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オブジェクトストレージへの自動階層化サービス「Cloud Tiering」の機能紹介(FabricPoolとの違いも解説)

ストレージ / HCI
2022.09.26

みなさん、こんにちは。
SB C&S 技術担当の河村です。
   
ストレージ業界のクラウド化が進んだことで、データをパブリッククラウドへ保管する企業も年々増加しているかと思います。

ネットアップでは、増え続けるデータのクラウド保管に対するコストを最適化するため、「FabricPool」というオブジェクトストレージへのデータ階層化機能を提供してきましたが、クラウドストレージが一般化されてきた現在の状況に対応するため、新たに「Cloud Tiering」というサービスをリリースしています。

今回は、弊社のお客様から良くご質問いただく「FabricPoolとCloud Tieringの違いとは何か?」にフォーカスを当て、サービスのご紹介をしていきたいと思います。

FabricPoolについて詳しく知りたい方は、過去のブログをご参照ください。
「【NetApp】『FabricPool』ブログ一覧」

 Cloud Tieringとは?             


Cloud Tieringとは、お客様のシステムに保存されたデータのうち、アクセス頻度の少ないコールドデータを、ONTAPから容量単価の低いパブリッククラウドのオブジェクトストレージへの自動的、かつ透過的に階層化することで、プライマリストレージの利用容量を開放し、お客様のシステム全体に対するコストを最適化するサービスになります。

これだけ見ると、従来からONTAPの機能として存在する「FabricPool」と同じように見えますが、実はその通りでCloud Tieringは、ONTAPのFabricPoolを利用したサービスとなっており、ストレージのクラウド化が進んできたことによって、ハイブリッド/マルチクラウド環境下で複数のストレージに渡ってデータを取り扱うお客様のデータマネジメントをサポートするために、SaaSサービスとしてデータ階層化の一括管理を実現する機能となります。

つまり、Cloud Tieringは、「ONTAPのFabricPool機能をクラウドサービス化」したものということになります。

Cloud Tiering.png
 
 FabricPoolとCloud Tieringの違い             
 

ここからは、FabricPoolとCloud Tieringの違いについてご説明します。
前の章でも記載したとおり、ポリシーベースでの階層化設定や階層化されるデータの取扱い(Read/Write)については、基本的にどちらも同じですが、FabricPoolはONTAPで管理する機能、Cloud Tieringはクラウドで管理するサービスという観点から、階層化先の対象となるストレージやアーキテクチャ、料金体系などが異なってきます。

ポリシーの種類や階層化されるデータの取扱い(Read/Write)など、FabricPoolのアーキテクチャについて詳しく知りたい方は、過去のブログをご参照ください。
「【NetApp】『FabricPool』ブログ一覧」

階層化元ストレージ

階層化元となるストレージは、FabricPoolもCloud Tieringも同じとなりますが、現時点での最新情報として以下にまとめておきます。(2022年9月現在)
階層化元ストレージ.png

※動作するONTAPのバージョンで、利用可能な機能が異なります。
 詳細は以下のオンラインマニュアルをご参照ください。
 「FabricPoolを使用する際の考慮事項と要件」

階層化先ストレージ

階層化先となるストレージは、FabricPoolとCloudTieringで異なります(2022年9月現在)
階層化先ストレージ.png

NetAppのストレージに対して階層化する機能がFabricPool、クラウドのオブジェクトストレージに対して階層化するサービスがCloud Tieringという考え方になります。
※NetApp Storage GRIDはどちらのサービスもサポート

アーキテクチャ

FabricPoolとCloud Tieringでは、設定や管理方法などのアーキテクチャが異なります。

FabricPoolでは、System ManagerやONTAP CLIを使用して設定および管理をするのに対し、Cloud Tieringでは、ネットアップのクラウド統合管理ツールであるCloud Managerからの設定/管理が必要になります。

また、Cloud Tieringの場合は、Connectorというクラウドリソースの管理を実行するためインスタンスが別途必要になります。Connectorは、オンプレミスストレージとクラウドプロバイダ間の通信や、VPCエンドポイントの管理など、ネットアップのクラウドサービスを実行する上でのサポートを実現します。

Connectorは、利用するクラウドプロバイダ上のVMインスタンスもしくは、オンプレミスのLinuxホスト上にソフトウェアとしてインストールすることも可能です。
※ConnectorはCloud Tiering以外のクラウドサービスをご利用の際も必要なインスタンスになります。

【FabricPool構成図】

FabricPool構成.png

【Cloud Tiering構成図】

Cloud Tiering構成.png

料金体系

FabricPoolとCloud Tieringでは、料金体系も異なります。

Cloud Tieringのリリース前は、「FabricPoolライセンス」として販売されておりましたが、リリースに合わせて「Cloud Tieringライセンス」に置き換わりました。
現在では、階層化先ストレージとしてNetApp Storage GRIDやNetApp ONTAP S3を利用するFabricPoolの場合、ライセンスは不要で無償利用することができるようになっています。
一方、Cloud Tieringでは、ライセンスの購入が必要となり、従量課金制(PAYG)または定期定額制(BYOL)から選択いただく形となります。

ライセンス.png

また、Cloud Tieringでは、30日間のフリートライアルも可能となっています。
※ライセンス購入、フリートライアルともに、階層化先となるオブジェクトストレージのコストや通信費用等は別途必要になります。

最後に、ここまでご説明したFabricPoolとCloud Tieringの違いを以下の表にまとめます。
まとめ.png

表にまとめると分かりやすいですが、階層化先のストレージとして、ネットアップのストレージを利用する場合はFabricPool、パブリッククラウドのストレージを利用する場合はCloud Tieringと覚えておくと分かりやすいかと思います。

FabricPoolを利用する場合、Connectorやライセンスなどは不要で、System ManagerやONTAP CLIでの管理となりますが、Cloud Tieringと同じようにCloud Managerから管理することもでき、その場合はライセンスは不要ですが、Connectorは別途構築する必要があります。

また、Cloud Tieringを利用する場合のメリットとして、Cloud Managerで管理している複数のONTAPクラスタに対するコスト削減効果を一括、またはボリューム単位で表示したり、Cloud Tieringを利用していないボリュームに対しての潜在的なコスト削減額を表示したりと、FabricPool単体では確認できない情報も見ることができるようになっています。

 まとめ             
 

日々進化するITの世界において、個人や企業が保有するデータは年々増え続けており、IDCの調査によると、2017年に23ゼタバイトだった世界のデータ保有量が2025年には175ゼタバイトまで増加すると言われています。(1ゼタバイト=1兆ギガバイト)

そんな大量に存在するデータですが、企業で保管されているデータの割合としては、なんと60%もの割合をコールドデータが占めているとされており、データの増加に伴って、この割合も増加すると予測されています。
そのため、これからのデータマネジメントでは、「データの階層化によるコスト最適化」に注目が集まるだろうと考えられます。

今回は、Cloud Tieringの紹介ということで、FabricPoolとの違いをメインにご説明させていただきました。
次回は、そんなCloud Tieringを実際にセットアップする際の手順や注意事項について解説していきたいと思います。

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著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
河村 龍 - Ryu Kawamura -