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新興ベンダー紹介 第1回 「Carbon Relay」

新興テクノロジー
2019.10.18

はじめに

みなさん、こんにちは。SB C&Sの加藤です。 私たちのチームでは、海外で新しく立ち上がったスタートアップ企業や国内にこれから入ってくる企業の国内展開の支援をミッションとして活動しています。その活動の中で、これは面白いのでは?というテクノロジーや商材の紹介をシリーズでお伝えしていこうと思います。 記念すべき第1回は、グリーンテック関連企業の「Carbon Relay」です。


課題

みなさんはグリーンテックに関してどの程度ご存知でしょうか?広義では、エネルギーや環境問題に関して、テクノロジーを活用し、地球温暖化などの様々な問題を解決する活動全般を指します。国際的にも、各国の垣根を超えた目標として、SDGs 「Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)」が掲げられており、最近は多くのメディアで目にすることも多くなっていると思います。その中で、今回はCO2削減という観点で紹介していきたいと思います。

イメージしやすいようにデータセンター(以下DC)を例にあげてみます。日本においても、電算計算機を大量に使用する建物が多く存在します。DCは他の建物に比べて消費するエネルギー密度が極めて高く、日本全体の消費電力量の約1〜2%ととも言われています。こういったファシリーティーの電力効率を高めて、冷却にかかるエネルギーを最小にすることで結果CO2削減に貢献できるのではないかというのが今回のお話しになります。


Carbon Relayとは?

一言で言うと、「AIを活用して電力効率を上げる製品・ソリューションを提供する」企業です。2015年にボストンで設立され、多くの強化学習のPh.D.を抱え、約4年間のステルスモード(R&D期間)を経て、2019年1月に製品を公式にリリースしました。 2019年10月現在の製品は、以下の2つに大別されます。

  • Red Sky Energy  深層強化学習のエンジン
  • Red Sky Ops 上記をITインフラの上で運用管理する機能(AIOps)

Red Sky Energy

一般的にDCでの電力効率を表す指標として、PUE (Power Usage Effectiveness)が使われています。

計算式は、

PUE = DC全体の消費電力 ÷ IT機器による消費電力

となり1.0に近いほど電気効率が良いとされています。一般的な都市型DCのPUE値は、1.5 〜 2.0と言われていますが、Googleさんのデータセンターでは、AIを活用しPUEを1.1付近にキープしているそうです。Red Sky Energyを使って、このPUEの値を理想に近づけることにより、年間の電力コストを8%〜20%削減し、副次的に余計なエネルギーを使わないエコロジーなシステムを作り上げていく事が出来ます。(図1)

carbon1.png
図1 動的に最適化された設備温度管理とPUEの関係

次に、アーキテクチャ面からのRed Sky Engeryを見ていきましょう。IT機器の発する電力やそこから発生する熱と冷却設備の関係は切っても切り離せないですが、次のような構成になります。(図2)

Clientが集めてきた各種データ用いて、Agentが深層強化学習モデルとして構築していく流れになります。こういった構成は、デジタルツインとも言われますが、Agent側で仮想DCを構築してその中で最適な空調温度のコントロールを継続的に行う予測モデルを作り上げるシステムとも表現出来ます。

  • Agent ・・・学習モデルを改善するための司令塔として機能する
  • Client ・・・DCに展開されて、各ハードウェア機器とAgentの仲介をする
  • IoTセンサー・・・DCに設置された温度/湿度センサーとして物理情報を収集する
  • DCIM・・・Data Center Infrastructure Managementの略で各サーバー機器の消費電力、ラック毎の温度、湿度、空調の温度設定、風量、風向き、主電源のモニターとコントロールをする
  • HVAC・・・Heating, Ventilation, and Air Conditioningの略で、暖房、換気、空調、つまりエアコン

carbon2.png

図2 Red Sky Energyのアーキテクチャ概要


Red Sky Ops

アプリケーションとしてのRed Sky Energyの予測モデル開発は日々変化していきます。このような変化の激しいシーンでは、インフラ側に柔軟性や迅速性を持たせる事も重要になってきます。最近では、コンテナやその管理基盤であるKubernetesがデファクトとして認識されており、Red Sky Opsもその流れからコンテナ形式として提供され、Red Sky OpsはコンテナオーケーストレーターとしてRed Hat Openshift Container Platformなどをサポートしています。エンタープライズの領域では、実際の予測モデルを運用する基盤(AIOps)として、サポート付きの商用コンテナプラットフォームも選択されていくのではと感じています。その他各種インテグレーションポイントはこちららご確認ください。


終わりに

今回紹介したDCのケースでは、グローバルでは台湾のFoxconnなどが利用していますが、あくまでごく一部のユースケースにすぎません。深層強化学習が適用される領域は極めて広いですので、他にも一般的なリテールの店舗や自動化が進む無人店舗などの冷却施設の温度調整を自動化するなど、応用範囲が広いので幅広いユースケースに対応できるのではと考えています。 どの程度効果があるのかなど詳細が知りたい方はお問い合わせくださいませ。


関連リンク

Carbon Relay HP
Red Sky Energy
Red Sky Ops
Red Sky Integrations
Google - Machine Learning Applications for Data Center Optimization -

著者紹介

SB C&S株式会社
テクニカルマーケティングセンター

加藤 学

エンタープライズ領域での開発から運用監視までの幅広い業務経験を活かし、事業開発やマーケティングチームと一緒になってビジネスの立ち上げを行っている。日本とアメリカ、特にシリコンバレーへ滞在し、新規プロダクトの発掘調査や国内外の新規パートナーリクルーティング、技術戦略、ポートフォリオの策定など、技術をバックグラウンドにしたさまざまな活動を行っている。最近では、DevOpsを始めとした開発者向けビジネスの立ち上げを行い、プロジェクトの責任者として慌ただしい日々を送っている。