このところ、働き方改革推進の波、新型ウィルスの影響などがあり、テレワークや在宅勤務を導入する動きが全国で急速に進んでいます。テレワークによる在宅勤務などの新しい働き方を実現する手段として、セキュリティと使いやすさを両立する仮想デスクトップ環境のVDI(Virtual Desktop Infrastructure)が注目されています。
今回は、SB C&SのビジネスパートナーであるJBCC株式会社(以下、JBCC社)の担当者様からVDIの導入事例を中心にお話しをお聞きしました。
JBCC社のお客様が、VDIを導入したきっかけや、実際に導入してどのような問題解決ができたかなど、事例を通じてVDIの導入効果を詳しく見ていきましょう。
SECTION 01きっかけ
安全性の高いテレワークの実現とレガシーシステムの対応が、多くの企業のVDI導入を後押し
JBCC社は、1964年の創業から50年以上の長期間に渡りITソリューション全般に幅広いサービスを展開する企業です。同社は、VDIについて多くの知見を持ちDaaS全般に関しても実績が豊富ですが、さらにここ数年では企業のクラウド導入のニーズが急増し、Azureをはじめとする、クラウド環境の構築や運用も数多く手掛けています。
そのようなクラウドの導入が進むのは、多くの企業がテレワークによる在宅勤務を可能とするために積極的に乗り出しているためです。たとえば、従来からのオンプレミス(以下、オンプレ)の環境でもファイルサーバーや使用しているアプリケーションをAzureに移行することによってテレワークの環境を構築することができます。その構築における大きな課題は、データが失われたりすることのない安全性の担保や、万が一でも悪意のある第三者などがネットワークに侵入することがない高いセキュリティ対策です。これらを満たすには、データの処理と管理に関する部分をサーバー側に集約することによってデータの安全性を高め、さらに主要部分に対するメンテナンスを効率化できるVDIの導入が必要不可欠と言えます。
JBCC社のPFS事業部の美谷島(みやじま) 岳志氏は、「働き方改革や東京オリンピックへの対応として、あらゆる業種のお客様がVDIを意識し、その中でもクラウド型であるDaaSのVDIに関心が高まっている」と話します。
一方では、Windows7やWindowsServer2008などが、2020年1月14日に延長サポートの期限を迎え、Microsoft社によるセキュリティの更新プログラム提供がストップしました。このようなレガシーなシステムを導入する多くの企業は、期限が迫るにつれて頭を悩ませてきました。しかし、Azureへ移行することによって先述の更新プログラム提供が3年間延長されることになったため、現在JBCC社にはAzureに移行したい多くの企業から相談や依頼が寄せられています。
「Azureへの移行やVDIの導入が急増している背景には、更新プログラムが提供される3年間のうちに対策を考えたいというお客様のニーズがあります。その対策をお客様と一緒に考えていきます」(美谷島氏)
PFS事業部 ソリューション・デザインセンター
美谷島 岳志 氏
SECTION 02施策内容
コスト・ユーザー数・管理方法などに応じた、最適なVDIソリューションの提供
現在、JBCC社はAzure上にてVDIソリューションを提供する場合、Microsoft社の「Windows Virtual Desktop (WVD)」に加え、VMware社のHorizon Cloudを扱っています。これらは、同じくAzure上で利用可能なDaaSですが、その仕様や対象が微妙に異なります。
「WVDはコスト面では圧倒的に有利ですが、運用管理面や画面転送接続を閉域ネットワーク接続経由でコントロールしたい場合などは、サードパーティーVDIの方がトータルで有利な場合がありますので、お客様の状況に応じて最適なVDIをご提案させていただいております。」(美谷島氏)
WVDは、Microsoft社が2019年10月にAzure上での提供を開始した新しいVDIサービスですが、具体的な比較検討ポイントとして、1ユーザー単位で利用を開始でき、規模が比較的小さな事業所でも手軽に利用が始められる利点があります。これに対し、VMware社の「Horizon Cloud」というVDIサービスは、最低50ユーザーからとなります。
それ以外に運用管理の点で、現時点では、WVDは一部PowerShellによる操作が必要されるなど、複数の管理ツールを使いこなし、運用する必要があります。一方で、Horizon Cloudを利用すれば、VDI運用管理機能は1つの管理ツールで提供されており、運用管理操作が非常にシンプルとなります。
また、画面転送接続は基本的にはWVDは、基本的に全てインターネット経由でのアクセスとなりますが、Horizon Cloudをご利用いただければ、お客様の閉域網経由での画面転送接続を容易に実現することが可能となり、セキュリティ要件の厳しいお客様のご要望にもお応えすることも可能となります。
「JBCC社では、これらの各製品の特徴をお客様にご説明し、どのような組み合わせが最適化かディスカッションさせていただいています。さらに実際にVDI環境を触っていただけるよう、お客様環境に特化したPoCサービスもご提供しています。」(美谷島氏)
SECTION 03結果
コスト削減と運用業務からの解放
現在、JBCC社では製造業の某社がオンプレ環境で稼働しているVDI環境をAzure上に移行中です。その対象ユーザー数は200。これは、オンプレサーバーの更新に際し、運用基盤として新たにサーバーを調達するよりもコストに優れたAzureを選択したことによる取り組みです。
VDI環境をAzureによるDaaS化することによって、IT部門はオンプレの環境では必須だったサーバー管理の運用業務から開放され、本来のメイン業務に時間とコストを分配できることが期待できます。この他にも一般的なPC(Fat PC)での運用からAzure上で運用できるVDIへの移行が完了した建設業の某社では、VDIがAzure上で稼働することによって、高速でデータのやり取りができるようになったと好評です。
SECTION 04今後の計画
より柔軟なサービスの提供で、
お客さまの作業環境を快適に
先に触れた建設業への導入では、社員が個々にWindows7のPCを使い、サーバーもWindowsServer2008だった例があります。
JBCCでは、当初この企業に対してオンプレミス環境でのVDIを提案したとのこと。しかし、当時ちょうどVMware社のHorizon CloudがAzureで稼働可能になったタイミングでもあり、JBCC社の内部で検証した結果を先方に示したところ、興味を持たれたとのこと。
導入に際しては、顧客が実際に利用するアプリケーションを一つずつHorizon Cloud上で動かすPoC(実証実験)を顧客と一緒に実行。各種の確認と調整を経て導入となりました。この企業は350ユーザーでの導入ですが、「使い勝手が良い」との評価を得ているとのことです。ちなみに、この企業ではサーバーもAzure上に移行し、WindowsServer2008のライセンスが切れる問題も解決しています。
Azure上には、いろいろなサービスが用意されています。しかし、多くのユーザーはオンプレミスで行っていたのと同じようなことをAzure上でも利用しているに留まる傾向があるようです。JBCCでは、災害対策を含め、Azureで可能になることを広く紹介していきたいとのこと。
また、いきなり基幹システムをクラウド化するのではなく、まずはスモールスタートで始め、徐々に規模を拡大していうようなストーリーをサポートしたいとしています。
クラウドには多くの選択肢がありますが、逆にそれが最適な選択を難しくしている面もあります。最終的にどのような規模でシステムを運用するのか、まずはそのイメージを明確にすることが重要です。
PROFILE
JBグループ JBCC株式会社
企業のIT活用をトータルに支援。アプリケーション開発をはじめ、システムインテグレーション、運用、保守、監視、コンサルティング、「俺のクラウド」をはじめとする各種クラウドサービスを提供。
(https://www.jbcc.co.jp/)