はじめに
Nutanixでは、Xi LeapというDR as a Service(DRaaS)を提供しています。このサービスではまだ海外リージョンのみ開設されていますが、2019/9/13に開催された Nutanix .NEXT Japanでは2020年に日本リージョンが開設される予定とのアナウンスがありました。この投稿では、Xi Leapとはどのようなものか、従来からNutanixが備えていた機能と比較しつつご紹介します。
※ただしクラウドベースのサービスということもあり、機能やUIについては継続的に改善されることが予想されます。そのため今回は具体的な手順などは割愛しています。
Xi Leapとは
NutanixのLeapとは、Nutanixクラスタ同士でのDR(Disaster Recovery)を実現するためのソリューションです。ここでのDRとは、定期的に仮想マシンのデータをリモートサイトに転送しておき、災害時などにはそちらで仮想マシンを起動する(フェイルオーバーする)ことを指します。Leapでは、ただ仮想マシンをフェイルオーバーするだけでなく、Runbook(仮想マシンの起動順序制御など)のような機能を持ちます。
Xi Leapでは、NutanixのXi Cloudをリモートサイトとすることができます。DR 先のサイトはNutanixによって管理されているデータセンタであり、オンプレミスと同様のNutanixプラットフォームに、仮想マシンをフェイルオーバーすることができます。
Leapは、簡単なセットアップにより、シンプルな1-Clickテスト/フェイルオーバーが可能です。
DRの操作には、Prism(Prism Central)が必要となりますが、Leapの機能はあらかじめPrism Centralに組み込まれています。つまりPrism Centralがあれば、インストールは不要で機能を有効化すれば利用開始できます。またXi Cloudへのデータ レプリケーションではVPNトンネルを張る必要がありますが、VPNゲートウェイとなる機能も、Nutanixクラスターに組み込まれて提供されるようになりました。
Leapならではの用語もあり、サイトはAvailable Zone、データ転送の設定はProtection Policy、フェイルオーバー実行のための設定はRecovery Planと呼ばれます。これらは、次の図のようなイメージのものです。
これまでのDR機能との違いは?
Nutanixでは、すでにAsync DR、NearSync DR、Cloud Connectというリモートサイトへのデータ保護機能を提供していました。
ここでは、Leapとそれらとの共通点/相違点をご紹介します。なお、Async DRとNearSync DRについては利用者視点での相違点が少ないため、ここでは特に明記のない限りAsync DRに含めて説明します。
共通点
- これらの機能によるレプリケーションでのデータ転送については、Nutanixのスナップショット機能が利用されています。
そのため、仮想マシン(仮想ディスク)単位で保護対象を指定することができ、Nutanixならではの効率的な差分データ転送が実現されています。 - PrismのUIによる統一感のあるデザインのUIによる、「1-Ckick」に近い操作性があります。
ただし、実際にはPrism ElementとPrism Centralを利用することになるので、その使い分けについては後述します。
相違点
- 管理ツールの相違点
Async DRとCloud Connectの操作には、Prism Elementを使用します。一方、LeapではPrism Centralを利用します。 - データの転送先
Async DRはオンプレミスのNutanix Cluster同士でのデータ レプリケーションとなります。Cloud Connectは、パブリッククラウド(AWSまたはAzure)がデータ転送先となります。Leapではオンプレミスのクラスタ同士だけでなく、クラウド(NutanixのXi Cloud)にデータ転送できます。 - データ転送(レプリケーション)の最短間隔
Async DR、Cloud Connect、Leapの最短レプリケーション間隔は、基本的にNutanixスナップショットの最短間隔である60分です。NearSync DRではLight Wait Snapshot(LWS)と呼ばれる新しい機能が利用されており1分単位でのレプリケーションが可能ですが、その分、利用のための条件があります。 - フェイルオーバー時の仮想マシン起動
Async DRでは、仮想マシンをリモートサイトで起動することができますが、起動順序については制御できません。一方、LeapではRunbookのような機能をもち、リモートサイトでの仮想マシンの起動順序を制御できます。Cloud ConnectはじつはDR用途の機能ではなくクラウドへのバックアップ機能であり、データ転送したパブリッククラウドでは仮想マシン起動ができません。
Xi Leap の操作について
将来的に日本リージョンのサイトも開設される予定があり、今後、Xi Leapの検証/導入の機会も増えるのではないかと考えられます。
個人的な経験のうえでは、Nutanixのプロダクトはシンプルであるがゆえに、実際に利用してみると従来の運用にとらわれない気づきが得られることがあります。Xi Leapの機能検証する場合には、まずDR環境のセットアップから、Xi Leapのフェイルオーバー実行、DRサイトでの運用性確認といった、ひととおりの基本機能を確認しておくとよさそうだと感じました。
そこで、ここまでの説明をふまえて Xi Leapでどのような手順が必要になるかご紹介します。
DRによる仮想マシンの保護、フェイルオーバーの実行、Xi LeapのDRサイトでの運用性、というステップに分けてリストアップしています。
DRによる仮想マシンの保護
仮想マシンの保護(DRサイトへの仮想マシン データの転送)には、次のような手順が必要です。
- Prism CentralでのLeapの有効化
- Availability Zoneの登録(Prism Centralと、DR先のXi Leapとのサイトとのペアリング)
- VPNトンネルの構成(新機能: Nutanix Networking Service)
- Protection Policyの作成/設定
- Xi Leapでの保護対象にする仮想マシンの選択(Prism Centralの「カテゴリ」機能を利用)
VPNトンネルの構成についてですが、Xi Leapではデータ転送でVPNを利用するため、オンプレミス側にもVPNゲートウェイが必要となります。これは、物理的なアプライアンス(例えばFortiGateなど)、もしくは「Nutanix Networking Service」と呼ばれるNutanixによるVPN機能が利用できます。
Xi LeapのドキュメントではNutanix Networking Serviceが推奨となっていますが、弊社での試用時はまだその機能の実装前だったため、物理的なアプライアンスによるVPN環境で利用しました。
フェイルオーバーの実行
フェイルオーバー(仮想マシンをDRサイト側で起動する)には、次のような手順があります。
Xi Leapの特徴として、テスト フェイルオーバーを実行するための仕組みも用意されています。
- Recovery Planの作成
- テスト フェイルオーバーの実行
- オンプレミスからDRサイトへのフェイルオーバーの実行
- DRサイトからオンプレミスへのフェイルオーバーの実行
ちなみに、Xi Leapでの「カテゴリ」や「Recovery Plan」といった、DR元/DR先のサイト両方で必要な設定については、オンプレミス側のPrism Centralと、クラウド側の Xi Leapが提供するWeb UIのどちらからでも操作することができます。一方、DRのフェイルオーバーの実行やフローティングIPの割り当てなどは、クラウド側のXi LeapのWeb UIで操作することになるはずです。これらは、実際の運用シナリオにあわせてオンプレミス/クラウド側のUIを操作しておくことが重要かなと思います。
Xi LeapのDRサイトでの運用性
Xi LeapのDRサイトでは、仮想マシンを稼働させるうえで必要となるインフラ機能も提供しています。
Virtual Private Cloud とよばれるネットワーク環境をもち、複数のネットワークセグメントを作成することもできます。
- DRサイトでの仮想マシンの起動
- オンプレミス環境の仮想マシンとの接続性の確認
- DRサイトでのファイアウォール設定(Virtual Private Cloudでのポリシー)
- DRサイトで複数のネットワーク作成/相互接続性の確認
- フローティングIPアドレスを利用した外部ネットワークから仮想マシンへのアクセス
- DRサイトとして仮想マシンの性能要件を満たせるか確認
まとめ
Xi Leapを弊社で試用してみたところ、過去にないシンプルさをもつDRaaSであると感じました。
Xi Leapはクラウドによるサービスということもあり、頻繁なアップデートが予想されます。実際に利用される場合は、最新の仕様や操作方法などについて、Nutanix Support Portalにある Leap Administration Guide(My Nutanixアカウントでのログインが必要となる場合があります) にて確認することが重要となります。
最後に、Nutanix技術書籍をご紹介させていただきます。こちらはニュータニックス・ジャパン合同会社のエンジニアの方々と当社エンジニアチームが共同執筆したもので、AHVをはじめとするNutanixのプロダクトについて解説しております。Leap / Xi Leapについても解説(第8章 「Nutanixのデータ保護」にて)されていますので、ご参考としていただければと思います。
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著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 ICT事業戦略・技術本部 技術統括部 第1技術部
渡辺 剛 - Go Watanabe -
VMware vExpert
Nutanix Technology Champion