「VMware vs. Azure」── ハイブリッドに最適なサービスはどちら?
2015.12.02
2015年10月14日、日本マイクロソフト品川本社で「クラウド、仮想化、何が自社に最適か? VMwareと比較するハイブリッドクラウドと仮想化基盤の全貌」と題するセミナーが開催されました。同セミナーはハイブリッドクラウド/仮想化基盤の導入を担当する企業のITインフラ部門を対象にしたものです。日本マイクロソフトの担当者が、「Microsoft Azure」と「VMware vCloud Air」の違いを中心に、技術解説を展開しました。本稿では、日本マイクロソフト テクノロジースペシャリスト 白山貴之氏のセッション「ハイブリッドクラウド時代の仮想化基盤 Microsoft vs. VMware」にスポットを当て、そのエッセンスを報告します。
VMwareは既存技術の延長
本格的なクラウド時代を迎えた今、オンプレミスのプライベートクラウドとパブリッククラウドを連携させたハイブリッドクラウドに対する注目度・ニーズが高まっています。
ハイブリッドクラウドは、既存のIT環境とクラウドの双方の利点を生かすソリューションであり、従来のオンプレミス環境を継続利用しながらパブリッククラウドへの緩やかな移行を図ったり、パブリッククラウドを部分的に利用して迅速な開発・展開・撤収を実現したり、パブリッククラウドのプラットフォームを災害時復旧(DR)用のバックアップ・サイトとして利用したり、重量課金制を取り入れてコストを削減したりなど、さまざまな目的で採用されています。
白山氏は、「(プライベートクラウドとパブリッククラウドの)"どちらか"ではなく"どちらも"使うのが、ハイブリッドクラウド」だと説明します。
そんなハイブリッドクラウドの環境づくりによく用いられているひとつが、VMware社が提供するクラウドサービス「VMware vCloud Air」(以下、vCloud Air)です。その特徴として、白山氏は以下の点を挙げます。
・日本国内を含む世界11カ所にリージョンを開設
・VMwareの仮想マシンをそのまま展開することが可能
・事前にリソースを確保しておく定額制の課金
・購入形態はオンプレミス製品と同等
vCloud Airが提供するサービスは、物理サーバーを占有する「Dedicated Cloud(DC)」、物理サーバーを共有する「Virtual Private Cloud(VPC)」、オンプレミスの仮想マシンを対象にした災害対策基盤を提供する「Disaster Recovery(DR)」の3つが中心となります。
「vCloud Airは基本的に、仮想化ベンダーであるVMware社が、自社の仮想化技術をベースにした仮想マシンのために提供しているクラウドサービスです。そのため、VMware社の仮想化製品群に基づいた実装となっており、既存技術の延長に過ぎません。また、VMware社の製品群にない仕組みについては、他社技術を用いています。例えば、データプロテクションにはEMC Avamarを、オブジェクトストレージにはGoogleを、データベースにはMicrosoft SQL Serverを使うといった格好です」と、白山氏は解説を加えます。
クラウドファーストのサービス
こうしたvCloud Airに対して、Azureの場合は、「クラウドに必要な機能」を網羅的に提供していると、白山氏は話します。
「Azureは、マイクロソフトが注力する"クラウドファースト"を具現化したサービスです。既存製品にとらわれることなく、クラウドとして必要なもの、期待される機能をまずは実装し、それらのうち有益なものはオンプレミスへと展開しています。Azureのサービスはそれぞれ自由に組み合わせて利用可能なところも、重要なポイントです」
つまり、vCloud AirとAzureは、起点・目的が正反対であるということです。
「vCloud Airは、vSphere(VMware社の仮想化製品)を起点に、クラウドでも同じことを実現する目的で作られています。ですから、オンプレミスとほぼ同じことができる反面、クラウドらしい機能はありません。対するAzureは、クラウドを起点にオンプレミスに機能を展開することを目的としています。オンプレミスとまったく同じ環境を再現するのはやや苦手ですが、クラウドとしてあるべき機能は漏れなく提供しています。そのため、たとえばサポート終了を迎えたWindows Server 2003を末永く利用するなど、これまでの環境をそのまま維持したいと考えるならば、vCloud Airのほうが適しているかもしれません」(※)
「ハイブリッドならAzure」のワケ
それでも、白山氏は、「ハイブリッドクラウドには、Azureが最適」と指摘します。その理由として、同氏は、「Azure における選択の自由」を掲げ、こう講演を締めくくります。
「たとえば、Azure の場合、既存のアプリケーションをそのまま運用したければ、『仮想マシン』が用意されていますし、アプリケーションをもっとスピーディに開発したいと考える向きには、『WebApps』や『Cloud Services』といったサービスが提供されています。また、機械学習やビッグデータなどの新技術を使いたければ、『Machine Learning』や『HDInsight(Hadoop)』が利用可能です。さらに、Windows・Windows Serverを使いたくないユーザーに向けてLinux VMが提供されているほか、Macを使った管理も可能です。しかも、クラウド上のシステムをオンプレミスに戻したければいつでも戻せます。このような選択の自由はvCloud Airにはありません。だからAzureなのです」
※ vCloud Air上でWindows Server 2003を稼働させた場合、マイクロソフト社のサポート外となります。あくまでも自己責任でご利用ください。