以前、この伝熱編ではヒートシンクのサンプルモデルを用いて定常状態で温度分布や熱流束の結果が得られることをご紹介しました。
ですが、定常状態では解析の初めと終わりしか見ることができず、どのような過程を経てその結果になるのか、確認することができません。
そこで今回は、非定常状態で解析する機能を使用し、金型の冷却水路の設計を想定して簡単に解析・形状変更を行ってみました。
まずは、今回使用するモデルをご紹介します。
今回は、左図のようなブラケット形状を作るための金型モデルを用意しました。
金型はブラケット形状の窪みと冷却水と通すための水穴だけのシンプルなものです。
黄色のパーティングラインで分かれて右図のようになっており、橙色でハイライトされているのが水穴です。
続いては、このモデルに定義する解析条件です。
今回のモデルの材料は、金型が鋼材、成型品のブラケットはABS樹脂を想定しています。
それぞれの材料特性は次の表のとおりです。
ABS樹脂(成形品) | 鋼材(金型) | |
密度[kg/m^3] | 1050 | 7850 |
熱伝導率[W/m・K] | 0.23 | 50.4 |
比熱[kJ/kg・C] | 1.4 | 0.479 |
境界条件としては、水温20℃の冷却水が一定の流量で流れていることを想定して水穴の側面に1700W/m^2・℃(雰囲気温度:20℃)を指定し、金型の外面は断熱としています。金型と成型品の初期温度を150℃として、ここから10分間で冷却される様子を見ていきます。
決められた時間内での温度の推移をみるためには、シミュレーションタブのシミュレーションオプションの設定を次のように変更します。
- 計算タイプを指定→非定常状態
- 非定常状態のシミュレーション時間を指定→任意の数値を入力(今回は10分=600秒を入力)
それでは解析して、成型品の断面の様子を見てみましょう。
断面は以下の位置で切った時のものです。
徐々に冷却されているのがわかりますね。
コンターの色はその時々の結果によって最大・最小値が自動的に調整されていきます。それに合わせ、コンターの色も変わっていくため注意が必要です。
動画から、水穴が密集している中心部は比較的早く温度が下がっているのに対し、端の方は冷却に時間がかかっていることがわかりました。水穴の位置を修正して、再度解析してみましょう。
先程のモデルよりも均等に温度が下がるようになりましたね。
非定常状態で解析を行ったことで変化の過程を見ることができるようになり、定常状態の解析では気づくことができなかった、変化途中に起こる問題を見つけ、修正することができました。
非定常状態の解析でも形状変更しながらリアルタイムで解析されるため、とてもスピーディでしたね。
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SB C&S株式会社
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