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ペネトレーションテスト(ペンテスト)とは?脆弱性診断の違いや実施プロセスを解説

2025.9.12

ペネトレーションテスト(ペンテスト)とは?脆弱性診断の違いや実施プロセスを解説

ペネトレーションテスト(ペンテスト)とは?脆弱性診断の違いや実施プロセスを解説

目次

  1. ペネトレーションテストとは
  2. ペネトレーションテストと脆弱性診断の違い
  3. ペネトレーションテストの種類
    1. 内部ペネトレーションテスト
    2. 外部ペネトレーションテスト
  4. ペネトレーションテスト導入のメリット
    1. 現実的な脆弱性脅威を発見
    2. セキュリティ対策の実効性確認
    3. 企業イメージや信頼性の向上につながる
  5. ペネトレーションテスト導入のデメリット
  6. ペネトレーションテストの実施プロセス
    1. 事前準備・計画策定
    2. 調査対象へテスト実行・報告
    3. テストの報告書を作成
  7. まとめ

ペネトレーションテスト(ペンテスト)は、実際のサイバー攻撃を模倣してシステムへの侵入を試み、悪用可能な脆弱性や攻撃経路を特定するセキュリティ評価手法です。

サイバーセキュリティの重要性が高まる現代において、企業は自社のシステムセキュリティを客観的に評価する必要があります。その中でも注目されているのが、ペネトレーションテスト(ペンテスト)です。実際の攻撃手法を模倣して行われるこのテストは、従来の脆弱性診断では発見できない実践的なセキュリティリスクを特定できます。

本記事では、ペネトレーションテストの基本概念から実施プロセスまで、企業が知るべき重要なポイントを解説します。

ペネトレーションテストとは

ペネトレーションテスト(Penetration Test、略してペンテスト)とは、企業や組織が利用しているコンピューターシステムに対し、外部からの悪意のある攻撃者がよく用いる方法や技術による侵入を試みて、システムにセキュリティ上の脆弱性がないかをチェックする手法です。

このテストは、ホワイトハッカーと呼ばれる善意のセキュリティ専門家によって実施される疑似攻撃です。実際のサイバー攻撃と同様の手法を用いながらも、システムに損害を与えることなく、セキュリティの弱点を発見することを目的としています。

ペネトレーションテストの特徴は、単純にツールを使った自動スキャンではなく、攻撃者の思考プロセスを模倣した手動テストが中心となることです。これにより、複数の脆弱性を組み合わせた複合的な攻撃や、創意工夫による新しい攻撃手法も検証できます。

ペネトレーションテストと脆弱性診断の違い

ペネトレーションテストと脆弱性診断は、いずれもシステムのセキュリティ評価を行う手法ですが、異なる目的とアプローチを持っています。脆弱性診断は、システムに脆弱性がないかどうかをチェックすることを目的としたテストです。

比較項目 ペネトレーションテスト 脆弱性診断
主な目的 実際の攻撃シナリオでの侵入可能性検証 システム内の脆弱性の網羅的発見
実施方法 手動テスト中心(攻撃者視点) 自動スキャンツール中心
検出内容 悪用可能な脆弱性と攻撃経路 既知の脆弱性の有無
実施期間 数日〜数週間 数時間〜数日
コスト 比較的高額 比較的低額

脆弱性診断は既知の脆弱性データベースに基づいて潜在的な弱点を網羅的に発見することを目的とし、自動化されたスキャンツールにより短時間で多くの項目をチェックできます。しかし、発見された脆弱性が実際に悪用可能かどうかの検証は行われません。

一方、ペネトレーションテストでは発見された脆弱性を実際に悪用して侵入を試みるため、「実際に悪用可能な脆弱性」を特定できます。また、攻撃者の視点からシステム全体を評価するため、予想外の攻撃経路や複合的な脆弱性も発見可能です。

関連記事:脆弱性診断(セキュリティ診断)とは?種類から実施方法まで解説
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ペネトレーションテストの種類

ペネトレーションテストは、実施する観点や攻撃の起点によっていくつかの種類に分類されます。企業は自社のリスクプロファイルに応じて、適切なテスト種類を選択することが欠かせません。

内部ペネトレーションテスト

内部ペネトレーションテストは、組織内部のネットワークから実施される侵入テストです。内部犯行や、既に内部ネットワークに侵入した攻撃者による被害拡大のシナリオを想定しています。

主要な検証項目

  • 悪意のある内部者による機密情報窃取
  • 外部攻撃者による初期侵入後の権限昇格
  • 内部ネットワーク内での横移動攻撃
  • 重要サーバーやデータベースへの不正アクセス

内部テストでは、社内ネットワークに接続した状態から、Active Directoryの攻撃、ネットワーク分離の検証、サーバー間の信頼関係の悪用などが検証されます。多くの企業では境界防御に重点を置いているため、内部セキュリティの弱点が発見されることが多く、実施価値の高いテストといえるでしょう。

また、内部テストでは物理的なセキュリティも評価の対象です。オフィスへの不正侵入、デバイスの物理的な操作、ソーシャルエンジニアリングによる情報収集なども、必要に応じて実施されます。

外部ペネトレーションテスト

外部ペネトレーションテストは、インターネットなど外部ネットワークから組織のシステムに対して実施される侵入テストです。実際のサイバー攻撃者が行う初期侵入のプロセスを模倣します。

主要な検証項目

  • Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃
  • ネットワークサービスの設定不備を利用した侵入
  • フィッシングメールやソーシャルエンジニアリング
  • 公開サーバーやクラウドサービスの設定ミス

外部テストでは、攻撃者が事前に行う情報収集フェーズから開始されます。OSINT(Open Source Intelligence)技術を用いて、組織の公開情報、従業員情報、使用技術、ネットワーク構成などを調査し、攻撃の糸口を見つけ出します。

近年のリモートワーク普及により、VPN接続やクラウドサービスの設定不備が攻撃の起点となるケースも少なくありません。外部テストでは、これらの新しい攻撃ベクターも重要な検証対象となるでしょう。

関連記事:エンドポイントセキュリティとは?主要技術や対策、導入ポイントを解説

ペネトレーションテスト導入のメリット

ペネトレーションテストの導入は、企業のセキュリティ体制強化において多面的なメリットをもたらします。

現実的な脆弱性脅威を発見

ペネトレーションテストの最大のメリットは、理論上の脆弱性ではなく、実際に悪用可能な脆弱性を発見できることです。自動診断ツールでは検出できない、複数の脆弱性を組み合わせた攻撃経路や、設定ミスによる論理的な脆弱性を特定可能です。

発見される脅威の例

  • 権限昇格につながる設定の組み合わせ
  • ビジネスロジックの脆弱性
  • 人的要因による情報漏洩リスク
  • 想定外のネットワーク経路を悪用した攻撃

また、ペネトレーションテストでは攻撃の影響範囲も具体的に示されます。「この脆弱性が悪用された場合、どのデータにアクセスされ、どの程度のビジネス影響があるか」といった現実的なリスク評価が可能になることで、経営層に対してセキュリティリスクを具体的に説明できるほか、適切な投資判断にもつなげられるでしょう。

セキュリティ対策の実効性確認

企業が導入している既存のセキュリティ対策が、実際の攻撃に対してどの程度有効かを検証できます。ファイアウォール、IDS/IPS、アンチウイルスソフトウェアなどの防御システムが適切に機能しているかを実践的に確認できるでしょう。

検証できるセキュリティ対策

  • ネットワーク境界防御の有効性
  • エンドポイント保護の検知能力
  • インシデント対応体制の実効性
  • 従業員のセキュリティ意識レベル

さらに、セキュリティ対策の組み合わせによる相乗効果や、逆に対策間の矛盾による弱点なども発見できます。これにより、セキュリティ投資の最適化や、対策の優先順位付けに役立つ情報を得られるはずです。

企業イメージや信頼性の向上につながる

定期的なペネトレーションテストの実施とその結果の改善は、顧客やパートナー企業からの信頼向上につながります。特にBtoB取引では、取引先のセキュリティレベルが契約条件として重視される傾向が強まっています。

  • 顧客データ保護に対する企業姿勢のアピール
  • 業界標準やコンプライアンス要件の充足
  • セキュリティ認証取得の支援材料
  • 投資家や金融機関からの評価向上

このような信頼性向上の効果が見込めるでしょう。

ペネトレーションテスト導入のデメリット

ペネトレーションテストには多くのメリットがある一方で、導入前に検討すべきデメリットや注意点も存在します。

コストと時間の負担 専門的なスキルを持つエンジニアによる手動作業が中心となるため、脆弱性診断と比較して高額なコストがかかります。
システムへの潜在的リスク 実際の攻撃手法を用いるため、稀にシステムの不安定化やサービス停止が発生する可能性があります。
専門知識の必要性 テスト結果を適切に理解し、効果的な改善策を実施するためには、一定レベルのセキュリティ専門知識が必要です。
法的・倫理的考慮事項 疑似攻撃であるため、実施前に明確な契約と合意が必要で、クラウドサービス利用時はプロバイダーへの事前届出が必要な場合もあります。

ペネトレーションテストの実施プロセス

ペネトレーションテストを効果的に実施するためには、体系的なプロセスに従って進めることが欠かせません。各段階で適切な準備と検証を行うことで、テストの品質と効果を最大化できます。

事前準備・計画策定

ペネトレーションテストの成功は、事前準備の質によって大きく左右されるといっても過言ではありません。この段階では、テストの目的、範囲、制約条件を明確に定義し、関係者間で合意を形成します。

主要な準備項目

テスト範囲の定義 対象システム、ネットワーク範囲、除外項目の明確化
テスト手法の選択 内部/外部、ブラックボックス/ホワイトボックスの決定
実施スケジュール テスト期間、実施時間帯、緊急時対応の計画
法的契約の整備 秘密保持契約、責任範囲、緊急時対応の合意

調査対象へテスト実行・報告

実際のテスト実行では、攻撃者の思考プロセスに基づいて段階的にテストを進めます。一般的には、情報収集、脆弱性特定、侵入試行、権限昇格、目標達成の順序で実施されます。

テスト実行の主要段階

  1. 情報収集:対象システムの公開情報、ネットワーク構成の調査
  2. スキャニング:ポートスキャン、サービス特定、脆弱性の探索
  3. 侵入試行:発見した脆弱性を利用した実際の侵入攻撃
  4. 権限昇格:取得したアクセス権限のより高い権限への昇格試行
  5. 目標達成:機密情報へのアクセス、システム制御の獲得

テストの報告書を作成

ペネトレーションテストの価値は、テスト結果を適切に文書化し、実行可能な改善提案を行うことで最大化されます。報告書は技術者向けの詳細情報と、経営層向けの要約情報の両方を含む必要がある点に注意しましょう。

報告書の主な構成要素

エグゼクティブサマリー 経営層向けのリスク評価と優先改善項目
テスト概要 実施範囲、手法、期間、制約条件の説明
発見事項詳細 各脆弱性の技術的詳細、再現手順、影響度評価
改善提案 具体的な対策方法、実施優先度、期待効果

関連記事:SOC(Security Operations Center)とは?主な機能や役割、構築から運用体制まで解説

まとめ

ペネトレーションテストは、従来の脆弱性診断では発見できない実践的なセキュリティリスクを特定し、企業の実際のセキュリティレベルを客観的に評価できる手法のひとつです。実際の攻撃者の視点からシステムを検証することで、悪用可能な具体的な脅威を発見し、既存のセキュリティ対策の実効性確認や企業の信頼性向上にも貢献します。

一方で、コストや専門知識の必要性などのデメリットも存在するため、企業は自社の状況に応じて適切な実施方針を検討する必要があります。効果的な実施には事前準備から報告書作成まで体系的なプロセスに従うことが不可欠であり、継続的な改善サイクルとして位置づけることで組織全体のセキュリティレベル向上につながるでしょう。

この記事の執筆者

イラスト:須賀田 淳さん

SB C&S株式会社
ICT事業部 ネットワーク&セキュリティ推進本部
須賀田 淳

サイバーセキュリティのマーケティング歴5年。
最新のトレンドや事例をリサーチ。専門的なテーマも、初めての方が理解しやすいように噛み砕いて発信しています。

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