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Nutanix AOSのLTS/STSの考え方とサポート期間について

ストレージ / HCI
2019.08.07

こんにちは。SB C&Sで九州/中国地区で技術支援を担当しています、萩原です。

私がNutanixを担当しはじめた当時、Nutanixコア部分のOSであるAOSは、4.6から4.7に変わるぐらいの時代でした。
現在では、多くの環境でAOS5.5もしくは5.10が使われている光景を目にします。
さらに日本時間の2019/8/6には、AOS5.11もリリースされました。
パフォーマンスが今よりも良くなったり、機能が改善されたりと、AOSのソフトウェアがアップグレードされることでハードウェアに依存せずに進化できることは、Software Definedである強みであり、Nutanixの強みであると思います。

さて長らくAOS5.10が最新版としてリリースされていたこともあり、最近になってNutanixを始めた方には是非知っておいていただきたく、また今までNutanixを触っていた方にも改めて認識していただきたく、今回はAOSのLTS/STSについて、改めてご紹介させていただきます。

◆LTS/STSについて

先程から何回も出てきているLTS/STSとは、具体的にはサポート期間を表す単語になります。
LTS/STSは、オープンソースソフトウェア向けに予約語として登録されている言葉となり、他の意味合いでのLTS/STSと言う表現は、オープンソースソフトウェアにおいては存在しないようになっているそうです。このLTS/STSという考え方は Nutanix以外においても様々なソフトウェアで採用されているリリースサイクルとなります。

LTS(Long Term Support)

長期的なサポート期間を提供し、基本的に提供されたバージョンのソフトウェアには、アグレッシブな機能追加を行わない事になっています。
ただし例外として、新ハードウェアへの対応など初期バージョンリリース時には、存在しなかった物をあとからサポートしなければならない場合などは、機能追加が行われます。
LTSは、次のLTSバージョンリリース日から12ヶ月のメンテナンス、メンテンス期間終了後6ヶ月のサポート期間となります。

STS(Short Term Support)

STSは、比較的短い期間でのサポート期間を提供する代わりに、新しい機能を積極的に追加していくバージョンとなります。LTSとは逆の立場でアグレッシブな機能追加が行われため、常に最新の機能を利用することができるのが特徴です。STSは、リリース後、3ヶ月のメンテナンス(バグフィックス対応)、メンテナンス終了後3ヶ月までのサポート期間となります。

一般的な見解として、LTSが安定版として捉えられ、STSは非安定版、β版のような捉え方をされる方もいます。LTSは確かに機能追加を行わないことで新たなバグを作らないことを目的にしており、安定稼働を重視した志向でリリースされています。一方でSTSも、Nutanix社内でのテストや一部ユーザーの先行テストが行われた上で、正式バージョンとしてリリースされますのでその品質は決して低い物ではありません。
また、LTSを選択することで、AOSのアップグレードの回数を減らすことが出来るという認識を持たれている方もいるかと思いますが、必ずしもそういうわけではありません。
例えばAOS5.10においてリリース時期を見ると、AOS5.10がリリースされたのは2018年11月末のことでした。それから現在ではAOS5.10.6がリリースされています。この間には少なくとも6回のメンテナンスアップデートが行われております。AOSは、必ずしもいつも最新版で利用する必要はありませんが、可能な限り新しいバージョンの利用が推奨されていることを考えるとバグフィックスの内容にもよりますが、定期的なアップグレードは必要となります。一方STSは、短い期間でサポートが終了するため定期的なアップグレードは必須となります。STSの場合アップグレード時期は短い期間で明確に定められているため、AOSアップグレードの計画を立てやすいという側面もあります。

AOS5.5から現在までのリリースされたAOSのサポート期間

AOSサポート期間

この図はAOS5.5以降の各AOSのリリース時期とサポート期間を表した物です。緑色はLTS、オレンジ色はSTSで表しています。
この図を見ると分かるとおり、STSはリリース後6ヶ月間でサポートが終了しています。STSのメンテナンス期間は3ヶ月のため、4ヶ月目以降はサポートのみとなりますので、バグフィックスバージョンを手に入れる場合は次バージョンへのアップグレードが必要となります。一方LTSを見るとAOS5.5は、2017/12にリリース後、2020/9までのサポートと3年近いサポート期間をもっています。なお、AOS5.5は例外的にサポート期間が延びていることもあり、AOS5.5とAOS5.10のサポート期間が現行では同一となっていることもポイントです。
詳細なサポート期間は、Nutanix Support Portalから最新の情報を確認してください。

AOS/Prism Centralのサポート期間情報確認ページ

Nutanix Support Portalから「Document」 → 「EOL Information」で確認できます。
SupportPortal EOL Information

あわせて、LTS/STSの考え方について記載されたKBも確認しておくことをおすすめします。
Long Term Support (LTS) and Short Term Support (STS) Releases (Applicable only to AOS) / KB:5505
※アクセスには、Nutanix Support Portalへのログインが必要です


◆LTS/STSについての注意点

最後にLTS/STSについての注意点をお伝えします。

1)LTSからSTSへのアップグレード後にLTSに戻す方法
Nutanixにはアップグレードの後のダウングレードという概念が存在しないため、現行LTSで稼働中のNutanixクラスターにSTSのAOSをアップデートした場合、やっぱりLTSに戻したいと思っても、次のLTSバージョンがリリースされるまではSTSで運用をし続ける必要があります。PrismのOne Click Upgrade画面では、現在のところLTS/STSに関係なく新しいAOSが表示されますので、長期サポートでの運用を前提にされている場合、アップグレードの際にはよくアップデートするAOSのバージョンを確認していただく必要があります。

2) Prism CentralのEOSは、AOSとは別で管理されている
同じAOSを利用し、リリースもAOSとほぼ同時期に行われるPrism Centralは、AOSのサポート期間とは一致していません。
Prism Centralのメンテナンス期間は、新バージョンがリリースされる日までとなり、サポート期間は、新バージョンがリースされて3ヶ月までとされています。今回のケースに従うとPrism Central 5.11が、2019/8/6(日本時間)にリリースされましたので、Prism Central 5.10は、2019/8までのメンテナンス期間となり、2019/11までのサポート期間となります。

Prism Central 5.5以降の各バージョンのサポート期間

Prism Central EOS


変則的に、Prism Central5.5から5.7までは頻繁にバージョンが上がったことから同じサポート期間となっていますが、それ以降は先程の説明通りのサポート期間になっていることが分かります。

Prism CentralとAOSは、サポート期間が異なることから必ずしもAOSのバージョンとPrism Centralのバージョンが同一である必要はありません。(Prism Centralは下位互換のAOSをサポートしています)
Prism CentralとAOSの組み合わせは、Nutanix Support Portalで確認することが出来ます。

Nutanix Support Portalから「Document」 → 「Software Product Interoperability」で確認できます。
AOSとPrismCentralの対応状況

◆最後に

今回はAOS/Prism Centralにおけるサポート期間の考え方である、LTS/STSについて紹介しました。
従来の3Tierにおいて、ストレージコントローラーのファームウェアアップグレードを行うとなると、サーバー側のHBAのファームウェアバージョンを気にしたり、ハイパーバイザー側のサポート状況を確認したり、またバージョンアップに伴いシステム停止が発生しないか手順確認をしたりとアップデート1つが大きなイベントでもありました。Nutanixにおいては、One Click Upgrade機能を利用することで、マウス操作だけの簡単な操作で無停止でのアップグレードが出来るというメリットがあります。新しいAOS(ファームウェア)が提供されると言うことは何らかのバグフィクスや機能改善がなされていると考えられます。従来はバージョンアップにおける影響範囲が大きくバージョンアップを躊躇することも多かったかと思いますが、Nutanixにおいては積極的なバージョンアップが手軽に出来るというのが1つのメリットであると考えられます。

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第3技術部 2課
萩原 隆博 - Takahiro Hagiwara - (Nutanix NTC)

HCIを中心とした仮想化とMicrosoft 365のプリセールスエンジニアを担当しています。
Nutanix Technology Champion 2018-2024