テレワークの普及により、オンライン会議や商談、外部からのリモートアクセスなどの利用が頻繁に行われるようになったことで、ネットワークへのトラフィックが増加する傾向が出てきています。そのような中、負荷を分散する「ロードバランサー」の役割はサービスやビジネスの継続に重要なものとなってきています。
そこで今回は、Microsoft Azure(以下、Azure)のロードバランサーの一つであるAzure Load Balancerについて解説します。
1.ロードバランサーとは?
ロードバランサーとは、ネットワーク上の外部からのトラフィックの負荷を、複数のサーバーに分散する装置のことです。
よくWebサーバーに一時的に大量のアクセスがあり、サーバーがダウンしてしまったというケースを耳にするでしょう。こうした事態を避けるためには、あらかじめ複数のサーバーを用意しておき、いずれかのサーバーにアクセスが集中しないように振り分け、また一つのサーバーに障害が起きた際に、そのサーバーへの振り分けを停止する必要があります。その役割を果たすのがロードバランサーです。
ロードバランサーの働きによって複数のリソースを最適化し、処理できるデータ量を最大化し、応答時間を最小化して、一つのリソースへの過負荷を回避できます。
Azureには、負荷分散をしなければいけない異なる対象について、Application Gateway(アプリケーションゲートウェイ)、Azure Front Door、Azure Load Balancer、Azure Traffic Managerの4種類の負荷分散サービス(ロードバランサー)が用意されています。
2.Azureでもできるロードバランサー機能とは?
4種類のロードバランサーの中でも、Azure Load Balancer(以下、Azure LB)について解説します。
Azure LBとは、クラウド上で提供される、TCP/UDP向けのレイヤー4負荷分散サービスです。
※:レイヤー4とは:通信にはレベル1から7までのレイヤーがあり、レイヤー4はトランスポート層であり、ネットワークの端から端までの通信管理を担う層です。
Azure LBは、あらかじめ指定されたルールに応じて、外部インターネットからの通信やAzureの内部プライベートネットワークからきている通信を分散することができます。
●Azure LBの2つのプラン(SKU)
Azure LBではBasicとStandardの2つのプラン(SKUと表記される場合もあります)が用意されており、機能や料金に違いがあります。
例えばバックエンドのプールサイズで比較すると、Basicは最大300インスタンスをサポートし、Standardは最大 1,000インスタンスをサポートします。(バックエンドプールとは、指定された負荷分散規則のトラフィックを処理するリソースのグループを定義するものです。)
他にも、Azure LB Standardの方だけ IPv6に適用できるなど、Standardならではのメリットがあるため、Azureでは、より機能性の高い Azure LB Standardが推奨されています。
●Azure LBの機能とメリット
Azure LBには、さまざまな機能があります。それぞれの機能とメリットをご紹介します。
・負荷分散機能
負荷分散機能は、「パブリックロードバランサー」と「内部(プライベート)ロードバランサー」の2種類があり、仮想ネットワーク外部と内部のトラフィックを、Azure仮想マシンへと負荷分散することができます。
・ポートフォワーディング
ポートフォワーディングとは、インターネットから特定のポート番号宛てに届いたパケットを、設定しておいたLAN側の機器に転送する機能です。
Azure LBのStandardでは、パブリックIPアドレスとポート番号の設定により、Azure仮想マシンにポートフォワーディングする機能が利用できます。
例)ポート番号443の通信を受信した後、Azure仮想マシンのポート番号80番へ通信を転送する
これにより、不正な通信がネットワークに入らないようになります。
・負荷分散リソースの監視
Azure LBには、正常性プローブという負荷分散リソースの正常性を監視するしくみがあります。負荷を分散させるには、分散接続先に不具合があると通信が正常に行えません。そのため、監視により常に正常な状態を保つことができます。
3.料金形態と実際の設定方法
Azure LBの料金形態と実際の設定方法を見ていきましょう。
●料金プラン
先ほどBasicとStandardの2種類があることをお伝えしましたが、Basicは無料で利用でき、Standardは使用量に応じて料金が発生する従量課金制です。
Standardは、Load Balancer ルール数、NAT(ネットワークアドレス変換)ルール数、データ処理量(GB単位)によって課金されます。
日本円だと、はじめの5ルールは2.800円/時間、0.56円/GB、追加ルールは、1.12円/ルール/時間となっています。(2021年8月時点)
なお、Standardは、内部負荷分散の範囲であれば無料で利用できます。
●設定方法
実際に設定するには、まず無料で作成できるアクティブなサブスクリプションが含まれる「Azure アカウント」を用意します。
ここではパブリックと内部のうち、パブリックの設定方法の大まかな流れをご紹介します。
まずはロードバランサーを作成します。
【ロードバランサーの作成方法】
1.[リソースの作成]メニューを選択
2.検索ボックスに「ロード バランサー」と入力して検索結果で [ロード バランサー] を選択
3.[ロード バランサー] ページで、 [作成] を選択
4.[ロード バランサーの作成] ページで、情報を入力または選択
5.残りの設定は既定値をそのまま使用し、 [確認と作成] を選択
6.[確認および作成] タブで、 [作成] を選択
そして、ロードバランスのリソース、バックエンドプール、正常プローブ、ロード バランサー規則、バックエンドサーバー、仮想ネットワーク、仮想マシン、アウトバウンド規則構成の作成を行います。
参考:クイック スタート:Azure portal を使用して、VM の負荷分散を行うパブリック ロード バランサーを作成する
4.まとめ
ロードバランサーは、近年、必要性が高まってきています。そうした中、ネットワークにおいてAzure LBの活用はとても有意義であるといえます。
今回はAzure LBについて大まかに概要をご紹介しましたが、Azure LBを実際に使用する場合、Webサーバーの証明書の設定や、通信のセッション永続化といった非常に細かい設定を行う必要もあります。詳細をお知りになりたい場合には、ぜひお気軽にご相談ください。
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