本記事では2020年12月にリリースされたNutanixのコアソフトウェアとなるAOSバージョン5.19について、新機能の中からいくつかのポイントに絞って紹介したいと思います。
AOS 5.19は、最初のリリースから6ヶ月でサポートを終了するShort Term Support(STS)のバージョンとなりますが、AOS 5.19のアップデート内容は次のLong Term Support(LTS)のバージョンにも踏襲される予定ですので、今のうちに情報収集されることをおすすめします!
さて、今回紹介する新機能はこちらです。
PrismによるAHV仮想スイッチ管理機能
ストレージコンテナ間の無停止移行
ストレージオーバープロビジョニングの表示
上記の他、AOS 5.19のアップデート内容は、メーカーのリリースノートに記載がありますのでこちらもご覧ください。※My Nutanixアカウントが必要となります。
ACROPOLIS 5.19 FAMILY RELEASE NOTES
新機能ポイント紹介
PrismによるAHV仮想スイッチ管理機能
Nutanixクラスター内にAHVホスト間を横断して管理する「Virtual Switch(仮想スイッチ)」という概念が加わり、AHVホスト内部のブリッジの追加や変更操作がPrism Elementから一元的に行えるようになりました。個人的には待望の機能となります。 これまで、10GbEと1GbEといった帯域の異なるポートやNutanixのストレージネットワークとユーザー仮想マシンで使用するサービスネットワークを物理的に分けたいケースでは、aCLIによるコマンド操作で各ホスト毎にブリッジを作成してきましたが、これらをGUI操作から簡単に1クリックで設定できます。
ここからは弊社検証機を使い、Prismから仮想スイッチを作成する手順を説明します。
1.ネットワーク構成画面
設定メニューにあるネットワーク構成画面へ遷移すると、「Virtural Switch」タブが追加されていることがわかります。
「+ Create VS」をクリックし、仮想スイッチの作成に進みます。
2.仮想スイッチ作成(①一般)
仮想スイッチ名や、MTU値を入力します。
実装方法には、安全性重視の「Standard」と速さ重視の「Quick」の2通りがあり、状況により使い分けることができます。今回は「Standard」を選択しています。
対象ホストの仮想スイッチ情報を変更する際、ホスト上の仮想マシンのネットワーク通信に影響を与えないよう、メンテナンスモードにしてから設定を行います。
Acropolis Dynamic Scheduling (ADS)により、メンテナンスモードに入る前に仮想マシンは別のホストへ自動的に退避されるため、影響を与える心配はありません。
設定が終わり次第、メンテナンスモードが解除され、次の対象ホストへと進むローリングアップデートが行われます。
本番稼働中のNutanix環境上でシステムを止めること無く設定変更する際に有効な実装方法となります。
Standardと異なり、メンテナンスモードにすることなく設定が即時反映されるため、ローリングアップデート完了までにかかる時間が短い反面、仮想マシンのネットワーク通信が一時的に遮断される恐れがあります。Nutanixの初期導入作業期間など、まだユーザー仮想マシンを作成していない時に有効な実装方法となります。
3.仮想スイッチ作成(②アップリンク構成)
続いて、仮想スイッチのアップリンクポートやボンドタイプ(bond mode)を選択します。
「Save」をクリックすると、仮想スイッチ作成が開始されます。
4.設定反映
今回は実装方法「Standard」を選択したため、設定対象ホストがメンテナンスモードにされていることがわかります。4ノード構成の環境で行いましたが、すべてのホストで設定が完了するまでに40分程度かかりました。
5.設定完了
設定完了後、ネットワーク構成画面に戻ると、仮想スイッチ(ブリッジ)が追加されていることがわかります。
ホストのネットワーク構成画面では、作成した仮想スイッチにポートが割り当てられていることも確認できました。
ポイント:仮想スイッチ追加後の仮想ネットワーク管理について
主にユーザー仮想マシンのサービス用ネットワークとして用いられる仮想ネットワークを作成する際、新たにVirtual Switchの選択ができるようになりました。これまでは追加した仮想スイッチに所属する仮想ネットワークの管理もaCLIで行う必要がありましたが、これにより、柔軟なネットワーク構成をaCLIを使わなくても簡単に行えるようになりました。
ストレージコンテナ間の無停止移行
AHV環境において、仮想マシンの配置先となるストレージコンテナ間をvDisk単位で無停止移行(ライブマイグレーション)することが可能になりました。
従来AHVでは、一度仮想マシンを作成した後、ストレージコンテナ間を移動する機能を提供していなかっため、特定のシステムに限定した冗長度(Replication Factor)や圧縮、重複排除といったストレージポリシーを変更するのが容易ではありませんでした。AOS 5.19ではaCLIによるコマンド操作により、仮想マシンやvDisk単位で移行を行います。
移行を行う際は、SSHクライアントから任意のCVMへログインした上で、以下のようにaCLIコマンドを実行します。
nutanix@CVM$ acli vm.update_container 仮想マシン名 container= 移行先ストレージコンテナ名 wait=false
nutanix@CVM$ acli vm.update_container 仮想マシン名 disk_addr_list=ディスクアドレス container= 移行先ストレージコンテナ名 wait=false
ポイント:移行前にプロテクションドメインから仮想マシンを除外すること
弊社の検証環境で試したところ、エラーメッセージ「ContainerVdiskMigrate failed ... already protected」が表示されました。 Nutanixのデータ保護機能(プロテクションドメイン)によって保護された仮想マシンは移行できないようです。Nutanixのスナップショット情報は、vDiskと同じストレージコンテナに格納されるため、移行中にスナップショットの取得が実行されないようにするための措置だと考えられます。 この後、プロテクションドメインから移行対象の仮想マシンを一時的に除外し、コマンドを再実行したところ、正常に移行されたことを確認しました。
ストレージオーバープロビジョニングの表示
Prism Elementのストレージ・概要画面にオーバープロビジョニングに関するウィジェットが追加されました。
物理ストレージ容量(ストレージプール)に対し、Nutanixクラスター上の仮想マシンに割り当てられたディスク容量の合計が何倍に達しているかを表示します。
また、管理者が閾値を設定することで、オーバープロビジョニングの割合を色別することが可能です。
閾値の70%未満 ...グリーン
閾値の70%~90%未満...イエロー
閾値の90%以上...レッド
デフォルトでは閾値は設定されていません。オーバープロビジョニングの閾値に推奨は無く(むしろオーバープロビジョニングしない状態が最も健全)、限りあるストレージリソースをシンプロビジョニングにより効率的に使用する上での目安を設定いただくこととなります。
まとめ
AOS 5.19の新機能について、ポイントを絞って紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
今回は以前から要望のあったAHVに関するアップデートが加わり、より一層柔軟かつシンプルな管理が行えるようになったことがご理解いただけたのではないでしょうか。また、ここでは紹介しきれなかった新機能がまだありますので是非リリースノートからもご確認ください。また、冒頭のとおりこれらの新機能は次期LTSにも含まれる予定ですので、既存環境のアップデート計画を立てる上で参考になりましたら幸いです。