「IoT(アイオーティー)」の活用によって、モノがインターネットにつながることは、もはや当たり前となりました。家電、自動車、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、省力化や自動化が進展し、新たな付加価値を生み出しています。
近年、爆発的に増加したIoTとはどのようなものなのでしょうか。基礎から身近な例、メリット、課題、注目される技術、活用事例まで、今、必要な知識を徹底解説します。
1.IoTとは
IoTとは、「Internet of Things」の頭文字をとった言葉で、「さまざまなモノがインターネットにつながること」を指します。
いつでも、どこでも、何でも、誰でもネットワークにつながる概念は2000年代前半から構想されてきましたが、ここ20年で急速に進みました。総務省「令和3年 情報通信白書」で取り上げられていた世界のIoTデバイス数の推移及び予測(出典:Omdia)では、2016年時点ではIoTデバイスは173.2億台だったところ、2020年には250億台を超え、2023年には340億台を超える予測が立てられています。特に顕著に伸びているのは産業用途、医療、コンシューマー分野です。
●IoTの仕組み
IoTシステムは、IoTデバイスをあらゆる種類のモノに組み込むことで実現できます。モノとは、具体的に言えば、エアコンや冷蔵庫などの家電製品、医療機器、自動車、工場の機器・設備などです。
そのモノに、センサーやカメラ、無線通信等を搭載し、モノの状態や動きを感知してデータとして取得し、そのデータを、インターネットを通じて伝送するのがIoTの基本的な仕組みです。
2.IoTの機能と身近な例
IoTは、主に次の4つの機能を持ち、さまざまな分野で活用されています。
1.モノを遠隔操作する
遠隔からモノを操作する機能です。
例
・外出先からエアコン・照明を遠隔でON/OFF、設定変更等を行う
・危険エリアなどに設置した監視カメラを操作する
2.モノの状態を監視する
遠隔地にあるモノの状態を、リアルタイムで監視する機能です。
例
・遠隔地に設置した太陽光発電機の発電量を監視する
・工場内に点在している機械設備の稼働や故障を監視する
3.モノの状況・動きを監視する
センサーなどを用いて、モノの周囲の状況や動きを監視する機能です。
例
・農業地の日照量や温度・湿度などの変化を監視する
・建設現場の危険検知・制御を行う
・医療分野において、患者の呼吸、脈拍、血圧などを自動で計測する
4.モノ同士でデータ送受信する
モノ同士でデータを送受信し、そのデータを連携させて活用する機能です。
例
・信号機が赤になったら自動的に車を停止させる
・河川の水位が降雨量データ等と連携し、氾濫のリスクに応じてアラートを出す
3.IoTのメリット
IoTを活用することにより、さまざまなメリットが生まれます。ここでは、その主なメリットをご紹介します。
●ユーザーの利便性の向上
コンシューマー分野では、スマート家電やスマートホームなどが発展しており、スマートフォンから外出先で家電をコントロールするなど、すでに生活者の利便性が向上しています。
●製造・物流現場の作業効率や生産効率の向上
事業分野でも農業、工業などの現場の状況を遠隔地からモニタリングできるようになったことで、現場の状態や状況をより正確に捉え、生産性を向上させることができます。
●マーケティング・集客活用
IoTは遠隔から状態・状況の監視が可能となるため、現地の利用状況の確認が可能となり、小売業などはもちろん、ほかの業界、例えば製造業もマーケティング・集客に利活用できます。
●ビジネス全般のデータ化・定量化、モデル化
IoTはデータを取集し、伝送する仕組みであることから、必前的にデータの蓄積につながります。ビジネス全般のデータ化・定量化、モデル化が実現し、デジタル化・DX化の基盤となり得ます。
4.IoTの課題
一方で、IoTにはいくつかの課題もあります。
●セキュリティリスクが高い
近年、IoTデバイスをねらったサイバー攻撃が増加傾向にあります。IoTデバイスの脆弱性はむずかしい課題となっており、IoTデバイスにマルウェアを感染させ、そこから企業サーバへの攻撃を仕掛ける手法が増加しています。IoTデバイスへのセキュリティ対策が進められており、いかに脅威に対抗するかが求められています。
●消費電力が増大する
IoTデバイスの設置に伴い、膨大なデータ通信が発生し、データが大量に伝送される仕組みが整います。それと同時に生じるのは消費電力の増大とコスト増しです。企業においてはコストコントロールが求められます。
その対策として、低コストで実現できる、低消費電力で無線通信を特徴とする通信規格「LPWA(Low Power Wide Area)」が注目を集めています。LPWAについては後ほど詳しく解説します。
●IoT人材の必要性
IoTを導入した場合、そのIoT機器のメンテナンスや管理、膨大なデータの分析が求められます。そうしたIoT全般に対応できるIoT人材はここ数年で必要性が増しているといわれています。ITやICTに対応できるだけでは足りず、IoTに専門的に対応できる人材確保により、新規サービスの開発や運用管理がよりスムーズにいくでしょう。
●通信障害のリスクがある
IoTのネットワークが増大すれば、より社会は便利になるというイメージがありますが、同時に電波が膨大に飛び交うということになります。すると、電波の混線による影響で通信エラーや誤作動などのリスクがあります。医療分野や災害分野、機械の制御など安全面が関係する分野で、通信障害が生じてしまうことは大きなダメージとなってしまうことから、何らかの手立てを講じる必要があります。
5.IoTで注目される技術
IoTが普及する中で、同時にIoTに関連する技術も発達しています。ここでは注目される技術を紹介します。
●5G
5G(ファイブジー)は、4Gに続く次世代ネットワークで、正式には「第5世代移動通信システム」と呼びます。5Gは高速大容量通信、多数同時接続を可能とし、同時に低遅延を叶えるという優れた特徴があります。
IoTネットワークにおいては、5Gのおかげで画像データを高解像度のまま高速にデータ転送できるようになることから、機器のリアルタイム制御やセンサーを多数集中的に配置するなどの実現も可能になります。
●LPWA
「Low Power, Wide Area」の略であるLPWAは、消費電力を抑えて長距離通信を実現する通信方式です。また、通信コストを低く抑えることができるのも特徴です。
電池を用いて数年運用できるほどの省電力性を持つことから、長時間稼働させることができます。そのため、データ転送量が少ない小型センサーであれば、電源確保が困難な場所に設置して温湿度監視・制御や漏水検査などの用途で利活用が可能です。
LPWAは、通信速度は低速ですが、その低コスト、省電力といった点で大いに注目を集めています。
●エッジコンピューティング
エッジコンピューティングは、低遅延、高セキュリティを実現するネットワーク構築手法の一つです。エッジとは、ネットワークのユーザー側の終端のことを指し、IoTデバイスであれば、IoTデバイスそのものにサーバを組み込んだり、その物理的な近距離にサーバを置いたりして、そのサーバ上でデータ分析や処理を行う手法です。
一般的な中央集権型のクラウドコンピューティングと比べて、エッジ処理されることからリアルタイム性が確保され、ネットワーク遅延など、データの転送速度による遅延を低減できます。また、クラウドへすべてのデータを伝送するのではなく、データ処理の後、加工された結果データのみを伝送する仕組みであることから、通信量の低減やセキュリティリスクの低減にもつながります。
このリアルタイム性やセキュリティ要件などがIoTネットワークに適しており、エッジコンピューティングはIoTに最適とされ、多く取り入れられています。
●AI
AIは、機械学習による人工知能の活用分野で急速に発展した中、IoTの分野でも収集したデータについての画像認識、音声認識、自然言語解析といったプラスアルファの機能が役立てられています。
IoTでは、過去のデータを用いて分析を行いますが、AIを組み合わせることで、刻々と変化するデータをリアルタイムに近い形で即座に分析し、状況把握や監視、予測・予知を可能にします。
例えば、製造業の工場における生産機械に取り付けたIoTセンサーをAIと組み合わせることで、データの正確性をAIが判断する工程が加わります。これにより、予期せぬ故障リスクを精度高く事前検知することが可能になります。
このように、IoTとAIの組み合わせは、安全管理面等においては大きなメリットを生み出す可能性を秘めています。
6.IoT活用事例
IoTは、具体的に次のような分野で活用されています。実際の活用事例をご紹介します。
●消費者向け:IoT家電「ロボット掃除機」
「スマート家電」という言葉が登場しているように、家電のIoT化が急速に進んでいます。ある大手家電メーカーが手がけるロボット掃除機は、外出先からでもスマートフォンで遠隔操作させることができます。
●製造:「見える化」「制御」「自動化」
ある製造業の製造工場の現場では、センサーが設備の稼働情報を取得し、機器の力の加わり具合を見える化して繊細に制御したり、AIによってその繊細な作動を自動化したりすることが行われています。
●物流:倉庫管理やピッキング、配送
ある物流・配送会社は、倉庫管理やピッキング、配送にIoTロボットを導入し、注文が入った商品を自動でロボットがピッキングを行い、作業員のところで運んでくるといったことを行っています。
●農業:ドローンによる自動農薬散布
ある農業用地では、ドローンが空中を飛行して撮影を行い、撮影された画像と、病害虫が発生している画像に対して、AIを用いて比較判定を行い、病害虫が発生している地点のみ農薬散布するという仕組みを用いています。
●医療:着用型ウェアラブルデバイス
ある医療機関では、IoTデバイスを患者が身につけ、体温や血圧、脈拍などのバイタルサインを計測し、データ化しています。収集されたデータは診断や治療に役立てられています。
7.まとめ
IoTは、それ単体はもちろんのこと、5GやLPWA、AIなどの多様なテクノロジーと組み合わせることで、より活用の幅を広げており、今後もIoTの分野の発展は大いに期待できます。
IoTのメリットと課題を正しく理解し、あらゆる産業シーンに活用していくことで、現代社会の課題解決、発展に役立つでしょう。
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