2018.04.24

日本にてTopcoderサービスを提供するTC3株式会社 代表取締役 須藤義人氏が語る、DevOpsの現在と未来

中村真実
ソフトバンク コマース&サービス株式会社
DevOps Hub編集長
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DevOps Hubでは、DevOpsを実践している企業のインタビューをお届けしています。第8回は、TC3株式会社 代表取締役 須藤義人氏に、DevOpsの現在と未来について、コミュニティ・競技プログラミング、クラウドソーシングの観点からお話を伺います。
(写真:TC3株式会社 代表取締役 須藤義人氏)

TC3株式会社は、2016年9月 東京に設立。Topcoderサービスの提供、及び、アジャイルやDevOpsシステム開発に必要な開発ツール、開発環境、コンサルティング・サービスを提供しています。

120万人以上の開発者とデザイナーが集うコミュニティ Topcoder

──須藤様のご経歴と現在の業務について教えてください。

須藤:私は、日本のベンチャー企業でプロダクトエンジニアを経験し、その際シリコンバレーに駐在しました。そこで、日本とは異なる仕事のやり方や空気を感じて、グローバルな環境で仕事をしたいと思い、シリコンバレーのスタートアップ企業に転職しました。日本オフィスの立ち上げメンバーとして活動した後、サンフランシスコ本社に移動し、Topcoder R&D部門のリーダーとしてプラットフォーム開発チームを率いて、DevOpsなどを実践してきました。約1年半前に日本に帰国し、日本のお客さまへサービスを提供する弊社を立ち上げ、現在に至ります。

弊社では、日本でTopcoderを広める活動、Topcoderを利用したプロジェクトの遂行、DevOpsのコンサルティングなどソフトウェア開発分野でのGig Economyに対するサービス提供等、幅広い活動をしています。

──Topcoderとは、どのようなサービスなのでしょうか。

須藤:Topcoderは、グローバルで120万人以上のソフトウェア開発者とデザイナーが集うコミュニティで、約20年の歴史があります。日本では競技プログラミングのサイトとして有名ですね。

特長としては、ハイスキルな技術者が数多く在籍しているという点が挙げられます。情報オリンピックや数学オリンピックの上位者など、アルゴリズムやソフトウェア開発において非常に優秀な方が、自分の腕を競いたいとメンバーとして登録されています。そういった方へ企業が、オンラインの競技・コンテスト形式で、ビッグデータの分析や機械学習モデル構築、プロトタイプ開発などソフトウェアの開発を依頼できる仕組みになっています。

──Topcoderを拝見したのですが、メンバーの技術ランクが設定されているのですね。どのような基準でランクが決まるのでしょうか。

須藤:競技やコンテストで優秀な成績を納めると 、TOEICのように相対的な点数が付きます。特定の点数ごとにハンドル(ユーザー名)の色が変わり、最も高い点数レンジの方は赤色ハンドルとなることから Red Coderと呼ばれており、エンジニアのみならず企業からも非常に高い評価を受けることが多いです。競技プログラミングのRed Coderレベルになりますと、グローバルで200人弱しか、いらっしゃらないです。

──120万人中の200人弱とは、物凄く高いスキルをお持ちなのでしょうね!Topcoderには、どのような案件があるのでしょうか。

須藤:例えば、日本では簡単に知識を得ることができない医療分野でのDeep Learningモデルの作成事例があります。メンバーを募集する前は、「そこまで深いスキルをお持ちの方は、なかなかいらっしゃらないだろうな」と思ったのですが、コミュニティで募集をかけたら、実装できる方がぽんっと現れて驚きました。

その他にも、Topcoderの中には、NASAの宇宙ステーションで使われるアルゴリズムを作ったメンバーもいらっしゃいます。企業のお客さまからは、トップレベルのスキルを持つ方々にオンデマンドでアクセスができて、圧倒的な成果を得られることが評価されていますね。

──日本にいながら、世界トップレベルのスキルの方と一緒に仕事ができる感覚とは、今まで味わったことがないですね。貴社がサービスを提供するGig Economyとは、どういった世界観なのでしょうか。

須藤: Gigとは、JAZZなどの音楽のセッションで、グループではなく、曲ごとにもしくはライブごとにメンバーが集まって自由に音楽を弾いていくといった意味があります。Gig Economyとは、どこかの企業に属するというよりは、もう少しゆるい状況でメンバーがその時々に集まり、物を作ったり提供したりするようなイメージです。例えば、Uberや、AirbnbもGig Economyを実現するサービスを提供する企業の代表例と言われています。ソフトウェアの開発分野では、Topcoderの名前が挙がりますね。

DevOpsとハイスキルな人材を確保する仕組みが必要

──DevOpsとは何だと思いますか。貴社の中で定義はありますか?

須藤:弊社の中で定義はありません。Topcoderを利用するような開発スタイルはDevOpsを取り入れることが必要不可欠なものであると思いますし、開発の状況に応じてあるべき姿は変化するため、具体的に定義できるものではないと考えています。

ただ、強いて言うなら、新たな技術を取り込みながら、ソフトウェアをより早いサイクルでユーザーに提供することを目指すと結果的にDevOpsの形になるのだと考えています。

もともとアメリカの企業は、必要とする専門性を明確にして、ピンポイントで求人をすることが多いと思います。以前はソフトウェア開発者、インフラの運用者、QAエンジニアのような大きなくくりで求人を行っていました。今は、ソフトウェアを開発し、提供するためのスキルがだんだんと広範囲に、かつ高度化しています。さらに、クラウド環境が整ってきて、週に何度もリリースを行うなど、サービスの提供の仕方が変わり、エンジニアに求められる内容も変わってきています。

ユーザーにソフトウェアの本来の価値を提供するためには、旧来型の職務内容では縦割りの弊害のほうが大きくなってしまいます。職種やスキルを考え直す必然性から、アジャイルのメソドロジーを追いかけるようにDevOpsという言葉が生まれてきたのではないかと感じています。今までのような画一的な組織では、新しいサービスの開発やDevOpsは立ち行かないと思いますね。

──国内におけるDevOpsの現状をどのように考えていますか。

須藤:私は日本に帰ってきてまだ2年経っておりませんので、国内の現状を分かっているかは疑問ではありますが、日本とアメリカの状況はそこまで変わらないと思っているんですよ。

アメリカでも、TopcoderとDevOpsのコンサルティングを提供させていただくことが多いのですが、帰国して日本の企業さまにも同様にDevOpsのコンサルティングを実施しますと、国内・アメリカ問わず、DevOpsの実践というとツールの選定やプロセス論に陥ってしまったり、各事業部と IT部門との垣根がある中でIT 部門のみが DevOpsを実践したいと考えるお客さまが多いように思います。

──今後のソフトウェア開発はどのように進んでいくと思いますか。

須藤:サービスを作る上で必要とされる技術知識はより広範に、かつどんどん深くなっていくのだろうと思います。そのため、全てのテクノロジーを見渡して、開発をしていくのはとても難しい。全ての技術が分かるスーパーエンジニアを探すのは現実的でないですし、企業がこれまでのように社内、もしくは限られたパートナーを囲い込み、依存するような開発は終焉していくのではないかと思います。

これからは、プロジェクト単位どころか、技術要素単位でスキルの秀でたメンバーをグローバルからクイックに集めて開発からリリースまで、実施していくような流れになると思いますね。それはエンジニアから見ると特定の企業の中で、もしかするとそこまで強くない技術分野に対して時間を費やすのでなく、セルフセレクションで自分の得意分野や専門性に基づく価値を提供し、より自分のスキルを高めていくことにつながります。1つのサービス提供に対して限られたエンジニアがずっと張り付くより、ゆるい結びつきで、たくさんのエンジニアが関与し、途中で出たり入ったりを繰り返しながらサービス開発が進んでいくような世界、すなわちGig Economyの世界が訪れるではないかと思います。


180424_tc3_01.jpgTC3株式会社 代表取締役 須藤義人氏

──エンジニアは自分のスキルを高め、企業はよりスピーディーに質の高いサービスを生み出せるようになりますね。

須藤:こうした状況では、組織・文化・ロケーションといった縛りは崩れ、プロジェクトマネージャーの力でリリースサイクルを制御することが難しいことが容易に想像できます。具体的には、一つのプロジェクトを最初の3ヶ月でフロントエンドを作る方が入り、次の一週間はバックエンドを作る方が入る、モジュールごとに新しい人が開発に加わり部分的に作って、抜けていくということが繰り返されていく訳です。

こうした中では、アジャイルメソッド・リリースプロセスの標準化、それに伴う開発・QA・運用の一体化と各種ツール群の整備などDevOps的な要素は、もちろん必要になってきます。それ以上に、組織としてどのように新しい変化に対応していくのかを見据えて、各企業の仕組みや組織から変えていくことが必要だと思います。

ある調査によると、アメリカでは、2016年の時点でソフトウェアエンジニアの20%がフリーランスだそうです。2025年には、それが50%に増加すると言われています。今までよりも、ゆるいつながりを持って勤める方が増え、ビジネスのやり方も変わり、DevOps的な取り組みとハイスキルな人材を確保する仕組みが必要不可欠になってくると思います。

来るべき世界で必要となるプロセスやツールを提供していく

──そうは言っても、なかなか新しい取り組みを始められない企業の方へのアドバイスはありますか。

須藤:まずは、プロジェクトを選ばれると良いと思います。既存の情報システムではなく、事業部などが新たに開発するシステムで取り組んでいただくと始めやすいのではないかと思います。これまでのやり方が難しいとおっしゃられている理由は、情報システムの組織や、企業標準を全て変えなくちゃならないと必要に駆られているのかと思いますが、これからバリューが出てくるものを選び、その範囲を広げていくようなイメージで、システムの全てを変えるのではなく、スモールスタートや小さなサイクルで始められるといいと思いますね。

──国内におけるTopCoderやDevOpsはどのような方向に進んでいくと思いますか?

須藤:世界中のエンジニアの知見をソフトウェア開発に取り込めるTopcoderのサービスは国内でも多くのお客様に高く評価していただいています。今後も、グローバルなハイスキルエンジニアのオンデマンドでの活用や、彼らを開発チームのメンバーの一員として迎え入れいてくという、新しい流れは無視できなくなってくるだろうと思っています。

Topcoderのようなサービスは今後もどんどん広まっていくでしょうし、DevOpsはより進んでGig Economyにおけるソフトウェア開発手法、及びGigの世界をうまく取り入れていく運用方法の確立へと進んでいくと思います。我々はこれをGigOpsと呼び、そうした来るべき世界で必要となるプロセスやツールを今後も提供していきたいと考えています。

Gig Economyの世界では、新しいソフトウェアの開発がどんどん活発化していきそうですね。お話しいただき、ありがとうございました。

この記事の著者:中村真実

ソフトバンク コマース&サービス株式会社
DevOps Hub編集長

ソフトバンクC&Sで、法人向けソフトウェアのマーケティングを担当。DevOps製品や、Microsoft AzureなどのIaaS/PaaS、セキュリティ、Autodesk製品など、ソフトバンクC&Sで取扱っている数多くのソフトウェアの良さを、Webを通じてお客さまに届ける活動を行っている。


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