マイクロソフトOSS 戦略担当部長が語る「Azureがビジネスとの相性がよい理由」

第2回:マイクロソフトのオープンソースプロダクトへの取り組み

オープンソースソフトウェア(以下、OSS)への対応を積極的に進めているマイクロソフト。前回の記事でDevOpsやデジタルトランスフォーメーションとクラウドの相性、Azureの対応などをご紹介しましたが、マイクロソフトはこれからOSSにどのように関与していくのでしょうか。

日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSS戦略担当部長の新井 真一郎氏に、マイクロソフトのOSSへの取り組みの狙いを伺いました。

OSSを推進する理由

OSSを使ったサービスを推進する理由を教えてください

新井

OSSを推進するまでのマイクロソフトの企業ミッションは『すべてのデスクとすべての家庭に1台のコンピュータを』でした。これを言いかえると、ビジネスを自社のライセンスの契約数で見ているということです。それが今では『地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにする』という企業ミッションに変わりました。これはつまり、自社のライセンス販売を主眼においたビジネスから、技術の選択肢と柔軟性を大切にし、サービスでお客様を支えていくビジネスに変わってきているということです。お客様がデジタルで自社のサービスやソリューションを変革したいというときにAzureのようなクラウドが便利であるにもかかわらず、それと連携できるのがWindows ServerやSQL Serverをはじめとしたマイクロソフトの製品だけではお客様を十分に支援できません。そこで、OSSなのです。

『すべてのデスクとすべての家庭に1台のコンピュータを』『地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにする』

それがMicrosoft Open Cloudのアプローチなのですね

新井

その通りです。OSSのキモとなるのはエコシステムです。利用するだけではなく、そのシステムに参加していくことが重要だと考えており、昨年からThe Linux Foundation(日本における Linux の普及、保護、および標準化に取り組んでいる非営利のコンソーシアム)にプラチナメンバーとして参加、今年の7月には、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)にプラチナメンバーとして参加しています。

Microsoft Open Cloud:4つのアプローチ

OSSの世界にマイクロソフトが参画したことにビックリしている人も多いのではないでしょうか

新井

1年くらい前まではOSSのイベントに出展すると違和感を持たれていたかもしれません(笑)。でも今では国内外でOSSのイベントで複数年にわたり繰り返し講演もしますし、Docker Containerの開発者が多く在籍している企業のトップランキングに、Docker社の次の第2位にマイクロソフトがあるくらいです。2017年7月に行われたソフトバンクワールドでも、Docker社のエンジニアとマイクロソフトのスタッフが、国内外での協業をはじめ、ごく自然に話をするようになっています。個々のお客様の手応えもよかったと思います。

日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSS戦略担当部長 新井 真一郎氏

デジタルトランスフォーメーションとAzureの相性のよさ

マイクロソフトが本気でOSSに取り組んでいることがよくわかります。そこで、AzureでのデジタルトランスフォーメーションやDevOpsの具体的な活用事例をご紹介いただきたいのですが、たとえば、コグニティブサービス(人間の音声や表情などをコンピュータが認知・理解し、最適なサービスを提供する)などではいかがでしょうか。

コグニティブサービスの活用例

新井

前回ご紹介した、東京サマーランド様の事例はまさにぴったりではないでしょうか。画像の情報から、顔の照合や検知、さらに感情の解析まで行い、それによってスタッフの配置や品揃えの最適化、また接客品質の向上も実現することができます。

デジタルトランスフォーメーションをさらに進めるには、コグニティブサービスで得たデータの分析・活用が必要になると思います。データの分析・活用には、HadoopやSparkなどのOSSが利用できそうですが、いかがでしょう

新井

パートナー企業とともに、Hadoopの導入も推進しています。アムステルダムのSchiphol空港では、エレベーターやエスカレーターにセンサーを設置し、故障予測をするプラットフォームを構築しました。さらに現在では、顔認証・指紋認証の実証実験や試験利用も始まっています。Hadoopは、このようなIoTやAI、コグニティブサービスのバックエンドとしてははずせない、データの分析・活用テクノロジーです。またAzureではこのような分散処理環境を構築できるだけでなく、NoSQLの活用もできます。

データベースとしてSQL ServerやOracleだけではなく、NoSQLも使えるのですね

新井

はい。今マイクロソフト社内では、Office 365のMyAnalyticsを活用して『働き方の見える化』が実現しています。会議にかけた時間が目標よりも長かったとか、最近接する時間が少なくなっている人は誰かなど、仕事の仕方を改善するためのアドバイスができるようになっているのですが、このシステムを支えているのがオープンソースのNoSQLであるCassandraです。Cassandraは単一障害点がないためクラウドと相性がよく、大量の非構造データをリアルタイムに処理しなければならない案件に向いています。

日本マイクロソフト株式会社 マーケティング&オペレーションズ クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSS戦略担当部長 新井 真一郎氏

Cassandraなどで分析・活用したデータのストア先には、オープンソースのMySQLやPostgreSQLも人気が高いですが、Azureでのサポートもよくなったと聞いています

新井

そうですね。『Azure Database for MySQL』『Azure Database for PostgreSQL』というサービスですが、PaaSで利用できます。I/O性能を決めるだけでデプロイできて、能力が不足しているようであれば、管理画面でスライダーを動かすだけで、ほぼダウンタイム無く変更できるんですよ。多重性も備えており可用性も確保しています。

『Azure Database for MySQL』『Azure Database for PostgreSQL』

OSSの活用にあたって、ユーザーとしては日本語によるサポートが気になると思いますが、その体制はどのようになっていますか

新井

先ほども出ましたMySQL、PostgreSQLのサービスのオンラインマニュアルでは日本語化対応が進むなど、英語の文書を日本語化する仕組みはでき上がっています。オープンソースを活用する中で、日本は真っ先に言語対応をしなければならない国の1つになっているのです。

マイクロソフトがオープンソースに真剣に取り組んでいることがよくわかりました。日本語のサポートもこれから積極的に行われることで、言語の壁を感じているエンジニアにも道が見えてきそうです。

ライセンスのビジネスからサービス提供のビジネスへ転換したマイクロソフト。第3回では、そのようなマイクロソフトのパートナーとして、SB C&Sがどのようなサービスを展開しているか、具体的にご紹介します。

第3回:企業はどのようにオープンソースの潮流を取り込んで行けばよいのか

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