農業分野におけるAI活用法とは?
ビジネスや自治体の運用業務などにAIは幅広く活用されています。そんな中、実は特に若者が離れ、人手不足で大変困っていると課題になっている農業分野において、AI活用も進んでいます。今回は農業分野におけるAI活用のメリットやデメリット、そして事例をご紹介します。
1.農業分野におけるAI活用とは?
近年の農業分野におけるAI活用の状況や背景を見ていきましょう。
●農業分野でAI活用が進む
日本の農業分野においては、高齢化や人手不足などの課題が年々深刻化しており、業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が早急に求められています。
こうした流れを受け、国によって「スマート農業」が推進されています。スマート農業とはロボットやAI、IoTなど先端技術を活用する農業のことを指し、生産現場の課題を解決することを目指しています。スマート農業を進めることにより、作業の自動化による省人化や情報共有の簡易化が進めば、熟練者でなくとも生産活動の主体になることができます。
さらにドローンや衛星によるセンシングデータや気象データをAIが解析することにより、農作物の生育や病虫害を予測するなど、高度な技術を用いることで、より効率的な農業経営が可能になります。
AIとは、人工知能のことで、人間の能力を模倣するソフトウェアのことをいいます。年々、AIは進化を遂げており、農業分野でもより貢献していくことに期待がかかっています。
関連記事:そもそもAIとは?概要やモデルについて解説 関連記事:AIで業務効率化する具体的な方法とは?事例も合わせてご紹介
●AI活用用途
農業では、例えば次の用途でAIが活用されています。
・野菜収穫ロボットによる自動化
24時間稼働し、自動的に野菜を収穫するロボットにAIを搭載することで、大幅に効率化を実現できます。
・収穫時期・収穫量予測
カメラとセンサーから、農作物の状態や気温、湿度、日射量などの情報を収集し、AIが分析を行うことで収穫時期や収穫量を予測します。
・病害の早期発見・予測
カメラやセンサーは病害についてもデータを取得できるため、AIが分析して病害の早期発見や予測を行うことができます。深刻な事態になる前に早いタイミングで手を打ち、解決することができます。
・ドローンとAIの組み合わせによる農薬散布量の最適化
ドローンによって撮影された農地のデータをAIで解析することで、作物の生育状態に合わせた無駄のない最適化された農薬散布を実現します。
・人材育成
AIに農業熟練者の技術やノウハウを学習させ、可視化することで、経験の浅い人に農業スキルの習得を促進します。
2.農業分野におけるAI活用のメリットとデメリット
農業分野でAIを活用することのメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。
●メリット
・農作業の自動化および省人化
自動化が進めば省人化を実現し、人手不足への対応につながります。
・農薬散布量の最小限化
農薬を均一に散布するしかできなかった従来のやり方と比べて、AIによって散布量を農地ごとにコントロールできるようになります。その結果、環境に影響を及ぼす農薬散布を必要最小限にとどめられます。
・収穫量の予測による出荷量のコントロール
あらかじめ収穫量がある程度予測できれば、出荷量の見込みがわかるため、安定的な供給が可能になり、取引先との信頼性が生まれます。農業に従事する労働者が出荷量のコントロールに割く時間も短縮できます。
・後継者育成・技術伝承の効率化
農業従事者の高齢化が進む中、AIが高度な学習により教育や訓練を補助することによって後継者育成や技術伝承の効率化につながります。
・新規参入者の増加
スマート農業は新たな先端技術を活用することから、専門技術を持つ事業者の参画が見込めます。また将来性を見出し、若手も集まりやすいと考えられます。
●デメリット
・指導者や技術者などAIを取り扱う人材不足
AIを活用するには、AIを活用して農業を最適化するための知識と経験、技術などが幅広く求められます。こうした人材が農業現場に不足していることは現状の大きな課題です。
・初期コスト増
AI搭載のシステムやロボットはどうしても初期導入費用が発生します。政府の補助金などを利用して積極的に進めていくで、ある程度は初期コスト増の問題が解消される見込みがあります。
・標準化が困難
AI活用が一つの農家で成功したとしても、それが近隣や他地域の農家でも同じように通用するかどうかは定かではありません。環境や土壌、栽培する作物によって条件や必要になる情報は異なるためです。いかに標準化を進めていけるかが課題になっています。
3.農業分野における国内のAI活用事例
すでに国内では農業にAIが多く活用されています。事例を3つご紹介します。
●衛星データをAIが分析して効率的な土壌分析を実現
ある米農家は、人工衛星が観測した地表の温度などのデータを活用し、農地の土の成分との関係をAIに学習させて農地の状態を可視化し、肥料が必要なエリアが一目で分かるようにしました。その結果、肥料を効率的にまくことができるようになり、コスト削減と収穫量増が期待されています。
●AIがトマトの受粉に最適な時期の花を判断
あるトマト栽培農家は、トマトの自家受粉時期を従来は勘に頼っていました。そこで受粉に最適なトマトの花の画像をカメラで撮影し、AIに機械学習させました。AIが受粉可能と判断したトマトに受粉させたところ、70%以上の確率で実がなることが判明。実施の結果、実がなる確率が1割上がり、生産性の向上にも寄与しました。
●ブドウの摘粒、摘房、剪定作業のVR訓練にAIを活用
ある自治体は新規就農者を増やすべく、ブドウ農家の熟練技術をAIに学習させ、専用のVRゴーグルをかけて訓練できる仕組みを作りました。これにより、早期習得がむずかしいとされる摘粒や摘房、剪定技術を効果的に高めることができると期待されています。
4.まとめ
AIは農業分野において多様な用途で活用が進んでいます。今の労働人口減少などの現実から、AIによる農業のあらゆる課題解決は大変期待されていると言えるでしょう。
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