10月1日、日本マイクロソフトはOfficeの提供形態に関する新発表を行い、その中で今年中に日本市場でも「Office for iPad」をリリースすることを明らかにした。
海外では既に公開されているiPad版のWord、Excel、PowerPointが国内でも利用可能になることで、ビジネスシーンにおけるiPadの使い方がさらに広がると期待される。
現時点ではまだ正式提供前だが、海外のApple IDを利用して一足先にOffice for iPadの世界を体験してみた。
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iPadを仕事で利用しているユーザーにとって待望のアプリとなるOffice for iPad。
ただし冒頭で触れた通り、日本市場向けのOffice for iPadはまだ「2014年内に提供予定」と発表された段階であり、正式には利用可能となっていない。
具体的には、日本のiPadユーザーがApp StoreでWord/Excel/PowerPointを検索しても、一覧にそれらのアプリが表示されることはないのだ(OneNoteなど、Word/Excel/PowerPoint以外のOffice関連アプリは入手可能)。
画像1:App Storeでマイクロソフト製のアプリを検索しても、一覧にWord/Excel/PowerPointは表示されない
しかし、これは日本のApple IDでiPadを使用する場合の話。
App StoreはログインするApple IDの国情報に応じて表示する内容を変えているので、iPadの設定画面でApple IDを海外のアカウントに変更してApp Storeを再表示すると、
そのiPadが存在する物理的な場所が日本国内であってもiPad版のWord/Excel/PowerPointをインストールすることができる。
今回は、米国滞在時に作成したApple IDでApp Storeにログインし、日本のiPad Airに各アプリをインストールした。
画像2:[設定]→[iTunes & App Store]で日本のApple IDをサインアウト
画像3:海外のアカウントでサインインしなおすと、その国のApp Storeへ自動転送される
画像4:マイクロソフト製のアプリ一覧にWord/Excel/PowerPointが現れる
画像5:日本で購入したiPad AirにもOffice for iPadのアプリをインストールできた
iPad版のWord/Excel/PowerPointは、アプリ自体は無料で提供されているが、インストールした段階ではビューワーとしてのみ機能し、新規に文書を作成したり、既存のファイルを編集したりすることはできない。
文書の編集はOffice 365の契約ユーザーのみに提供されるプレミアム機能となっている。
日本ではこれまでOffice 365は法人向けプランのみが用意されていたが、10月17日から個人向けにも「Office Premium プラス Office 365 サービス」
(PC本体へのプリインストール版)および「Office 365 Solo」(単体ライセンス版)が用意され、より身近なサービスとなっている。
今回は、既に利用している法人向けプラン「Office 365 Business Premium」のアカウントを利用してみた。
iPadでWord/Excel/PowerPointのいずれかを起動し、画面左下の「アクティブ化」アイコンをタップすると、ユーザー名・パスワードを求められるので、普段利用しているOffice 365アカウントを入力。
アカウント情報が認証されるとOffice for iPadのアクティブ化が完了し、Word/Excel/PowerPointですべての機能が利用可能になった。
日本で契約したOffice 365のアカウントでも特に問題はないようだ。
画像6:画面左下の[アクティブ化]をタップすると、既存のOffice 365アカウントの利用か新規購入(ただしこのメニューは海外用)を求められる
画像7:日本で契約した「Office 365 Business Premium」のアカウントだが、問題なくiPadで利用できるようだ
これまでもOffice文書をiPadで利用するためのサードパーティ製品は存在したが、マイクロソフト純正のアプリだけあって、表示の互換性は抜群。
書体はiOS搭載フォントに加えてOffice互換フォントが使用でき、PowerPointのアニメーションも再現されるなど、これまでPCで使用していたOfficeの画面がそのままiPadのディスプレイ上に再現されているという印象だ。
画像8:Office互換フォントをiPadでも利用できる。日本語フォントとしてはMSゴシック、MS明朝、メイリオを搭載
画像9:アニメーションも正しく再現。ダイナミックな画面切り替え効果もそのまま利用できる
また、iPadのために開発された専用アプリという特徴を最大限活かし、操作はタッチスクリーンに最適化されている。
特に2本指のピンチイン/アウト操作によるズームがとてもスムーズ。
大きなExcelシートを扱うとき、ピンチインでシート全体を見渡し、詳しく数字を見たい部分をピンチアウトで素早く拡大できる操作性は非常に快適だ。
Retinaディスプレイ搭載のiPadなら細かい文字も美しく表示され、画面上でありながらプリントアウトした文書のような感覚で見ることができる。
画像10、11:ピンチイン/アウトで素早くズームが可能。Retinaディスプレイなら細かい文字も読みやすい
作成・編集した文書は、iPad本体に加え、マイクロソフトのオンラインストレージサービス「OneDrive」や、会社で使用しているSharePointサーバーにも保存可能。
事務所のデスクトップPC、出張用のノートPC、そしてiPadと、各デバイスでOneDriveを利用すれば、ファイルをどのマシンに保存したかを気にすることなくすぐに仕事の続きを行うことができる。
画像12:iPadからOneDriveに直接ファイルを保存できるので、他のデバイスでもすぐに仕事の続きを再開できる
「外出時はタブレットで仕事をスマートにこなす」といった提案はこれまでも多くされてきたが、いざというときにOffice文書の編集が行えないiPadだけでは心もとなく、
実際にはノートPCを持ち歩かざるを得ないというユーザーも少なくなかったのではないか。
マイクロソフト純正のOffice for iPadが登場したことにより、マルチデバイス時代のワークスタイルは理想により一歩近づいたと言えるだろう。
日本市場での1日も早い提供開始が期待される。