2023.02.23

【ITプレナーズ×SBC&S対談インタビューその2】「アジャイル人材」育成のために必要なこと

村尾唯
株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック マーケティング担当
このエントリーをはてなブックマークに追加

IT開発者と運用者の相互理解を深める5日間の教育プログラム「DevOps-ABC」を共同開発した2社の対談インタビュー企画、後編をお届けします。

※前回の記事はこちら・・・

今回は、今後のビジネスに求められる「アジャイル人材」をテーマに、株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック(以下、ITプレナーズ)で認定講師を務める飯久保 翔氏と、SB C&S社で事業開発を行う加藤 学氏が語り合いました。

今後のビジネスに求められるアジャイル人材とは

----「アジャイル人材」と一口に言っても、個人や組織によってその定義が違うように思います。お2人の考える「アジャイル人材」について教えてください。

飯久保:市場の変化に「適応」して、常に最善のビジネスプロセスを「適用」できるのが、アジャイル人材だと思います。加えて、エンジニアリングスキルとビジネスセンスを併せ持っているとベストですね。

ITP-interview2-1.jpeg

 

加藤:「適応・適用」という表現はとてもしっくりきます。まさにDevOpsの考えのように、開発とビジネスサイドとが歩み寄ってお互いの知見をシェアできるといいですよね。

 

----今のお話を聞いて、ハードルが高いと感じられる方もいらっしゃると思います。理想と現実のギャップをどのように埋めていけばよいでしょうか?

飯久保:実は、ギャップはそれほど大きくないと私は考えています。というのも、ビジネスパーソンの皆さんは営業スキルや開発スキルなど、何らかの能力をすでに持っていらっしゃるはず。日本には謙遜の文化が根強くあるので、「今の自分は十分ではない」と捉えてしまいがちですが、今のままで組織に活かせるものはたくさんあると思うんです。

 

加藤:同感です。私は海外での勤務経験もありますが、たとえばエンジニアのスキルセットを比較してみても、日本は海外と遜色ないと感じています。ただ、それぞれの個性や能力をチーム全体でいかに最適化していくかという点は、あまり議論されていないように思います。

企業はどのようにアジャイル人材を増やすか

----1人が全ての能力を兼ね備えている必要はなく、チーム全体で「適応・適用」型であるためにそれぞれの能力を持ち寄るイメージでしょうか。

ITP-interview2-2.jpeg

飯久保:そうですね。むしろ1人のスーパーマンが何もかもこなしてしまうと、チーム全体の底上げができないままになってしまう可能性が高い。誰もが新たな成功体験を積んでいけるように、「あなたならできるよ」「挑戦して、失敗してもいいんだよ」とエンパワメントできるリーダーもしくはファシリテーターがチーム内にいるとよいでしょう。

 

----「アジャイル人材」を育成するために、企業に必要な取り組みもあれば教えていただきたいです。

加藤:それで言うと、日本の企業ではマネジメントラインを見直す必要があるかもしれませんね。組織内で、いかに心理的安全性を高められるか。文化やカルチャーの醸成に根気強く取り組んでいくことが大事ではないでしょうか。

 

飯久保:マネージャーとメンバーが、お互いに歩み寄れるとよいですよね。以前、大手企業様でDevOpsのワークショップを実施したところ、若手社員の方から「上下関係を気にせずに発言していいんだと思えました」とコメントがあったんです。上層部の方々が思っている以上に、両者の間には溝が生まれてしまっているのだと感じました。

まずは組織内にコラボレーションを妨げるような文化が蔓延していないか、現状を正しく見つめて改善していく必要がありますね。

 

加藤:私のチームでは、カルチャーの明文化に取り組んでいます。「顧客志向でいよう」「マーケットインの考えで動こう」など、組織としてのありたい姿や行動指針を示したものです。こういった立ち返るべき原則をもとに、カルチャーをつくっていけるといいですよね。

 

飯久保:また、組織としてビジネス目標やありたい姿を実現するために、一人ひとりの行動や思考を促すようなマネジメントも求められていると思います。

たとえば、「組織を変革したい」と熱い思いを持つ方がいたとして、特に大企業の場合はその一人だけの働きかけではなかなか変わっていくことはできません。

ITP-interview2-3.jpeg

ではどうするべきかと言うと、「新しいことをやりたい」と思っている人たちが臆せずに手を挙げられる環境づくりが肝心です。CXOクラスの役職にいる方々が、プロジェクト化のための予算を確保したり、他にも熱意のあるメンバーを引っ張ってきてアサインしたりと、経営において意思決定権を持つ人がしかるべきサポートをすること。

頭ごなしに否定せずに、いかに自由にやらせてあげられるかが求められるのです。そういうところからイノベーションは生まれるものだと思います。

そして、プロジェクトメンバー側にも、「いかに自組織のビジネスに利益をもたらせるか」の視点が必要です。やはり、企業活動ですからね。すぐに売り上げに直結させることは難しいかもしれませんが、社外への認知や好感度・満足度をどれだけ向上できたかなど、何かしら定量的な効果を示せるプレゼンテーションを行えるとよいでしょう。

個人がアジャイルを実践する第一歩

----ここまで、企業が行うべき取り組みについてお聞きしました。最後に、この記事を読む個人の方々が明日からでも取り組めるようなアドバイスがあればぜひお願いします。

飯久保:とても基本的ですが、まずはいろいろな方面に対して広く興味をもつこと。どんなにささいなことでも「なぜ?」の気持ちを忘れずに、すぐ調べてみるなど、自分で考えながら新たなことを学び続ける姿勢が、大きな挑戦につながっていくと思います。

 

加藤:飯久保さんと似たメッセージになりますが、急な成長や変化を目指すのではなく、今までとは少し違う環境に身を置いてみるとよいのではないかと思います。仕事上の関わりがあまりない隣のチームの人に話しかけてみるとか、いつもは出ないようなテーマのセミナーに参加してみるとか。

そういった行動を積み重ねることで、少しずつ自分に変化を起こしていけるはずです。さらに言うと、得た気づきを自分の中だけにとどめておくのはもったいない。ぜひ会社に持ち帰って学びをシェアしたり、新しい提案をしたりしていただきたいですね。

上司の立場である方々には、メンバーからの意見を頭ごなしに否定せずに、まずは受け止めていただければと思います。そういうところから、イノベーションの源泉がたくさん生み出されていくでしょう。

皆さん、日常の業務が忙しく、なかなか新しい取り組みへの時間を持つのは簡単ではないと思います。ただ、外側の世界と積極的に関わることで、自分では考えもしなかったようなセレンディピティが訪れるかもしれません。変化が激しくプランが立てづらい時代だからこそ、気づきや発見を得る機会を自ら増やしていってほしいなと思います。

 

【関連リンク】

DevOps-ABC連載一覧

フェニックスプロジェクト DevOpsシミュレーション研修

DevOps-ABCとは?

この記事の著者:村尾唯

株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック マーケティング担当

2022年1月より現職で、社内コンテンツ制作やイベント企画運営を担当。複業でフリーランスライターとしても活動中。 


DevOps Hubのアカウントをフォローして
更新情報を受け取る

  • Like on Feedly
    follow us in feedly

関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加

お問い合わせ

DevOpsに関することなら
お気軽にご相談ください。

Facebook、TwitterでDevOpsに関する
情報配信を行っています。