こんにちは。SB C&Sで九州/中国地区で技術支援を担当しています、萩原です。
今日はNutanixとUPSの関係性、そしてNutanixとオムロンUPSの組み合わせで実現する、シンプルな仮想化基盤の構築についてご紹介させていただきます。
今までは、SC21というUPSに搭載するネットワークカードの機能を中心にメリットの紹介をしてきましたが、2020年2月に「VirtuAttendant」といわれるUPS管理ソフトウェアが発売されました。従来から発売されているネットワークカードとVirtuAttendantの組み合わせにより、従来よりもさらにシンプルかつ高度な管理ができるようになりました。
HCIにおけるUPSとの組み合わせ
Nutanixが提供するHCIプラットフォームは、仮想化基盤をシンプルにそしてバックアップや日々の仮想マシン管理運用をシンプルにすることができます。
この恩恵により、企業における情報システム部門が、面倒なインフラの運用管理にコストを割かれることなく、自社内で企業活動を行うための各種利用されるアプリケーションに集中できる環境を作ることが出来ます。
Nutanixの提供するHCIプラットフォームはシンプルでありかつ、ユーザーフレンドリーなUIを提供し、日々の運用管理コストをトータルで下げることができるのが特徴ですが、オンプレミスで自社のサーバールーム等に設置する場合、UPSなど電源制御面において1つ気にしておく必要があります。
それは、HCI製品においては、ストレージとサーバーが分離されておらず同一筐体のためシャットダウン等の電源制御時には、HCIの基盤の外に別途電源管理サーバー等のシャットダウン制御命令を発行する機器が必要になるということです。
Nutanixにおけるシャットダウンの手順について今一度確認をしてみましょう。
- ステップ1 CVMをのぞく各仮想マシンをシャットダウンする
- ステップ2 任意のCVMから「Cluster stop」コマンドを実行し、クラスターサービスを停止する(ここで共有ストレージサービスも停止する)
- ステップ3 各ノードのCVMをシャットダウンする
- ステップ4 ハイパーバイザーをシャットダウンする
UPS管理ソフトウェアが、UPSから商用電源が消失した通知を受けるとNutanixクラスター上にいる仮想マシンをシャットダウン後Nutanixクラスターサービスを停止する必要があります。これがステップ1のアクションです。続いてステップ2のクラスターサービスを停止します。クラスターサービスを停止するとNutanixクラスターが提供していたストレージサービスが停止するため、Nutanixクラスター上で稼動していたUPS管理ソフトウェアが稼動する仮想マシンは、ストレージサービスが停止後I/O処理が出来なくなりステップ3以降のアクションが出来ない形となります。そのため、UPS管理ソフトウェアは、Nutanixクラスターではない環境から電源制御を行う必要があります。
▼Nutanixクラスターと従来のUPSとの構成
NutanixとオムロンUPSだけで安全な電源管理を実現可能
この課題を解決すべく2018年7月に、オムロンよりNutanixクラスターのシャットダウンに対応した「SC21」というUPSに搭載するネットワークカードが発売されました。このカードは、SSHコマンドの実行が可能で有り、いままでNutanixクラスターの停止コマンド実行など、Nutanixクラスターの外部に設置していた電源管理サーバーの役割をこのネットワークカードに委譲することで、電源管理サーバーを不要にすることが可能となります。
▼Nutanix HCIクラスターとオムロンUPSの構成
HCIに電源管理サーバーがいらないだけでは、シンプルでは無い。
NutanixとオムロンUPSの組み合わせで実現するシンプルと親和性
SC21までは、今までのオムロンUPSとNutanixの組み合わせにおけるメリットとして訴求していた点でした。しかし、2020年2月に発売された「VirtuAttendant」とSC21 UPSネットワークカードとNutanix HCIの組み合わせは以下のメリットが追加されます。
1.Nutanixの正しいシャットダウンの手順に準拠
先程のご紹介通り、HCI製品は各種シャットダウンにおける作法があります。Nutanixもその例外ではありません。
このお作法における手順を自動的に行ってくれます。個別にシャットダウン用のスクリプトを用意するなど職人芸による手作業は不要です。
2.Nutanix Filesのシャットダウンに対応
Nutanixクラスターは、サーバー仮想化での利用やVDIの利用でファイルサーバーを同時に構築・運用されるケースが多くあります。この際に使われることが多いNutanix Filesの正しいシャットダウンの手順も「VirtuAttendant」でサポートされています。
▼Async DRやNutanix Filesの停止を任意の順番で設定可能
これらは、NutanixとVirtuAttendantの組み合わせでできるメリットですが、そもそもUPSの設定における、時間がかかる・面倒という、構築・設定側のメリットも沢山あります。
3.仮想マシンのシャットダウン順をマウス操作だけでグルーピング・個別で設定可能
仮想マシンのシャットダウンを行う際、まずアプリケーションサーバーをシャットダウン後にデーターベースサーバーをシャットダウンなど順番制御が必要になるケースがあります。またその一方で順番を意識しない仮想マシンは一斉にシャットダウンするといったシャットダンの順番制御や一括シャットダウンをグルーピングしながら順序作成をマウス操作だけで実現可能です。グループで設定を行うため、1つずつの設定に比べ、設定後の変更作業なども楽に行えます。
▼同じ用途の仮想マシンをグルーピングする設定
▼グルーピングすると1つ枠としてシャットダウンタスクを設定可能
4.シャットダウン対象機器のパワーステータスを確認して次のシーケンスに移る時間に依存しない
UPSは、停電などの商用電源トラブル時に安全に機器をシャットダウンし、電源障害から機器を守るための機器です。
いざという時にしか活躍はしませんが、いざという時に正しく活躍してもらうためには、事前に正確な設定が不可欠です。
このUPS設定における不可欠な要素が「時間」でした。
仮想マシンのシャットダウンを順番付けする際には、アプリケーションサーバーはシャットダウンに約3分かかり、その後にデーターベースサーバーのシャットダウンに約5分などといった事前のシャットダウンの時間を計測し、各シャットダウンの項目にこの計測した時間を待機時間(シャットダウンまでの待ち時間)として設定をしていました。これは、UPS管理ソフトウェアから仮想マシンがシャットダウンされたかどうかを検知出来ていないことがその要因でした。
「VirtuAttendant」は、Nutanixクラスターの管理機能であるPrism APIと連携して仮想マシンがシャットダウンされたことを検出して次のシャットダウンシーケンスに動く機能を持っています。これにより、時間に縛られないシャットダウン処理が実現出来ます。
5.シャットダウンのためのテスト機能を実装
UPSの導入時に一番手のかかる作業が、停電時をシミュレートしたシャットダウンテストです。
テスト時は、実際にUPSのコンセントを抜いて商用電源段の状態を作りテストを行い正常にシャットダウンできない箇所の時間調整を行って再テストなど、時間を基にシャットダウンシーケンスを設定する従来の設定方法と併せて行う必要があり大変手間のかかる作業でした。
「VirtuAttendant」は、UPSの導入においてテストは必須の作業であることから、実際にUPSのコンセントを抜くなどの物理的なアクションをせずに商用電源断発生時と同様テストが行える「テスト機能」を実装しています。実際のUPSを触ることなく、設定したシャットダウンシーケンスを実際に動作させることができます。またこのテスト時に、仮想マシンのシャットダウン時間を計測し、シーケンス図が実際にかかった時間に合わせて自動作成されます。
▼テスト機能とテスト機能により自動で作成されたシーケンス
まとめ
NutanixクラスターとオムロンVirtuAttendantを組み合わせることで、従来個別でスクリプトを作成しないと正常にシャットダウン出来ないような手順を、マウス操作だけで完了することが出来ます。
また、なにより従来までのストップウォッチと仮想マシン一覧シートを片手にシャットダウンの時間を計測する必要も、テスト機能の実装により自動計測されるため必要ありません。
UPS設定は、停電したら安全にシャットダウンすることが目的の製品ですが、この安全に"シャットダウン"させるためには、事前の設定や時間計測で設定にかなりの時間を要していました。VirtuAttendantを利用することで安全にシャットダウンできる環境を、従来より大幅に短い時間で設定完了することが出来ます。
Nutanixのシンプルさに合わせてUPSの設定・運用もシンプルにすることが可能です。
次回は、具体的にVirtuAttendantの導入方法や設定方法をご紹介したいと思います。
仮想化環境のサイジングを簡単便利に
著者紹介
SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術本部 第3技術部 2課
萩原 隆博 - Takahiro Hagiwara - (Nutanix NTC)
HCIを中心とした仮想化とMicrosoft 365のプリセールスエンジニアを担当しています。
Nutanix Technology Champion 2018-2024