マイクロソフトOSS 戦略担当部長が語る「Azureがビジネスとの相性がよい理由」

第1回:マイクロソフトが推進する「デジタルトランスフォーメーション」と「DevOps」

現在、ビジネスを成功に導くシステム開発のキーワードは「デジタルトランスフォーメーション」「DevOps」の2つと言えるでしょう。

「デジタルトランスフォーメーション」とは、文字通り、企業活動のデジタルへの変革を意味する概念です。これまでもECやソーシャルメディアの活用・分析などのように、企業活動とデジタル化は切り離せない関係にありましたが、それに加えて現在では、モバイル・IoT・ビッグデータなど、デジタルの活用は大幅に広がってきています。この対応のためには、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)などを活用した柔軟な開発・運用環境が欠かせません。

もう一方の「DevOps」は、開発チーム(Development)と運用チーム(Operations)が協力しあって開発を進めていく概念です。開発者は運用を意識した開発を、運用者は改善に有用な監視とフィードバックを開発側に行うことで、顧客にとってのビジネスの価値を高めることを目的としています。DevOpsが導入されると、サービスや機能の追加が日常的に行われるようになりますが、そこで必要になるのが堅牢な運用環境と柔軟な開発環境です。

これらに対応するため、Azureでは、OSSの展開を可能にしています。

そこで、今マイクロソフトが進めていく取り組みや、企業やビジネスの価値を高めるためのOSSの活用をどのようにとらえているか、さらにデジタルトランスフォーメーションやDevOpsとAzureの関係について、日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSS戦略担当部長の新井 真一郎氏にお話を伺いました。

デジタルトランスフォーメーション化の潮流

まずマイクロソフトでは、デジタルトランスフォーメーションの流れをどのようにとらえているのでしょうか

新井

何より重要なのは、マイクロソフトは、企業や個人の皆様がやりたかったことを可能にする、お客様の成功をサポートすることがミッションになっているということです。

その視点で見ると、日本には、デジタル活用に積極的な企業がある一方、あまりデジタルに依存せず、現在あるものを改善していこうという企業があります。そのうち『伸びているなあ』と感じるのは、デジタルを上手に活用している企業ですね。

日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSS戦略担当部長 新井 真一郎氏
日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSS戦略担当部長 新井 真一郎氏

では、デジタルを活用している企業としては、どのような事例があるのでしょうか

新井

東京サマーランド様の事例がわかりやすいと思います。サマーランド様では映像解析ソリューションを導入し、ネットワークカメラで取得した映像から顔を検知してマイクロソフトのコグニティブサービス(画像などの認知サービス)に送信、年齢や性別・感情などのデータを取得して解析の元情報としています。

東京サマーランドの事例
東京サマーランドの事例

そのようなシステムの導入によって何が変わってくるのでしょうか

新井

たとえば売店などで、商品を最適に準備することができます。ファミリーがたくさん来る時間帯に子ども向けの製品がない、女性がグループでいらっしゃるときに女性向けの製品が揃わないといった、ミスマッチを防ぐことができるようになります。

デジタルトランスフォーメーション化に必要なマインドは?

もっとも、単純にシステム部員をそろえればデジタルトランスフォーメーション化できるというわけではありません。よりデジタルにシフトしていくということであれば、それに沿った人材の確保やデジタルが苦手な人への対応、ブラックボックス化しがちなデジタルに対する不安の払拭が必要になります。ではデジタルトランスフォーメーション化のために、具体的にはどのようなマインドが必要になってくるでしょうか。

具体的なデジタルトランスフォーメーションの活用事例はありますか

新井

自動車配車サービスの『Uber』があります。会社はオフィスを持たずにタクシー業務ができますが、それ故に、利用者はやはり不安感を抱きがちです。そのために、ドライバーが毎日仕事を始める際には、顔認証によるリアルタイムでの本人確認、IDチェックをしてもらい、登録済みのドライバーであることが確実に確認されます。そしてその写真データを使うことで、誰が運転手なのかを利用者にもわかってもらえるようになっています。顔認証がうまくいかないと、サングラスをしているドライバーには、サングラスを外して顔を映すように指示をしたりもするのです。対人が基本である通常のタクシーであれば、このような施策は必要ありませんが、Uberでは、その『人対人』の部分をデジタル技術で再現しているわけです。まさに、1人ひとりのお客様が安心してUberを使えるようにするためのデジタルトランスフォーメーションといえるのではないでしょうか。

Uberの事例
Uberの事例

デジタルトランスフォーメーションには、デジタルの効率の良さに加えて、最終的なお客様に安心・満足してもらえる設計が必要だといえそうです。

デジタルトランスフォーメーションとDevOpsの関係は?

最終的なお客様の視点を大切にするということは、まさに運用を意識しながら開発するDevOpsの思想につながります。では、デジタルトランスフォーメーションとDevOpsは、どのような関係になっていくのでしょうか。

デジタルトランスフォーメーションの意識を持ったDevOpsの取り組みについてどのようにお考えですか

新井

いかに短時間で実践してみせるか、という意識が大切です。1年かけて開発し、その後のリリースとなると、リリース時には1年前の技術を使って実装していることになりますよね。それではビジネスの仕組みや、法律などルールの変化に追いつけない可能性があります。

成功している事例には、どのようなものがあるでしょうか

新井

NECソリューションイノベータ様のソフトウェア開発・運用に、AzureとOSSで構成したDevOpsを導入したところ、以前は8か月かかっていたリリースサイクルを最短1週間に短縮することができました。プロトタイプを作ってリリースし、直し、またリリースして、ということを繰り返す考え方です。そして新たに開発した、残業時間管理やメンタルヘルス管理などの機能を提供する、職場環境改善ツールでは、わずか3か月でのリリースを実現されました。

近頃の職場環境は定時労働とフレックスタイムだけではなく、リモートワークや在宅勤務といったワークスタイルも検討されるようになってきています。そのような環境の変化にも対応できるように開発を進められたのでしょうか

新井

社員の職場環境に柔軟に対応したいというニーズはこれまでもあったはずです。それがDevOpsの導入でスピーディーな対応が可能になったということはいえると思います。またそれに加え、企業が、そのような開発に対して投資できる構造に変わってきたこともあるのではないかと思います。

日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSS戦略担当部長 新井 真一郎氏

DevOpsとクラウドはなぜ相性がよいのか

企業の変革によって求められるようになった、DevOpsという開発スタイル。この手法はクラウドと相性がよいといわれていますが、それはなぜでしょうか。そしてそこに、マイクロソフトはどのように取り組んでいくのでしょうか。

DevOpsで、開発速度や生産性が上がった事例をご紹介ください

新井

自動車メーカーのVOLVOでは、かつてQA(品質保証)とテストを行った後にリリースする、という部分で人手と時間をかけていましたが、Azure上でRed Hat OpenShift Container Platform と Ansible を利用することで全自動化に成功しました。このようなOSSのコンテナ管理ツール、自動化ツールは世の中では多種多様なものが使われています。

具体的にはどのようなことでしょう?

新井

物理サーバー、OSをクラウドとコンテナでレイヤー化することで、短時間での環境構築ができます。自動化した環境の上でアプリケーションを配布したり、テスト自体も自動化させることで、人手をほとんど介さずにリリースできるようになっています。

どのような点で、DevOpsとAzureの相性がよいと思われますか

新井

まず『クラウドのよさを生かせるのがDevOpsである』という前提があります。VOLVOのところで説明したRed HatのOpenShiftですが、”Test drive Red Hat OpenShift on Azure”を利用することで、気軽に誰でも試しに使ってみることができるのです。このTest driveでは、Azure の管理ポータル画面で、ボタンを数クリックするだけで、自動的にOpenShiftのコンテナ環境を構築して試せる、というところまでAzureでは準備がされています。体感してもらった後は、2018年に提供予定のRed Hat OpenShift Dedicated on Microsoft Azureにより、本番環境でも利用が可能になります。

他にDevOpsとAzureの相性のよさがわかる事例があれば教えてください

新井

Azureではアプリケーションの開発、実行に必要なクラウドサービスとして、IaaSだけでなく多岐にわたるPaaSも組み合わせて構成を自由に作れます。Azure上でさまざまなOSSのシステムを選択できるようになっているため、しっかりカスタマイズして自社に最適な環境を作りたいIaaSでも、速やかに開発環境を整えたいPaaSでも、柔軟に対応できるのがAzureのよさです。

IaaS、PaaSの豊富な選択肢を備える Azure
IaaS、PaaSの豊富な選択肢を備える Azure

企業のデジタルトランスフォーメーション化を進めるために、Azureではどのような取り組みを進めているのでしょうか

新井

まず、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みで活用してほしい、AIやIoT、データ管理・分析などの対応するサービスをどんどん追加しています。特にOSSの領域では、MySQL、PostgreSQL、hadoop、Spark、Cassandra、MongoDBといった、デジタルトランスフォーメーションに不可欠なデータ管理・分析サービスの強化に取り組んでいます。あと管理的な面でいえば、日本の法律に準拠したクラウドサービスを利用でき、また日本円での支払いも可能です。また、第一生命保険株式会社様をはじめとした金融業のお客様では、監督官庁の検査対応等に対応してほしいという依頼がありましたが、Azureでは、金融機関向けに特別に用意された「M248」と呼ばれる変更契約プログラムがあり、パブリッククラウドとしては初めてそういった要望にも応えています。さらに、クラウドセキュリティに対する安全規格、認証プログラムも、全世界、そして日本において積極的に取得しています。このように、我々は常に、企業の皆様が安心して使えるクラウドを提供したいと思っています。

デジタルトランスフォーメーションに不可欠なOSSのデータ管理・分析サービス
デジタルトランスフォーメーションに不可欠なOSSのデータ管理・分析サービス

顧客の成功のために、Azureの進化を推し進めるマイクロソフト。第2回では、OSSに対する具体的な取り組みについて伺っていきます

第2回:マイクロソフトのオープンソースプロダクトへの取り組み

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