今さら聞けない VDIの話
テレワークには VDI?その効果と概要を解説
- 連載記事/コラム
多様な働き方の促進や、政府が進める2020年7月のテレワーク・デイ実施など、テレワークをめぐる状況は急速に企業に浸透しています。
しかし「テレワーク」を実施するには、必ずしも PC とインターネットを使用して、場所や時間を選ばずに仕事ができる環境を整備しなければいけないという訳ではありません。
テレワークを推進する企業が抑えるべき概要や効果、そしてテレワークを実現するための VDI といった技術について解説します。
新人「先輩、今、会社でもテレワークの導入を急いで検討していると聞きました。今のうちに準備しておくことは何かありますか?」
先輩「そうだな、テレワークの導入では仕事で使うデータをどうするかが鍵になる。ウチの会社では、それに合わせて仮想デスクトップ環境として VDI やクラウドを活用していくことになるだろうな。」
新人「以前行った展示会でも、テレワークについて聞いたことがあるのですが、・・・正直ノート PC の持ち出しと何が違うのか、まだちょっと理解できていないんですよね。」
先輩「よし、それでは、まずテレワークとは何か、それから実現するテクノロジーとして VDI や DaaS について説明しようか。」
新人「はい。」
VDIが支えるテレワークの概要と効果
先輩「まずは、テレワークがどういうもので、どういう効果があるかのおさらいだ」
新型コロナウイルスへの対応として、すぐにテレワークに移行できた企業もあれば、なかなか移行できないところも多かった。
テレワークがニュースでも頻繁に取り上げられるなかで、改めてテレワークへの取り組みを本格的に始めたウチのような企業も増えているし、まず初めにテレワークの概要と効果について考えてみようか。
そもそもテレワークとは?
テレワークとは、tele(離れた)とワーク(働く)を合わせた造語で、情報通信技術を活用することで場所や時間にとらわれない柔軟な働き方と定義されている。
テレワークと一言で言っても以下の3つのパターンがある。
- 在宅でのテレワーク
自宅で会社の仕事をできる環境を整えて仕事をする働き方 - モバイルワーク
スマートフォンで移動中などに仕事をする働き方 - サテライトオフィスでのテレワーク
定常的に通勤する勤務先とは違うサテライトオフィスで仕事をする働き方
これまで企業がテレワークを推進する背景には、国が推進する働き方改革の重要な施策になっている背景があるんだ。
実際に、2019年7月には「テレワーク・デイズ」と称した働き方改革の国民運動を、総務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省・内閣官房・内閣府が連携して行われている。
このように企業が段階的にテレワークを取り入れる過程の最中、新型コロナウイルスが発生したことにより、急速にテレワークに向けた体制づくりが必要になったわけだ
テレワークの効果とは?
テレワークの効果としては以下の7つに集約できる。
- 事業継続性の確保
災害や感染症の流行時でも事業継続ができる - 環境負荷の軽減
通勤の回数や時間の削減、オフィスの電力省力化によって環境に対する負荷を低減する - 生産性の向上
計画的・集中的な作業実施を行うことによる生産性の向上 - 雇用創出と労働力創造
通勤圏外の人材の新規雇用 - オフィスコスト削減
オフィススペース、コピー用紙、交通費の削減 - 優秀な社員の確保
育児・介護等があっても働きやすい環境の提供 - ワーク・ライフ・バランスの実現
家族と過ごす時間の増加
テレワークを導入することで得られる効果はこのように広範囲に及ぶ。
次は、テレワークに必要なものを考えてみようか。
VDI はじめテレワークに必要なもの
テレワークを実現させるためには3つの要素が必要になる。
- 業務のためのデータとデバイス
- 遠隔地からのコミュニケーション手段
- 従業員の管理
それぞれ簡単に解説しよう。
- 1. 業務のためのデバイスとデータ
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遠隔地で作業するには、PCやタブレット、スマートフォンといったハードウエアと、業務のために必要な資料や専用のアプリケーション、データベースへのアクセスなどのソフトウェアとネットワーク環境が必要になる。
社外での作業になるから、ハードウェアの紛失や盗難、情報漏洩などのリスクを排除する必要がある。
例えば、持ち出すクライアント端末での処理を最小限に留めるとか、VDI などクラウド環境にソフトウェアを用意したり、専用のネットワークや業務データを用意するなど、テレワークを実現するにはハードウェアとソフトウェア、さらにはそれにアクセスするためのネットワーク環境を準備する必要がある。
- 2. 遠隔地からのコミュニケーション手段
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テレワークの場合、コミュニケーションが取りづらくなるリスクがある。だから、業務を一緒に行うメンバーと円滑なコミュニケーションを取れる環境も必要になる。電話はもちろん、オンラインでのミーティングや情報共有を行うためのアプリケーションや、ツールの準備が必要になる。
会社からスマートフォンが支給されていなかったり、オンライン会議のシステムやツールを普段から使用していないと、テレワークを実施する際に以外と大きな障壁となる。
- 3. 従業員の管理
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遠隔で仕事をしている時も労務は法律上しっかり管理しないといけない。そのためには、オンライン上で勤怠や業務管理ができる環境も整える必要がある。
コミュニケーション手段が限られてくるから、部下がどのように働いているのか、体調やストレスをどう把握するかなどを考える必要がある。
VDIやテレワーク導入前にセキュリティ面から考えるデータの扱い方
新人「テレワークというと、なんとなくノートブック PC で、家から作業するぐらいに考えていたのですが、実際に導入するとなると意外と大変そうですね。」
先輩「その通り。次は IT システムを預かる側にとっては、特に神経を使うセキュリティをどう担保していくかだ」
新人「確かに、会社の外で作業するわけですから、情報漏えいは一番気になりますね」
先輩「そうだね。テレワークを始めるためにクリアしないといけないことは色々あるんだけど、その中でも重要なセキュリティという観点から、テレワークについて話していこう」
機密情報や個人情報など重要度の高いデータ
テレワークを実現するためのソリューションを選定する時には、テレワークで行われる業務の種類に合わせた「業務のためのデータとデバイス」をどう保護するのかという面が重要になってくる。
特に、機密情報や個人情報など重要度の高いデータが中心の場合は、テレワークを実現するための注意すべきことが増える。
例えば、社内ネットワークへの接続方法やテレワークで使用するデバイス、ユーザー認証など、求めらえるセキュリティ基準で運用できるようにしっかりとした保護を確保する必要があると言える。
メールでの業務や、デバイス上での作業が中心の場合
会社からノート PC が支給されていて、メールでの業務やデバイス内での作業が中心の場合、業務で使用するアプリやメール、データのやり取りですでにクラウドサービスを利用しているなら、ノートPCの持ち出しを許可したり、クラウドサービスへのアクセス許可を見直せば、テレワークの環境は準備できるからテレワーク導入の難易度は低くなる。
ただし、データへのアクセスに柔軟性を持てば持つほど、不正アクセスやハッカーなどに狙われる危険性が高くなるし、業務で使用する PC の持ち出しは、紛失や盗難、情報漏洩などが発生するリスクも高まってしまう。
そのため、テレワーク導入の難易度が下がっているからといって注意を怠らず、セキュリティに対しては慎重な対応をすべきだと言えるね。
テレワークに VDI や DaaS などの仮想デスクトップが最適な理由
新人「なるほど・・・企業の状況によって必要とするテレワーク環境も異なってくるんですね」
先輩「そうだね。そういった企業ごとに状況が異なるテレワークを進める上で、使われる技術の一つが仮想デスクトップなんだ」
新人「仮想デスクトップというと、VDI や DaaS のことですか?」
先輩「その通り、VDI や DaaS はもともと従業員に柔軟な働き方を提供できる技術だから、その一つであるテレワークにも有効だし、管理性やセキュリティも確保できる。一時的ではなく、テレワークを継続していくのであれば仮想デスクトップの環境を構築した方がメリットは多いと思う。次は、VDIやDaaSでテレワークを実施するときのメリットについて説明しよう」
VDI や DaaS といった仮想デスクトップは、テレワークでも従業員にいつもと同じ作業環境を提供できるという点が一番のメリットだ。
VDI と DaaS では、作業データがどこに置かれているかによって、データの保護やアクセスを管理する方法がそれぞれ異なるから。どちらを導入するかは、それぞれの企業の業態や、テレワークを行う従業員の作業内容にあわせて選択する必要がある。
VDI や DaaSでテレワークを行うメリット
VDI や DaaS などの仮想デスクトップ環境でテレワークを導入するメリットは以下の3点が挙げられる。
- セキュリティレベルの確保
- 場所やデバイスを選ばず同じ作業環境を使用できる
- 端末の管理がしやすくなる
- 1. セキュリティレベルの確保
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VDI や DaaS は、どちらもサーバ上に構築された仮想のデスクトップに接続することで、従業員に作業環境を提供する。
VDI は自社ネットワーク内のサーバ、DaaS はクラウド上のサーバにデータがあるという違いはあるけど、どちらも従業員が使用する端末に業務の情報が残らないという点では一緒だ。
そのため、従業員が持ち出したノート PC を物理的に紛失したり、盗難された時の情報流出リスクを減らすことに繋がる。
- 2. 場所やデバイスを選ばず同じ作業環境を使用できる
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VDI や DaaS では、どこからでも同じデスクトップ環境にアクセスすることができるようになる。
また、仮想デスクトップに接続するためのデバイスはサーバからの画面情報を受け取るだけだから、高いスペックも必要ない、場合によってはタブレットやスマートフォンでも作業できるし、サーバにアクセスする際のセキュリティさえクリアできれば、従業員の私物端末を仕事に使う BYOD も可能になる。
- 3. 端末が管理しやすくなる
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VDI も DaaS も業務で使用する PC はサーバ上にあるから、IT 部門は従業員が使用する端末の OS やソフトウェアをアップデートしたり・管理する手間から解放される。
その上仮想のデスクトップだけに、同一環境の準備や、新しい従業員のためのプロビジョニングの手間が大幅に削減されるのも IT 部門にとっては大きなメリットだな。
VDI や DaaS による作業環境以外のテレワーク導入時の課題
新人「VDI や DaaS ならテレワークの導入も簡単そうですね。でも VDI か DaaS を導入してから、テレワークとなると今すぐという訳には行かなそうですね。」
先輩「そうだね。仮想デスクトップでも DaaS なら比較的早くスタートできるけど、業務データやアクセスについては考慮する必要があるし、テレワークを進める上でのリスクや影響範囲を把握して、それに備えるのは IT 部門として良い考えだね。
あとは、VDI や DaaS を使用したテレワークは、作業環境という点では問題ないけど、テレワークにはそれ以外にも課題があるんだ。」
コミュニケーションの不足
直接顔を合わせない分、コミュニケーションがとりにくくなるという課題がある。
最近ではビデオ会議システムやチャットツールを使用することで、だいぶコミュニケーションは取りやすくなったけど、ツールに対して慣れる必要もあるし、企業によってはセキュリティポリシーでツールが使用しにくいところもある。重要な打ち合わせの時や、定期的に直接合うようにするなど、これは IT というより運用でカバーしていく部分でもあるな。
業務内容での不公平感
窓口業務などの接客や、動かせない社内システムでの作業が必要になるなど、テレワークにできない職種もあるから、社内での不公平感を生むという問題もある。
実際に行う業務にもよるけど、チームの中でテレワークができる仕事とテレワークが馴染まない仕事を交代制にして、メンバーそれぞれにテレワークの日を設けるなど、工夫次第で導入することができる職場もあるだろうね。
こちらも、IT 部門がサポートするのが難しい部分ではあるけど、新しいテクノロジーやソリューションを試してみるなど、テレワークができる範囲を広げていければ良いな。
まとめ
新人「テレワークと一口に言っても、実際に導入しようとすると考えることや、やらなければいけないことは多いですね。」
先輩「それでもテレワークは日本全体で推進されているし、ハードルが高いように見えて実際に始めてみると意外とスムーズに実施できる場合もある。もちろん IT 部門としては、どのようにテレワークを実現するのが自社にあった方法なのか、しっかり考える必要はあるけどね」
働き方改革や新型コロナウイルスを背景に急速な広がりを見せるテレワーク。テレワークといっても導入形式ごとに特徴や、メリット・デメリットがあります。
テレワークを導入する上では「業務のためのデータとデバイス」「遠隔地からのコミュニケーション手段」「従業員の管理」という3つの要素それぞれについて、自社の状況と導入方法を見極めた上で適切なソリューションを選択する必要があります。
SB C&S では、コミュニケーションを促進するためのサービス「Zoom」や、テレワークを実現する VDI や DaaS のためのソリューションのほか、柔軟な働き方と高いセキュリティと管理を両立するデジタルワークスペースのソリューションもご提供しています。
特にデジタルワークススペースは、VDI のように環境を構築する必要がなく、手軽にテレワークを始められる上に、デバイスや従業員の管理も一元的に統合できるため、導入する企業が増えているソリューションです。詳しくは、下記の製品ページまたはソリューションページをご確認ください。
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