これまでAnsys Discoveryでは解析を行うとモデルが形状変更するたびにリアルタイムで計算されていく、EXPLOREというステージでの解析の様子をご覧いただいてきました。
実はAnsys Discoveryにはもう一つREFINEという解析のステージがあります。
今回はこのREFINEについて、EXPLOREとの違いをご紹介します。
同じモデルを使用して、それぞれのステージで解析し、比較してみました。
今回は、固有値解析を行うモデルを使用します。
モデルは、Discoveryを起動した際に選択できる「サンプル」から「GEAR_HOUSING_MODAL」を使用しました。
このモデルには以下の解析条件があらかじめ設定されています。
図のように左側にあるボルト穴が6自由度完全拘束されています。右端の面には、面とリンクするリモートポイントが設定されており、リモートポイントを介して10kgの質量が均等に負荷されるようになっています。
また、解析結果は3次のモードまで抽出するように設定されています。
解析に使用したPCのスペックは以下の通りです。
EXPLORE | REFINE | |
マシンスペック | GPU 名称:NVIDIA Quadro P1000 CUDAコア数:640 メモリサイズ:4.0GB |
CPU 名称:Intel® Core™ i7-10700K CPU@ 3.80GHz コア数:8 RAM メモリサイズ:32GB |
OS | Windows 10 Pro |
それでは早速、結果を見ていきましょう。
まずはEXPLOREの解析結果です。
■EXPLORE(解析時間:8.53[s]、エレメント数:111,362、ノード数:154,555)
1次モード 165Hz | 2次モード 230Hz | 3次モード392Hz |
続いてREFINEの解析結果です。
■REFINE(解析時間:24.00[s]、エレメント数:112,121、ノード数:183,089)
1次モード 157Hz | 2次モード 217Hz | 3次モード359Hz |
解析時間を比較すると、EXPLORE(8.53[s])とREFINE(24.00[s])では3倍近くの差があることがわかりました。EXPLOREの方が圧倒的に早いですね。
次に計算精度を確認してみましょう。
一般的に、有限要素法の解析ではメッシュが細かいモデルの方が、計算精度が高くなります。そのため、今回はMechanicalでメッシュを細かくしたモデル(エレメント数:467,344、ノード数:825,575)の結果と比較して、どちらの精度が高いのか調べてみました。
それぞれの固有値の結果をグラフにしてみてみると・・・
EXPLOREとREFINEの結果には少し差がありますが、MechanicalとREFINEの結果はほとんど一致していることがわかりますね。
REFINEで計算したものの方が、精度が高いと考えられます。
ここで、それぞれの解析ステージについて、大きく異なる特徴をまとめてみました。
EXPLORE | REFINE | |
解析時間[秒] | 8.53 | 24.00 |
解析精度(Mechanical との差) | 大 | 小 |
使用するプロセッサ | GPU | CPU |
精度調整 | グリッドの密度に依存 | メッシュサイズに依存 |
ライセンス | Discovery | Mechanical |
EXPLOREは計算にGPUをしているため解析時間が非常に短く、形状検討を行いながら簡単に結果を確認したい場合に非常に適したステージです。対してREFINEは、解析時間は少しかかるものの、メッシュサイズを細かく設定することができ、EXPLOREよりも高精度な結果を得ることができます。他にも一部の非線形現象に対応するなど、より再現性の高いモデル作成ができます。
それぞれの特徴から、EXPLOREを使用して目星を付けた後にREFINEで確認をするなど、用途によってステージを使い分けることで、初めから時間をかけて複雑なモデルを作成・解析するよりも作業の効率化が見込めますね。
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SB C&S株式会社
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