みなさんこんにちは。
近年クラウドサービスへの注目が集まる中で、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドを採用されるお客様が増えてきたかと思います。 ハイブリッドクラウドやマルチクラウドによる恩恵がある一方で、「ハイブリッドクラウドやマルチクラウドを活用しようとしたら管理面で新たな課題が出てきてしまった」というお客様もいらっしゃるのではないでしょうか。 そのようなお客様へ向けて今回は「Azure Arc」をご紹介したいと思います。
ハイブリッドクラウド・マルチクラウドにおける課題
各社クラウドサービスやオンプレミスの環境を適宜使い分けることができるというのは、ハイブリッドクラウド・マルチクラウドによる大きなメリットです。 しかしながら、リソースが様々なクラウドサービスやオンプレミスに分散してしまうと、管理の負担が増えることやセキュリティが気になるというお客様もいらっしゃることでしょう。
それぞれの環境によって管理するためのUIやアクセス先が変わるでしょうし、リソースが様々なサイトに分散された結果サイロ化してしまい、把握できていない / 管理しきれていないリソースが出てくる可能性もあります。
Azure Arcによる一元管理
散らばってしまったリソースを一元的に管理できるようにするのが「Azure Arc」です。 例えば上図の「①パブリッククラウド」がAzureであると仮定して考えてみましょう。
Azure Arcは一言で表現すると様々な環境に散らばったリソースを管理するための「ポータル(=入り口)」です。 Azure以外のパブリッククラウド上にあるリソースやオンプレミス環境にあるリソースをAzure Arcに接続することが可能です。
様々な環境に散らばったリソースをAzure Arcに接続することで、Azure Arcというポータルを介して一元的に管理することができるようになります。
なお、本ブログ記事で「ポータル」と表現してはおりますが、Azure Arcとして独立したユーザーインターフェースがある訳ではありません。 Azure Arcに接続されたリソースはAzure Portalから確認することが可能です。 また、Azure上のリソースに関しては従来通りAzureで管理すればよいため、Azure Arcに接続する必要はありません。 つまり、Azure VMをAzure Arcに接続するといった構成にはしなくてよいということです。
Azure Arcに接続できるインフラストラクチャ
ここでAzure Arcに接続できるインフラストラクチャを確認しておきましょう。 以下はAzure PortalにおけるAzure Arcのメニューです。
こちらのメニューにあります通り、オンプレミスや他のクラウドサービス上にあるサーバー、Kubernetesクラスター、SQLサーバー、さらにはVMware vSphere、Azure Stack HCI、SCVMMといったプライベートクラウドの仮想マシンをAzure Arcに接続することが可能です。
各リソースからAzureへの通信経路
ここまで「Azure Arcに接続」と何度か記載していますが、その通信経路について簡単に確認しておきましょう。
Azure以外のサイトからAzureに接続するというと、VPN (Azure VPN Gateway)やAzure ExpressRouteを思い浮かべる方もいらっしゃるかと思いますが、インフラストラクチャリソースをAzure Arcに接続するにあたってはVPNやAzure ExpressRouteを利用せずにインターネット経由で接続することが可能です。
Azure Arcに「サーバー」を接続する場合は...
前述の「サーバー」を例にしてもう少し詳しく通信について確認しておきましょう。 例えばオンプレミス環境のサーバー(Windows ServerやLinux Server)をAzure Arcに接続するとします。 この場合、サーバーに「Connected Machine エージェント」をインストールし、Azure Arcに接続します。 これによりTCP 443 (アウトバウント)でAzure Arcに接続されます。
なお、上図のようにオンプレミス環境のサーバーからダイレクトにAzure Arcに接続することもできますし、プロキシ経由にすることも可能です。 VPNやAzure ExpressRouteをご利用であれば、サーバーからAzure Arcに対してVPNやAzure ExpressRoute経由で接続することも可能です。
今回は「サーバー」をピックアップして通信経路についてご説明しましたが、インフラストラクチャの種別ごとにAzure Arcにおけるネットワークの要件が下記ドキュメントにまとめられておりますので併せてご参照ください。
Azure Arc ネットワークの要件
https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/azure-arc/network-requirements-consolidated
まとめ
本ブログ記事ではAzure Arcの概要についてご紹介いたしました。 ハイブリッドクラウド環境、マルチクラウド環境の中心にAzureを据えることによって、より効率的な管理を実現するのがAzure Arcです。
2019年にAzure Arcが発表されて以降、Azure関連のイベントでAzure Arcが紹介される場面をよく目にします。 Azure Stack HCIなど他のサービスや製品と組み合わせて紹介される場合もあり、複雑に見えてしまうこともあるかもしれませんが、Azure Arcは様々な環境に存在するリソースを管理するためのポータル(=入り口)だとお考え頂くと分かりやすいかと思います。 今後、具体的な接続方法や使用感などもお伝えできればと思います。
また、今回は「Azure Arc入門」ということで詳しく触れませんでしたが、Azure ArcによってKubernetesクラスター上にSQL Managed InstanceやPostgreSQLを導入するといったことも可能です(Azure Arc対応データサービス)。 Azure Arcは単純なリソース管理ポータルに留まらず、サービスの広がりを見せています。 ハイブリッドクラウド戦略、マルチクラウド戦略のお供にAzure Arcをご検討頂ければと思います。
SB C&SはAzureを取り扱われているパートナー企業様へ様々なご支援のメニューを用意しております。 メニューの詳細やAzureに関するご相談等につきましては以下の「Azure相談センター」をご確認ください。
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https://licensecounter.jp/azure/
※ 本ブログは弊社にて把握、確認された内容を基に作成したものであり、製品の動作や仕様について担保・保証するものではありません。サービスや製品の動作、仕様等に関しては、予告なく変更される場合があります。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第1技術部 4課
中原 佳澄