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クラウドAIとは?エッジAIとの違いやメリット、最新事例10選

2024.12.19

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クラウドAIは、インターネットを介してクラウド上に構築したAIシステムにアクセスして利用する技術やサービスで、大量のデータ処理や高度な分析が求められる場面で大きな力を発揮します。エッジAIと対比されることが多く、エッジAIと比較して、リアルタイム性には劣るものの、スケーラビリティやコスト効率の面で優れています。
本コラムでは、クラウドAIの基本概念からエッジAIとの違い、メリット・デメリットを詳しく解説し、さらにクラウドAIが活用されている最新事例を10選ご紹介します。

1.クラウドAIとは

はじめに、クラウドAIの概要について解説します。

●クラウドAIとは

クラウドAIとは、クラウド上にあるAIシステムに、ユーザーがインターネット経由でアクセスすることでAIの機能を利用できる仕組みです。AIは特定の入力データに基づき推論を行いますが、クラウドAIについては、クラウド上で学習や推論を行います。

●クラウドAIが注目されている理由

AIは近年、文字起こしや翻訳、顔認証、お問い合わせ窓口としてのチャットボットなど様々なビジネスシーンで活用されていますが、AIシステムを構築するためには、高度な専門技術や経験を持った人材、高性能なサーバーなどが必要になり、開発から運用管理にかかるコストが大きくなっていました。しかしクラウドAIシステムについては、論理的なコンピューティングリソースを使用することで、またマネージドサービスなどを活用することで、負担を小さく利用できることから注目されています。

2. エッジAIとの違い

クラウドAIと良く混同されるのが「エッジAI」です。エッジAIは、データ分析や解析を「エッジデバイス」と呼ばれるデータ収集を担う端末それぞれが内部で行います。これに対して、クラウドAIはデータをクラウド上に送信し、クラウド上で行います。
前述のように、エッジAIは、データの収集から解析までをエッジで完結させるため、リアルタイムでの高速なデータ処理が可能です。また、エッジAIは通信量を削減できるため、通信コストの削減にも寄与します。
一方、クラウドAIはデータを集めてクラウド上で処理を行うことからデータの送受信時間が相対的にかかるため、その分、エッジAIよりは速度が劣ります。ただし、これはあくまでも通信まで加味したときのことであるため、クラウドAIの処理速度に関して遅いということはありません。要件次第では十分な速度を有している場合もあります。

また、エッジAIは処理能力の点で、エッジ側の限られるコンピューティング能力に頼ってしまうので、クラウドAIに劣るといわれています。そのため、リアルタイム性が重視される場合や通信コストを抑えたい場合はエッジAIが適していますが、大規模なデータ分析や高度なAIモデルの活用が必要な場合はクラウドAIが優れています。それぞれの短所を補うため組み合わせた状態で運用されることも珍しくありません。

3. クラウドAIのメリット・デメリット

続いて、クラウドAIのメリット・デメリットをご紹介します。

●メリット

1. 大量のデータ処理に向いている

AIは膨大な量のデータを処理して推論を行うため、コンピューティングリソースが貧弱では処理ができないことがあります。その点、クラウドAIではAIの処理に耐え得るリソースを活用可能なため、大規模なデータ処理ができます。
また、必要なときだけ利用し、必要ではなくなったらリソースを削除するなどの運用も可能であるため、オンプレミスよりも容量を節約できるというメリットもあります。

2. サーバーの用意・管理コストが不要

クラウドAIシステムは、論理的なコンピューティングリソースを利用しユーザー側の責任を負う範囲が狭いため、相対的に管理負荷も小さくなります。
その分本質的な部分に工数を割けるため、この点は大きなメリットといえます。

3. マネージドサービスを活用できることもある

クラウドサービスによっては、クラウド上にベンダーが提供する既存のサンプルデータやモデルが用意されていることもあります。そのサンプルデータを自社で用意したデータと併せて活用すれば、よりAIの活用の幅が広がるでしょう。

4. 推論能力をあげることができる

構築されているAIシステムに自社で最新技術を追加することは難しい部分もありましたが、クラウドAIは、ベンダーによって、メンテナンスやシステムの更新を行います。常に技術を更新し続けているため、ユーザーは常に最新のAI技術を利用することができ、高精度な推論を利用することが期待できます。

●デメリット

1. 処理速度への課題

クラウドAIは、データをクラウドに送信して処理を行うため、エッジAIに比べてリアルタイム性が劣る場合があります。上述しているようにクラウドAIの処理速度に関して遅いということはなく、実務に耐え得る十分な速度を有す場合もありますが、リアルタイムでの迅速なデータ処理を必要とする場面での使用においては基本的に向いていません。

2. インターネット環境の必要性

クラウドAIを利用するには、安定したインターネット接続が不可欠です。しかしながらインターネット通信はベストエフォートですし、安定性にはどうしても欠けます。

3. セキュリティリスク

クラウドにデータを保存するということは、セキュリティリスクを伴います。データの漏洩や不正アクセスのリスクを最小限に抑えるためには、強固なセキュリティ対策が必要です。クラウドプロバイダーは通常、厳格なセキュリティ対策を講じていますが、ユーザー側でも適切な対策を講じる必要があります。

4. データが膨大になると通信コストがかかる

クラウドAIでは、データの送受信に伴う通信コストが発生します。特に、膨大なデータを頻繁にクラウドに送信する場合、通信コストが増大する可能性があります。これにより、運用コストが予想以上に増加する可能性もあるため、注意が必要です。

4. クラウドAIの最新事例10選

続いて、クラウドAIの最新事例をご紹介します。

●AIを用いた画像診断

医療画像診断におけるクラウドAIの活用は、医療の未来を大きく変えつつあります。あるプロジェクトでは、膨大な量の医療用画像をクラウド上に集約し、AIを使ってそれらを解析することで、診断の精度と効率を向上させています。研究者が迅速にその解析結果にアクセスできるように設計されており、特にがんなどの病変を早期に発見するためのAIシステムは、医師の診断を補完し、患者の治療を迅速に開始する手助けをしています。

●AIを用いた自動運転

自動運転技術におけるAIの利用です。クラウドAIは、車両に搭載されたセンサーから得られる膨大なデータをリアルタイムで解析し、最適な運転判断をサポートします。そして、単にクラウドAIだけでなく、エッジAIも組み合わせることでリアルタイムでより迅速で安全な自動運転を実現します。

●AIを用いた栽培管理

農業分野でもクラウドAIが活躍しています。あるプロジェクトでは、作物の生育状況をリアルタイムで監視し、AIを活用して最適な栽培方法を提案しています。これにより、農家は作物の収穫量を最大化し、農薬や肥料の使用を最小限に抑えることができます。クラウドAIは、天候データや土壌情報を分析し、農作業の効率化を図ることで、持続可能な農業の実現に貢献しています。

●AIを用いた広告最適化

マーケティング分野では、クラウドAIが広告戦略の最適化を支援しています。あるプラットフォームは、複数の広告チャネルから得られるデータを分析し、広告キャンペーンの効果を最大化するための洞察を提供しています。これにより、企業は消費者の行動をより深く理解し、ターゲットに応じた効果的な広告を展開することができます。AIの力を借りることで、マーケティング活動のROIを向上させ、企業の成長を加速させることが可能です。

●AIを活用した文字起こし

ビジネスの効率化において、AIを活用した文字起こしは重要な役割を果たしています。あるAIツールは、音声や動画ファイルを基に迅速に文字起こしが可能で、内容の要約や会議で決定したToDoのリスト化などを支援します。このツールにより、従来2時間かかっていた作業が30分に短縮され、業務効率が大幅に向上しました。これにより、企業はリソースをより重要な業務に集中させることができ、生産性の向上を実現しています。

●AIを用いたチャットボット

ある企業は、社内の問い合わせ対応が社員の大きな負担になっていました。そこで全社的にAIチャットボットを導入し、社員が抱える業務における不明点をいつでもすぐに、柔軟に解決できる環境を作りました。ある部署では人による対応が減った結果、電話やメールによる問い合わせ件数が最大で約5分の1まで減り、大幅な業務効率化を実現しました。

●AIを用いた書類作成

ある銀行では、顧客に手書きで記入してもらった書類を、行員がPCに手入力してデータ化しており、大きな業務負荷がかかっていました。AI OCRを導入したことで、精度高く書類のデータ化が迅速に進むようになり、年間約5,000時間分の作業負担を軽減したことで業務効率化につなげました。

●AIを用いた不良品の検知

ある食品メーカーは、一日あたり4~5トンもの原料に対し検査を行っており、大きな負担でした。検査には熟練の技術が求められるため、安易に人を増やせない状況でした。
そこでベルトコンベアー上を高速に流れていく原料情報をセンサーで収集し、不良品を検知できる仕組みを作りました。
人的負担やコストの削減になったほか、AIが判断できなかったものは熟練のスタッフが処理する仕組みにし、生産性を高めています。

●AIを用いた商品の需要の予測

あるスーパーマーケットは、AI需要予測による自動発注システムを導入しました。当時はコロナ禍で需要と供給の変動の予想がつきづらく、変動も起こりやすい状況でしたが、クラウドAIを導入することよってカバーできました。結果、欠品や廃棄ロスを未然に予防し、適切な量の発注が実現しました。

●ECサイトにおけるレコメンド

あるゲーム販売のECサイトは、サイト上でAIを活用したレコメンデーション機能を提供しています。クラウドAIを活用してユーザー分析を行い、ユーザーにおすすめの製品を表示できるようにしたのです。結果、クリック率やコンバージョン率、売上が向上し、良い効果につながりました。

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5. クラウドAIの導入が向いている組織・向いていない組織

クラウドAIの導入は多くの企業にとって魅力的な選択肢ですが、その適用が向いているかどうかは、組織の業務形態やニーズによって異なります。ここでは、クラウドAIの導入が向いている組織と向いていない組織について詳しく解説します。

●クラウドAIの導入が向いている組織

1. リモートワーク中心の勤務形態

リモートワークが普及する中で、社員がどこからでも業務を遂行できる環境が求められていますが、クラウドAIはインターネット経由でアクセスできるため、リモートによる勤務形態の企業にとっても便利です。

2. 多用途なAIを必要とする業務が多い

クラウドAIは、文字認識、翻訳、音声認識、顔認識など、多様なサービスを提供しており、業界を問わず多くの企業で活用されており、汎用性は大きな利点です。

3. 導入に大きなコストをかけられない

クラウドAIは、TCOを抑えたい企業にとっても適しています。高性能なコンピューターなどを自組織で用意する必要がなく、AIシステムの開発や運用・保守にかかるコストも削減できます。これにより、人件費を含めた総合的なコストを抑えながらAIシステムを導入し利用することが可能です。

●クラウドAIの導入が向いていない組織

1. 瞬時の判断が求められる業務が多い

リアルタイムで瞬時に判断が必要な業務では、クラウドAIよりもエッジAIが適しています。エッジAIはデバイス内で直接データ処理を行うため、通信遅延がなく、迅速な意思決定が可能です。例えば、製造業のライン管理や交通制御など、瞬時の判断が求められるシーンではエッジAIを活用する方が良いでしょう。

2. インターネット利用の制限が強い

クラウドAIはインターネットへの接続が必須です。したがって、ネットワークの安定性に不安がある環境や、インターネットを介さずにAIを利用したい場合には適していません。インターネットに依存せずにAIに推論結果を出力させたい場合は、エッジAIの方が適しています。

3. できる限り情報資産を組織内部に留める必要がある

機密性の高いデータを取り扱う企業などにとって、クラウドにデータを送信することはセキュリティリスクを伴います。情報漏洩のリスクを極小化したい組織では、外部ネットワークを介さずにデータのやり取りができる方式を選択する場合があります。

6. まとめ

クラウドAIは、サーバー構築や運用管理などのコスト負担が少なく、開発のハードルも低いため、自組織に特化したシステムを比較的容易に導入できDX推進が期待されています。最新の事例を参考に、クラウドAIの導入を検討してみてください。
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