
みなさまこんにちは、SB C&S 中田です。
今年もアメリカのラスベガスにて、Pure//Accelerate 2025が開催されました。
毎度のことながら私も現地に赴きイベントに参加してきましたので、発表された情報や現地の様子を本記事を通じてみなさまにお伝えしたいと思います!
1. 開催概要 |
本イベントは現地時間にて2025年6月17日~19日までの3日間、ラスベガスのホテル「Resorts World Las Vegas」にて開催されました。
本ホテルは外壁が一面液晶画面になっていることが大きな特徴となっていて、イベント開催中は定期的にPure Storageの広告が投影されています。
イベント初日はパートナー向けの発表、2日目と3日目はパートナー・エンドユーザーを含めた全体向けにブース展示や各種セッション、パーティー等が行われました。日本からも我々含め40名以上が参加しました。
2. Keynoteと発表内容について |
以下では基調講演の内容を、Day1 / Day2に分けてご紹介します。
Day1
イベントの開始とともにビデオ映像が流されました。ビデオの内容を象徴する言葉として述べられていたのが以下の言葉です。
"It's time to stop managing your storage and start managing your data."
(ストレージの管理をやめて、データの管理を始める時期が来た)
その後オープニングアクトとしてLynn Lucas氏(CMO)が登場し、イベントに関する簡単な説明ののち、メイン登壇者の一人であるCharles Giancarlo氏(CEO)にバトンを渡します。
Charles Giancarlo氏
Charles氏がまず述べたのは「AI時代におけるソフトウェアとデータの関係性」についてです。
ここ20年ほど、世界を席巻してきたのはソフトウェアであり、データの品質について言及されることはありませんでした。しかしAI時代においては「ソフトウェア」よりも「質の高いデータ」が鍵を握ります。このような価値観の変化を "New Era of Data(データの新時代)だ" 、と述べ、Pure Storageのテクノロジーはその土台となることを強調しました。
New Era of Data
また、その一例としてPurityOSに組み込まれたFusionの役割を簡単に紹介し、従来のストレージを「クラウドライクな水平アーキテクチャ」へと再構築することで、企業全体のデータ活用力を高める未来像を示しました。
続いて登壇したのはChadd Kenney氏(VP, Product Management)です。
Chadd Kenney氏
Chadd氏は「Fusionによる"Intelligent Control Plane(インテリジェント制御プレーン)"」の詳細を紹介しました。これにより、個別のストレージアレイを仮想的に統合し、クラウドのような一貫性ある運用が可能になる、と述べました。
Intelligent Control Plane(インテリジェント制御プレーン)
またこのFusionのひとつの仕組みとして、ワークロードやデータ保護ポリシーをテンプレート化する「Preset(プリセット)」について実演しました。Presetに対してデータ保護機能やワークロードタイプ、ストレージクラスなどをあらかじめ定義しておくことで、あとはそのプリセットをすればFusion側で最適なVolume配置までを自動的にやってくれる、とのことです。
Fusionの新機能「Preset」
さらに、Rubrikとの連携でランサムウェア攻撃を受けた際の安全なスナップショット復旧、ServiceNowなど外部システムとのOrchestratorによる連携機能なども紹介しました。
Rubrikとの連携による脅威検出の自動化
また、Fusionと連携する形で開発されたAIアシスタント「Copilot」に対し、「パフォーマンスの課題がどこにあるのか教えて」といった自然言語での質問を通じて、インシデントの根本原因分析や将来的には自動修復を可能にする未来を示し、Pureが向かう運用の自律化ビジョンを描きました。
Copilotを用いた自然言語でのストレージ管理
先述のRubrikやServiceNowといった外部システムとの連携についてはデモブースにて詳細を確認したところ、これらはクラウドサービスとして利用するようです。
Rubrikを例に説明すると、顧客のvSphere環境にインストールされたエージェントを通じてRubrik Security Cloud(RSC)は脅威の存在を判断します。Pure1はRSCを定期的にチェックしており、脅威を認識した場合にはPure1はFusionを経由してArrayにREST APIを発行することで、データストアとして利用されているVolumeにタグ付けを行い、セキュリティ上の脅威について管理者に知らせる、といった流れです。
その他の各種クラウドサービスとの連携についても、上記のようにPure1を介した連携を行う、とのことでした。
Rubrik Security Cloud(RSC)との連携方法
次に登壇したのはRob Lee(CTO, Pure Storage)氏でした。
Rob氏は、Pure Storageの核となる「Unified Data Plane(統合データプレーン)」の全体像と、その上に構築された新製品群について発表しました。
新たに発表された製品・機能は以下のとおりです:
FlashArray//XL R5
FlalshArray//XLは、主力製品であるFlashArray//Xの上位シリーズです。今回の発表では、XLシリーズの最新コントローラーがR4→R5にアップグレードされました。XL R5では、最大1.9PBのraw Capacityに加え、R4と比較して70%高速化される、と言及されていました。
FlashArray//XL R5
FlashArray//ST(FAST)
新製品として、FlashArray//STが発表されましました。これは、1000万IOPSに加えレイテンシ10マイクロ秒以下という、とにかくパフォーマンスに重きをおいた製品とのことです。またその利用用途として、インメモリデータベース、高性能で高頻度のOLTPシステム、リアルタイムリスクエンジン、リアルタイム意思決定エンジンといった超高性能を要する環境を例に上げました。
FlashArray//ST
基調講演後に確認したところ、コントローラーとしてはXL170が用いられ、データ保存領域としてすべてSCM(Storage Class Memory)を用いている、とのことでした。また、重複排除や圧縮といったその他のFlashArrayでは有効になっているデータ削減機能も(レイテンシ重視のため)すべて無効化されている、とのことです。
FlashBlade//S R2 & EXA
FlashBlade//Sの新バージョンとして、FlashBlade//S R2が発表されました。これは従来のFlashBlade//Sとの比較で2倍の性能、競合比較においても2倍以上の性能を達成しているとのことです。またそのFlashBlade//S R2を基盤に、AI/HPC領域にに対応するスケーラブル高速ストレージシステムとして、FlashBlade//EXAについても言及しました。
FlashBlade//S R2
FlashBlade//EXA
FlashArrayへのオブジェクトストレージ統合
FlashArrayにおいて、オブジェクトをサポートすることが発表されました。最新バージョンよりファイル機能もデフォルトで利用可能となっていたFlashArrayですが、オブジェクトのサポートにより、ブロック/ファイル/オブジェクトを単一筐体で統合することが可能となります。
FlashArrayのオブジェクトサポート
そして上記の各種新製品やコントロールプレーンとしてのFusion、これらを管理するPure1をまとめてUnified Data Planeとする統合プラットフォームの構想を改めて示しました。
Unified Data Plane
続いて登壇したのは、Naveen Neelakantam氏(Chief Architect, Digital Experience Business Unit)でした。
Naveen Neelakantam氏
Naveen氏は、Rob氏が総合プラットフォームを提供する方法について紹介したのに対して、Pure Storageのサブスクリプション型サービス「Evergreen//One」の進化として「Adaptive Tier」を紹介しました。Adaptive Tierを導入することで、事前のキャパシティ設計の必要なく性能・容量を即時変更することが可能となり、コストと性能の最適化を可能とすることを強調しました。
Adaptive Tier
またこれに関連して、Pure Storageの各種サービスの支払に柔軟に利用可能なクレジットプール「Universal Credits」がPure1を経由してセルフサービスで利用可能となることについても触れました。これによりAdaptive Tierも含めたEvergreen//Oneの支払いもより俊敏に行えるようになるとのことです。
Universal Credits
また予測が難しいスナップショットのサイズ予測について、最大1年分のスナップショットを定額で保持するオプション「Snapshot Retention Add-on」が発表されました。
Snapshot Retention Add-on
そしてクラウドやオンプレにまたがるSaaS型災害復旧サービス「Pure Protect」については、VMware環境に対しオンプレ/クラウド選択型の簡易復旧と、リカバリテスト機能の提供が可能になったことを説明しました。
Pure Protect
講演では、RubrikやCrowdStrikeなどと連携したランサムウェア対応ワークフローも紹介され、「AIで脅威を検出→SafeModeで保護→自動復旧」の流れが具体的に説明されました。
次は、 Fiserv社のSteve Algier氏(VP)とPure Storage CEO Charles氏による顧客対談セッションでした。
Fiservは米大手金融サービス企業です。Steve氏は、Pure Storage導入による実際の効果を共有しました。2019年にPureを導入後、グローバルでの展開を進めた結果、ストレージのフットプリントを75%削減、パフォーマンスと運用の信頼性も大幅に向上したとのこと。SafeMode Snapshotsによるセキュリティ強化や、Evergreenモデルによる「サービス停止を伴わない進化」を高く評価していました。
彼は、「Pureのストレージはあまりに安定しているため、逆に話題にならない」と述べ、信頼性の高さを象徴的に表現しました。
対談セッションの様子
Day1の最後に登壇したのは、Shawn Hansen氏(GM, Core Platform Business Unit)です。
Shawn氏は、Pure Storageが独自に開発したAIエージェント「Model Context Protocol(MCP)」を用い、自然言語を介したストレージボリューム作成や設定を60秒で実施する、というデモを行いました。
Model Context Protocol(MCP)
このデモにおける注目すべきポイントは、このAIはストレージに関する知識を持っていない状態からこの動作を自然言語を介して行っている点です。これにより単なる操作の自動化を超えて、AIが運用を支援する次世代のデータ管理のあり方を示しました。
Day2
2日目のkeynoteは「Juneteenth(6月19日:アメリカにおける奴隷解放記念日)」を記念したダンスから始まりました。
開幕のダンスの様子
その後、初日同様にLynn氏のオープニングアクトに移りました。その中で、本日のテーマとして「Enterprise Data Cloud(EDC)」が掲げられました。
Lynn氏に呼ばれて次に登壇したのは、Shawn Rosemarin氏(VP, R&D - Customer Engineering)でした。
Shawn Rosemarin氏
Shawn氏は、従来のIT環境における「1000の細かな問題による死(Death by 1000 Cuts)」という課題を提起しました。レガシーなツール群、複雑な手作業、統一されない管理モデルなどの細かな蓄積により、企業が大きなコストとリスクを抱えているとのことです。
Death by 1000 Cuts
これに対し、Pure StorageのEDCを導入したことで、ServiceNow社やHealth Edge社のような顧客がどのように業務プロセスを簡素化し、俊敏な運用体制を確立できたかを紹介しました。さらに、顧客自身がEDCの考え方を体験できる「Process to Platform」ワークショップへの参加も呼びかけました。
Pure StorageのEDC導入による運用の簡素化とリスクの低減
続いて登壇したのは、Nirav Sheth氏(VP of Worldwide Systems Engineering)です。
Nirav Sheth氏
Nirav氏は、VMwareを取り巻く環境の急激な変化に触れつつ、VMwareを使い続ける場合でも、その他のプラットフォームに移行する場合でも柔軟な選択肢を提供できる、と強調しました。
その後、SiriusXMのJeff Fecke氏との対談セッションに移ります。
対談セッションの様子
SiriusXM社は北米にストリーミングサービスを提供する会社です。同社のJeff氏は5年前に自社のエンタープライズワークロードをPure Storageのクラウドプラットフォームに移行しました。
彼はPure Storageとの出会いを「単に製品を選定しただけでなく、キャリアのターニングポイントになった」と語ります。Pure Storageの導入によって、データベース管理者からパフォーマンスに関する文句を言われ、その疑いの目をストレージに向けられていた日々から開放された、と述べました。
そして最後には「今ではPure Storageがあるおかげで、ストレージが話題に上がることすらない。それこそが本物の信頼の証だ」と締めくくりました。
Pure Storageプラットフォームの導入
続いては、Pure StorageのValerie Harrison氏(Principal Technologist)とDmitri Bromberg氏(Microsoft)、Mike Eisenstein氏(Accenture)の対談セッションでした。
対談セッションの様子
Dmitri氏は、AI時代において「データをクラウドに近づけること」が、ビジネス変革の出発点だと語りました。そのためには、ハイブリッド構成や既存スキルセットを尊重するアプローチが鍵であり、Azure VMware SolutionとPureの連携がその実現を加速すると強調しました。
Mike氏は、クラウド移行の初期段階にありがちな "Lift & Shift" の問題点を指摘し、今後はより慎重に「何をどうモダナイズすべきか」を判断することが重要だと述べました。その鍵となるのが"データ"であり、データプレーンの最適化こそが、クラウド化を推進する資金源になりうるという視点を示しました。
Keynoteの内容は以上となります。
3. その他のブース等について |
Expo
Expoでは、FlashArray//STをはじめとした各種Pure Storage製品の展示や、協賛各社のブース、グッズを配布する場所等が用意されておりました。
各種製品の展示ブース
FlashArray//STもありました
Expoにて行われた懇親会の様子
各種Pure Storageグッズももらえます
4. まとめ |
今回のイベントで非常に強く感じたのは「Fusionを中心としたデータ管理への移行」です。
Pure Storageはここ数年、独自設計デバイス部分、とくにDFMに注力していた印象でした。ハイパースケーラーへのDFM提供をはじめとして、ハードウェアアーキテクチャ部分で競合他社に差をつけるのが大きな方針なのだと感じていました。
しかし今回のAccelerateでは、もちろんDFMの進化についてもその他のセッションで触れつつも、「Fusionを用いた新しいデータ管理のあり方」を主軸に、ソフトウェア部分への注力が非常に大きかったように思います。とくにPure1とFusionを介したクラウドサービスの利用については、今後様々な外部アプリケーションとの連携の可能性を感じました。
一方で、このような利用方法は基本的にインターネット接続を前提としています。クラウドからオンプレまで、マルチな環境での統合的データ管理に注力するPure Storageですが、もちろん顧客の環境もまちまちです。いちエンジニアとして、今後はハードウェア的な進化に加えて、Pure Storageがマルチな顧客環境にどのように対応していくのかにも注目していきたいと思います。
創業者のCoz氏
CEOのCharles氏
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