今回はAnsys Discoveryを用いた電磁界解析についてご紹介します。
Ansys Discovery 2022R2からはREFINEステージにて電磁界解析機能が新たに加わっています。
近年は構造・流体だけでなく、複雑機器の回路設計・車間距離の計測や衝突防止を目的とした自動車のミリ波レーダー等、電磁気の観点からものづくりをすることが重要となってきています。特に機器からの電波放射・アンテナの指向性等などは目に見えず、実験による測定もコストがかかることから電磁界解析による可視化という手段は強力です。
今回は基本アンテナの1つであるダイポールアンテナの電磁場解析を行ってみます。2本の導線の間にサーフェス状の給電部が設けられており、給電されることによって生じる電磁界分布・ゲイン・入力インピーダンスなどがどのようなものか見てみましょう。アンテナの長さは60 mmとします。解析する周波数帯は1 GHzから、アンテナ約2倍の長さの波長(120 mm)を含む周波数である2.5 GHzとします。
形状を作成したらREFINEステージに移行し、画面上部の『シミュレーション』タブ⇒『解析関連』⇒『電磁界』を選択して電磁界解析の設定を開始します。始めに電源の設定を行います。今回は給電部となるサーフェスの下部エッジを選択し、以下のように『回路ポート』として電源を定義します。
すると新たに電磁界解析の設定が追加されます。材料はデフォルトの銅とし、『電磁領域』で解析する周波数領域を決めます。今回は1-2.5 GHzを周波数領域として設定します。画面上部の『シミュレーション』タブ⇒『解析関連』⇒『シミュレーションオプション』にて、結果として出力する『遠方界』で遠方界のアンテナパターン・『近傍界』で近傍界における電磁場の周波数の数を設定します。
これにて解析の設定は完了しました!それでは解析を実行してみます。電磁界は構造・流体解析とは異なり、ジオメトリを中心として以下のような直方体のメッシュが生成されます。
それでは結果を見てみましょう。『シミュレーションオプション』で設定したように、結果として出力される近傍界における電磁場の周波数は10個分、遠方界のアンテナパターンの周波数は5個分となっています。
周波数が2.5 GHzでの電磁場と電場は以下となります。アンテナ端部には電場が溜まっており、アンテナ全体には磁場が溜まっていることが確認できます。
次にゲインの指向性を見てみます。各周波数のゲインは以下のように3D・断面で確認することができます。周波数が2.5 GHzの場合にはゲインはアンテナ周りにドーナツ状の指向性を持つことが分かりました。
次に反射係数:S11の周波数特性を見てみます。ピークが立っている2.25 GHzで共振することが確認できました。
新たに電磁界解析機能も加わったことで、より汎用性が高まっています。これまで通り形状変更から解析までAnsys Discovery内でシームレスに行えるため、アンテナ形状を微調整して狙った共振周波数に届くか?など素早くアイデアを試すことができます。
もし、Ansys Discoveryに少しでも興味をお持ちでしたらSBC&Sまでご連絡ください。
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SB C&S株式会社
C&S Engineer Voice運営事務局
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