【ITプレナーズ×SBC&S対談インタビューその1】国内DevOpsの現状と実践への第一歩
コロナ禍以降、日本においてDXやIT化の重要性が一段と叫ばれるようになりました。しかし、依然として「社内での推進がうまくいかない」といった企業の声もよく聞かれます。そのなかで注目されているのが、DevOpsの概念です。
今回は、IT開発者と運用者の相互理解を深める5日間の教育プログラム「DevOps-ABC」を共同開発した2社の対談インタビューを企画。
株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック(以下、ITプレナーズ)で認定講師を務める飯久保 翔氏と、SB C&S社で事業開発を行う加藤 学氏に、DevOpsの現状と未来について聞きました。
自己紹介
----まず、お互いが所属する企業の事業内容とお2人の担当業務を教えてください。
飯久保:ITプレナーズは、ITマネジメント領域における人材育成・組織開発の支援を行う企業です。ここ数年はアジャイル・DevOps分野にも注力し、広く教育事業を展開しています。
私は、認定講師として各社に提供している研修の講師・ファシリテーターを務めています。DevOps領域の活動としては、グローバルコミュニティ「DASA」のインフルエンサーとして国内の普及活動にも携わる中で、世界における日本の存在感がだんだんと弱くなっているのを感じていました。
IT人材の育成を通じて、長らく停滞している経済活動を発展させ、日本の人々を元気にしたい。そんな思いで日々活動しています。
加藤:SBC&Sは、ソフトバンクのグループ会社として、IT関連製品の製造・流通・販売、IT関連サービスの提供を行う企業です。
私はもともとエンジニア出身で、開発から運用監視まで幅広く携わってきました。現在は事業開発チームのマネージャーとして、アジャイル・DevOpsを軸にしたビジネスの立ち上げを行っています。自らの経験を活かして、技術職のバックグラウンドを持つ社内起業家の育成も支援しているところです。
----共にアジャイル・DevOpsの普及や啓蒙を行うお2人ですが、出会いのきっかけは?
飯久保:コロナ前のことになりますが、ITプレナーズが他社と共催したDevOpsイベントで知り合ったのがきっかけでしたね。
加藤:開発に携わってきた者として、今の日本における開発体制やエンジニアが置かれている状況をもっと良くしたいと思っていたところ、DevOpsの考えを知りました。学びを深めるために、そのイベントに参加させていただいたんです。現在では教育プログラム「DevOps-ABC」の共同開発を行うなど、この出会いが協業につながり嬉しく思います。
国内におけるDevOpsの現状
----コロナ禍以降、国内におけるIT化やDXの状況は大きく変化しました。そんな中で、お2人はDevOpsの導入状況についてどのように見ていますか?
加藤:エンタープライズ領域のお客様とお話ししていると、積極的に導入・推進されている企業様と、取り組み状況が芳しくない企業様の二極化が進んでいると感じます。しかし全体的に見ると、コロナ禍は各社がデジタル化を推進するきっかけになったと言えるでしょう。
飯久保:リモートワークの普及によって、今までのように、ビジネスの関係者やチームメンバーが一堂に会して意思疎通を図る機会が劇的に減ってしまった。遠隔でコミュニケーションを取る必要が生じたことから、DevOpsが掲げる「コラボレーション」を本当の意味で推進していかなければならないと気づき始めた企業様が多くいらっしゃるように思います。
加えて、変化の激しく多様化が進む社会に対応しようという動きも生まれています。これまではITベンダーに開発から運用まで任せていたシステムの内製化に踏み切る企業様も出てきました。実際に、ITプレナーズが提供するアジャイル系の研修でも、事業会社のIT部門やビジネスサイドにいらっしゃるお客様の受講が増えているんです。
加藤:外部的な要因は、やはり大きいですよね。変化のスピードや多様性に対応するために「自分たちでシステムやプロダクトを開発・運用しなければならない」という危機感も高まっているのではないでしょうか。
飯久保:さらに言うと、今はビジネスにおいて決まった正解がない時代です。定めたゴールを忠実に目指すよりも、市場の反応を見ながらトライアンドエラーができる方法にシフトしているとも言えますね。ただ、加藤さんが先に指摘されていた二極化は、私も感じているところです。
日本企業がDevOpsを実践するためには
----DevOpsの重要性は認識されるようになったものの、導入に至る企業はまだまだ多くはないと。国内でDevOpsを実践するためには、どういった取り組みが必要だと考えますか?
飯久保:事業価値を共創するために、全ての利害関係者が円滑にコラボレーションできていることが、DevOpsが実践されている状態だと言えます。
DevOpsの実践にあたっては、ツールの導入など、その後の効果測定が比較的しやすい技術的なアプローチから検討する企業様が多いのではないでしょうか。ツールを用意することはもちろん重要ですが、それを活用する社内の方々のマインドセットや組織全体のカルチャー醸成が肝心だと強く感じます。
人や組織への投資は、費用対効果が見えづらいため企業として意思決定が難しいかもしれません。しかし、技術面・人材面の施策をいかにバランスよく推進できるかが、DevOps成功のカギになると言えるでしょう。
加藤:組織に変革を起こすには「カルチャー」「プロセス」「テクノロジー」が重要だとよく言われますが、この並び順に難易度が高く、時間もかかるのですよね。長期的な視点をふまえると、カルチャーの醸成に先行して取り組むほうがよいのではないかと思います。
また、カルチャー醸成は一つの部門に閉じるのではなく、全社横断で行う必要があります。DevOpsでいう開発と運用のように、たとえば企業の新規事業部門と既存事業部門は分断が起こりやすいですよね。
国内における新規事業の比率は、北米と中国に比べると非常に低い。分断によって、企業にイノベーションが起こりにくくなっているのではないでしょうか。
飯久保:企業が持続的に成長していくためには、新たな事業の創出も、既存事業による売り上げもどちらも必要ですからね。お互いに尊重しながら、まさにDevOpsが掲げるコラボレーションをいかに実現していくかが問われると思います。
協業で実現したいこと
----日本のDevOps導入を支援する2社の、今後の協業にかける思いをお聞かせください。
飯久保:ITプレナーズは、組織のカルチャー醸成に重点を置いてDevOps領域の研修を提供しています。SBC&Sさんの力をお借りしながら、日本中に人とテクノロジーが融合して新しい価値を生み出せるようなサポートができれば嬉しいです。
加藤:ITプレナーズさんと協業するなかで、私たちもたくさんの気づきがあります。現場でいきなりチャレンジしづらいことも、研修の場で成功体験を積むことができると、実践につなげやすいと感じています。
日本の経済をリードする人材をますます増やせるように、これからもDevOpsを共に広めていきましょう。
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この記事の著者:村尾唯
2022年1月より現職で、社内コンテンツ制作やイベント企画運営を担当。複業でフリーランスライターとしても活動中。
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