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小規模HCIといえばコレ! 超小型2ノードvSAN「VxRail VD-4000」の全貌

ストレージ / HCI
2023.12.21

皆さんこんにちは。SB C&SVxRailのプリセールスを担当しております、湯村です。

今回はDell TechnologiesHCIVxRail」のラインナップに新たな仲間入りをした「VxRail VD-4000」についてご紹介します。

VxRailは「Dell TechnologiesVMwareが共同開発した『唯一』のHCI」であるため、vSphereとの親和性が高く、vSphere基盤のHCIとしてvSANと肩を並べる存在となっています。VxRailの概要について詳しく知りたい方は、「Dell Technologies VxRail とは? ~ 2023年版 ~」を是非併せてご覧ください。

さて本題ですが、本記事は以下のアジェンダに沿ってご紹介します。

VxRail VD-4000 とは?
- VxRail の最小構成といえば3ノードが主流だった
- 超小型シャーシに "オールインワン" の2ノードvSAN
- シャーシとノードの組み合わせで多様な構成が可能
- VxRailの便利な機能はそのまま利用可能

VD-4000 ハードウェアの特徴を実機写真でご紹介!
- VD-4510c 内部の特徴
- 物理ネットワーク接続ってどうやるの?

VD-4000 セットアップ時のTIPS
- 初期化用のイメージはUSBデバイスへの書き込みが必要
- Witnessの初期化作業にはシリアル接続が必要
- Witnessノードの中身はESXi

まとめ


VxRail VD-4000 とは?

VxRail の最小構成といえば3ノードが主流だった

VD-4000を語る前に、VxRailが構成可能な最小ノード数について振り返ります。これまで一番最小のVxRailクラスターを導入する場合は、最低でも3ノードが必要でした。(※1)
(※1)推奨は4ノード以上です。4ノード以上が推奨である理由はこちらの記事をご覧ください。

VxRailに詳しい方であれば「あれ? 2ノードでも構成できたよね?」とお気づきかと思います。確かに、以前からVxRailは2ノードで構成することも可能でした。しかし、2ノードVxRailは2ノードvSAN(※2)とアーキテクチャが同じであるため、Witnessと呼ばれるノード監視用の機能を持たせたサーバーをもう1台用意しなければなりません。つまり、2ノードで構成したいのに実質3ノード分のハードウェアが必要になり、小規模のHCIを導入したい方々にとっては少し躊躇する事実が存在していました。
(※2)2ノードvSANの概要やWitnessについて知りたい方は「vSANの新たなカタチ "2ノードvSAN"」で詳しく説明されていますので是非ご覧ください。

超小型シャーシに "オールインワン" の2ノード vSAN

そんなもどかしさを払拭してくれる新たなVxRailをDell Technologiesが開発してくれました。それがVxRail VD-4000です。以下にVD-4000の筐体図を記載していますが、幅27cm/奥行36cmという超小型のシャーシになっていることが特徴です。弊社に実機が届いた際も、想像以上の小ささに驚きました。この超小型シャーシの中に、ノードとWitness用ノードが全て組み込まれています。

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以下は実機の写真ですが、B5サイズの書籍と比べるとどれだけ小型なのかがわかります。

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こんなに小型なVD-4000ですが、PowerEdge XR4000シリーズがベースとなっているため、過酷な環境でも稼働できる強靭な設計となっています。-5℃から+55℃の温度環境下でも稼働できるため、データセンター以外の環境で運用しても問題ありません。つまりVD-4000はエッジ環境にも最適化された製品でもあります。

シャーシとノードの組み合わせで多様な構成が可能

さて、VD-4000を構成しているシャーシとノードについてもう少し詳しく見ていきます。

据え置き型シャーシ「VD-4000z」、ラックマウント型シャーシ「VD-4000r」

先に紹介したシャーシは据え置き型の「VD-4000z」です。据え置き型はその名の通り、テーブルや棚板の上に置いて使用することが想定されるモデルで、最大2台のノードを搭載することができます。ラックマウント型の「VD-4000r」はデータセンター等のラックにマウントできるモデルで、最大4台のノードを搭載することができます。2ノードvSANの形だけにはまることなく、3ノード以上のクラスターを構成することができます。(※3)
(※3)3ノード以上で構成する場合はWitnessが必要ないため、Witnessノード部分はブランクになります。

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1Uノード「VD-4510c」、2Uノード「VD-4520c」、Witnessノード「VD-4000w」

それぞれのシャーシに対して、1Uサイズのノード「VD-4510c」または2Uサイズのノード「VD-4520c」を搭載できます。VD-4520cのオプションとして、2台のノードが一体となっているものだけでなく、片方のノードをPCIeスロットにすることもできます。PCIeスロットにすることでNICやディスクだけだなくGPUを搭載することができます。

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2ノードvSANだけにとどまらない構成

VD-4000の主軸となる使い方は2ノードvSANですが、2ノード以外の柔軟な構成ができるのも魅力のひとつです。1ノードであればVxRailサテライトノードとして、全国各拠点に配置させてメイン拠点のVxRailから集中管理させるといった使い方ができます。ラックマウント型シャーシを利用すれば、3ノード以上のクラスターを構成することができ、通常のVxRailアプライアンスと同様に最大64ノードまで拡張できます。

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このように、VD-4000は小型なサイズとは裏腹に、無限大の可能性を秘めたHCIであることがおわかりいただけたと思います。

VxRailの便利な機能はそのまま利用可能

ここまでVD-4000の概要をご紹介してきましたが、なんといってもVxRailの便利な機能をそのまま使えることは大きなメリットです。VxRail最大の特徴と言っても過言ではないライフサイクル管理機能(自動アップデート機能)をはじめとするVxRailプラグイン機能を全て利用できるため、2ノードvSANになってもらくらく運用が実現します。小規模向けHCIの導入を検討されている方々にとっては待望の製品といえるでしょう。


VD-4000 ハードウェアの特徴を実機写真でご紹介!

弊社にも実機が届きましたので、実機の写真を使ってVD-4000ハードウェアの特徴をご紹介しようと思います。

VD-4510c 内部の特徴

コンパクトなノードだからこそ気になるのがその中身。ノードが稼働するために必要な物理リソースはどのように格納されているのでしょうか?

ご覧の通り、ストレージデバイスの全てにNVMe M.2ドライブが搭載されていることで省スペースが実現しています。そう、VD-4000はAll NVMeタイプのHCIなのです。

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物理ネットワーク接続ってどうやるの? 

Witnessも含めてひとつのシャーシに収まっているのはいいことですが、VD-4000の物理的なネットワーク接続はどのように行うのか疑問を抱く方もいらっしゃると思います。

VD-4000のネットワークを構成する際は、通常のVxRailと同様にTop of Rackスイッチ(以下、ToRスイッチ)が必要です。ToRスイッチは、VxRailに必要なネットワークトラフィックの全てを束ねてノード間の通信を行います。3ノード以上のVxRailクラスターの場合、必要になるネットワークトラフィックは「Management」、「vSAN」、「vMotion」、「Virtual Machine」の4つですが、VD-4000の場合はここにWitness用のトラフィックが追加されます。

以上を踏まえて、VD-4000とToRスイッチの物理的なネットワーク接続がどのようになっているか見ていきましょう。

下図のようにVD-4510c(ノード)のネットワークポートは4つあり、全てSFP+(10Gb)ポートです。一方で、VD-4000w(Witness)のネットワークポートは2つで、全てRJ45(1Gb)ポートです。つまり、ノードとWitnessでポートタイプが異なるため、ToRスイッチと接続する際はSFP+⇔RJ45変換トランシーバーが必要になります。

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次の図は、ToRスイッチへの接続例です。ToRスイッチと接続する方法は、ToRスイッチのポートタイプがRJ45ポートまたはSFP+ポートで分かれます。
※簡略化のため、図ではToRスイッチ1台構成としてありますが、2台で冗長化することももちろん可能です。

<ToRスイッチがRJ45タイプの場合>
ToRスイッチがRJ45タイプの場合は、いくつか注意点があります。

「トランシーバー装着時は1GbEでリンクアップ」(赤枠①)
ノードのネットワークポートの内、左2つはvCenter Serverや仮想マシンのトラフィックに使用されますが、ここに装着できるトランシーバーは1GbE対応のみになります。SFP+ポート自体は10GbE対応ですが、トランシーバーを装着すると1GbEでリンクアップしますのでご注意ください。

「vSAN・vMotion用ポートはノード間直結のみ対応」(赤枠②)
ノードのネットワークポートの内、右2つはvSAN・vMotionのトラフィックに使用されます(それぞれ Active/Standby、Standby/Activeの構成)。先述の通り、SFP+ポートに装着できるトランシーバーは1GbE対応のみですが、vSANネットワークは10GbE以上が必要であるため、ここにはトランシーバーを装着できないことになります。つまり、ToRスイッチがRJ45タイプの場合、vSAN・vMotion用ポートはノード間をDACケーブルで直結するしかありません。

「Witnessのポートは全て1GbEでリンクアップ」(赤枠③)
WitnessのポートはどちらもRJ45(1GbE)であるため、ToRスイッチとLANケーブルで接続できますが、10GbE対応のLANケーブルを使用しても1GbEでリンクアップします。

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<ToRスイッチがSFP+タイプの場合>
ToRスイッチがSFP+タイプの場合は、ノードとToRスイッチをDACケーブルで接続します。一方で、WitnessはToRスイッチ側にトランシーバーを装着し、ノード⇔スイッチ間をLANケーブルで接続します。

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また、こちらの構成についても、vSAN・vMotion用ポートはノード間をDACケーブルで直結することもできます。

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両者を比較した場合、SFP+タイプのToRスイッチを使用するとノードのネットワークを全て10GbEで通信できるので、シンプルでわかりやすいですね。要件次第となりますが、ToRスイッチの種類によって構成が異なることを押さえておいてください!


VD-4000 セットアップ時および初期化時の TIPS

最後に、VD-4000をセットアップする際のTIPSを2点ご紹介しますのでもう少しお付き合いください!

初期化用のイメージはUSBデバイスへの書き込みが必要

セットアップを行う前に初期化用のイメージを作成しておくことで、万が一セットアップに失敗しても初期化することができます。通常のVxRailではノードに内蔵されているSDカードに工場出荷時のイメージが書き込まれており、SDカードからRASR(Rapid Appliance Self Recovery)を起動することで初期化作業を行うことができます。一方で、VD-4000の場合はノード内にSDカードがありませんので、USBデバイスに初期化イメージを書き込んでおく必要があります。初期化の対象はVD-4510c(4520c)ノード分とWitnessです。初期化イメージの作成方法や初期化手順についてはDell Technologiesがパートナー向けに公開しているSolVe Onlineで作成した手順書を必ずお読みください。
※SolVe Onlineへアクセスするには、Dell Technologiesのアカウントが必要です。

Witnessの初期化作業にはシリアル接続が必要

WitnessでRASR画面にアクセスする場合は作業用PCを用意し、PCとWitnessのシリアルポートをターミナルソフト(PuTTYやTeraTerm等)で接続する必要があります。接続するためにはMicroUSB to USBケーブルを使用しますので、予め用意しておくとよいでしょう。

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Witnessノードの中身はESXi

VD-4000wにはESXiがインストールされており、セットアップ時にWitness VM(実際に監視を行う役割)がデプロイされます。Witnessネットワークで必要となるパラメーターは以下の通りです。

  • クラスター内 ホスト1監視用のIP
  • クラスター内 ホスト2監視用のIP
  • クラスター監視トラフィックのVLAN ID
    事前にToRスイッチへのVLAN設定を忘れずに!
  • クラスター監視トラフィックのサブネットマスク
  • 監視ESXiのホスト名
    事前にDNSへのレコード登録を忘れずに!
  • 監視ESXirootユーザー名/パスワード
  • 監視ESXiの管理ユーザー名/パスワード
  • 監視VMの管理IP
  • 監視VMのパスワード
  • 監視VMトラフィックのIP
  • 監視VMトラフィックのサブネットマスク

大きく分けて、監視用トラフィックと管理用トラフィックにIPアドレスを用意すればよいだけです。監視用トラフィックはManagement・vSAN・vMotionトラフィックと同様にVLAN IDを設定します。ToRスイッチへのVLAN設定は事前に行う必要はありますが、難しいことはありません。あとはセットアップウィザードが始まってしまえば、通常のVxRailと同様のステップであっというまにセットアップを完了させることができます。


まとめ

以上、VxRail VD-4000について詳しくご紹介しました。2ノードvSAN自体は前から存在する構成ですが、VxRailが新たな道を切り開いてくれたと思います。vSphere仮想化基盤で小規模HCIをご検討されている方にピッタリの製品です。

弊社ではパートナー様向けにVD-4000検証機の貸出も行っています。「触ってみたい!」という方は弊社までお問合せください。

検証機貸出に限らずVxRail全般のお問合せはこちらまで!

著者紹介

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 2課
湯村 成一 - Seiichi Yumura -

Dell Technologies社製品のプリセールス業務を行うエンジニア。
主にVxRail・Azure Stack HCIといったHCI製品を担当している。