パブリッククラウドの2大サービスとしてしのぎを削り合うAmazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azure。
この2つのサービスは、業界内にGoogle Cloud Platform(GCP)など多くの競合がいるにも関わらず、依然として勢力を拡大し続けているクラウドプラットフォームです。
ここまでの2回にわたって市場の評価やインフラ、機能面の違いなどを見てきましたが、いずれも甲乙付け難く、先行するAWSをAzureが激しく追い上げる構図となっています。最終回の今回は、性能と料金、サポートについてAWSとAzureを比較してみます。
Azure と AWS の基本情報
■ Microsoft Azure とは
Microsoft Azure(Azure) は、マイクロソフトが提供する、パブリッククラウドプラットフォーム。正式サービスの開始は、2010年1月(2014年3月に Windows Azure から Microsoft Azure へ改称)で、主要なサービスとしては、IaaS の Azure VirtualMachines (Azure VM)と PaaS の Azure App Service がありますが、オンプレミスやハイブリッドクラウドにも対応した各種クラウドサービスを提供しています。
Windows、.NET、Hyper-V などオンプレミスと共通のテクノロジの採用、Visual Studio 開発ツールとの統合、Office 365、Microsoft Intune などの同社の SaaS との連携が強み。Linux やオープンソースソフトウェア (OSS) への対応も積極的に行われています。
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■ Amazon Web Services とは
Amazon Web Services (AWS)は、Amazon.com が提供するパブリッククラウドコンピューティングプラットフォームです。正式サービスの開始は、2006年7月(Amazon Web Services 社を設立)。主要なサービスとしては、IaaS の Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)、PaaS の Amazon Elastic Beanstalk などがあります。
AWS の歴史は長く、他社クラウドサービスプロバイダーの猛追を受けながらも、現在でもクラウド市場のリーダー的存在であり、トップシェアを維持しています。
Azure と AWS のメリット・デメリット
AzureとAWSは、クラウドコンピューティングのリーダーとして広く利用されていますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
Azureのメリットには、Microsoft製品との高い互換性や統合性が挙げられます。特に企業が既にWindows ServerやActive Directoryを使用している場合、Azureはシームレスな統合を提供します。また、Azureはハイブリッドクラウドソリューションに強みを持ち、オンプレミスとクラウドのリソースを容易に統合できます。デメリットとしては、サービスの複雑さやコスト管理の難しさが挙げられます。
一方、AWSのメリットには、豊富なサービスとツールの選択肢、そして高いスケーラビリティと信頼性があります。AWSは市場シェアが大きく、エコシステムも非常に充実しています。デメリットとしては、初心者にとっては学習曲線が急であり、料金体系が複雑であることが挙げられます。
どちらを選ぶかは、企業の具体的なニーズや既存のITインフラ、予算などに依存します。
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為替レートに左右されないAzureの決済方法
AWSとAzureは、サービスの料金体系に若干の違いがあります。いずれも基本的に「使用した分だけ料金を支払う」という従量課金制ですが、AWSには一部もしくは全額の前払い制度(1年分または3年分)があります。またAzureにも同様に、12カ月前払いという制度があります。
大きく異なるのは、Azureには「Openライセンス」や「Enterprise Agreement(エンタープライズ契約)」というリセラー経由の料金体系が用意されていることです。マイクロソフトのソフトウェアパッケージ製品とほぼ同じ仕組みでライセンスを取得し、Azureを利用できるわけです。AWSでもパートナー経由の支払いが可能になっていますが、こちらはSIを含めた支払窓口を一元化する意味合いのものです。
さらに違うのが、支払通貨です。AWSは米ドルによる決済が基本であり、パートナー経由による支払いに限って日本円で決済が可能です。それに対しAzureは日本円はもちろんのこと、世界の24の通貨から支払通貨を選択できるようになっています。これにより、為替レートの変動に左右されることのないコスト予測が可能になります(もちろんマイクロソフトによる料金の見直しは随時行われます)。
なお、試用・評価目的の無料版は、AWSが12カ月間・EC2 1カ月あたり750時間分のインスタンスが利用可能なのに対し、Azureは30日間・PaaSを含む20,500円相当分のサービスが利用可能となっています。無料利用な期間だけを比較すると、AWSのほうが有利と言えます。
具体的なコスト比較については、クラウドサービス上に構築するシステムによって異なり、どちらが高い・安いかは一概に言えません。AWSには「SIMPLE MONTHLY CALCULATOR」、Azureには「料金計算ツール」がそれぞれ用意されているので、具体的な構成を入力して比較してみるとよいでしょう。
Azureの活用例と価格についてはこちら
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インフラ性能はAWSだが、ストレージや
ネットワークはAzureが優勢
AWSとAzureを比較した際に、気になるポイントのひとつとして挙げられるのがコンピューティング性能です。クラウドサービス上に構築するシステムによっては、シビアな性能差が求められる場合もあるからです。
さっそく、AWSとAzureの性能差について、いくつか参考となる資料を見てみましょう。 インフラの性能差を客観的に比較する指標としては、スーパーコンピュータの世界ランキングである「TOP500」があります。TOP500とは、スーパーコンピュータの処理速度を「LINPACKベンチマーク」によって計測し、毎年6月と11月の年2回、ランキング上位500位を発表するプロジェクトのことです。
このTOP500において、AWSは2010年11月に233位となり、初めてランクイン。以降、最新の2015年11月の180位まで毎回ランク入りを果たしており、2011年11月には、最高位となる42位という高性能を達成しています。一方のAzureは、2012年11月に165位で初ランクイン。以降はランク入りとランク外を繰り返し、最近では2014年11月に433位でランク入りしています。
理論演算性能に対する実行演算性能の比率である実行効率を比較すると、AWSの最新システムが81.6%なのに対し、Azureは90.2%。Azureのほうが効率的に性能を発揮するシステムと言えますが、性能としてはやはりAWSに軍配が上ります。
ただし、ストレージやネットワークの性能については、Azureも負けていません。米Nasuni社が発表した「The 2015 State of Cloud Storage」によると、各クラウドサービスで書き込み/読み込み/削除の速度を計測するベンチマークテストを実施したところ、トータルで最も高速な結果が得られたのはAzureだったそうです。
ネットワークのスピード比較については、日本のクラウドサービスプロバイダー、FIXER社が提供する「Azure Speed GRAND PRIX」が参考になります。このサイトでは、現在の場所とAzure、およびAWSのデータセンターとの平均応答時間を計測して表示します。計測結果は場所とネットワークの状況によって左右されますが、東京都内から計測するとAzureのほうがおおむね高速という結果が出るようです。
さらに、AzureはMicrosoftの製品ですので、Office365といったMicrosoftの他サービスやアプリケーションとの連携をスムーズに行うことができるといった利点もあります。
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Azure と AWS を使い分ける方法
AzureとAWSを使い分ける方法は、企業のニーズや既存の技術スタック、コスト、提供されるサービスの特性に基づいて決めましょう。
AzureはMicrosoft製品との統合が優れており、Windows Server、Active Directory、SQL Serverなどを多用する企業に適しています。また、Azureはハイブリッドクラウドソリューションに強みがあります。
一方、AWSはクラウドサービスのパイオニアであり、非常に多くのサービスと地域展開を提供しているため、幅広いユースケースに対応できます。特に、スタートアップやスケーラビリティを重視するプロジェクトに適しています。
コスト面では、各サービスの料金体系を比較し、最適なプランを選ぶことが重要です。最後に、サポートやトレーニングの質も選択の際の重要な要素となります。
Azureがおすすめのケース
Azureが特におすすめなケースは、既存のMicrosoft製品やサービスとの連携を重視する場合です。
例えば、企業がすでにMicrosoft 365やActive Directoryを利用している場合、Azureはこれらのサービスとシームレスに統合できるため、管理が容易になります。また、Windows ServerやSQL ServerなどのMicrosoft製品を使用している場合、Azureはこれらのワークロードを最適化するための特別なツールやサポートを提供しています。
さらに、Azureはハイブリッドクラウドソリューションに強みを持ち、オンプレミスのデータセンターとクラウド環境を統合するためのAzure ArcやAzure Stackなどのサービスを提供しています。これにより、データとアプリケーションを柔軟に配置し、運用コストの最適化が可能です。
最後に、Azureはグローバルなリーチを持ち、多数のリージョンでサービスを提供しているため、グローバル展開やデータの地域的な要件に対しても対応力があります。これらの要素が組み合わさることで、Azureは特定のビジネスニーズに非常に適したクラウドプラットフォームとなります。
AWSがおすすめのケース
AWSは、その幅広いサービスとグローバルなインフラストラクチャにより、特定のケースで非常に有利です。まず、AWSは市場で最も成熟したクラウドプラットフォームであり、豊富なサービスオプションと高い可用性を提供します。特に、大規模なビッグデータ解析や機械学習プロジェクトには、AWSの強力なツールセット(例:Amazon Redshift、SageMaker)が適しています。
さらに、AWSは多くのリージョンとアベイラビリティゾーンを持ち、グローバル展開を迅速に行えるため、国際的なビジネスには理想的です。
また、AWSのエコシステムは非常に活発で、豊富なサードパーティ製ツールやサポートが利用可能です。これにより、カスタムソリューションの開発や統合が容易になります。
最後に、AWSはセキュリティとコンプライアンスの面でも強力で、多くの業界標準に準拠しています。これらの要素が揃っているため、特にエンタープライズ環境や複雑な技術要件を持つプロジェクトにはAWSが推奨されます。
AzureとAWSの併用がおすすめのケース
AzureとAWSの併用は、特定のビジネスニーズや技術要件に応じて特に有効です。
例えば、企業が既にMicrosoftのエコシステム(Office 365、Active Directoryなど)を活用している場合、Azureとの統合がスムーズになります。一方で、AWSはその豊富なサービスとグローバルなインフラストラクチャで知られており、特定のワークロードや地域での展開に適しています。
また、災害復旧や高可用性を確保するために、二つのクラウドプロバイダーを利用することでリスクを分散することができます。
さらに、コスト最適化やパフォーマンス向上のために、特定のサービスを最適なプロバイダーから選択するマルチクラウド戦略も有効です。
このように、AzureとAWSを併用することで、場合によってはパフォーマンスを最大限に引き出す強力なアプローチとなります。
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