更新履歴---
2019/09/05 初回投稿
2021/02/26 一部内容更新
2023/03/01 一部内容更新
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はじめに
HCI(ハイパー・コンバージド・インフラストラクチャ)のパイオニアであるNutanix社は、2009年の設立から今年で10周年を迎え、現在も成長を続けている企業です。ここ数年では、自社開発のハイパーバイザー「AHV」をはじめ、新たなサービスを次々と発表しています。
この記事では、「仮想環境やハイパーバイザーといえばESXiやvCenter、Hyper-Vしか知らない」といった方のために、Nutanixが提供している「AHV」について、NutanixのHCIの話を交えながらご紹介します。
AHV(エー・エイチ・ブイ)とは
Nutanix社は、一般的な仮想環境の管理の複雑さなどを解消するために、HCIという市場をこれまでけん引してきましたが、より自社のソフトウェアと親和性の高いものとして「AHV」というハイパーバイザーを2015年にリリースしました。AHVは、Linux KVMをベースとして、エンタープライズ向け機能やセキュリティ強化を追加し開発されたものです。
もともとは「Acropolis Hypervisor」とも呼ばれていたのですが、現在では「AHV」が正式名称となっています。Acropolis(アクロポリス)とは、NutanixのHCI環境やそれを構成するコンポーネントの総称で、この名前が当初は使われたようです。
Nutanixでは共有ストレージの作成など、HCIに関わる部分は「Prism」と呼ばれるwebコンソールで管理しますが、AHVを導入することで、仮想マシンの作成といった仮想基盤の管理もこのPrismに統合できるようになります。
HCIとは
AHVの話を続ける前にHCIのおさらいをします。HCIとは、仮想化において一般的な 3-Tier(サーバ+SAN+ストレージ)構成を集約し、ノード(サーバ)を積み上げるだけのシンプルな構成にした基盤です。
HCIでは、従来の外部共有ストレージに代わるものとして、各ノードのローカルディスクをソフトウェアの機能で一つに束ねて大きな共有ストレージを作成します。そのため、HCIでは、SANや外部ストレージの設計や構築、管理が不要となります。
HCIの利点はシンプルな構成だけでなく、柔軟な拡張性やランニングコストの削減なども挙げられます。例えば、CPUやメモリ、ストレージなどのリソースが不足した際には、一台のノードを追加するだけでリソースをスケールアウトすることができます。これは初期導入ではスモールスタートをして、将来的にリソース拡大が予測される環境にも柔軟に対応することができます。
またリプレース時においても、撤去したいノードをソフトウェア制御で切り離すことができますので、仮想マシンの移行作業をする必要もなく、サービス無停止でハードウェア部分をリプレースすることが可能となります。
NutanixのHCI構成
NutanixのHCI環境を説明する上で最も重要なコンポーネントは「CVM」です。CVM(コントローラーVM)とは、各ノード上に必ず1つ存在する仮想マシンのことで、ノード間で互いに連携し合ってNutanix HCI環境全体をコントロールする役割を担っています。CVMは、物理ネットワークを通じて他のノードのCVMと通信することによって、仮想的に大きな共有ストレージを作成します。CVMとローカルの物理ディスクは、ハイパーバイザーを介さずにPCIパススルー接続されています。
AHVによるエンタープライズ機能への対応
AHVは提供開始から進化を続けており、一般的なエンタープライズで使用されるハイパーバイザーと比較しても、十分な機能をサポートしています。以下の表では、AHVが独自に提供する機能や、Nutanixが提供する様々な運用機能でAHVをサポートするものなどをカテゴリごとにまとめたものです。これらの機能は弊社のテクニカルセミナーやハンズオンにて、より詳しく解説していますので、気になる方は一度ご参加いただければと思います。
セミナー・ハンズオン情報ページ
https://licensecounter.jp/engineer-voice/seminar/
AHVのネットワークのしくみ
はじめに、AHVに限った話ではないですが、Nutanixクラスターでは標準的に以下3つのネットワークを構成します。
- ノード内のCVM/AHVの管理ネットワーク(内部通信)
- CVM/ハイパーバイザーが他のノードや外部と通信するための管理ネットワーク
- ハードウェアの管理等を行うIPMIネットワーク
Nutanixのハードウェアアプライアンスも一般的なサーバ機器と同様にIPMIのポートを有しており、ハードウェアの監視や管理に使用します。ちなみにクラスター作成後に新規作成したユーザVMのサービス系ネットワークは通常、管理系ネットワークとセグメントを分けます。
AHVにてクラスターを作成した場合は、各ノード内にデフォルトで次の2つの仮想スイッチが作成されます。
- ネイティブLinuxブリッジ
ノード内でCVMとAHVが内部通信するための仮想スイッチ - Open vSwitchによるブリッジ(br)
CVM、AHV、ユーザVMが、他のノードや外部と通信するための仮想スイッチ
Virtual Switch(vs)と仮想ネットワークについて
最近のAHVでは、ノード内の各ブリッジ(br)に対して、さらにクラスターをまたいでVirtual Switch(vs)を作成します。このVirtual SwitchはvSphereでの分散仮想スイッチ(vDS)のようなものだとお考え下さい。さらに、Virtual Switchに対して「仮想ネットワーク」というものを作成します。仮想ネットワークにはVLANを設定したり、IPAMと呼ばれるDHCP機能を有効化したりすることができ、仮想マシンは仮想ネットワークに接続して、VLANネットワークに参加することになります。仮想ネットワークとは、vSphereでの分散ポートグループに相当するものだとお考えいただくと、分かりやすいかもしれません。
Nutanixの管理コンソール「Prism」
NutanixのHCIクラスター管理では「Prism」という標準のWebコンソールを使用しますが、AHVによる仮想基盤の管理にもPrismが使用できます。Prismでは、サーバ、ストレージ、ハイパーバイザーやネットワークの管理だけでなく、リソースの監視やアラートの設定、各種コンポーネントのアップデートやクラスターの拡張など、様々な機能を一元管理することができます。
このWebコンソールは、管理のシンプルさを追求してデザインされており「ワンクリック・オペレーション」とよく表現されます。実際に、仮想マシンの作成や、仮想ネットワークの作成、アップデート作業などが、より少ないクリック回数で実行できるように設計されています。
PrismのHome画面
実際にPrismを触ってみたいという方はNutanix社が無償で提供している「Test Drive」というテスト環境があるので、ぜひ活用してみてください。
→Test Driveはこちら
まとめ
この記事では、NutanixのHCIやAHVの話を簡単に紹介しました。今後も、AHVやその他のNutanix関連の情報を発信していきます。最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
書籍紹介
おわりに、Nutanix製品に関する最新の書籍を紹介させていただきます。こちらは当社のエンジニアチームと、ニュータニックス・ジャパン合同会社のエンジニアの方々が共同執筆したもので、AHVをはじめとするNutanixの技術やサービスを詳しく学ぶことができます。ご興味のある方やこれからNutanixを勉強したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 技術統括部 第1技術部 3課
友松 桂吾 - Keigo Tomomatsu -
DC運用や留学などの経験を経て2019年にSB C&S入社。好きなことは料理とお酒。嫌いなことは睡眠不足。