2018.03.27

日本仮想化技術株式会社 代表取締役 兼 CEO 宮原徹氏が語る、国内DevOpsの現状と未来

中村真実
初代DevOps Hub編集長
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DevOps Hubでは、DevOpsを実践している企業のインタビューをお届けしています。第6回は、日本仮想化技術株式会社 代表取締役 兼 CEOの宮原徹氏に国内DevOpsの現状と未来について、お話を伺います。
(写真:日本仮想化技術株式会社 代表取締役 兼 CEO宮原徹氏)

日本仮想化技術株式会社は、2006年 東京に設立。仮想化技術、クラウドを中心とした、インフラ構築・運用、コンサルティングを行う企業です。

仮想化技術に特化し、時流に合わせて事業を展開

──貴社の事業について教えてください。

宮原:弊社は、2017年末で11年目を迎えました。事業としては、VMwareなどを使った小規模なプライベートクラウド構築、OpenStackを使った大規模なクラウドインフラ構築、そして新たにその発展形としてDevOpsや開発環境を含めたコンサルティングを三本目の柱にしようとしているところです。

──幅広い事業を展開されているのですね。事業を展開していくにあたって、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

宮原:会社設立当初は、VMwareなどを使って仮想化をして物理サーバーを仮想化マシンに移行する、P2V移行を行う事業を中心としていました。

その需要が一段落してきた時に、多くのお客さまは、クラウドインテグレーションのほうに移っていったんですよね。弊社は、技術思考もハードウェアレイヤー寄りで、CPUの新しい機能であったり、ネットワークやストレージへの興味が深いこともあり、お客さまからインハウスのクラウドを構築する案件のお声がけをいただきました。クラウドの調査を行う中でOpenStackが伸びそうだし、オープンソースで商用ではないという点が面白いなと感じて、OpenStack環境を構築して提供するようになりました。

色々な企業さまに、ノウハウを提供して基盤を作る中で、クラウドインテグレーションされた環境の先には、サービスを開発する人達がいることに気づきました。開発手法や使い方も合わせてご提供できれば、お客さまがスピーディーにサービスを開発できると考え、インフラだけでなく開発環境も含めたご提案をしています。

──どのようなチーム編成で案件対応を進めているのですか。

宮原:弊社には8名技術者がいまして、得意分野によって主担当は決めているのですが、他のメンバーも自由に意見を出して良いように、ゆるい形で案件を進めています。Slackを使って得意な分野を教えあったり、誰かが調べたことを共有したり、主担当を皆でサポートするような形を取っていますね。

空いた時間には、今後新しくやっていきたいことをサブのタスクとして割り振っています。例えば、Gitのトレーニングコースを作ったり、GitLabやAnsibleを試したり、お客さまとの共同検証を始めたりしています。


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日本仮想化技術株式会社 代表取締役 兼 CEO宮原徹氏

開発、テスト、本番で、一気通貫した環境を提供

──DevOpsの取り組みで重視していることは何ですか。

宮原:弊社が一番重視しているのは「自動化」ですかね。インフラ側から見たDevOpsは、「自動化された均一な環境を開発サイドに提供する責務を負うこと」なのかなと思います。

今までのインフラは「本番環境のためのインフラ」という観点が強かったのですが、柔軟性の高い仮想化環境ができれば、「開発、テスト、本番を一気通貫で同じ環境でやりましょう」というご提案ができます。使いやすい環境を作って、効率よく開発してもらえることは、やっぱりインフラ屋さんとしては嬉しいですよね。

──どのような流れでお客さまの環境の自動化を進めているのですか。

宮原:面倒くさいところを自動化していくのが、比較的進めやすいです。例えば、本番環境でミドルウェアをインストールしたり、設定するプロセスを、少しずつ自動化する。Windows環境だったらPowerShellを使ったり、本番だったらAnsibleを使ったりして、本番でまずはやってみます。それを開発環境やテスト環境に適応して、一気通貫で使っていただく。始めにインフラを継続的にデプロイできるような環境を作って、開発者に使ってもらうことで、安心して開発、テスト、本番と同じ環境を使ってもらえるんです。

より効率化して、属人性を排除して作業ミスが起こらないようにするためには、デプロイの自動化もお勧めします。お客さまに「デプロイメントをする時にトラブルは、ありませんでしたか?」とお聞きすると、オペレーションミスが多かったりします。手順書と現場の環境に微妙な違いが出てきていたり、ケアレスミスをしていたりと、その原因究明に物凄い時間がかかったりするんですよね。そういったことも含めて「自動化」が一番重要だと思います。

外部環境を意識して、新しいエッセンスを少しずつ取り入れる

──開発を効率化していく上で、多くの企業が抱えている課題は何だと思いますか。

宮原:最大の障壁は、組織文化だと思います。とある開発会社の方にどうやって開発しているのか色々見せてもらったら、Excelで資料をかっちりと作られていて「すごく手間かかっているな」と思ったんです。だけど、その手間って本当にいるのかなと感じたり、「ウォーターフォール開発で何か課題はありますか」って聞くと答えが出てこなかったりすることがありました。ウォーターフォール的なやり方が悪いとは思わないですが、それで開発している人達からすると、アジャイル開発やテストドリブン開発などをよっぽど勉強をしていないと、プロジェクト的な課題は出てこないんだと気づかされました。それでは、既存のやり方を踏襲することが前提になってしまうと思うんですよね。

削減できる手間に対して、お客さまがコストを払ってくれているなら、会社としてはまったく文句ないんですよ。ただ、本当にそれで問題ないのか、もう少し引いた視点で見る必要があると思います。仮に外部環境が変わって、効率のいい開発手法が世の中に広まっていった時に、最後に失注してしまう可能性もあるということを考えておかなきゃいけないですね。

ですので、今世の中で、トライ&エラーで行っているようなDevOpsとかアジャイルに対して、少しでもトライしてみるべきだと思います。このプロジェクトを新しい手法を取り入れてやってみようかとか。テレワークを導入してロケーションを変えてみたりとか。

──市場の変化や、外部環境を意識した進め方が必要ですね。

宮原:色々な会社さんとお話ししていると、プロダクトオーナーとの会話が不足しているんじゃないかなって感じることも多いです。よくよく聞いてみるとアプリケーションの仕様変更が常に発生していたり、ユーザビリティを高めて欲しいという要求に対して応え切れていないんですよね。

一方で、Webサービスですと、ユーザーが都度課金してくれるので、熾烈なサービスの競争が起こっているじゃないですか。それと比べると、業務システムのコンペは最初に受注する時だけなんですね。システム開発をしたら3年、5年の保守が約束されていて急に切り替えることもない。その間に新しいSaaSが出てきたりとかして、技術がガラッと変わることもあります。その時に「弊社も新しいやり方で開発できますよ」って言えるようにならないと、将来ひっくり返されることもあるという危機感があまりないと思います。

──既存のやり方が決まっていると、新しいやり方に抵抗感を持ってしまったりすることもあります。

宮原:最初に新しいことをやると決めてくれる人がいない場合に難しいのが、「新しいやり方をやったら儲かるのか」と言う人がいることですね。すぐにコストが下がって利益が上がるって、そんなはずはないんです。求めるのはスピード感やクオリティですし、利益を出すというのは最終的な結果で、現場の開発手法とは別軸の話だと思います。

多くの文化の変化ってゆるやかに進みますよね。儲かるのかなんて、すぐにはわからない。でも、今までやってきたことでコストオーバーとかで、儲からないものなんていっぱいあるはずです。それはもう見ないようにして、選択肢を複数持っておくべきなんですね。

今までのやり方を捨てるという話ではないけれど、新しいエッセンスを取り入れてみる。例えば、今までファイルサーバーでやっていたものを、導入しやすいソースコード管理ツールでやってみたり、クラウドを利用したり。コラボレーションツールだったら、Slackの無償版を試してみたりとか。ゆるやかな変化を積極的に取り入れていくことが大事だと思います。

──ボトムアップで、できるとこから少しずつ進めていくのが良いのでしょうか。

宮原:そうですね。あとは、トップダウン的に言えば、方向性ですよね。上の人達が、何を目指すべきなのか大きな命題を上から与える形にして、一部の変化は許容すると伝えるべきだと思います。現場の雰囲気だったり、やり方が限定主義だったりすると、新しいことを始める障壁になりやすいから、上の人が新しいことを年間計画のミッションに入れてあげるのが良いのかなと。

IT業界でも、外部のイベント参加を奨励していなかったりする企業もありますね。大きい会社の人達からは、オープンソースやクラウドを使ったり、コミュニティで発表するのっていいですよねって言われるんですが、別に大したことなんてやっていない。「LTなんて、出オチでいいんだよ(笑)。自由にやろうよ」って許容できる文化があれば変わっていくと思うんですよね。

──チャレンジしてみたいことを言いやすい雰囲気を作るとが重要なんですね。

宮原:「ああいうのやってみたい」「あれを導入してみたい」とかが気楽に言える、弊社は結構それができていると思いますね。Slackのチャネルに「Purchase」というのがあって、購入したいものは自由に投稿できるようにしています。
私が購買兼決済で、色々内容を調べてもらった上で、納得したら購入しています。最近では社員が、新品で安いサーバーを見つけてきて購入したりと、楽しくやっています。


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HoloLens等のデバイスや書籍など、欲しいアイテムがあれば、条件つきで購入可能だそう

組織の新陳代謝が進めばDevOpsがマッチしていく

──今後、国内のDevOpsはどのように進んでいくと思いますか。

宮原:一般的に言われているDevOpsを導入することは、新しい企業はできると思うんですが、エンタープライズや承認プロセスがしっかりしている従来型の企業では、難しいんじゃないかなって気はします。ただ、要素技術を取り入れていく企業は、増えてくるだろうなとは思いますね。

組織の新陳代謝が進めばDevOps的なやり方がマッチしていくと思います。IoTやスマートフォンを使ったアプリケーション開発にシフトしていけば、DevOps的なものが広まっていくのかなと期待しています。例えば、業務用アプリをMDMで配信して、テストしてデプロイパイプラインをしっかり作ったり、常にフィードバックを受けて改修して、次のバージョンを出したりということができれば、変わってくるかなと。

弊社は、既存の業務システムに、ゆるやかにエッセンスを取り入れるというアプローチをしているんですけど、最終的には新しいシステムをビジネスで活用していくと、組織は古くても新しいことを気軽に試せると思います。

──DevOpsを始めてみたい企業さまに向けて、貴社ではどういった取り組みをされていますか。

宮原:DevOpsは、国内では成功事例が少なくて、局所化されすぎていると思いますね。サービス、ビジネスのあり方が違いすぎて事例として落ちていないというのが今の課題でしょうね。

ですので、お客さまがDevOpsを始めてみたいと思った時に、ハードルを越えやすくするツールや、インテグレーションを組み合わせて、パッケージ化を進めています。コード管理、ビルド・テストツール、コミュニケーションツールとかそういったものをうまく組み合わせて、「こんなことができるんですよ」と、わかりやすくお客さまにお見せして、お伝えしていきたいと思います。

どんなことでも、新しい取り組みを急激に進めることは難しいですが、ゆるやかに取り入れることで現状を変えていくことができるのだなと思いました。お話しいただき、ありがとうございました。

この記事の著者:中村真実

初代DevOps Hub編集長

2017年7月~2018年9月まで、DevOps Hubの立ち上げと初代編集長を担当。


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