案内業務を効率化する目的で、2019年10月のサービス開始を予定しています(2019年7月現在)。

施策内容

システムが学習データを自動作成し、今までになかった“次世代”のAIチャットボット

Collamには、他のチャットボットシステムとは異なる優れた特徴があります。その中でも、導入後の運用負荷が低いことが大きなメリットです。

チャットボットの導入時には、「問い」に対する「答」を一対で用意する必要があります。また、実際の運用状態を確認しながら、新しい「問い」の言い回しを追加したり、回答精度を上げるためのチューニング作業も必要です。特に導入後の運用保守は、チャットボットを利用する限り続きます。そのため、チャットボットのメンテナンスをする人員は必要不可欠となります。

ここで、チャットボットが従来の一般的なITシステムと違う面が露呈します。チャットボットはITシステムですから、機能や動作に関する部分はIT部門の担当となります。しかし、システムが扱う「問い」と「答」の部分は、そのチャットボットが対応する業務やビジネス部門の領域です。そのため、多くのチャットボットでは、運用するにあたってITシステム部門と業務・ビジネス部門の双方による定期的なメンテナンスが必要となります。つまり、導入に際しては新たな負荷が発生します。

Collamはそれらの作業負担を軽減する様々な仕組みが実装されています。
金融・サービス事業本部 コンサルタントの御園康史さんは、「従来型のチャットボットだと、一対一のFAQを登録するだけではあまり精度が向上しない」と語ります。この点、Collamには、FAQにある問い合わせ文の内容を解析し、その内容や言い回しなどを拡張して対応する機能があります。

「今までは、いろんな質問のパターンを登録して、それを学習させて精度を上げる手法が一般的でした。Collamでは、一対一のFAQを登録しておけば、1つの質問を複数の質問パターンに増幅して学習します」(御園さん)。

この機能はJSOL内で「ふくらまし機能」と呼ばれ、1つの質問(問い合わせ文)から20パターン程度のバリエーションを自動生成します。たとえば、Collamでは「口座を作りたい」という問い合わせ文から「口座の申し込み方」や「口座の新設方法」といった言い換え文を作成します。このため、初期の入力時にいくつものパターンを用意する必要はありません。

また、Collamには曖昧な問い合わせ内容、例えば「料金が知りたい」に対して、「何の料金が知りたいですか?」というように自動で聞き返す機能も搭載されています。これに関しても人がシナリオを作る必要がないので、運用の負担を大きく下げてくれます。この他、FAQが登録されていないカテゴリーの質問をリスト化してFAQ追加の必要性を示唆する機能、必要に応じてオペレータ対応に切り替える機能も搭載されています。

これらの多彩な機能は、導入後の運用負担を下げるとともに、システムを使って問い合わせをする側の満足度を高めることにも役立ちます。

結果

Azureだから、より安心でき、導入後のスケーラビリティも柔軟

ここまでにご紹介した、Collamの運用基盤として採用されているのがAzureであり、その開発にはマイクロソフトが大きな役割を果たしています。Azure上で運用されることによってCollamではAzureが備える高い可用性と信頼性がそのまま得られます。また、Azure上に用意されたツールの利用も可能です。

前出の御園さんは、Collamの特性を「マイクロソフトが作っていることもあってAzureのPaaSに最適化されている」と語ります。

CollamはWeb Apps、SQLサーバ、Redisキャッシュなどの基本的なクラウドサービスを利用しています。しかし、Azure上で稼働させることによって、パフォーマンス管理ツールのApplication Insightsが活用できます。また、認証時にはActive Directoryも利用可能です。

御園さんは、「Collamでは、Application Insightsでログをまとめて管理しています。チャットボットシステム全体のログを一元管理できるので、何かあったらここで調べれば(何が起きていたか)分かります。監視のアラートを作ることもできます」と語ります。

Azureのクラウド上で稼働するCollamですが、セキュリティ面での不安も解消されています。まず、CollamはPaaSの独立した環境内で動くので、扱うデータがPaaSの外に漏れる心配はいりません。

また、AzureがFISC(金融情報システムセンター)のガイドラインに準拠しているので、金融機関で導入しやすいという特徴もあります。もちろん、高いセキュリティが求められる金融機関で導入されるCollamの信頼性は、他の業種・業界でも高く評価されるでしょう。

Collamでは、問い合わせへの応答とは別に返答の精度を上げるための学習を行います。しかし、この処理は応答動作と同時に行われるものではありません。学習は問い合わせ件数が少ない時間帯や曜日などに行えるので、Azureで確保するスペックはほどほどで構いません。

用途に応じてAzureの自動スケール機能を使うことも可能ですが、御園さんは「必要最小限の固定スケールでスタートして、動作が遅いと感じた時に手動でスケールアップを検討するのが予算管理しやすい」と話します。これは簡単に処理能力を調整できるAzureならではのメリットでしょう。

今後の計画

今後は、業界・業種を問わずに利用可能に

銀行内の問い合わせ業務に向けて開発されたチャットボットシステムですが、この度「Collam」という商品名を得て、様々な業界の様々な用途に向けてリリースされたことになります。

この件に関して、JSOLの金融・サービス事業本部 シニアコンセプトプランナーの桝井武史さんは「金融に限らず製造、流通、サービス、社内・顧客からの問い合わせなど、いずれにも対応していきたいと思っています」と語っています。

また、桝井さんはCollamの今後として、既に多くのデータが蓄積されている内部のサービス部門やコールセンター向けのサービスなどと接続・連携する方向性も紹介しています。

サービス部門やコールセンターには、個人をある程度特定できるデータが管理されています。これらをCollamで扱うデータと紐づけできると、より踏み込んだカスタマーサービスが実現できます。

当然セキュリティの問題はありますが、桝井さんは「そこまで発展的にやっていくと、単なるチャットというよりは、お客様に対して何かレコメンドするとか、そういった提案型のサービスになっていく」と、Collamの可能性を説明しています。

株式会社JSOL
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