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自力で構築・運用する人たちをどう支援できるか 中堅・中小企業のための「あらゆる意味でオーバースペックでないHCI」が 実現に近づいている

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「2 ノード vSAN」によるハイパーコンバージドインフラ(HCI)は、既に中堅・中小企業の間ではブームともいえる盛り上がりを見せている。これをベースに、SB C&S が「あらゆる意味でオーバースペックでない HCI」をまもなく本格デビューさせる。これはどのようなものなのだろうか。

ヴイエムウェアソリューションビジネス本部 ハイパーコンバージドインフラ シニアプロダクトスペシャリストの望月一平氏
ヴイエムウェア株式会社
ソリューションビジネス本部 ハイパーコンバージドインフラ シニアプロダクトスペシャリスト
望月一平氏

「VMware vSAN(以下、vSAN)を使ったハイパーコンバージドインフラ(以下、HCI)は、日本の中堅・中小企業には特に適しています」と、ヴイエムウェアソリューションビジネス本部ハイパーコンバージドインフラシニアプロダクトスペシャリストの望月一平氏は言う。

vSAN による HCI の最小構成は、「2ノード」から。つまりサーバ 2 台構成でも利用できる(「2 ノード vSAN」と呼ばれている)。さらに、この 2 台のサーバ間はオンボードの 10Gbps NIC の直結構成が可能なので、10Gbps スイッチを必要としない構成が可能であり、全体のコストを削減する効果が高い。技術的には、この 2 台のどちらかに障害が発生した場合に、どちらのサーバが生き残るかを判断するために使われる仮想マシンが必要で、仕組み自体は、3 台以上の構成と同じだが、2 ノード構成の場合は、この仮想マシンに対する要件が低い。極端な例として、この仮想マシンには VMware vSphere(以下、vSphere)が動作する安価なサーバなどを利用してもよい。

望月氏によると、国土の広い米国では、2 ノード vSAN を、点在するスーパーマーケットの「小規模店舗システム」として導入し、それらを「中央の本社側から集中的に管理する」ユースケースで展開されている事例もある。

一方日本では、拠点用途だけでなく、中堅・中小企業向けの小規模 HCI としても、急速に注目が高まっているという。

2ノードvSANでは、2台のサーバの間でデータがミラーリングされる。このため、万が一いずれかのサーバがダウンしたとしても、もう一方のサーバで運用を継続できる。つまり、ハードウェア障害にも対応する、堅牢さを備えた仮想化環境が利用できる。

ストレージ装置を使った従来型の仮想化環境と、2 ノード vSAN を比較すると、中堅・中小企業にとってのメリットは明白だと、望月氏は強調する。

従来型のストレージ装置を使った構成では、vSphere とストレージを別個に管理する必要がある。一方 vSAN では、vSphere のデータを管理する感覚で利用できる。

多くの中堅・中小企業では、仮想化環境を 1~3 人程度の担当者が、自ら勉強して、仮想化環境を運用している。vSAN をベースとした HCI では、これまでに習得した vSphere 運用のノウハウを、今後も生かすことができる。

「また、vSAN は、vSphere に組み込まれた 1 機能ですから、ストレージについても『vSphere 品質』だといえます」(望月氏)

vSAN には、使える機能にノード数による違いはない。つまり、コスト効果の高い 2 ノード構成でも、大規模な構成でも、ソフトウェアとしてのベーステクノロジー、品質は同等なのだ。

言い換えれば、大企業が重要な業務システムで利用しているテクノロジーと完全に同一のストレージソフトウェアを搭載した HCI を、中小企業でも手軽な物理構成で、使えることになる。

なぜ、この人たちが目を輝かせるのか

SB C&S ICT 事業本部 MD 本部 ICT ソリューション販売推進統括部 仮想化クラウド販売推進室、大塚正之氏
SB C&S株式会社
ICT 事業本部 MD 本部 ICT ソリューション販売推進統括部 仮想化クラウド販売推進室
大塚正之(VMware vExpert)

「地方の中堅・中小企業の方々は特に、2 ノード vSAN の話を聞く時の目の輝きが違います」と、VMware のディストリビューターである SB C&S の ICT 事業本部 MD 本部 ICT ソリューション販売推進統括部 仮想化クラウド販売推進室、大塚正之(VMware vExpert)は話す。

「見積もり依頼に『HCI』というキーワードが出てこないほうが珍しく、地方で HCI に関するセミナーを開催すると、質問が後から後から出てきて、終了のタイミングが計りにくいこともあります」(大塚氏)

これまでの IT インフラの構成は、こうした人々にとって、複雑化し過ぎたという。

「特に更新や拡張は大きな手間が掛かります。結局、いったん導入すると、(次の IT インフラ更改までの)5 年間は、同一の構成のまま我慢して運用していかなければならないことがよくあります。一方 HCI では、拡張はサーバを追加購入し、既存サーバによるクラスタ(グループ)に参加させる作業だけで済みます。また、日常のストレージ管理も、サーバを管理する感覚で実行できます。サーバに気を配っていれば、IT インフラ全体が自然にコントロールできます」(大塚)

また、外付けストレージ装置を使った従来の IT インフラ構成では、ストレージ接続にファイバーチャネル SAN を使うと、見積もりから構築、導入に至るまでに 2 カ月といった期間が掛かることが珍しくない。そもそもファイバーチャネル SAN はコストも掛かる。一方、一般的な HCI では、10Gbps イーサネットスイッチでストレージ接続とアプリケーション接続を賄う。このため、コストと時間が大幅に節約できる。

HCI の中でも、2 ノード vSAN になると、10Gbps イーサネットスイッチすら必要ない。ストレージのための 10Gbps ネットワークは 2 台のサーバをクロスケーブルでつなげばいい。このため、ネットワークのコストがほぼゼロになる。ハードウェアとしては、サーバを購入するだけで済む(実際にはもう 1 つの考慮ポイントがある。これについては後述する)。ネットワーク運用に関する知識も、最低限で運用できる。

「大掛かりな 10Gbps イーサネットスイッチを購入することなく、また、ネットワーク周りの面倒な設定もほぼなしに、データが自動的に二重化されて、さらに vSphere のライブマイグレーション機能である VMware vMotion や、再起動型可用性向上機能であるvSphere HA を備えた仮想化環境が、活用できます。ネットワーク周りのコストと面倒さの軽減は、2 ノード vSAN が持つ、もう 1 つの非常に大きな利点です。シンプルな構成ながら、可用性と保守性のメリットを手に入れられるのが最大の特徴と言えます」(大塚)

2 ノードvSAN ではネットワークスイッチも不要
2 ノード vSAN ではネットワークスイッチも不要

それでも HCI を躊躇してしまう理由

SB C&S MD 本部 技術統括部 第3 技術部1 課の稲葉直之
SB C&S株式会社
MD 本部 技術統括部 第 3 技術部 1 課
稲葉直之

「実はそれでも、『HCI は高い・複雑』というイメージを持たれてしまうことがあります」と、SB C&S MD 本部技術統括部 第 3 技術部 1 課の稲葉直之は言う。

2 ノード vSAN ではストレージも 10Gbps イーサネットスイッチも不要で、ハードウェアはサーバだけで済むのに、なぜなのだろうか。

理由は UPS(無停電電源装置)にあると、稲葉氏は指摘する。

「日本では、小規模ユーザーでも、UPS を希望されるケースがほとんどです。逆に、小規模ユーザーだからこそ、UPS が必須だとも言えます。サーバをオフィス内に設置しているため、停電やビルの電気設備法定点検などを避けられないからです」

一般的に UPS では、電源供給が何らかの理由でストップした場合に、OS を正常終了(シャットダウン)できるソフトウェア機能が求められる。例えば vSphere の場合、UPS の電源管理ソフトウェアから、仮想化環境を構成するサーバ(仮想化ホスト)全てに対し、仮想マシンをまず終了し、次にハイパーバイザーである VMware ESXi をメンテナンスモードに切り替えた上で、終了する命令を出す。これにより、停電時間が UPS のバッテリー容量を超える前に、仮想化環境を安全に保護する。vSAN を使った HCI では、ESXi と同時に vSAN もシャットダウンされる。

UPS では、これまで vSphere に対応してきた製品のほとんどが、vSAN にも対応し、認定を受けている。だが、こうした vSphere / vSAN 対応 UPS のほとんどは、2 ノード vSAN を採用するようなユーザー組織にとって、相対的に高くついてしまう。

上記のように、2 ノード vSAN では、ストレージ専用装置、ファイバーチャネル SAN スイッチ / HBA(SAN アダプター)、イーサネットスイッチが不要だ。だから、シンプルな構成でハードウェアコストが大幅に節約できる。しかし UPS のせいで、「HCI は実際の利用構成では、複雑でたいして安くならない」というイメージになってしまいがちだ。

「UPS の電源管理ソフトウェアは一般的に、vSAN を構成するサーバ(クラスタ)とは別の物理サーバ、あるいは vSAN と別の仮想化基盤上に構築した仮想マシンで動かさなければならないため、この分の手間とコストが掛かってしまいます」(稲葉)

そこで稲葉は、「2 ノード vSAN のための UPS とはどのような製品であるべきなのか」を模索。UPS を開発・販売しているオムロンと連携して、小規模 HCI に適した構成を生み出した。

オムロンのUPS で、2 ノードvSAN をスッキリした構成に
オムロンの UPS で、2 ノード vSAN をスッキリした構成に

オムロンの小型 UPS の電源管理ソフトウェア機能は UPS に内蔵可能なため、電源管理サーバを別立てで準備する必要がなく、HCI ならではのスッキリした構成が実現できる。

オムロン 電子機器統轄事業部 UPS 事業部 事業推進部 国内営業2 課の服部貴明氏
オムロン株式会社
電子機器統轄事業部 UPS 事業部 事業推進部 国内営業 2 課
服部貴明氏

「オムロンは、小型 UPS の出荷台数でトップクラスのメーカーです。vSphere には以前から対応していますし、3 ノード以上の vSAN でも検証を済ませていました。しかし正直、この世界でどう差別化していくべきか迷っていました。そこで、『2 ノード vSAN に丁度いい UPS』のお話には、『待ってました』と飛びつかせていただきました」と、オムロン 電子機器統轄事業部 UPS 事業部事業推進部 国内営業 2 課の服部貴明氏は話す。

稲葉は、服部氏たちの協力を得て、2017 年秋、オムロン製小型 UPS を使った 2 ノード vSAN の安全な自動シャットダウン、および復電時の自動起動を検証。いずれも正しい順序で確実にシャットダウンと自動起動が行えることを確認した。この成果をドキュメントにまとめ、2017年10月31日から11月1日に開催された「vFORUM 2017 TOKYO」で披露したところ、大反響だったという。

「弊社はメーカーであるため、なかなかエンドユーザーの方々に、運用上の課題や要望を聞くチャンスがなく、歯がゆい思いをしていました。このため、vFORUM で確かな手応えを感じられ、エンドユーザーの方々の思いを聞けたことは、非常に大きな収穫でした」(服部氏)

「日本の中堅・中小企業の方々が求めているのは、『あらゆる意味でオーバースペックでない HCI』です。オムロンの UPS を使うことで、これを実現することができそうです」と稲葉は自信を深めている。

SB C&S は、オムロンの UPS を採用した 2 ノード vSAN パッケージを、2018年春に発表する。価格は本記事執筆時点で未公表だが、「かなり魅力的」(大塚)なものになるという。このパッケージには、自力で UPS を含めた導入・運用を行う人のために、分かりやすいマニュアルが付属する。

また、これを機に、エンドユーザー企業を対象とした全国セミナーを6月に計画しているという。

ヴイエムウェアの望月氏は、次のように語っている。

「ヴイエムウェアでは、企業規模の大小を問わず、お客さまにとって最適な IT インフラを実現するために、さまざまな IT 製品ベンダーとの協調によって推進してきました。

「2 ノード vSAN」の登場は、HCI を検討していただけるお客さまの幅を大きく広げるメリットがあり、『HCI の新世代』とも呼べるほど大きく前進したと考えています。また、こうした進化の過程では、自ずと最適なパートナーも変化していきます。UPS におけるオムロンのような新世代のパートナーとの協調が、HCI の進化のスピードをさらに速めることに繫がると確信しています」

※このページは、@ITの2018年4月に掲載されたコンテンツを再構成したものです。
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1804/26/news003.html

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