みなさん、こんにちはー。
今回は「エアタイムフェアネス」と「トラフィックシェーピング(帯域制御)」について
お話させていただきます。
先日、「特定の利用者によって帯域が占有されないように利用者ごとの帯域を平準化したい」
という要件に対して
複数のメーカーに「どんな機能で対応できるか?」をヒアリングしたところ
大きく2つの回答をいただきました。
それが「エアタイムフェアネス」と「トラフィックシェーピング(帯域制御)」です。
実際にこの2つの方法はどう違うのか?それを紹介します。
◆エアタイムフェアネスとは?
無線は上りと下りを同時に通信しない半二重通信であり
基本的に同時には1台のクライアントとしか通信できません。
ですので下りで言えば、クライアントごとに同数のパケットを順々にダウンロードしていきます。
1台が通信している場合、その他のクライアントは待機状態です。
そのため、「APから遠く、電波強度が弱いクライアント」や
「対応している通信規格(IEEE 802.11gなど)が古いクライアント」などの
低速なクライアントがいる場合は高速なクライアントも待機状態が続くため
結果として通信速度は遅くなります。
<余談ですが>
対応している通信規格(IEEE 802.11gなど)が古い規格を使用しているクライアントが
低速というのはイメージしやすいと思います。
ですが、低速なクライアントはそれだけではなく、同じ通信規格を使用していたとしても
「APから距離が遠かったり、ノイズが多く、電波強度が弱い」クライアントは
距離が近く電波強度が強いクライアントと比べると低速になります。
※以下は接続時の通信速度が決まるイメージです。
接続接続の詳細は【ワイヤレスブログ 第8回】無線LAN接続ステップ をご参照ください。
通信速度が遅いクライアントによって、全体的に通信が遅くなる時に有効な機能が
【エアタイムフェアネス】です。
【エアタイムフェアネス】は同数のパケットをダウンロードするという観点ではなく
通信時間を同じにするという観点で順々に通信を行っていくことができる機能です。
この機能を使用することによって、「APから遠く、電波強度が弱いクライアント」や
「対応している通信規格(IEEE 802.11gなど)が古いクライアント」が混在していても
高速なクライアントの通信が遅くなるという事態を防ぐことができます。
また、Ciscoはすべてのクライアントの通信時間を均等にするだけではなく
SSIDごとに重み付けをすることもできます。
これによりゲスト用SSIDは大した通信をしないので比重を小さくし
従業員用のSSIDの比重を大きくするといったことが可能になります。
◆トラフィックシェーピングとは?
無線通信が遅くなる原因の一つに、自分以外の特定の端末が大容量のデータ通信を行っているため
自分の通信が遅くなるという原因があります。
そんな時に有効な機能が【トラフィックシェーピング】です。
【トラフィックシェーピング】はクライアントのトラフィック(通信量)の
上限となる閾値を設ける機能です。
この機能を使用することで、特定クライアントが無線の帯域を占有し
他のクライアントの通信速度が遅くなることを防ぐことができます。
また、メーカーによっては「SSIDごと」「アプリケーションごと」に
トラフィックの閾値を設定することができます。
これによって、リアルタイムでデータの送受信を行うIP電話やテレビ会議などのアプリケーション以外の
トラフィックを抑え、IP電話やテレビ会議などのアプリケーションを快適に使用することなどができます。
冒頭で記述した「特定の利用者によって帯域が占有されないように利用者ごとの帯域を平準化したい」
という要件に対して「エアタイムフェアネス」「トラフィックシェーピング」のどちらが正解か?は
一概には言えないと考えています。
単純に利用者の帯域の上限をそろえたいということであれば「トラフィックシェーピング」で
クライアントの帯域を平準化することができますが
何も考えずに閾値を設けた場合、無線の帯域に使用しない部分が出てしまい
結果的にAPのパフォーマンスを活かしきれない状況が生じてしまいます。
※メーカーによっては一定時間だけクライアントに制限を超えた速度の
通信を許可するといった設定ができるものもあります。
「エアタイムフェアネス」が帯域の平準化にそぐわないかと言えば
通信時間を同一にすることにより、自分の通信の順番がなかなか来ないということを防げ
高速/大容量通信を行うクライアントがいても、他のクライアントも同じ時間の通信ができますので
ある程度平準化はできます。
結局は通信要件や環境、APの特長などを総合的に判断して機能を使用することが一番だと考えています。
では今回はこのあたりで失礼させていただきます。
この後も【ワイヤレスブログ】は続きますので、引き続きお楽しみください。
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著者紹介
SB C&S株式会社
技術本部 技術統括部 第2技術部 1課
石川 隆文